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政策委員会 金融政策決定会合 議事要旨 (2020年6月15、16日開催分)

2020年7月20日
日本銀行

本議事要旨は、日本銀行法第20条第1項に定める「議事の概要を記載した書類」として、2020年7月14、15日開催の政策委員会・金融政策決定会合で承認されたものである。

開催要領

1.開催日時:
2020年6月15日(14:00~15:11)
 
6月16日( 9:00~11:26)
2.場所:
日本銀行本店
3.出席委員:
議長 黒田東彦 (総裁)
雨宮正佳 (副総裁)
若田部昌澄(  副総裁  )
布野幸利 (審議委員)
櫻井 眞 (  審議委員  )
政井貴子 (  審議委員  )
鈴木人司 (  審議委員  )
片岡剛士 (  審議委員  )
安達誠司 (  審議委員  )
4.政府からの出席者:
財務省 神田 眞人 大臣官房総括審議官(15日)
遠山 清彦 財務副大臣(16日)
 
内閣府 田和 宏 内閣府審議官
(執行部からの報告者)
理事 衛藤公洋
理事 内田眞一
企画局長 加藤 毅
企画局政策企画課長 飯島浩太
金融市場局長 清水誠一
調査統計局長 神山一成
調査統計局経済調査課長 川本卓司
国際局長 福本智之
(事務局)
政策委員会室長 松下 顕
政策委員会室企画役 本田 尚
政策委員会室企画役 山城吉道
企画局企画役 長江真一郎
企画局企画役 稲場広記

1.金融経済情勢等に関する執行部からの報告の概要

1.最近の金融市場調節の運営実績

金融市場調節は、前々回会合(4月27日)、前回会合(5月22日)で決定された短期政策金利(-0.1%)および長期金利操作目標(注)に従って国債買入れを行った。そのもとで、10年物国債金利はゼロ%程度で推移し、日本国債のイールドカーブは金融市場調節方針と整合的な形状となっている。

企業等の資金繰り支援のための措置として、「新型コロナ対応資金繰り支援特別プログラム」のもとで、CP・社債等の買入れや、新型コロナウイルス感染症対応金融支援特別オペを実施した。また、国債買入れやドルオペなどによって、円貨および外貨を潤沢に供給したほか、ETFおよびJ-REITの積極的な買入れを行った。

2.金融・為替市場動向

短期金融市場では、金利は、翌日物、ターム物とも、総じてマイナス圏で推移している。無担保コールレート(オーバーナイト物)は-0.07~-0.02%程度で推移している。ターム物金利をみると、短国レート(3か月物)は、発行が増額されるもとで幾分上昇し、足もとでは-0.1%程度で推移している。

株価(日経平均株価)は、各国・地域の積極的な財政・金融政策や経済活動再開の動きなどから、上昇している。長期金利は、仔細にみると海外金利上昇や国債発行計画の増額等を受け幾分上昇したものの、日本銀行による国債の積極的な買入れもあり、期間を通じてみれば、ゼロ%程度で推移している。国債市場の流動性については、緊急事態宣言の解除後、一部に改善の動きがみられるが、取引高が低位にとどまるなど、水準としては低い状態が続いている。為替相場をみると、円の対ドル相場は、米経済指標の予想比上振れ等を受けて円安方向の動きとなる場面もみられたが、期間を通じてみれば、概ね横ばいの動きとなっている。また、円の対ユーロ相場は、ユーロエリアの財政・金融政策による経済下支えへの期待感などから、ユーロ高方向の動きとなっている。

3.海外金融経済情勢

海外経済は、新型コロナウイルス感染症の世界的な大流行の影響により、大きく落ち込んだ状態にある。4月会合以降、中国に続き、欧米などの主要国や新興国においても、感染拡大防止策が緩和され、経済活動が再開し始めているが、主要国の中には感染拡大の収束ペースが緩慢な国もあるほか、新興国の一部では感染症が急速に拡大している。また、世界貿易量も大きく落ち込んだ状態にある。先行きの世界経済については、感染症の影響から、落ち込んだ状態が続くとみられるが、そうした影響が徐々に和らぐにつれ、ペントアップ需要や挽回生産が押し上げに作用し、各国・地域の積極的なマクロ経済政策の効果も発現すると予想されることから、持ち直していくと考えられる。もっとも、先行きについては、感染症の帰趨やそれが世界経済に与える影響の大きさといった点について、きわめて不確実性が大きい。

地域別に動きをみると、米国経済は、感染症の影響から、大きく落ち込んだ状態にある。外出制限や営業・生産活動の停止措置などの感染拡大防止策は、各州でペースは異なるものの緩和され始めている。もっとも、企業収益の減少などを背景に、企業の業況感の悪化が継続しており、設備投資は大きく落ち込んだ状態にある。また、雇用に対しても深刻な影響が生じており、消費者マインドは冷え込んだ状態にある。

欧州経済は、感染症の影響から、大きく落ち込んだ状態にある。ユーロエリアでは、感染拡大防止策が緩和され始めている。もっとも、企業収益への影響などを背景に、企業の業況感の悪化が継続しており、設備投資は大きく落ち込んでいる。雇用も深刻な影響が生じており、消費者マインドは冷え込んでいる。

中国経済は、持ち直している。生産と輸出は、供給面の制約が和らいでいることなどから、感染症拡大前の水準と同程度まで回復している。個人消費と固定資産投資は、感染症拡大の影響によって大きく減少した水準から、持ち直している。

中国以外の新興国経済は、感染症の影響から、大きく落ち込んだ状態にある。NIEs・ASEANでは、感染症の流行が落ち着きつつある国・地域を中心に、外出制限や営業・生産活動の停止措置などの感染拡大防止策が緩和され始めているものの、景気は大きく落ち込んだ状態にある。また、インドやブラジル、ロシアでは、感染症の急拡大の影響から、景気は大きく落ち込んだ状態にある。

海外の金融市場をみると、各国・地域で積極的なマクロ経済政策が実施されるもと、感染拡大防止策が緩和され経済活動が再開する動きや、治療薬・ワクチン開発への期待感などもあって、市場センチメントが改善している。こうした中、米欧の株価や長期金利は上昇し、クレジット・スプレッドは、米欧ともに幾分縮小している。新興国通貨は、一部に弱めの動きもみられているものの、全体としては上昇している。この間、原油価格は、市場センチメントが改善する中、需給バランスの改善などから、上昇に転じている。

4.国内金融経済情勢

(1)実体経済

わが国の景気は、内外における新型コロナウイルス感染症の影響により、きわめて厳しい状態にある。先行きについては、経済活動が徐々に再開していくとみられるが、当面、新型コロナウイルス感染症の影響から、厳しい状態が続くと考えられる。その後、感染症の影響が収束していけば、ペントアップ需要の顕在化や挽回生産が予想されることに加え、緩和的な金融環境や政府の経済対策にも支えられて、わが国経済は改善していくとみられる。

輸出や鉱工業生産は、海外経済が大きく落ち込んだ状態にあるもとで、大幅に減少している。実質輸出を財別にみると、自動車関連は、米欧を中心とする海外販売の急速な落ち込みなどを背景に、大幅に減少しているほか、資本財は、グローバルな設備投資先送りの動きを反映して、はっきりとした減少が続いている。一方、情報関連は、データセンター向けやパソコン関連の堅調さに支えられて、基調としては底堅く推移している。訪日入国者数は、入国制限が継続していることから、ほぼ皆減の状態にある。先行きの輸出や生産は、当面、感染症の影響による海外経済の落ち込みなどから大幅に減少したあと、感染症の影響が世界的に和らいでいくのに伴い、下げ止まりから持ち直しに向かうと予想される。

個人消費は、感染症の影響が続く中で、飲食・宿泊等のサービスを中心に大幅に減少している。サービス消費は、感染症の影響による外出自粛の強まりや休業・営業時間短縮の動きから、外食や旅行などの選択的支出を中心に大幅に減少している。サービス需要に関連して、携帯電話の位置情報データを用いて人々の動きをみると、4月中旬にかけて一段と減少し、5月中旬まで低水準が続いた後、緊急事態宣言が解除された5月末にかけてようやく幾分持ち直す姿となっている。財消費については、いわゆる「巣ごもり消費」の拡大からスーパー販売額が前年を上回って推移しているほか、家電販売も、テレワークの拡がりを受けたパソコンや、テレビ、白物家電を中心に、5月下旬以降、持ち直している。先行きの個人消費は、当面、サービス消費を中心に低水準が続くとみられるが、営業活動の段階的な再開の動きに伴い、各種の所得支援策にも支えられて緩やかに持ち直していくとみられる。

企業収益は、1~3月にはっきりとした減益となり、4月以降、更に落ち込んでいるとみられる。そうしたもとで、設備投資は、不急の投資を先送りする動きなどから、増勢の鈍化が明確となっている。先行きの設備投資は、需要減の影響が大きい自動車や一般機械、資金繰り悪化が流動性制約に直結しやすい飲食・宿泊・個人向けサービス等で減少基調が明確になってくるとみられる。もっとも、政府・日本銀行の対応により緩和的な金融環境が維持されるもとで、ソフトウェア・研究開発投資や建設投資など、中長期的な案件の多くは継続されると考えられる。

感染症の影響が続く中で、雇用・所得環境には、弱めの動きがみられている。4月の労働力調査の雇用者数は、感染症の影響からパート等の非正規がはっきりと減少し、前年比-0.6%と2012年12月以来のマイナスに転じている。4月の名目賃金は、所定外給与の減少幅拡大に加え、パートの労働時間減少もあり、前年比-2%程度の下落となっている。先行きの雇用者所得については、感染症の影響による経済活動の落ち込みや企業収益の減少の影響から、減少基調で推移する可能性が高い。

物価面について、消費者物価の前年比は、除く生鮮食品、除く生鮮食品・エネルギーのいずれも0%程度となっている。先行きについては、当面、感染症や原油価格下落などの影響を受けてマイナスで推移するとみられる。その後は、景気が改善していくもとで、プラスに転じたあと、徐々に上昇率を高めていくと考えられる。

(2)金融環境

わが国の金融環境は、全体として緩和した状態にあるが、企業の資金繰りが悪化するなど企業金融面で緩和度合いが低下している。

予想物価上昇率は、弱めの指標がみられている。

企業の資金繰りは、新型コロナウイルス感染症の影響を受けた売上げ減少などを背景に悪化している。もっとも、日本銀行・政府の措置と金融機関の取り組みにより、外部資金の調達環境は緩和的な状態が維持されている。企業の資金調達コストは、CPを中心に上昇していた市場調達レートが低下に転じるもとで、低水準で推移している。資金供給面では、企業からみた金融機関の貸出態度は、緩和した状態にある。CP・社債市場では、需給悪化懸念が後退するもとで、総じて良好な発行環境となっている。資金需要面をみると、新型コロナウイルス感染症の影響を受けた売上げの減少や予備的な需要などによる資金需要が増加している。企業の資金調達動向をみると、銀行貸出残高の前年比は、5%程度のプラスとなっており、CP・社債の発行残高の前年比は、10%を超える高めのプラスで推移している。

2.金融経済情勢に関する委員会の検討の概要

1.経済情勢

国際金融市場について、委員は、各国・地域の積極的な財政・金融政策や、先進国などでの経済活動再開に向けた動きから、ひと頃の緊張が緩和しているとの認識で一致した。もっとも、委員は、内外経済の不透明感が強いもとで、株式市場では、依然としてボラティリティが高い水準で推移するなど、引き続き、神経質な状況にあるとの見方を共有した。複数の委員は、米国株式市場のSKEW指数(市場参加者のリスク認識の偏りを示す指標)が高止まりしており、市場では下方のテールリスク(大幅な株価下落)が意識されていると指摘したうえで、実際、6月中にダウ平均株価が1,800ドル超急落する場面がみられるなど、不安定な動きとなっていると述べた。ある委員は、金融市場では、先行きへの期待から、足もとの実体経済の厳しさと比べると高値となっているとの見方を示したうえで、資産価格に修正が生じないか、今後の市場動向を注視する必要があると指摘した。別のある委員は、原油価格の動向について、4月末にかけて急落したあと、産油国の減産の動きなどから、徐々に値を戻しているが、原油需要の本格的な回復は当面期待できないため、原油価格の低迷は長期化する可能性があるとの見方を示した。

海外経済について、委員は、新型コロナウイルス感染症の世界的な大流行の影響により、大きく落ち込んだ状態にあるとの認識で一致した。多くの委員は、中国や先進国では、感染症の拡大がピークアウトし、経済活動を再開する動きもみられているが、新興国を中心に感染症の急速な拡大が続いており、グローバルにみれば未だ収束の目処は立っていないとの認識を示した。海外経済の先行きについて、委員は、感染症の影響から、落ち込んだ状態が続くとみられるが、そうした影響が徐々に和らぐにつれ、ペントアップ需要や挽回生産が押し上げに作用し、各国・地域の積極的なマクロ経済政策の効果も発現すると予想されることから、持ち直していくとの認識を共有した。複数の委員は、感染症が収束しつつある国では、経済活動が再開されており、ごく足もとでは明るさもみられているが、有効なワクチンや治療薬がない中では、感染症が世界経済に与える影響の長期化は避け難いと指摘した。

地域毎にみると、米国経済について、委員は、感染症の影響から、大きく落ち込んだ状態にあるとの認識を共有した。何人かの委員は、財政・金融政策の下支えのほか、経済活動も徐々に再開されていることから、5月の経済指標は予想以上のリバウンドをみせたが、失業率は依然歴史的な高水準にあると指摘した。複数の委員は、感染症の帰趨だけでなく、デモの発生など社会情勢にも不透明感が出てきている点に懸念を示した。一人の委員は、米国の高頻度データをみると、人々の移動自体は戻ってきているが、消費や雇用といった経済活動の戻りは鈍いことが特徴的であると述べた。

欧州経済について、委員は、感染症の影響から、大きく落ち込んだ状態にあるとの認識を共有した。何人かの委員は、積極的な財政・金融政策のもとで、経済活動も徐々に再開されつつあるが、感染状況の差異などによって、各国の回復ペースは区々であるとの見方を示した。このうち、一人の委員は、財政余力のあるドイツでは回復が早いと見込まれる一方、観光産業へのウエイトが大きい南欧では回復が遅れることが見込まれると付け加えた。

中国経済について、委員は、持ち直しているとの見方で一致した。多くの委員は、感染症拡大が収束するもとで、生産や輸出は、感染症拡大前の水準へと戻りつつあるとの認識を示した。もっとも、多くの委員は、感染症の影響から世界経済の回復が遅れれば、世界貿易量の低迷が長期化し、ひいては中国からの輸出も停滞する可能性があるとの見方を示した。何人かの委員は、足もとの米中関係の悪化も経済の下押し要因として作用する惧れがあると指摘した。

新興国経済について、委員は、感染症の影響から、大きく落ち込んだ状態にあるとの認識を共有した。多くの委員は、インド、ブラジル、ロシアなどでは感染症が急速に拡大しており、経済への影響は深刻化しているとの認識を示した。

以上のような海外の金融経済情勢を踏まえて、わが国の経済情勢に関する議論が行われた。

わが国の景気について、委員は、内外における新型コロナウイルス感染症の影響により、きわめて厳しい状態にあるとの認識を共有した。多くの委員は、世界経済の落ち込みから、わが国の輸出や生産は大幅に減少しているほか、緊急事態宣言に基づく外出自粛を主因に、4月の消費関連指標は記録的な落ち込みとなっており、4月会合で懸念していたような状況がデータでも確認できたと指摘した。また、何人かの委員は、4月の就業者数は非正規労働者を中心にはっきりと減少し、求職活動をやめた結果、非労働力人口も増加するなど、雇用・所得環境に弱めの動きがみられているとの認識を示した。もっとも、何人かの委員は、わが国では感染者数を他国比抑えることに成功したほか、5月には、緊急事態宣言も解除され、マインド指標も改善に転じるなど、ごく足もとでは、底打ちの兆しも窺えるとの見方を示した。この間、一人の委員は、感染症の影響によって回収率が低下するなど、統計データの精度が落ちているため、経済の実態が掴みづらいことは悩ましいと述べた。

景気の先行きについて、委員は、経済活動が徐々に再開していくとみられるが、当面、内外における新型コロナウイルス感染症の影響から厳しい状態が続くとの認識で一致した。そのうえで、委員は、感染症の影響が収束していけば、ペントアップ需要の顕在化や挽回生産が予想されることに加え、緩和的な金融環境や政府の経済対策にも支えられて、わが国経済は改善していくとの見方を共有した。このうち、一人の委員は、本年後半以降、感染症の影響が収束に向かうことを前提に、内外経済の成長ペースが高まっていくという、4月の展望レポートで示したメインシナリオは大きく変わっていないとの認識を示した。そのうえで、何人かの委員は、経済活動再開に伴い、今後は、やや長い目でみて、家計や企業のマインドセットや行動様式がどのように変化していくかといった、感染症のセカンド・ラウンド・エフェクトに注目していく必要があるとの見方を示した。このうち、一人の委員は、現下の状況が唐突かつ予期しないかたちで到来しただけに、前向きの変化が生じる可能性もある一方、経済への下押し圧力ともなりうる点には警戒が必要であると指摘した。別のある委員は、労働市場の悪化が総需要を下押しする公算が高いこと、感染症のリスクに配慮する新しい生活様式のもとでは従来型サービスの稼働率が低下する可能性があることから、景気回復のテンポは緩慢になる可能性が高いと述べた。

物価面について、委員は、消費者物価の前年比は、除く生鮮食品、除く生鮮食品・エネルギーのいずれも、原油価格の下落の影響などにより、0%程度となっており、予想物価上昇率については、弱めの指標がみられているとの認識で一致した。もっとも、複数の委員は、スーパーなどを対象にした日次・週次のCPIや、最頻値などの基調的な物価指標の底堅さをみると、現時点では、日常的な財・サービスの分野で、値引きで需要を奪い合うというデフレ的な価格設定行動が拡がる状況にはなっていないと指摘した。

先行きの物価について、委員は、当面、感染症や原油価格下落などの影響を受けて、マイナスで推移するとみられるが、その後は、景気が改善していくもとで、プラスに転じたあと、徐々に上昇率を高めていくとの見方を共有した。そのうえで、ある委員は、やや長い目でみた物価の動向については、現時点では、需要の急速な回復が期待しにくいもとで、予測可能な将来に、物価がモメンタムをもって2%に近接していく姿を予想することは難しいと指摘した。別のある委員は、雇用・所得環境の改善と物価上昇の好循環に弱めの動きがみられる中、消費者物価の低迷が長引く場合には、予想物価上昇率の適合的形成に及ぼす影響が懸念されると述べた。

経済・物価見通しのリスク要因として、委員は、新型コロナウイルス感染症の帰趨や、それが内外経済に与える影響の大きさといった点について、きわめて不確実性が大きいとの認識で一致した。更に、委員は、感染症の影響が収束するまで、企業や家計の中長期的な成長期待が大きく低下せず、また、金融システムの安定性が維持されるもとで金融仲介機能が円滑に発揮されるかについても注意が必要であるとの認識を共有した。多くの委員は、感染症の第2波が発生した場合には、経済活動が再び大きく抑制される可能性があるとの認識を示した。何人かの委員は、こうした感染症再拡大への懸念などから、企業や家計が防衛的な行動を続ければ、成長期待が下方屈折するとともに、需要が長期にわたり低迷する可能性もあると指摘した。一人の委員は、経済の回復の遅れは、企業の財務悪化や金融資本市場の不安定化をもたらし、更には金融システム不安に波及するリスクを内包しているため、その動向には十分注意を払う必要があると述べた。物価面について、複数の委員は、感染症の影響が需要・供給の双方に及ぶ中で、企業がどのような価格設定行動をとるかには不確実性が大きいとの見方を示した。複数の委員は、現時点では企業倒産の急増は起きていないが、感染症の影響は業種・規模を問わず幅広い企業・個人事業主に及んでおり、仮に、企業の倒産・休廃業が増加すれば、雇用や資本ストックの調整を通じて、再びデフレに陥るリスクもあるため警戒すべきであると述べた。

2.金融面の動向

わが国の金融環境について、委員は、売上げの減少などを背景に企業の資金繰りが悪化するなど、企業金融面の緩和度合いが低下しているとの認識で一致した。もっとも、委員は、日本銀行・政府の措置と金融機関の積極的な取り組みにより、銀行貸出が大きく増加しているほか、一時拡大していたCP・社債の発行スプレッドも縮小するなど、外部資金の調達環境は緩和的な状態が維持されているとの見方を共有した。

3.当面の金融政策運営に関する委員会の検討の概要

以上のような金融経済情勢に関する認識を踏まえ、委員は、当面の金融政策運営に関する議論を行った。

まず、委員は、3月以降、日本銀行が新型コロナウイルス感染症の影響への対応として、導入・拡充してきた措置について、議論を行った。委員は、(1)新型コロナ対応資金繰り支援特別プログラム、(2)円貨・外貨の上限を設けない潤沢な供給、(3)ETFなどの積極的な買入れ、の3つの柱に基づく金融緩和措置は、所期の効果を発揮しているとの認識を共有した。何人かの委員は、企業等の資金繰りには依然ストレスがかかっているが、間接・直接金融の双方で緩和的な資金調達環境が維持されており、企業は必要な資金を低利で確保できていると指摘した。また、何人かの委員は、金融市場をみても、株式のボラティリティはなお高めであるなど神経質な動きも残ってはいるが、全体としてはひと頃に比べ安定を取り戻してきているとの見方を示した。

こうした認識を踏まえて、委員は、金融政策の基本的な運営スタンスについて議論を行った。多くの委員は、3月以降、感染症への影響に対する金融緩和措置を相次いで打ち出してきており、当面は、一連の政策の効果を丁寧かつ慎重に点検していくことが重要であるとの認識を共有した。このうち、一人の委員は新型コロナ対応を企図した日本銀行の政策措置は概ね出揃ったと付け加えた。ある委員は、現在の3つの柱に基づく金融緩和は、様々な情勢変化に対応する余地が大きい柔軟な枠組みであると述べたうえで、特別プログラムの総枠は、第2次補正予算による民間金融機関を通じた無利子・無担保融資の拡充などによって、約110兆円にまで大きく拡大していると指摘した。そのうえで、委員は、引き続き、3つの柱に基づく金融緩和措置により、企業等の資金繰り支援と金融市場の安定維持に努めていくことが重要であるとの認識を共有した。また、多くの委員は、現在の局面において、3つの柱によって緩和的な金融環境を維持し、企業の事業継続や雇用維持に貢献することは、危機への対応としてだけでなく、その後の回復のためにも重要であると指摘した。一人の委員は、感染症の影響の長期化を見据え、国全体で経済成長を確保していく取り組みや必要な支援を継続し、企業や家計の成長期待が大きく損なわれないようにしていくことが肝要であると述べた。この間、ある委員は、予想物価上昇率が2%にアンカーされていないもとでデフレに陥ることは、「物価安定の目標」の実現に向けて重大な障害になりうるため、先を見越した追加緩和が現時点で必要であると述べた。

そのうえで、委員は、当面、新型コロナウイルス感染症の影響を注視し、必要があれば、躊躇なく追加的な金融緩和措置を講じるとの認識で一致した。ある委員は、今後も、更なる政策対応の必要があれば、迅速に対応すべきであり、政府と中央銀行、および中央銀行間の緊密な情報交換や課題・認識の共有など、協力体制を堅持することが重要であると指摘した。別のある委員は、経済政策運営においては、まずはデフレが定着するリスクを最小限に抑制し、その後、経済が年率2%程度の物価上昇が持続可能となるような成長軌道に乗るまで、アベノミクスの3本の矢を継続して働かせることが求められると述べた。一人の委員は、緊急支援から回復推進へと局面が徐々に移行する状況で、現在の金融政策の経済刺激効果を改めて検討すべきと述べたうえで、自然利子率、予想物価上昇率ともに下振れする可能性を踏まえながら、今後の物価動向に細心の注意を払うべきとの見方を示した。

委員は、先行きの金融政策運営上の留意点についても議論を行った。何人かの委員は、感染症の影響が長期化すると見込まれるもとで、今後は流動性の問題から、ソルベンシーの問題に移行する可能性があるとの見方を示した。この点に関連し、複数の委員は、政府が、信用保証や資本性資金の供給といった制度を拡充している点を指摘したうえで、中央銀行の基本的な機能は流動性供給であり、それぞれの役割を明確にしたうえで連携していくことが重要であるとの認識を示した。何人かの委員は、感染症の影響の長期化から、企業倒産が増加し、金融機関の信用コストが増加すれば、金融システム全体や金融仲介機能にも波及するリスクがあるため、丹念に点検していく必要があると指摘した。一人の委員は、感染症により「物価安定の目標」の達成が後ずれし、金融緩和の一層の長期化が想定される中、副作用のさらなる累積にも配意しながら、実体経済の悪化が金融システムの安定性に影響を及ぼすことがないよう、これまで以上に慎重に検討していく必要があると述べた。この間、ある委員は、企業が利益を賃金や設備投資に振り向けずに内部留保として積みあげることがコロナ禍を乗り越えるための有効打として再評価されており、そうした内部留保至上主義が続く場合には、企業の投資スタンスが慎重化し、企業の資金需要に働きかける金融政策の効果は限定的となる可能性があるとの見解を示した。

長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)について、委員は、金融市場調節方針と整合的なイールドカーブが円滑に形成されているとの認識を共有した。

以上の議論を踏まえ、次回金融政策決定会合までの金融市場調節方針について、大方の委員は、以下の方針を維持することが適当であるとの見解を示した。

「短期金利:日本銀行当座預金のうち政策金利残高にマイナス0.1%のマイナス金利を適用する。

長期金利:10年物国債金利がゼロ%程度で推移するよう、上限を設けず必要な金額の長期国債の買入れを行う。その際、金利は、経済・物価情勢等に応じて上下にある程度変動しうるものとする。」

これに対し、ある委員は、今後の物価下押し圧力の強まりへの対応と、企業・家計の金利負担軽減を企図して、長短金利を引き下げることで、金融緩和をより強化することが望ましいとの意見を述べた。

長期国債以外の資産の買入れについて、委員は、(1)ETFおよびJ-REITについて、保有残高が、それぞれ年間約6兆円、年間約900億円に相当するペースで増加するよう買入れを行う。その際、資産価格のプレミアムへの働きかけを適切に行う観点から、市場の状況に応じて、買入れ額は上下に変動しうるものとする。なお、当面は、それぞれ年間約12兆円、年間約1,800億円に相当する残高増加ペースを上限に、積極的な買入れを行うこと、(2)CP等、社債等については、それぞれ約2兆円、約3兆円の残高を維持する。これに加え、2021年3月末までの間、それぞれ7.5兆円の残高を上限に、追加の買入れを行うこと、が適当であるとの認識を共有した。

先行きの金融政策運営の考え方について、委員は、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」を継続する、マネタリーベースについては、消費者物価指数(除く生鮮食品)の前年比上昇率の実績値が安定的に2%を超えるまで、拡大方針を継続する、との考え方を共有した。

また、3月以降、日本銀行が新型コロナウイルス感染症の影響への対応として、導入・拡充してきた措置について、委員は、引き続き、(1)新型コロナ対応資金繰り支援特別プログラム、(2)国債買入れやドルオペなどによる円貨および外貨の上限を設けない潤沢な供給、(3)ETFおよびJ-REITの積極的な買入れにより、企業等の資金繰り支援と金融市場の安定維持に努めていくとの認識で一致した。

当面の政策運営スタンスについて、委員は、新型コロナウイルス感染症の影響を注視し、必要があれば、躊躇なく追加的な金融緩和措置を講じることで一致した。そのうえで、大方の委員は、政策金利については、現在の長短金利の水準、または、それを下回る水準で推移することを想定しているとの方針を共有した。

これに対し、ある委員は、新型感染症の深刻な影響を念頭におくと、財政・金融政策の更なる連携が必要であり、日本銀行としては、政策金利のフォワードガイダンスを、デフレの定着を容認せず、かつ具体的な条件下で行動することを約束する観点から、物価目標と関連付けたものに修正することが適当であるとの意見を述べた。

4.政府からの出席者の発言

財務省の出席者から、以下の趣旨の発言があった。

  • 新型コロナウイルス感染症は内外経済に甚大な影響をもたらしている。今後とも感染拡大の防止の取り組みを進めつつ、社会経済の活動レベルを引き上げていくことになるが、完全な日常を取り戻すまでには時間を要することが想定される。こうした中、引き続き、困難な状況にある国民、事業者の方々をしっかりと支え、雇用・事業・生活を守り抜くため、民間金融機関の無利子・無担保融資の規模の拡充を含む事業規模117兆円の令和2年度第2次補正予算を編成し、先週12日に国会において成立した。政府としては、この補正予算の速やかな執行に努めるとともに、引き続き、経済財政運営に万全を期していく。
  • また、こうした政府の取り組みや、日本銀行が5月に決定した無利子・無担保融資等を行う民間金融機関に対する資金供給制度などの取り組みが、今後も企業の円滑な資金繰りの確保と金融市場の安定維持のために、一層効果的な役割を発揮すると考えている。
  • 日本銀行には、引き続き、企業金融の円滑確保や金融市場の安定維持等に万全を期すことで、金融経済活動の下支えに貢献されることを期待する。

また、内閣府の出席者から、以下の趣旨の発言があった。

  • 2020年1~3月期のGDP2次速報では、前期比年率で-2.2%と2四半期連続のマイナス成長となったが、設備投資は上方改訂された。基礎統計である法人企業統計は、感染症の影響により通常よりも回収率が低いとはいえ、感染症の影響が出始めた1~3月期に、設備投資がプラスとなったことは心強い。4月から5月にかけては、外出自粛などにより経済活動が抑制されたため、経済指標も厳しい数字が出ているが、足もとでは段階的に経済活動が再開されている。緊急事態宣言が発動されていた4月、5月を底に、今後は経済を成長軌道に戻していくことができるよう、しっかりと経済を下支えしながら、感染拡大防止と社会経済活動の両立を図っていく。
  • 6月12日には、令和2年度第2次補正予算が成立した。緊急経済対策と併せ、一連の経済財政政策が直接的に実質GDPを下支え・押し上げる効果は6.4%と見込んでいる。また、企業の資金繰り支援についても、実質無利子・無担保融資、危機対応融資の積み増し、劣後ローンなど資本性資金による支援など140兆円規模に拡充しており、雇用・事業・生活を守り抜いていく万全の枠組みとなっている。引き続き、補正予算のできる限り迅速な執行に努めていく。
  • 政府としては、感染症との長期戦も見据え、状況の変化に応じ、臨機応変に対応することとしており、日本銀行におかれても事態の推移を注視して、引き続き、適切な金融政策運営を行っていただきたい。日本経済を新型コロナウイルス感染症の影響から早期に回復させるべく、引き続き、政府との間で危機感を共有しつつ、緊密な連携を行っていただきたい。

5.採決

1.金融市場調節方針

以上の議論を踏まえ、議長から、委員の多数意見を取りまとめるかたちで、金融市場調節方針について、以下の議案が提出され、採決に付された。

採決の結果、賛成多数で決定された。

金融市場調節方針に関する議案(議長案)

次回金融政策決定会合までの金融市場調節方針を下記のとおりとすること。

  1. 日本銀行当座預金のうち政策金利残高にマイナス0.1%のマイナス金利を適用する。
  2. 10年物国債金利がゼロ%程度で推移するよう、上限を設けず必要な金額の長期国債の買入れを行う。その際、金利は、経済・物価情勢等に応じて上下にある程度変動しうるものとする。

採決の結果

賛成:
黒田委員、雨宮委員、若田部委員、布野委員、櫻井委員、政井委員、鈴木委員、安達委員
反対:
片岡委員

片岡委員は、今後の物価下押し圧力の強まりへの対応と、企業・家計の金利負担軽減を企図して、長短金利を引き下げることで、金融緩和をより強化することが望ましいとして反対した。

2.資産買入れ方針

議長から、委員の見解を取りまとめるかたちで、資産買入れ方針について、以下の議案が提出され、採決に付された。

採決の結果、全員一致で決定された。

資産買入れ方針に関する議案(議長案)

長期国債以外の資産の買入れについて、下記のとおりとすること。

  1. ETFおよびJ-REITについて、保有残高が、それぞれ年間約6兆円、年間約900億円に相当するペースで増加するよう買入れを行う。その際、資産価格のプレミアムへの働きかけを適切に行う観点から、市場の状況に応じて、買入れ額は上下に変動しうるものとする。なお、当面は、それぞれ年間約12兆円、年間約1,800億円に相当する残高増加ペースを上限に、積極的な買入れを行う。
  2. CP等、社債等については、それぞれ約2兆円、約3兆円の残高を維持する。これに加え、2021年3月末までの間、それぞれ7.5兆円の残高を上限に、追加の買入れを行う。

採決の結果

賛成:
黒田委員、雨宮委員、若田部委員、布野委員、櫻井委員、政井委員、鈴木委員、片岡委員、安達委員
反対:
なし

6.対外公表文(「当面の金融政策運営について」)の検討

以上の議論を踏まえ、対外公表文が検討された。この間、片岡委員からは、新型感染症の深刻な影響を念頭におくと、財政・金融政策の更なる連携が必要であり、日本銀行としては、政策金利のフォワードガイダンスを、物価目標と関連付けたものに修正することが適当であるとの意見が表明された。

こうした検討を経て、議長からは、対外公表文(「当面の金融政策運営について」<別紙>)が提案され、採決に付された。採決の結果、全員一致で決定され、会合終了後、直ちに公表することとされた。

7.議事要旨の承認

議事要旨(2020年4月27日開催分、5月22日開催分)が全員一致で承認され、6月19日に公表することとされた。

以上


  • 「10年物国債金利がゼロ%程度で推移するよう、上限を設けず必要な金額の長期国債の買入れを行う。その際、金利は、経済・物価情勢等に応じて上下にある程度変動しうるものとする。」 本文に戻る

別紙

2020年6月16日
日本銀行

当面の金融政策運営について

  1. 日本銀行は、本日、政策委員会・金融政策決定会合において、以下のとおり決定した。
    1. (1)長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)(賛成8反対1)(注1)

      次回金融政策決定会合までの金融市場調節方針は、以下のとおりとする。

      短期金利:
      日本銀行当座預金のうち政策金利残高にマイナス0.1%のマイナス金利を適用する。
      長期金利:
      10年物国債金利がゼロ%程度で推移するよう、上限を設けず必要な金額の長期国債の買入れを行う。その際、金利は、経済・物価情勢等に応じて上下にある程度変動しうるものとする1
    2. (2)資産買入れ方針(全員一致)

      長期国債以外の資産の買入れについては、以下のとおりとする。

      1. [1] ETFおよびJ-REITについて、当面は、それぞれ年間約12兆円、年間約1,800億円に相当する残高増加ペースを上限に、積極的な買入れを行う2
      2. [2] CP等、社債等については、それぞれ約2兆円、約3兆円の残高を維持する。これに加え、2021年3月末までの間、それぞれ7.5兆円の残高を上限に、追加の買入れを行う。
  2. わが国の景気は、内外における新型コロナウイルス感染症の影響により、きわめて厳しい状態にある。海外経済は、感染症の世界的な大流行の影響により、大きく落ち込んだ状態にある。そうしたもとで、輸出や鉱工業生産は大幅に減少している。企業収益や業況感は悪化しており、設備投資は増勢の鈍化が明確となっている。感染症の影響が続くなかで、雇用・所得環境には弱めの動きがみられており、個人消費は飲食・宿泊等のサービスを中心に大幅に減少している。住宅投資は緩やかに減少している。この間、公共投資は緩やかに増加している。わが国の金融環境は、全体として緩和した状態にあるが、企業の資金繰りが悪化するなど企業金融面で緩和度合いが低下している。物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、原油価格の下落の影響などにより、0%程度となっている。予想物価上昇率は、弱めの指標がみられている。
  3. 先行きのわが国経済は、経済活動が徐々に再開していくとみられるが、当面、内外における新型コロナウイルス感染症の影響から、厳しい状態が続くと考えられる。その後、感染症の影響が収束していけば、ペントアップ需要(抑制されていた需要)の顕在化や挽回生産が予想されることに加え、緩和的な金融環境や政府の経済対策にも支えられて、わが国経済は改善していくとみられる。消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、当面、感染症や原油価格下落などの影響を受けてマイナスで推移するとみられる。その後は、景気が改善していくもとで、プラスに転じたあと、徐々に上昇率を高めていくと考えられる。
  4. リスク要因としては、新型コロナウイルス感染症の帰趨や、それが内外経済に与える影響の大きさといった点について、きわめて不確実性が大きい。さらに、感染症の影響が収束するまで、企業や家計の中長期的な成長期待が大きく低下せず、また、金融システムの安定性が維持されるもとで金融仲介機能が円滑に発揮されるかについても注意が必要である。
  5. 日本銀行は、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」を継続する。マネタリーベースについては、消費者物価指数(除く生鮮食品)の前年比上昇率の実績値が安定的に2%を超えるまで、拡大方針を継続する。
    引き続き、(1)新型コロナ対応資金繰り支援特別プログラム、(2)国債買入れやドルオペなどによる円貨および外貨の上限を設けない潤沢な供給、(3)ETFおよびJ-REITの積極的な買入れにより、企業等の資金繰り支援と金融市場の安定維持に努めていく。
    当面、新型コロナウイルス感染症の影響を注視し、必要があれば、躊躇なく追加的な金融緩和措置を講じる。政策金利については、現在の長短金利の水準、または、それを下回る水準で推移することを想定している(注2)

以上


  1. (注1)賛成:黒田委員、雨宮委員、若田部委員、布野委員、櫻井委員、政井委員、鈴木委員、安達委員。反対:片岡委員。片岡委員は、今後の物価下押し圧力の強まりへの対応と、企業・家計の金利負担軽減を企図して、長短金利を引き下げることで、金融緩和をより強化することが望ましいとして反対した。 本文に戻る
  2. (注2)片岡委員は、新型感染症の深刻な影響を念頭におくと、財政・金融政策の更なる連携が必要であり、日本銀行としては、政策金利のフォワードガイダンスを、物価目標と関連付けたものに修正することが適当であるとして反対した。 本文に戻る

  1. 金利が急速に上昇する場合には、迅速かつ適切に国債買入れを実施する。 本文に戻る
  2. ETFおよびJ-REITの原則的な買入れ方針としては、引き続き、保有残高が、それぞれ年間約6兆円、年間約900億円に相当するペースで増加するよう買入れを行い、その際、資産価格のプレミアムへの働きかけを適切に行う観点から、市場の状況に応じて、買入れ額は上下に変動しうるものとする。 本文に戻る