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政策委員会 金融政策決定会合 議事要旨 (2021年1月20、21日開催分)

2021年3月24日
日本銀行

本議事要旨は、日本銀行法第20条第1項に定める「議事の概要を記載した書類」として、2021年3月18、19日開催の政策委員会・金融政策決定会合で承認されたものである。

開催要領

1.開催日時:
2021年1月20日(14:00~15:27)
 
1月21日( 9:00~11:31)
2.場所:
日本銀行本店
3.出席委員:
議長 黒田東彦 (総裁)
  • 雨宮正佳 (副総裁)(注)
  • 若田部昌澄(  副総裁  )
  • 櫻井 眞 (審議委員)
  • 政井貴子 (  審議委員  )
  • 鈴木人司 (  審議委員  )
  • 片岡剛士 (  審議委員  )
  • 安達誠司 (  審議委員  )
  • 中村豊明 (  審議委員  )
  • (注)雨宮委員は、20日の会合のみ出席した。欠席した21日の会合には、雨宮委員から、政策委員会議事規則第5条第2項に基づき、議長を通じて、書面により意見が提出された。
4.政府からの出席者:
財務省 新川 浩嗣 大臣官房総括審議官
内閣府 田和 宏 内閣府審議官(20日)
赤澤 亮正 内閣府副大臣(21日)
(執行部からの報告者)
  • 理事 内田眞一
  • 理事 清水季子
  • 理事 貝塚正彰
  • 企画局長 清水誠一
  • 企画局審議役 福田英司(20日14:38~15:27)
  • 企画局政策企画課長 飯島浩太
  • 金融市場局長 大谷 聡
  • 調査統計局長 亀田制作
  • 調査統計局経済調査課長 川本卓司
  • 国際局長 福本智之
(事務局)
  • 政策委員会室長 中島健至
  • 政策委員会室企画役 本田 尚
  • 企画局企画調整課長 矢野正康(20日14:38~15:27)
  • 企画局企画役 一瀬善孝
  • 企画局企画役 長江真一郎
  • 企画局企画役 門川洋一

1.金融経済情勢等に関する執行部からの報告の概要

1.最近の金融市場調節の運営実績

金融市場調節は、前回会合(12月17、18日)で決定された短期政策金利(-0.1%)および長期金利操作目標(注)に従って、国債買入れを行った。そのもとで、10年物国債金利はゼロ%程度で推移し、日本国債のイールドカーブは金融市場調節方針と整合的な形状となっている。

企業等の資金繰り支援のための措置として、「新型コロナ対応資金繰り支援特別プログラム」のもとで、CP・社債等の買入れや、新型コロナウイルス感染症対応金融支援特別オペを実施した。また、金融市場の安定を維持する観点から、国債買入れやドルオペなどによる、潤沢かつ弾力的な資金供給を行ったほか、ETFおよびJ-REITの積極的な買入れを行った。

2.金融・為替市場動向

短期金融市場では、金利は、翌日物、ターム物とも、総じてマイナス圏で推移している。翌日物金利のうち、無担保コールレートは、-0.03~-0.01%程度で推移しているほか、GCレポレートは、-0.10~-0.07%程度で推移している。ターム物金利をみると、短国レート(3か月物)は、概ね横ばいとなっている。

株価(日経平均株価)は、米国における追加経済対策への期待や、EU・英国間の通商交渉の合意等に伴い、市場センチメントが改善する中、上昇している。長期金利は、長短金利操作のもとで、ゼロ%程度で推移している。国債市場の流動性について、金利の変動が落ち着いている中で、現物の取引高は低めの水準で推移しているが、先物の板の厚さなどは改善傾向を辿っている。為替相場をみると、円の対ドル相場は、米国の長期金利上昇等を背景に、幾分ドル高方向の動きとなっている一方、円の対ユーロ相場は、幾分円高方向の動きとなっている。

3.海外金融経済情勢

海外経済は、一部で新型コロナウイルス感染症の再拡大の影響がみられるが、持ち直している。米国や欧州を中心に、感染症の新規感染者数は増加を続けている。米欧各国で昨年秋に再導入された公衆衛生上の措置は継続されており、一部の国では措置が強化されるもとで、対面型サービス業を中心に、経済は下押しされている。もっとも、これまでのところ、製造業等の対面型サービス業以外の経済活動は維持されているほか、各国で追加的な財政支援策が導入されるなど、企業の資金繰りや家計の雇用所得環境の悪化を介した経済への二次的な波及を抑制する措置も強化されている。こうしたもとで、グローバルにみて、企業の業況感は、製造業を中心にはっきりとした改善を続けており、製造業の生産水準や貿易量は、昨年春頃の感染症拡大前の水準を概ね回復している。先行きの海外経済については、各国・地域の積極的なマクロ経済政策にも支えられて、改善していくとみられる。ただし、当面は、米欧を中心とした感染症の再拡大の影響もあって、改善ペースは緩やかで不均一なものとなる可能性が高い。また、感染症の帰趨や、それが海外経済に与える影響の大きさについて、きわめて不確実性が大きい。

地域別に動きをみると、米国経済は、持ち直している。個人消費は、新規感染者数の増加が続くもとでサービス消費が引き続き落ち込んだ状態にあるものの、政府による家計所得補填政策の効果等もあって、財消費を中心に持ち直している。住宅投資は、住宅ローン金利が既往最低水準で推移するもとで、はっきりと増加している。企業部門をみると、業況感は改善が続いており、生産も持ち直している。こうしたもとで、設備投資は、建設投資はなお減少を続けているが、機械投資を中心に持ち直しつつある。

欧州経済は、感染症の再拡大を受けて、サービス業を中心に下押しされている。個人消費のうち、財消費は堅調を維持しているものの、一部の国で厳しい公衆衛生上の措置が講じられるもとで、サービス消費が下押しされているとみられる。企業部門をみると、業況感は、感染の再拡大からサービス業では悪化しているが、製造業では改善が続いており、輸出や生産も持ち直している。こうしたもとで、設備投資は、企業収益の減少などから、全体としてみれば落ち込んだ状態にあるが、一部に持ち直しの動きもみられる。

中国経済は、回復を続けている。輸出は、増加している。個人消費は、一部で感染症の影響が残るものの、雇用・所得環境の改善などを受けて、増加している。固定資産投資は、積極的なマクロ経済政策の効果発現を受けて、公共関連等が増加しているほか、製造業にも政策効果が波及していることなどから、増勢が続いている。こうしたもとで、生産も増加を続けている。

中国以外の新興国経済は、落ち込んだ状態から持ち直している。NIEs・ASEAN経済は、感染症の影響から内需が落ち込んだ状態が続いている先もみられるが、輸出を中心に持ち直している。インドやブラジル経済は、持ち直しの動きが拡がっている。ロシア経済は、感染症の再拡大を受けて、下押しされている。

海外の金融市場をみると、先進国では、感染症の更なる拡大への警戒感は根強いものの、ワクチン普及への期待が継続するもとで、年初以降、米国の上院選挙の結果を受けた追加経済対策への期待などもあって、株価は米欧で上昇し、長期金利も米国を中心にやや大きめに上昇している。為替市場では、米ドル安が一服する中で、新興国の通貨は、感染症拡大などの懸念から、ラ米を中心に小幅に下落している。原油価格は、サウジアラビアによる自主的な減産強化などを背景に上昇している。

4.国内金融経済情勢

(1)実体経済

わが国の景気は、内外における新型コロナウイルス感染症の影響から引き続き厳しい状態にあるが、基調としては持ち直している。先行きについては、外需の回復や緩和的な金融環境、政府の経済対策の効果にも支えられて、基調としては持ち直しを続けるが、当面は、感染症再拡大の影響から、対面型サービス消費を中心に下押し圧力の強い状態が続くとみられる。

輸出や鉱工業生産は、増加を続けている。実質輸出を財別にみると、自動車関連は、ペントアップ需要に支えられた世界的な自動車販売の回復を反映して、地域的な拡がりを伴いながら、はっきりとした増加を続けている。情報関連は、データセンター向けやパソコン関連、車載向けが堅調に推移するもとで、このところスマートフォンの新商品関連のプラス効果も加わり、増加基調が明確となっている。資本財は、世界的な生産活動や機械投資需要の回復を受けて、増加に転じている。先行きの輸出や生産は、当面、ペントアップ需要の一巡から自動車関連を中心に増勢が鈍化するものの、世界的な設備投資需要の回復やデジタル関連需要の堅調さに支えられて、増加を続けるとみられる。

企業収益や業況感は、大幅に悪化したあと、徐々に改善している。設備投資は、業種間のばらつきを伴いながら、全体としては下げ止まっている。機械投資の一致指標である資本財総供給は、輸出・生産の増加を受けて持ち直している。建設投資の一致指標である建設工事出来高(民間非居住用)は、飲食・宿泊業等による店舗や宿泊施設の建設減少の影響も現れてきていることから、緩やかな減少傾向が続いている。機械投資の先行指標である機械受注は、持ち直しが明確となっている。製造業は、輸出・生産の増加を受けて、はっきりと持ち直しているほか、減少基調を続けてきた非製造業でも、デジタル関連投資などを背景に、足もとでは増加している。一方、建設投資の先行指標である建築着工は、Eコマースの拡大を背景に物流施設等は増加を続けているものの、飲食・宿泊業等による店舗や宿泊施設の建設減少の影響が大きく、全体でも減少傾向が続いている。先行きの設備投資は、当面、対面型サービス業の建設投資の弱さは続くものの、輸出・生産の回復を受けて、製造業の機械投資を中心に、持ち直していくとみられる。

個人消費は、基調としては徐々に持ち直しているが、足もとでは、感染症の再拡大や緊急事態宣言の影響から飲食・宿泊等のサービス消費において下押し圧力が強まっている。財消費については、自動車販売は、増加している。家電販売は、在宅時間の長期化により需要が高まるもとで、底堅さを維持しているが、特別定額給付金による押し上げ効果の一巡もあって、ひと頃に比べて増勢が鈍化してきている。食料品や日用品などは、巣ごもり消費の拡大を背景に底堅さを維持している。サービス消費は、Go Toキャンペーンの後押しもあって、11月までは徐々に持ち直してきた。そのうち、外食は、大幅に減少した昨年春以降は徐々に水準を切り上げてきたが、11月は、感染症の再拡大等の影響から持ち直しが一服した。旅行は、海外旅行が、渡航制限の継続によりほぼ皆減の状態が続く一方、国内旅行は、Go Toトラベルが先行停止された一部地域向けの旅行でキャンセルの動きがみられたものの、全体としてみれば、11月まで持ち直しの動きを続けていた。12月以降の個人消費の動きを、企業からの聞き取り調査や業界統計、人出の動きなどの高頻度データで窺うと、財消費は総じて底堅く推移した一方、対面型サービス消費は大きく落ち込んだ模様である。外食は、営業時間短縮要請や忘年会自粛の動きなどから、12月にはっきりと減少したあと、1月入り後も、緊急事態宣言の再発出に伴い一段と落ち込んでいるとみられる。国内旅行は、Go Toトラベルの一時停止の影響などから、12月以降、明確な減少が続いている模様である。先行きの個人消費は、感染症や緊急事態宣言の再発出の影響などにより対面型サービス消費を中心に下押し圧力が強い状態が続く可能性が高い。その後、緊急事態宣言が解除され、感染症の影響が和らいでいけば、政府による需要刺激策にも支えられて再び持ち直していくとみられる。もっとも、感染症への警戒感が続く間は、改善ペースはかなり緩やかなものにとどまると見込まれる。

雇用・所得環境をみると、感染症の影響から、弱い動きが続いている。雇用面では、労働力調査の就業者数は、対面型サービス業における非正規雇用者の減少を主因に、振れを均せば前年比-1%強の減少が続いている。一人当たりの労働時間は、宿泊・飲食などでは大きめの前年比マイナスとなっているが、全体としては、マイナス幅が縮小傾向にある。労働需給面では、有効求人倍率は、経済活動の持ち直しに伴う求人数の増加を主因に下げ止まっている。労働力率は、昨年4~6月に非労働力化した高齢者や女性などが再び労働市場に参入する動きが続くもとで上昇しており、概ね2019年末頃の水準に復している。完全失業率は、このところ3%程度で推移している。名目賃金は、所定外給与の減少を主因に、下落している。特別給与の前年比も、既往の企業業績の悪化を受けて、はっきりとしたマイナスで推移している。先行きの雇用者所得は、当面、企業業績の悪化にややラグを伴うかたちで、はっきりとした減少を続けると見込まれる。

物価面について、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、感染症や既往の原油価格下落、Go Toトラベル事業の影響などにより、マイナスとなっている。先行きの消費者物価(除く生鮮食品)の前年比も、当面、マイナスで推移するとみられる。

(2)金融環境

わが国の金融環境は、全体として緩和した状態にあるが、企業の資金繰りに厳しさがみられるなど、企業金融面で緩和度合いが低下した状態となっている。

予想物価上昇率は、弱含んでいる。

資金需要面では、感染症の影響を受けた売上げの減少や予備的な需要などによる資金ニーズは、大企業を中心に一服しているが、引き続き高水準となっている。資金供給面では、企業からみた金融機関の貸出態度は、緩和した状態にある。CP・社債市場では、総じて良好な発行環境となっている。企業の資金調達コストは、きわめて低い水準で推移している。こうした中、銀行貸出残高の前年比は、6%程度のプラスとなっている。CP・社債の発行残高の前年比は、ひと頃に比べて増勢は鈍化しているが、10%を超える高めのプラスで推移している。このように、日本銀行・政府の措置と金融機関の取り組みにより、外部資金の調達環境は緩和的な状態が維持されている。企業倒産も低水準で推移している。もっとも、企業の資金繰りは、緩やかに改善しているものの、感染症の影響を受けた売上げ減少などを背景になお厳しさがみられる。

この間、マネタリーベースは、前年比で18%台前半の伸びとなっている。マネーストックの前年比は、9%台前半の伸びとなっている。

2.貸出支援基金の今後の取扱い

1.執行部からの説明

貸出支援基金(成長基盤強化支援、貸出増加支援)は、幅広く利用されている。引き続き、金融機関によるわが国経済の成長基盤強化および貸出増加に向けた取り組みを促す観点から、これらの措置を1年間延長することとしたい。ついては、「貸出支援基金運営基本要領」の一部改正等を行うこととしたい。

2.委員会の検討・採決

採決の結果、上記案件について全員一致で決定された。本件については、その骨子を対外公表文に記載するとともに、その詳細については、会合終了後、執行部より適宜の方法で公表することとされた。

3.金融経済情勢と展望レポートに関する委員会の検討の概要

1.経済情勢

国際金融市場について、委員は、ワクチンに関する前向きな動きや米国の追加経済対策への期待などもあって、センチメントが改善しているとの認識で一致した。もっとも、委員は、金融市場の不安定化につながりかねない要因として、新型コロナウイルス感染症の状況を含めて、引き続き様々な不確実性が意識されているとの見方を共有した。一人の委員は、地政学的リスクの顕在化等により市場が急変するリスクを警戒すべきである一方、ワクチンの普及等により感染症が早期に収束した場合に市場がどのように反応するか注意を要すると指摘した。別の委員は、米国では機関投資家の現金保有比率が低水準となっているなど、投資スタンスの前傾化を示唆する動きもみられると述べた。

海外経済について、委員は、一部で感染症の再拡大の影響がみられるが、持ち直しているとの認識で一致した。何人かの委員は、海外経済の持ち直しは、国・地域や産業により不均一であると指摘した。このうちの一人の委員は、今回の危機は、感染症の帰趨に代表される不確実性と、地域、支出要素、産業ごとの不均一性という2つの性質を有していると述べた。

地域別にみると、米国経済について、委員は、持ち直しているとの認識を共有した。一人の委員は、大規模な財政出動やFRBの金融政策が経済を下支えするもとで、製造業の生産や投資を中心に持ち直しが続いていると指摘した。ある委員は、米国では、若年・中年層の成長期待が衰えていないとの見方を示した。この間、複数の委員は、昨年11月頃から、雇用の改善ペースが鈍化している点には留意が必要であると述べた。

欧州経済について、委員は、感染症の再拡大を受けて、サービス業を中心に下押しされているとの見方を共有した。一人の委員は、EUと英国の通商合意により、不確実性はいったん低下したが、感染力の強い変異種の流行やイタリアの政局不安など経済を下押す可能性のある新たな材料に注意が必要と指摘した。また、別の委員は、感染再拡大により、改善基調の一時的な足踏みは避け難いとの認識を示した。

中国経済について、委員は、回復を続けているとの認識で一致した。複数の委員は、外需だけでなく、内需についても着実に回復していると指摘した。

新興国経済について、委員は、落ち込んだ状態から持ち直しているとの認識を共有した。一人の委員は、感染症の状況により濃淡はあるが、中国経済の回復や堅調なIT需要を背景に、持ち直していると述べた。

わが国の金融環境について、委員は、全体として緩和した状態にあるが、企業の資金繰りに厳しさがみられるなど、企業金融面で緩和度合いが低下した状態となっているとの認識で一致した。

以上のような海外の金融経済情勢とわが国の金融環境を踏まえて、わが国の経済情勢に関する議論が行われた。

わが国の景気について、委員は、内外における新型コロナウイルス感染症の影響から引き続き厳しい状態にあるが、基調としては持ち直しているとの見方を共有した。一人の委員は、感染再拡大により対面型サービス業は非常に厳しい局面にあるが、輸出・生産は増加しており、個人消費も全体としてみれば徐々に持ち直していると述べた。ある委員は、わが国経済は、輸出・生産や機械投資など、製造業が牽引するかたちで持ち直しが続いていると指摘した。複数の委員は、海外経済と同様、わが国経済の持ち直しにも財産業の堅調さとサービス産業の厳しさといった不均一性がみられており、こうした特徴がより鮮明になっていると指摘した。この間、ある委員は、わが国経済は、内外の感染症の再拡大によって、これまでの回復基調にいったん歯止めがかかり、弱含んでいるとの見方を示した。

輸出や生産について、委員は、海外経済の持ち直しを背景に、増加しているとの認識で一致した。ある委員は、輸出や生産は予想以上のペースで回復しているとの見方を示した。設備投資について、委員は、業種間のばらつきを伴いながら、全体としては下げ止まっているとの認識を共有した。一人の委員は、今次局面では、リーマン・ショック時に比べ、わが国の設備投資は早期に下げ止まっているとみられるが、米中などでデジタル化関連を中心に投資意欲が旺盛であることに比べると、力強さに欠けるとの認識を示した。個人消費について、委員は、基調としては徐々に持ち直しているが、足もとでは、飲食・宿泊等のサービス消費において下押し圧力が強まっているとの見方を共有した。ある委員は、位置情報に基づく人出や飲食店の来店状況といったデータからは、対面型サービス消費への下押し圧力が強まっていることが窺えると指摘した。雇用・所得環境に関し、委員は、感染症の影響から、弱い動きが続いているとの認識で一致した。そのうえで、一人の委員は、雇用環境が底打ちから緩やかな回復に向かう動きとして、労働力率が上昇している点を指摘した。

物価面について、委員は、消費者物価の前年比は、感染症や既往の原油価格下落、Go Toトラベル事業の影響などにより、マイナスとなっており、予想物価上昇率は弱含んでいるとの認識を共有した。もっとも、複数の委員は、値下げにより需要喚起を図る行動は広範化していないとの認識を示した。また、別の複数の委員は、予想物価上昇率は弱含んでいるが、下げ止まる指標もみられるなど、物価の基調は維持されていると指摘した。一人の委員は、需給ギャップの悪化に比べ、消費者物価のマイナス幅は小幅にとどまっていると述べた。この間、一人の委員は、景気感応的な財において値下げの動きがみられている点は気掛かりであると述べた。

2.経済・物価情勢の展望

2021年1月の「経済・物価情勢の展望」(展望レポート)の作成にあたり、委員は、経済情勢の先行きの中心的な見通しについて、新型コロナウイルス感染症の影響が徐々に和らいでいくもとで、外需の回復や緩和的な金融環境、政府の経済対策の効果にも支えられて、わが国経済は改善基調を辿るが、感染症への警戒感が続く中で、そのペースは緩やかなものにとどまるとの認識を共有した。委員は、特に、当面は、感染症の再拡大の影響から、対面型サービス消費を中心に下押し圧力の強い状態が続くとの見方で一致した。また、委員は、その後、世界的に感染症の影響が収束していけば、海外経済が着実な成長経路に復していくもとで、わが国経済は更に改善を続けるとの見方を共有した。何人かの委員は、感染再拡大により、わが国経済は、当面、個人消費や雇用に下押し圧力がかかるが、2021年度にかけては、堅調な外需や政府の経済対策が相応に下支えするとの見方を示した。別の委員は、不確実性は高いが、2021年度以降は、ワクチン普及の効果も期待されると指摘した。委員は、先行きはきわめて不確実性が大きいが、今回の見通しについては、感染対策と経済活動の両立が図られるもとで、感染症の影響は、先行き徐々に和らぎ、見通し期間の終盤にかけて感染症の影響が概ね収束していくことを前提とすることが適当であるとの認識を共有した。

海外経済の先行きについて、委員は、積極的なマクロ経済政策にも支えられて、改善を続けるが、感染症への警戒感が続く中では、そのペースは緩やかなものにとどまるとの見方で一致した。また、委員は、製造業の生産活動や貿易は増加基調を辿る一方、感染症の影響を受けやすい対面型サービス業の回復は緩慢なものとなるとの認識で一致した。もっとも、委員は、見通し期間の終盤にかけては、感染症の影響が概ね収束していくもとで、対面型サービス業などの回復も明確になることから、改善が続くとの見解を共有した。一人の委員は、感染症の再拡大を受けたサービス業の落ち込みは、堅調な製造業や大規模な経済対策の効果によりある程度相殺され、世界経済の失速は回避されるとの認識を示した。また、多くの委員は、海外経済を巡っては、米国の新政権のもとでの米中関係等の影響に注意が必要であると指摘した。このうちの一人の委員は、米国の政権交代に加え、本年はドイツの首相交代も予定されており、こうした海外の政治情勢の変化が、気候変動問題に対する取り組みや新興国経済に与える影響について、注視すべきであると述べた。

わが国の輸出について、委員は、財については、ペントアップ需要の一巡から自動車関連を中心に増勢は鈍化するが、世界的な生産活動の回復などを背景に、資本財や情報関連なども含め、幅広く増加していくとの見方で一致した。また、サービス輸出であるインバウンド消費については、わが国での入国制限や海外での渡航制限がかかり続ける間、落ち込んだ状態が続くとみられるが、その後は、これらの制限が徐々に緩和されていくのに伴い、回復していくとの認識を共有した。

個人消費について、委員は、政府の経済対策などにも支えられて、基調としては持ち直しを続けるとみられるが、当面は、感染症の再拡大の影響などから、対面型サービス消費を中心に下押し圧力が強い状態が続くとの見方で一致した。一人の委員は、11都府県を対象とした緊急事態宣言の再発出が、宿泊・飲食といった対面型サービスへ及ぼす影響は、同地域の個人消費がわが国の6割弱を占めることもあり、注視すべきであると述べた。委員は、その後、感染症の影響が徐々に和らぐもとで、雇用者所得の改善にも支えられて、個人消費の増加基調は次第に明確になっていくとの見方を共有した。雇用・所得環境について、委員は、政府の経済対策や緩和的な金融環境などが雇用を下支えするものの、低水準の企業収益や労働需給の緩和を背景に、当面、下押し圧力がかかるとの見方を共有した。一人の委員は、緊急事態宣言の延長などにより、営業時間短縮要請や営業自粛が長引く場合には、雇用環境が悪化し、個人消費にも悪影響が及ぶと指摘した。もっとも、委員は、その後は、内外需要の回復に伴い、雇用・所得環境も改善基調に転じていくとの認識で一致した。

設備投資について、委員は、対面型サービス業の建設投資の減少は続くものの、輸出や生産の増加を受けた製造業の機械投資を中心に、持ち直していくとの認識で一致した。また、その後は、緩和的な金融環境や政府の経済対策、企業収益の改善に支えられて、増加していくとの見方を共有した。一人の委員は、政府の総合経済対策により、デジタル化や脱炭素化への取り組みの方向性が示され、企業経営者の予見性が高まったことで、企業が設備投資を行いやすい環境になったとの見方を示した。この間、公共投資について、委員は、災害復旧・復興関連工事や国土強靱化関連工事などの進捗を反映して着実に増加したあと、高めの水準で推移するとの見解で一致した。また、政府消費について、委員は、追加経済対策における医療提供体制や検査・ワクチン接種体制の整備などを反映して、来年度にかけてはっきりとした増加を続けるとの見方を共有した。

こうした議論を経て、委員は、経済の見通しは、前回と比べると、政府の経済対策の効果などを背景に、2021年度を中心に幾分上振れているとの見方で一致した。

続いて、委員は、物価情勢の先行きの中心的な見通しについて議論を行った。委員は、生鮮食品を除く消費者物価の前年比は、当面、感染症や既往の原油価格下落、Go Toトラベル事業の影響などを受けて、マイナスで推移するとの見方で一致した。委員は、感染症の影響から、経済活動の水準が低い状態が続くもとで、景気感応的な財やサービスの価格が下押しされるほか、既往の原油価格下落も、エネルギー価格を通じて消費者物価を押し下げるとの認識を共有した。委員は、そうしたもとで、中長期的な予想物価上昇率も、引き続き弱含むとの見方で一致した。一人の委員は、来年度の公的年金支給額が4年振りに引き下げられる見込みであることや今年の春闘の結果などが、人々の物価感に与える影響を注視すべきであると指摘した。

その後の物価の展望について、委員は、経済の改善に伴い、物価への下押し圧力が次第に減衰していくことに加え、原油価格下落の影響なども剥落していくことから、消費者物価の前年比はプラスに転じていき、徐々に上昇率を高めていくとの見方で一致した。また、委員は、中長期的な予想物価上昇率も再び高まり、時間はかかるものの、物価は、先行き「物価安定の目標」に向けて徐々に上昇率を高めていくとの見方を共有した。ある委員は、感染症が収束すれば、経済の改善とともに物価上昇に向けた動きは戻ってくるとみられるが、家計や企業に感染症の経験が残るもとで、中長期の予想物価上昇率の改善は小幅にとどまるとの見方を示した。また、別の委員は、先行きの物価について、負の需給ギャップによる押し下げ効果は次第に減衰し、予想物価上昇率も小幅ながら押し上げに寄与するものの、過去の物価の弱さがバックワードな期待形成を通じて下押しに作用するため、きわめて緩やかなペースでしか上昇しないとの見方を示した。

こうした議論を経て、委員は、物価の見通しは、前回と比べると概ね不変であるとの見方で一致した。

次に、委員は、見通しの背景となる金融環境について議論を行った。委員は、先行き、景気の改善ペースが緩やかなもとで、当面、企業等の資金繰りにはストレスがかかり続けるとみられるが、日本銀行・政府の措置や、民間金融機関の取り組みから、緩和的な金融環境が維持され、金融面から実体経済への下押し圧力が強まることは回避されるとの認識を共有した。

更に、委員は、経済・物価の見通しのリスク要因(上振れ・下振れの可能性)について、感染症拡大の影響が収束するまでの間、特に注意が必要な点に関し、議論を行った。

まず、経済のリスク要因について、委員は、先行きの見通しは、感染症の帰趨や、それが内外経済に与える影響の大きさによって変わり得るため、引き続き、不透明感がきわめて強いとの見方で一致した。一人の委員は、足もとの感染再拡大の収束には相応の時間を要するとみられ、感染症が経済・物価に与える影響の不透明感はきわめて強いと指摘した。この委員は、感染症の影響が長期化する中、飲食・宿泊業などでは、設備や雇用面で調整圧力が強まっており、感染症が収束したあとの回復力という点でも注意が必要であると述べた。また、委員は、ワクチンの普及によって、感染症の影響が想定以上に早期に収束する可能性はあるが、その普及ペースや効果には不確実性があるとの認識を共有した。複数の委員は、海外経済について、ワクチンの普及の遅れのほか、感染力の強い変異種の流行などのリスクを注視すべきと指摘した。一人の委員は、ワクチンは新たな不確実性の材料ではあるが、感染症の帰趨を見通すこと自体がきわめて困難であった昨年に比べると、状況は改善したと述べた。ある委員は、今後、わが国におけるワクチンの接種開始が、センチメントの変化を通じて経済活動にどのような影響を及ぼすのか注視していると述べた。この間、別の委員は、感染症の帰趨によっては、緊急事態宣言の延長や対象地域の拡大、公衆衛生上の措置の強化などが実施され、家計・企業のマインド面の悪化とも相俟って、対面型サービスを中心に、経済・物価の低迷が深刻化・長期化するリスクがあると述べた。

また、委員は、感染症の影響が収束するまでの間、成長期待が大きく低下せず、金融仲介機能が円滑に発揮されると考えているが、これらの点には大きな不確実性があるとの見方で一致した。成長期待について、一人の委員は、政策対応により維持されている部分が大きく、財務状況の悪化を受けた企業が未来に向けた投資を先送りする動きが拡がることがないか注視が必要であると強調した。また、金融システムについて、ある委員は、感染症の拡大・長期化により、倒産や廃業が増加する可能性があり、その場合には、信用コストの上昇を通じ、現時点では回避されている金融と実体経済の負の連鎖が生じるリスクがあるとの認識を示した。

以上に加え、一人の委員は、今回の経済ショックでは、国や産業ごとの格差は勿論のこと、家計部門における所得階層間でのセンチメントに大きな違いが生じており、そうした不均衡は、長期的な成長の阻害要因となる可能性があると述べた。また、別の委員は、今般の世界的な感染症の再拡大は、経済全体に対する大きな下押し圧力をもたらすというより、国・地域や産業間の不均一性を強めており、雇用形態や年齢、性別間などでの所得格差の拡大につながるリスクがあると指摘した。

次に、物価のリスク要因について、委員は、経済のリスク要因が顕在化した場合には、物価にも相応の影響が及ぶとの考えを共有した。委員は、物価固有のリスク要因として、感染症の影響が、経済活動の需要・供給両面に及ぶもとで、企業がどのような価格設定行動を取るか、更に、それがマクロ的に物価にどのような影響を及ぼすかについて、不確実性が大きいとの見方で一致した。一人の委員は、今のところ、付加価値の減少につながるような値下げの動きが拡がっている状況にはないが、感染再拡大により、非製造業を中心に物価の低迷が長引くリスクがあると指摘した。別の委員は、感染症により雇用所得環境が悪化し、デフレ圧力が高まる可能性はある一方で、中長期的にみた場合、感染症対応のコストの転嫁、素原材料価格の上昇などにより、インフレ圧力が高まる可能性もあるため、こうした幅広いリスクに目配りすることが望ましいと述べた。また、委員は、原油価格をはじめとする国際商品市況の動向や今後の為替相場の変動が物価に与える影響についても、注意してみていく必要があるとの認識を共有した。

以上の議論を経て、委員は、リスクバランスについては、経済・物価のいずれの見通しについても、感染症の影響を中心に、下振れリスクが大きいとの見方を共有した。

4.金融政策運営に関する委員会の検討の概要

以上のような金融経済情勢に関する認識を踏まえ、委員は、金融政策運営に関する議論を行った。

当面の金融政策の基本的な運営スタンスについて、大方の委員は、(1)新型コロナ対応資金繰り支援特別プログラム、(2)円貨・外貨の上限を設けない潤沢な供給、(3)ETF等の積極的な買入れ、の「3つの柱」に基づく金融緩和措置は所期の効果を発揮しており、引き続き、この「3つの柱」により、企業等の資金繰り支援と金融市場の安定維持に努めていくことが重要であるとの認識を共有した。ある委員は、一連の強力な金融緩和により、緩和的な金融環境はしっかりと維持されていると指摘した。また、複数の委員は、緩和的な金融環境が維持されているもとで、企業の倒産や休廃業件数の急増はみられていないと述べた。このうちの一人の委員は、多くの企業が年度内の資金繰りに目途を付けているとみられ、手元資金を厚めに確保していた企業も多い中、緊急事態宣言の再発出を受けた資金需要の増加は限定的なものにとどまっているとの見方を示した。この間、別の委員は、物価モメンタムが損なわれた中で、昨秋から感染が再拡大している現状を踏まえると、デフレリスクは一段高まったと考えられ、長短金利操作とコミットメントに関して、より緩和姿勢を強めることが適当と述べた。

そのうえで、委員は、当面、新型コロナウイルス感染症の影響を注視し、必要があれば、躊躇なく追加的な金融緩和措置を講じるとの認識で一致した。一人の委員は、現時点では、企業の資金繰りに全体として急激なストレスがかかる可能性は高くないとみられるが、感染症の再拡大により、対面型サービス業を中心に企業財務が悪化するリスクがあり、金融システムの動向も含め、十分な留意が必要と指摘した。ある委員は、感染症の経済への後遺症が残らないか、企業と家計の成長期待、貯蓄率、予想物価上昇率の動向、金融市場と金融システムの安定性に注目すべきであると述べたうえで、現在の危機を長引かせないことが肝心であり、人々のマインド面への影響を重視し、政府と連携・協調して、危機にあるわが国経済を政策面で支え切ることが重要であると指摘した。別の委員は、金融緩和の効果を適切に発揮するためには、これまでと同様、政府と中央銀行、および主要中央銀行間での協力関係を維持し、金融市場や金融システムの安定性を確保することが重要であると述べた。

委員は、「2%の『物価安定の目標』を実現するためのより効果的で持続的な金融緩和の点検」についても議論を行った。議論に先立ち、議長は、執行部に対し、点検作業の主なテーマについて説明するよう指示した。

執行部は、次のとおり説明を行った。(1)「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」が金融環境や経済・物価に及ぼした効果について、点検する。その際、イールドカーブ・コントロールの運営や資産買入れなどの効果に加え、最近の物価変動のメカニズムについても点検を行う。(2)金融緩和が金融仲介機能や金融市場の機能度へ与える影響についても改めて点検する。

委員は、執行部から説明のあった点検作業のテーマは適切なものであるとの認識を共有した。ある委員は、大規模な金融緩和が金融環境や経済・物価情勢に及ぼした効果について、2016年に実施した「総括的検証」を踏まえつつ、イールドカーブ・コントロールの運営や資産買入れなどの施策が所期の効果を挙げているか、点検する必要があるとの見解を示した。一人の委員は、金融緩和が金融仲介機能や金融市場の機能度へ与える副作用についても、その累積的な性質を念頭に置きながら、改めて点検すべきであるとの認識を示した。

そのうえで、委員は、点検では、副作用をできるだけ抑えながら、より効果的な金融緩和を実施するために、費用対効果の面でより効果的な運用ができないか模索する必要があるとの見解を共有した。一人の委員は、経済の回復に想定以上に時間を要することを踏まえ、より持続的で効果的な政策対応を行う観点から、政策効果の整理と点検は重要であると述べた。この委員は、その際、金融緩和の効果として、物価だけでなく、雇用や需給ギャップの改善など経済全体への効果を総合的に評価すべきであると付け加えた。

また、委員は、点検においては、平素の政策運営で持続性を高めると同時に、情勢変化に応じて機動的に対応できるようにするにはどうすればよいのか、考える必要があるとの認識で一致した。一人の委員は、これまで必要な修正を加えながら、現在でも有効に機能している政策の大枠は維持しつつ、イールドカーブ・コントロールやETF等買入れにおいて、より弾力的でメリハリのある運用が重要との見解を述べた。ある委員は、イールドカーブ・コントロールについては、過度なフラット化の回避や、必要な時に躊躇なく金利を引き下げられる工夫がないか、ETF等買入れについては、一段と弾力的な買入れを行い、大きなショックが発生した時には大規模な買入れを実行できるような工夫がないか、検討に値するとの見解を示した。別の委員は、10年物国債金利が、現行の金融市場調節方針と整合的なかたちで、上下にある程度の範囲で変動することは、市場機能を通じて金融機関の運用ニーズを満たすことで金融システムの安定に資すると述べた。この委員は、企業・家計による資金調達の多くは短期金利に連動しており、長期金利の影響を受けるものの割合は高くないことから、長期金利が変動しやすくなった場合でも、経済活動に与える影響は限定的であると付け加えた。

更に、委員は、点検の重点は副作用対策ではなく、副作用に配慮しながら如何に効果的な対応を機動的に行うかにあるとの認識で一致した。複数の委員は、運用面の見直しや副作用への対応が、金融緩和姿勢の後退と誤解されないよう、適切にコミュニケーションすべきであると指摘した。このうちの一人の委員は、2%の「物価安定の目標」の意義を再確認し、緩和的な金融政策のレジームを維持すべきであると強調した。別の委員は、点検と合わせて、2%の「物価安定の目標」の達成に向けた今後の戦略を検討することが必要であると述べた。

以上の点検に関する議論のほか、委員は、金融政策運営に関連する各種の留意点についても意見を述べた。ある委員は、研究開発投資や事業ポートフォリオ改革、デジタル化、脱炭素化への取り組みといった、未来の成長のための企業行動を後押しすることが重要であると述べた。そのうえで、この委員は、デフレには絶対に戻さないという断固たる意志を示すとともに、中長期的な成長力を高める政府の取り組みと緊密に連携して、企業経営者の予見性を高め、企業や家計の成長期待を高めていくような政策運営上の工夫を検討することが重要であると指摘した。これに対し、一人の委員は、金融緩和は、成長力や生産性の上昇をサポートするものだが、金融政策が構造面の課題に直接的に対処することは容易ではないとの見方を示した。この間、ある委員は、日本銀行の金融市場調節の実施回数は高止まりしており、金融機関を含め、実務的な負担が重い状況にあると指摘したうえで、政策の理論的なイノベーションはもとより、政策の実務面でも、デジタル化などによるイノベーションが欠かせないと述べた。

長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)について、委員は、金融市場調節方針と整合的なイールドカーブが円滑に形成されているとの認識を共有した。

以上の議論を踏まえ、次回金融政策決定会合までの金融市場調節方針について、大方の委員は、以下の方針を維持することが適当であるとの見解を示した。

「短期金利:
日本銀行当座預金のうち政策金利残高にマイナス0.1%のマイナス金利を適用する。
   長期金利:
10年物国債金利がゼロ%程度で推移するよう、上限を設けず必要な金額の長期国債の買入れを行う。その際、金利は、経済・物価情勢等に応じて上下にある程度変動しうるものとする。」

これに対し、ある委員は、物価下押し圧力の強まりへの対応と、コロナ後を見据えた企業の前向きな設備投資を後押しする観点から、長短金利を引き下げることで、金融緩和をより強化することが望ましいとの意見を述べた。

長期国債以外の資産の買入れについて、委員は、(1)ETFおよびJ-REITについて、保有残高が、それぞれ年間約6兆円、年間約900億円に相当するペースで増加するよう買入れを行う。その際、資産価格のプレミアムへの働きかけを適切に行う観点から、市場の状況に応じて、買入れ額は上下に変動しうるものとする。なお、当面は、それぞれ年間約12兆円、年間約1,800億円に相当する残高増加ペースを上限に、積極的な買入れを行うこと、(2)CP等、社債等については、それぞれ約2兆円、約3兆円の残高を維持する。これに加え、2021年9月末までの間、CP等、社債等の合計で約15兆円の残高を上限に、追加の買入れを行うこと、が適当であるとの認識を共有した。

先行きの金融政策運営の考え方について、委員は、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」を継続する、マネタリーベースについては、消費者物価指数(除く生鮮食品)の前年比上昇率の実績値が安定的に2%を超えるまで、拡大方針を継続する、との考え方を共有した。

また、昨年3月以降、日本銀行が新型コロナウイルス感染症の影響への対応として、導入・拡充してきた措置について、委員は、引き続き、(1)新型コロナ対応資金繰り支援特別プログラム、(2)国債買入れやドルオペなどによる円貨および外貨の上限を設けない潤沢な供給、(3)ETFおよびJ-REITの積極的な買入れにより、企業等の資金繰り支援と金融市場の安定維持に努めていくとの認識で一致した。

当面の政策運営スタンスについて、委員は、新型コロナウイルス感染症の影響を注視し、必要があれば、躊躇なく追加的な金融緩和措置を講じることで一致した。そのうえで、大方の委員は、政策金利については、現在の長短金利の水準、または、それを下回る水準で推移することを想定しているとの方針を共有した。

これに対し、ある委員は、デフレへの後戻りを回避するためにも、財政・金融政策の更なる連携が必要であり、日本銀行としては、政策金利のフォワードガイダンスを、物価目標と関連付け、具体的な条件下で行動することが約束されている内容に修正することが適当であるとの意見を述べた。

5.政府からの出席者の発言

内閣府の出席者から、以下の趣旨の発言があった。

  • わが国景気は、昨年4~5月を底として、持ち直しの動きが続いている。もっとも、経済は依然として新型コロナウイルス感染症拡大前の水準を下回っており、回復は道半ばである。特に、最近の感染再拡大による下振れリスクには、十分注意が必要である。
  • 政府は、1月、11都府県を対象に緊急事態宣言を発出した。今回は、これまでの経験・知見などを踏まえ、感染リスクの高い場面に対策を徹底し、予備費の活用も含めた支援策を重点的・効果的に講じている。また、先般、閣議決定した政府経済見通しでは、来年度の実質GDP成長率は4.0%程度で、来年度中には感染症拡大前の水準を回復することを見込んでおり、その実現に向けて全力を挙げている。
  • ワクチンについては、2月末以降には接種が開始できるよう、接種体制の整備を全力で進めて参りたい。
  • 日本銀行においては、感染症の経済や金融資本市場への影響を十分注視しつつ、引き続き、政府との緊密な連携をお願いする。

また、財務省の出席者から、以下の趣旨の発言があった。

  • 日本経済は、感染症の影響により依然として厳しい状況にあるが、累次の補正予算の政策効果等により、持ち直しの動きが続いている。先般、緊急事態宣言が発出されたが、今後とも感染状況や経済・国民生活への影響を注意深く見極めつつ、感染症対応に万全を期し、日本経済を成長軌道に戻すことが重要である。
  • 政府は、先月、閣議決定した総合経済対策等を実行するため、令和2年度第3次補正予算および令和3年度予算を国会に提出した。感染拡大防止に加え、デジタル社会やグリーン社会の実現など中長期的な課題を見据えて着実に対応を進めるべく、両予算の1日も早い成立に向けて取り組んでいるところである。
  • 日本銀行には、政府との連携のもと、感染症への対応をはじめ、必要な措置を適切に講じることを期待する。

6.採決

1.金融市場調節方針

以上の議論を踏まえ、議長から、委員の多数意見を取りまとめるかたちで、金融市場調節方針について、以下の議案が提出され、採決に付された。

採決の結果、賛成多数で決定された。

金融市場調節方針に関する議案(議長案)

次回金融政策決定会合までの金融市場調節方針を下記のとおりとすること。

  1. 日本銀行当座預金のうち政策金利残高にマイナス0.1%のマイナス金利を適用する。
  2. 10年物国債金利がゼロ%程度で推移するよう、上限を設けず必要な金額の長期国債の買入れを行う。その際、金利は、経済・物価情勢等に応じて上下にある程度変動しうるものとする。

採決の結果

賛成:
黒田委員、若田部委員、櫻井委員、政井委員、鈴木委員、安達委員、中村委員
反対:
片岡委員
欠席:
雨宮委員

片岡委員は、物価下押し圧力の強まりへの対応と、コロナ後を見据えた企業の前向きな設備投資を後押しする観点から、長短金利を引き下げることで、金融緩和をより強化することが望ましいとして反対した。

2.資産買入れ方針

議長から、委員の見解を取りまとめるかたちで、資産買入れ方針について、以下の議案が提出され、採決に付された。

採決の結果、全員一致で決定された。

資産買入れ方針に関する議案(議長案)

長期国債以外の資産の買入れについて、下記のとおりとすること。

  1. ETFおよびJ-REITについて、保有残高が、それぞれ年間約6兆円、年間約900億円に相当するペースで増加するよう買入れを行う。その際、資産価格のプレミアムへの働きかけを適切に行う観点から、市場の状況に応じて、買入れ額は上下に変動しうるものとする。なお、当面は、それぞれ年間約12兆円、年間約1,800億円に相当する残高増加ペースを上限に、積極的な買入れを行う。
  2. CP等、社債等については、それぞれ約2兆円、約3兆円の残高を維持する。これに加え、2021年9月末までの間、CP等、社債等の合計で約15兆円の残高を上限に、追加の買入れを行う。

採決の結果

賛成:
黒田委員、若田部委員、櫻井委員、政井委員、鈴木委員、片岡委員、安達委員、中村委員
反対:
なし
欠席:
雨宮委員

3.対外公表文(「当面の金融政策運営について」)

以上の議論を踏まえ、対外公表文が検討された。この間、片岡委員からは、デフレへの後戻りを回避するためにも、財政・金融政策の更なる連携が必要であり、日本銀行としては、政策金利のフォワードガイダンスを、物価目標と関連付けたものに修正することが適当であるとの意見が表明された。

こうした検討を経て、議長からは、対外公表文(「当面の金融政策運営について」<別紙>)が提案され、採決に付された。採決の結果、全員一致で決定され、会合終了後、直ちに公表することとされた。

7.「経済・物価情勢の展望」の検討

続いて、「経済・物価情勢の展望」の「基本的見解」の文案が検討され、議長から、委員の見解を取りまとめるかたちで、議案が提出された。採決の結果、全員一致で決定され、会合終了後、直ちに公表することとされた。また、背景説明を含む全文は、1月22日に公表することとされた。

8.議事要旨の承認

議事要旨(2020年12月17、18日開催分)が全員一致で承認され、1月26日に公表することとされた。

以上


  • (注)「10年物国債金利がゼロ%程度で推移するよう、上限を設けず必要な金額の長期国債の買入れを行う。その際、金利は、経済・物価情勢等に応じて上下にある程度変動しうるものとする。」(本文に戻る)

別紙

2021年1月21日
日本銀行

当面の金融政策運営について

  1. 日本銀行は、本日、政策委員会・金融政策決定会合において、以下のとおり決定した。
    1. (1)長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)(賛成7反対1)(注1)
    2. 次回金融政策決定会合までの金融市場調節方針は、以下のとおりとする。
    3. 短期金利:
      日本銀行当座預金のうち政策金利残高にマイナス0.1%のマイナス金利を適用する。
      長期金利:
      10年物国債金利がゼロ%程度で推移するよう、上限を設けず必要な金額の長期国債の買入れを行う。その際、金利は、経済・物価情勢等に応じて上下にある程度変動しうるものとする1
    4. (2)資産買入れ方針(全員一致)
    5. 長期国債以外の資産の買入れについては、以下のとおりとする。
      1. [1]ETFおよびJ-REITについて、当面は、それぞれ年間約12兆円、年間約1,800億円に相当する残高増加ペースを上限に、積極的な買入れを行う2
      2. [2]CP等、社債等については、それぞれ約2兆円、約3兆円の残高を維持する。これに加え、2021年9月末までの間、CP等、社債等の合計で約15兆円の残高を上限に、追加の買入れを行う。
  2. 日本銀行は、「貸出増加を支援するための資金供給」および「成長基盤強化を支援するための資金供給」について、貸付実行期限を1年間延長することを決定した(全員一致)。
  3. 日本銀行は、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」を継続する。
    マネタリーベースについては、消費者物価指数(除く生鮮食品)の前年比上昇率の実績値が安定的に2%を超えるまで、拡大方針を継続する。
    引き続き、(1)新型コロナ対応資金繰り支援特別プログラム、(2)国債買入れやドルオペなどによる円貨および外貨の上限を設けない潤沢な供給、(3)ETFおよびJ-REITの積極的な買入れにより、企業等の資金繰り支援と金融市場の安定維持に努めていく。
    当面、新型コロナウイルス感染症の影響を注視し、必要があれば、躊躇なく追加的な金融緩和措置を講じる。政策金利については、現在の長短金利の水準、または、それを下回る水準で推移することを想定している(注2)

以上


  1. (注1)賛成:黒田委員、若田部委員、櫻井委員、政井委員、鈴木委員、安達委員、中村委員。反対:片岡委員。欠席:雨宮委員。片岡委員は、物価下押し圧力の強まりへの対応と、コロナ後を見据えた企業の前向きな設備投資を後押しする観点から、長短金利を引き下げることで、金融緩和をより強化することが望ましいとして反対した。(本文に戻る
  2. (注2)片岡委員は、デフレへの後戻りを回避するためにも、財政・金融政策の更なる連携が必要であり、日本銀行としては、政策金利のフォワードガイダンスを、物価目標と関連付けたものに修正することが適当であるとして反対した。(本文に戻る

  1. 金利が急速に上昇する場合には、迅速かつ適切に国債買入れを実施する。(本文に戻る
  2. ETFおよびJ-REITの原則的な買入れ方針としては、引き続き、保有残高が、それぞれ年間約6兆円、年間約900億円に相当するペースで増加するよう買入れを行い、その際、資産価格のプレミアムへの働きかけを適切に行う観点から、市場の状況に応じて、買入れ額は上下に変動しうるものとする。(本文に戻る