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政策委員会 金融政策決定会合 議事要旨 (2021年4月26、27日開催分)

2021年6月23日
日本銀行

本議事要旨は、日本銀行法第20条第1項に定める「議事の概要を記載した書類」として、2021年6月17、18日開催の政策委員会・金融政策決定会合で承認されたものである。

開催要領

1.開催日時:
2021年4月26日(14:00~15:54)
 
4月27日(9:00~11:53)
2.場所:
日本銀行本店
3.出席委員:
議長 黒田東彦 (総裁)
  • 雨宮正佳 (副総裁)
  • 若田部昌澄(  副総裁  )
  • 政井貴子 (審議委員)
  • 鈴木人司 (  審議委員  )
  • 片岡剛士 (  審議委員  )
  • 安達誠司 (  審議委員  )
  • 中村豊明 (  審議委員  )
  • 野口 旭 (  審議委員  )
4.政府からの出席者:
財務省 新川 浩嗣 大臣官房総括審議官(26日)
中西 健治  財務副大臣(27日)
内閣府 田和 宏  内閣府審議官(26日)
赤澤 亮正 内閣府副大臣(27日)
(執行部からの報告者)
  • 理事 内田眞一
  • 理事 山田泰弘
  • 理事 清水季子
  • 理事 貝塚正彰
  • 企画局長 清水誠一
  • 企画局政策企画課長 飯島浩太
  • 金融機構局長 正木一博
  • 金融市場局長 大谷 聡
  • 調査統計局長 亀田制作
  • 調査統計局経済調査課長 川本卓司
  • 国際局長 廣島鉄也
(事務局)
  • 政策委員会室長 中島健至
  • 政策委員会室企画役 本田 尚
  • 企画局企画役 一瀬善孝
  • 企画局企画役 長江真一郎
  • 企画局企画役 門川洋一

1.金融経済情勢等に関する執行部からの報告の概要

1.最近の金融市場調節の運営実績

金融市場調節は、前回会合(3月18、19日)で決定された短期政策金利(-0.1%)および長期金利操作目標(注)に従って、国債買入れを行った。そのもとで、10年物国債金利はゼロ%程度で推移し、日本国債のイールドカーブは金融市場調節方針と整合的な形状となっている。

企業等の資金繰り支援と金融市場の安定維持の観点から、「新型コロナ対応資金繰り支援特別プログラム」のもとで、CP・社債等の買入れや、新型コロナウイルス感染症対応金融支援特別オペを実施したほか、国債買入れやドルオペなどにより潤沢かつ弾力的な資金供給を行った。また、それぞれ約12兆円および約1,800億円の年間増加ペースの上限のもとで、ETFおよびJ-REITの買入れを運営した。

2.金融・為替市場動向

短期金融市場では、金利は、翌日物、ターム物とも、総じてマイナス圏で推移している。翌日物金利のうち、無担保コールレートは、-0.04~-0.01%程度で推移しているほか、GCレポレートは、-0.18~-0.06%程度で推移している。ターム物金利をみると、短国レート(3か月物)は、概ね横ばいとなっている。

株価(日経平均株価)は、既往の株価上昇を受けた機関投資家の調整売りがみられているほか、足もとでは、緊急事態宣言の再発出が意識されており、下落している。長期金利は、長短金利操作のもとで、ゼロ%程度で推移している。国債市場の流動性について、現物の取引高は昨年後半と比べて高めの水準で横ばいとなっている。為替相場をみると、円の対ドル相場は、米国の長期金利が幾分低下するもとで、幾分ドル安方向の動きとなっている。円の対ユーロ相場は、概ね横ばいとなっている。

3.海外金融経済情勢

海外経済は、国・地域ごとにばらつきを伴いつつ、総じてみれば回復している。グローバルな企業の業況感は一段と改善している。特に、製造業では、業況感の改善超幅は約10年ぶりの高水準となっており、貿易量や生産水準は、半導体不足の影響等が一部にみられているが、既往ピークを更新して増加を続けている。ただし、引き続き、国・地域ごとの改善ペースのばらつきは大きい。すなわち、米国では、大規模な追加経済対策の実施やワクチン接種の進展を背景に、これまで弱めだった対面型サービス業を含め、加速の兆しが窺われている。一方、欧州に加え、多くの新興国では、製造業の活動は勢いを増しているが、新型コロナウイルス感染症の新規感染者数が高水準で推移するもとで、対面型サービス業の活動は引き続き下押しされている。中でも、インドやブラジル等では、足もと新規感染者数が急増しており、公衆衛生上の措置を再強化する動きもみられている。この間、中国は、春節前後には移動規制の影響等から幾分弱めの指標もみられたが、足もとの経済は回復軌道に復している。先行きの海外経済については、感染症の影響が徐々に和らいでいくもとで、先進国を中心とした積極的なマクロ経済政策にも支えられて、総じてみれば回復を続けるとみられる。ただし、ワクチンの普及ペースの違いなどを背景に、そのペースは各国間で不均一なものとなる可能性が高い。また、感染症の帰趨や、それが世界経済に与える影響について、引き続き、不確実性が大きい。

地域別に動きをみると、米国経済は、回復している。個人消費は、ワクチン接種が進展し新規感染者数も減少するもとで、政府による経済対策の効果もあって、これまで抑制されてきたサービス消費も含め、増勢を強めている。住宅投資は、住宅ローン金利が低水準で推移するもとで、はっきりと増加している。企業部門をみると、業況感が一段と改善しており、生産も増加を続けている。こうしたもとで、設備投資は、機械投資を中心に持ち直している。

欧州経済は、サービス業を中心に下押しされた状態が続いている。個人消費は、新規感染者数が高水準で推移するもと、一部で公衆衛生上の措置が再強化されたこともあって、下押しされた状態が続いている。企業部門をみると、業況感は、サービス業では悪化した状態が続いているが、製造業では改善超幅が拡大しており、輸出や生産も持ち直している。こうしたもとで、設備投資は、落ち込んだ状態から持ち直しつつある。

中国経済は、回復を続けている。輸出は、増加している。個人消費は、一部で感染症の影響が残るものの、雇用・所得環境の改善などを受けて、増加している。固定資産投資は、内外の需要回復や堅調な企業収益を背景に、幅広い業種で増加を続けている。こうしたもとで、生産も増加を続けている。

中国以外の新興国経済は、国・地域間でばらつきはみられるが、全体としては持ち直している。NIEs経済は、輸出が増加するもとで、回復している。ASEAN経済は、感染再拡大等を受けて内需は落ち込んだ状態が続いているものの、輸出の増加に支えられて、総じてみれば緩やかに持ち直している。ロシア経済は、持ち直している。インドやブラジル経済は、感染再拡大の影響等から、内需を中心に持ち直しペースが鈍化している。

海外の金融市場をみると、先進国では、長期金利は、年初以降、景気見通しの改善を主因に急ピッチで上昇してきたが、前回会合以降は、経済指標が概ね市場予想に沿うもとで、米国では幾分低下し、欧州では概ね横ばい圏内での推移となった。米欧の株価は、長期金利の上昇が一服するもとで、良好な企業決算などを背景に上昇した。為替市場では、米ドル高が一服するもとで、多くの新興国の通貨は下げ止まっている。原油価格は、横ばい圏内で推移した。

4.国内金融経済情勢

(1)実体経済

わが国の景気は、内外における新型コロナウイルス感染症の影響から引き続き厳しい状態にあるが、基調としては持ち直している。先行きについては、外需の増加や緩和的な金融環境、政府の経済対策の効果にも支えられて、回復に向かうと予想される。ただし、当面の経済活動の水準は、感染症への警戒感が続くもとで、対面型サービス部門を中心に、感染拡大前に比べて低めで推移するとみられる。

輸出や鉱工業生産は、増加を続けている。実質輸出を財別にみると、自動車関連は、ペントアップ需要の一巡と半導体不足の影響などから、足もとでは増勢が一服している。情報関連は、スマートフォンやパソコン関連、データセンターや車載向けと幅広い需要が堅調に推移するもとで、はっきりと増加している。資本財は、世界的な機械投資の増加に加え、デジタル関連需要の拡大を受けた半導体製造装置の堅調さにも支えられて、増加している。先行きの輸出や生産は、当面、半導体不足の影響などから自動車関連を中心に増勢が鈍化するものの、世界的な設備投資の回復やデジタル関連需要の堅調な拡大に支えられて、資本財や情報関連などに牽引された、しっかりとした増加が続くとみられる。

企業収益や業況感は、対面型サービス業など一部に弱さがみられるものの、全体として改善している。設備投資は、一部業種に弱さがみられるものの、持ち直している。機械投資の一致指標である資本財総供給は、企業収益の改善を背景に、パソコンや基地局・5G関連などのデジタル関連財を中心に持ち直している。建設投資の一致指標である建設工事出来高(民間非居住用)は、オリンピック関連の大型案件が一巡するもとで、飲食・宿泊業等による店舗や宿泊施設の建設減少の影響も加わり、緩やかな減少傾向が続いている。機械投資の先行指標である機械受注は、振れを均してみれば、持ち直している。業種別にみると、製造業は、輸出・生産の増加を受けて、持ち直しているほか、非製造業でも、基地局・5G関連投資に加え、デジタル関連投資や省力化投資にも支えられて、全体としては持ち直している。また、建設投資の先行指標である建築着工は、飲食・宿泊業等による店舗や宿泊施設の減少は続いているものの、Eコマースの拡大を背景とした物流施設等の増加に加え、感染拡大前に決定済みの都市再開発案件の進捗にも支えられて、全体では持ち直している。先行きの設備投資は、企業収益の改善に加え、緩和的な金融環境にも支えられて、増加傾向が明確になっていくと見込まれる。

個人消費は、飲食・宿泊等のサービス消費における下押し圧力の強まりから、持ち直しが一服している。財消費については、自動車販売は、半導体不足による供給制約の影響などから増加が一服している。家電販売は、巣ごもり需要の拡大を背景に、パソコンやテレビ、白物家電を中心に緩やかな増加基調を維持している。食料品や日用品などは、巣ごもり消費の拡大を背景に底堅さを維持している。サービス消費は、緊急事態宣言やGo Toトラベルの一時停止の影響から、本年入り後は大きめの減少となっている。外食は、1~2月にかけて、緊急事態宣言の再発出を受けた営業時間短縮により、昨年夏頃を下回る水準まで一段と落ち込んでいる。旅行は、海外旅行が、渡航制限の継続によりほぼ皆減の状態が続いているほか、国内旅行も、Go Toトラベルの一時停止や2度目の緊急事態宣言の影響から減少しており、1~2月は、昨年夏頃の水準まで落ち込んでいる。足もとにかけての個人消費の動きを、企業からの聞き取り調査や業界統計、人出の動きなどの高頻度データで窺うと、3月は、緊急事態宣言の解除を受けて、サービス消費が低水準ながらも持ち直したことから、全体では前月から幾分増加したとみられる。もっとも、4月入り後は、感染者数が急なペースで増加するもとで、サービス消費は再び減少しているとみられる。外食は、3月は時短要請の緩和を受けて前月から幾分増加したが、4月入り後は、「まん延防止等重点措置」の実施地域における居酒屋等において、再び下押し圧力が強まっているとの声が聞かれている。国内旅行は、3月は、県民割等の効果もあって近距離旅行を中心に前月から僅かに増加したものの、4月以降は、感染再拡大に伴う移動自粛から再び旅行需要は弱まっており、大手旅行会社のゴールデンウィークの予約状況も低調となっている模様である。先行きの個人消費は、感染者数の増加とそれに伴う公衆衛生上の措置の影響から、当面は、対面型サービス消費を中心に、低めの水準で足踏みした状態が続くとみられる。その後は、ワクチン接種が進み、感染症の影響も和らいでいくもとで、再び持ち直していくとみられる。

雇用・所得環境をみると、感染症の影響から、弱い動きが続いている。雇用面では、労働力調査の就業者数をみると、前年比のマイナス傾向は続いているが、経済活動の持ち直しを反映して、水準としては下げ止まっている。一人当たりの労働時間は、緊急事態宣言に伴う時短要請の影響から、宿泊・飲食を中心に前年比のマイナス幅が再び拡大している。労働需給面では、有効求人倍率は、経済活動の持ち直しに伴う求人数の増加を主因に、1倍をやや上回る水準で横ばい圏内の動きとなっている。労働力率は、高齢者や女性などが再び労働市場に参入する中で上昇しており、直近ピークであった2019年末頃の水準を回復している。完全失業率は、このところ3%前後で横ばい圏内の動きが続いている。名目賃金は、特別給与(冬季賞与)と所定外給与の減少を主因に、下落している。所定内給与の前年比は、0%台前半から半ばのプラスで底堅く推移している。特別給与の前年比は、企業業績の悪化がラグを伴って冬季賞与や各種手当に波及するもとで、大幅なマイナスとなっている。先行きの雇用者所得は、経済活動の持ち直しや企業業績の改善を受けて、下げ止まりに向かうとみられる。

物価面について、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、感染症や既往の原油価格下落の影響などにより、小幅のマイナスとなっている。先行きの消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、当面、感染症や携帯電話通信料の引き下げの影響などから、小幅のマイナスで推移するとみられる。予想物価上昇率は、横ばい圏内で推移している。

(2)金融環境

わが国の金融環境は、企業の資金繰りに厳しさがみられるものの、全体として緩和した状態にある。

資金需要面では、感染症の影響を受けた売上げの減少や予備的な需要などによる資金ニーズは、大企業を中心に一服しているが、引き続き高水準となっている。資金供給面では、企業からみた金融機関の貸出態度は、緩和した状態にある。CP・社債市場では、総じて良好な発行環境となっている。企業の資金調達コストは、きわめて低い水準で推移している。こうした中、銀行貸出残高の前年比は、6%程度のプラスとなっている。CP・社債計の発行残高の前年比は、高めのプラスで推移しているが、前年の高い伸びの裏が出ることもあって、ひと頃に比べて増勢は鈍化している。日本銀行・政府の措置と金融機関の取り組みにより、外部資金の調達環境は緩和的な状態が維持されている。企業倒産も低水準で推移している。もっとも、企業の資金繰りは、緩やかに改善しているものの、感染症の影響を受けた売上げ減少などを背景になお厳しさがみられる。

この間、マネタリーベースは、前年比で2割程度のプラスとなっている。マネーストックの前年比は、9%台半ばの伸びとなっている。

(3)金融システム

わが国の金融システムは、全体として安定性を維持している。

大手行の収益は、前年に比べて減少しているものの、感染症の影響を踏まえて修正した年度計画対比では、順調な進捗となっている。信用コストは、前年に比べて大幅に増加しているものの、直近10~12月期中の増加は小幅にとどまった。自己資本比率は、概ね横ばいとなっている。地域銀行の収益も、前年に比べて減少しているものの、感染症の影響を踏まえて修正した年度計画対比では、順調な進捗となっている。信用コストは、前年対比で増加しているものの、修正年度計画の範囲内にとどまっている。自己資本比率は幾分上昇している。

金融循環面では、金融システムレポートで示しているヒートマップを構成する全14指標のうち、経済規模との対比でみたマクロ的な与信量等の4指標について、トレンドから上方に乖離した状態となっている。これらは、主として、感染症の影響による企業等の運転資金需要の高まりに金融機関が応えた結果として生じているものであり、金融活動の過熱感を表すものとはみられない。今後、企業収益の回復とともに債務返済が進み、金融機関与信が実体経済活動に見合った水準に復していくか、注視する必要がある。

2.金融経済情勢と展望レポートに関する委員会の検討の概要

1.経済情勢

国際金融市場について、委員は、ワクチン接種の進展や一部先進国での追加経済対策などを背景とした世界的な景気回復期待の高まりから、市場センチメントは改善傾向が続いているとの認識で一致した。もっとも、委員は、感染再拡大への懸念もあり、市場では、引き続き様々な不確実性が意識されているとの見方を共有した。複数の委員は、感染症の影響が収束していく過程では、市場の一時的な過熱や調整が生じ得るため、注視していく必要があると指摘した。一人の委員は、各国・地域における経済の回復ペースなどの違いが、結果として資金フローの変化を通じて金融市場を不安定化させる可能性がある点には留意すべきであると述べた。もう一人の委員は、米国における特別買収目的会社のリスク顕現化や、ファミリーオフィスと呼ばれる投資主体の破綻について、類似の事例が続くことがないか注意が必要であるとの見方を示した。

海外経済について、委員は、国・地域ごとにばらつきを伴いつつ、総じてみれば回復しているとの認識で一致した。何人かの委員は、世界経済は回復基調にあるが、ワクチン接種の進捗度合いや政策対応の相違を映じて、国や地域によってそのペースに違いがあるほか、感染症の影響は、業種や経済主体の属性ごとにも一様ではないとの見方を示した。このうちの一人の委員は、回復には格差や不均一性があり、いわゆる「K字回復」の様相が強いと述べた。

地域別にみると、米国経済について、委員は、回復しているとの認識を共有した。何人かの委員は、ワクチン接種が進展し、感染症の動向が落ち着き始めたもとで、政府による大規模な経済対策の効果もあって回復していると指摘した。一人の委員は、ワクチンの普及により、抑制されてきたサービス消費が、このところ加速度的に回復していると述べた。

欧州経済について、委員は、サービス業を中心に下押しされた状態が続いているとの見方を共有した。何人かの委員は、感染者数が高止まりもしくは拡大する中で、回復が相対的に遅れていると指摘した。一人の委員は、若年層を中心に高い失業率となっており、こうした状況が続けば「傷跡効果(scarring effect)」が生じるリスクがあるとの見方を示した。

中国経済について、委員は、回復を続けているとの認識で一致した。複数の委員は、外需だけでなく、内需についても着実に回復していると述べた。一人の委員は、中国経済は、裾野を拡げつつ回復を続けており高成長が見込まれるが、中国と米欧との対立は、中国経済にとって下振れリスクであるとの見方を示した。

新興国経済について、委員は、国・地域間でばらつきはみられるが、全体としては持ち直しているとの認識を共有した。一人の委員は、幾つかの国が感染症の再拡大に直面しているほか、財政政策の対応余力が低下している国もあり、脆弱性が高まっていると指摘した。

わが国の金融環境について、委員は、企業の資金繰りに厳しさがみられるものの、全体として緩和した状態にあるとの認識で一致した。

以上のような海外の金融経済情勢とわが国の金融環境を踏まえて、わが国の経済情勢に関する議論が行われた。

わが国の景気について、委員は、内外における新型コロナウイルス感染症の影響から引き続き厳しい状態にあるが、基調としては持ち直しているとの見方を共有した。一人の委員は、わが国経済は、感染症の影響が対面型サービス消費を下押ししているが、製造業を中心に持ち直していると述べた。ある委員は、対面型サービス業は引き続き厳しい状況に直面している一方、製造業やその他非製造業では改善が続いており、経済が二極化しているとの見解を示した。

輸出や生産について、委員は、増加を続けているとの認識で一致した。ある委員は、半導体不足など供給制約の影響が一部にみられるものの、海外経済の回復を背景に、輸出・生産の増加は続いているとの見方を示した。別のある委員は、輸出については、自動車関連はペントアップ需要の一巡や半導体不足の影響を受けているが、世界的な設備投資需要の回復やデジタル関連需要の拡大を背景に、資本財や情報関連が牽引するかたちで引き続き増加していると指摘した。

設備投資について、委員は、一部業種に弱さがみられるものの、持ち直しているとの認識を共有した。一人の委員は、製造業や対面型サービス以外の非製造業では、情報関連やデジタル化・環境対応関連などの分野を中心に、投資スタンスは前向きになっており、企業収益の改善を背景に、支出の回復が明確化してきているとの見解を示した。

個人消費について、委員は、飲食・宿泊等のサービス消費における下押し圧力の強まりから、持ち直しが一服しているとの見方を共有した。ある委員は、昨年度の白物家電の国内出荷額が過去最高となるなど、財消費はしっかりしている一方、サービス消費は抑制的な状況が続いており、全体としては足踏みしているとの見方を示した。更に、この委員は、選択的サービス支出と相関の高い人出を示す高頻度データをみても、感染症拡大前の水準から大きく落ち込んだ状況が続いており、足もとでも、抑制的な消費行動が継続しているとの認識を述べた。

雇用・所得環境に関し、委員は、感染症の影響から、弱い動きが続いているとの認識で一致した。一人の委員は、今春の賃金改定交渉では、現状、定期昇給を加味した賃上げ率は小幅の縮小にとどまっているが、感染症の影響を強く受けている業種が多い中小企業の交渉はこれから本格化するため、引き続き注視していきたいと述べた。

物価面について、委員は、消費者物価の前年比は、感染症や既往の原油価格下落の影響などにより、小幅のマイナスとなっているものの、予想物価上昇率は横ばい圏内で推移しているとの認識を共有した。何人かの委員は、値下げにより需要喚起を図る動きが広範化している様子は引き続き窺われていないとの認識を示した。そのうちの一人の委員は、経済の落ち込みに比べ、消費者物価のマイナス幅は小幅にとどまっており、予想物価上昇率については、原油価格の上昇や実際の物価の底堅さも背景に、弱含みの局面は脱したとの見解を述べた。

2.経済・物価情勢の展望

2021年4月の「経済・物価情勢の展望」(展望レポート)の作成にあたり、委員は、経済情勢の先行きの中心的な見通しについて、当面の経済活動の水準は、対面型サービス部門を中心に、新型コロナウイルス感染症の拡大前に比べて低めで推移するものの、感染症の影響が徐々に和らいでいくもとで、外需の増加や緩和的な金融環境、政府の経済対策の効果にも支えられて、回復していくとの認識を共有した。また、委員は、その後、感染症の影響が収束していけば、所得から支出への前向きの循環メカニズムが強まるもとで、わが国経済は更に成長を続けるとの見方を共有した。

何人かの委員は、当面、対面型サービスを中心に感染症に左右される状況は続くものの、感染症の影響が徐々に和らいでいくもとで、わが国経済は回復していくとの見方を示した。このうちの複数の委員は、企業部門において、所得から支出への前向きの循環メカニズムが徐々に働き始めており、感染症の影響が収束していけば、経済全体での好循環が強まり、わが国経済は更に成長を続けるとみていると述べた。一人の委員は、日本経済を早期に成長軌道に戻すためには、消費者マインドの悪化や金融市場の変調を食い止めつつ、ワクチンの接種を加速していくことが重要であると指摘した。委員は、今回の見通しについては、感染対策と経済活動の両立が図られるもとで、感染症の影響は、先行き徐々に和らぎ、見通し期間の中盤に概ね収束していくことを前提とすることが適当であるとの認識を共有した。

海外経済の先行きについて、委員は、国・地域ごとにばらつきを伴いつつも、先進国を中心とした積極的なマクロ経済政策にも支えられて、成長を続けるとの見方で一致した。そのうえで、委員は、世界経済を巡るリスクについて指摘した。何人かの委員は、米国の長期金利上昇が加速した場合に、新興国から資本が流出するリスクには警戒が必要であるとの見解を示した。また、何人かの委員は、米中対立が世界経済や金融市場に与える影響について注視していると述べた。一人の委員は、ワクチン接種が拡がっているものの、集団免疫を獲得するまでに要する期間には不確実性があるとの認識を示し、政策の時期尚早な打ち切りや、政治・地政学的なリスクも相応にあるとの見方を述べた。

わが国の輸出について、委員は、財については、当面、自動車関連を中心に増勢は鈍化するものの、世界的な設備投資の回復やデジタル関連需要の拡大に支えられて、しっかりとした増加を続けるとの見方で一致した。また、サービス輸出であるインバウンド消費については、入国・渡航制限が続く間は、落ち込んだ状態が続くものの、その後は、回復していくとの認識を共有した。何人かの委員は、海外経済の回復を背景に、わが国経済は、外需中心の回復経路を辿るとの見方を示した。

設備投資について、委員は、対面型サービス部門の建設投資の弱さは続くものの、企業収益が改善するもとで、緩和的な金融環境や政府の経済対策にも支えられて、機械投資やデジタル関連投資を中心に、増加傾向が明確になっていくとの認識で一致した。一人の委員は、企業収益の改善を背景に、設備投資は機械投資やデジタル関連投資を中心に増加することが見込まれるとの見解を述べた。

個人消費について、委員は、当面、感染症の影響から、対面型サービスを中心に低めの水準で足踏みした状態が続くが、その後は、感染症の影響が徐々に和らいでいくもとで、政府の経済対策などにも支えられて、再び持ち直していくとの見方で一致した。更に、委員は、その先、感染症の影響が収束していけば、雇用者所得が改善するもとで、対面型サービス消費を含め、個人消費の増加基調が明確になっていくとの見方を共有した。一人の委員は、ワクチン普及後に感染症がある程度収束すれば、これまで抑制されてきた消費需要の顕在化等が、日本経済の持続的な回復に繋がる可能性があるとの見方を示した。ある委員は、米国などの状況をみると、思ったよりも早いペースで強制貯蓄の取り崩しが進む可能性があると述べた。また、別の委員は、家計の現・預金残高は、この1年間で約50兆円増加しており、感染症の影響が収束すれば、サービス消費でも大きなペントアップ需要が生じるとみられるとの見方を示した。この間、一人の委員は、自発的な貯蓄が長期化する可能性には留意が必要であると述べた。

雇用・所得環境について、委員は、企業収益の改善を受けて下げ止まったあと、内外需要の回復にラグを伴って、緩やかに増加していくとの見方を共有した。一人の委員は、就業者数の増加や、正規雇用への転換が賃金や消費にどのように反映されていくか注目されると述べた。一方、別の委員は、今後、企業倒産が増加すれば、雇用や所得環境の悪化に繋がる可能性があることに注意が必要であると指摘した。

この間、公共投資について、委員は、災害復旧・復興関連工事や国土強靱化関連工事などの進捗を反映して着実に増加したあと、高めの水準で推移するとの見解で一致した。また、政府消費について、委員は、医療提供体制や検査・ワクチン接種体制の整備などを反映して、本年度にはっきりと増加するが、その後は、水準を切り下げるとの見方を共有した。

こうした議論を経て、委員は、経済の見通しは、前回と比べると、内外需要の強まりを背景に2022年度を中心に上振れているとの見方で一致した。

続いて、委員は、物価情勢の先行きの中心的な見通しについて議論を行った。委員は、生鮮食品を除く消費者物価の前年比は、当面、感染症や携帯電話通信料の引き下げの影響などを受けて、小幅のマイナスで推移するとの見方で一致した。もっとも、委員は、携帯電話通信料の引き下げは一時的な下押し要因であり、これを除けば、消費者物価の前年比は、底堅く推移するとの認識で一致した。また、委員は、感染症のもとでの需要の弱さが影響するものの、需要減少の一因が感染症への警戒感であることや、感染対策に伴う供給制約やコスト増などから、企業が値下げにより需要喚起を図る行動は、今後も広範化しないとの見方を共有した。加えて、委員は、昨年秋以降の原油価格の持ち直しを背景に、エネルギー価格の前年比はプラスに転じるとの認識で一致した。更に、委員は、そうしたもとで、中長期的な予想物価上昇率は、横ばい圏内で推移するとの見方を共有した。複数の委員は、携帯電話通信料の引き下げやGo Toトラベルの影響、消費者物価指数の基準改定の影響など、当面は物価の実力がみえにくい状況が続くため、ミクロ情報などを含めて、丹念に企業の価格設定行動を把握していくことが重要であると述べた。

その後の物価の展望について、委員は、経済の改善が続くことや、携帯電話通信料の引き下げの影響が剥落することなどから、消費者物価の前年比は、プラスに転じ、徐々に上昇率を高めていくとの見方で一致した。また、委員は、中長期的な予想物価上昇率も、再び高まり、時間はかかるものの、物価は、先行き「物価安定の目標」に向けて徐々に上昇率を高めていくとの見方を共有した。複数の委員は、予想物価上昇率に関する過去のデフレの経験に基づく根深い適合的期待形成の影響もあって、物価上昇のペースは力強さに欠けるとみられると述べた。ある委員は、早期の物価上昇に向けた種火を残しておくためには、現下のような厳しい経済環境にあっても賃金の安定的な上昇が確保されるとの経験を通じて、賃金上昇期待が維持されることが必要であるとの考えを示した。

こうした議論を経て、委員は、物価の見通しは、前回と比べると2021年度は携帯電話通信料の引き下げの影響により下振れているものの、2022年度は概ね不変であるとの見方で一致した。

次に、委員は、見通しの背景となる金融環境について議論を行った。委員は、先行き、日本銀行による強力な金融緩和の継続や政府の措置、民間金融機関の取り組みから、緩和的な金融環境が維持され、金融面から実体経済への下押し圧力が強まることは回避されるとの認識を共有した。一人の委員は、倒産・廃業動向を含む企業金融の環境は総じて安定しており、感染症の影響を強く受ける業種も限定的になっているとの認識を示した。ある委員は、企業の資金繰りは、業況の改善などから総じてみれば厳しさが和らいでいるものの、対面型サービス業では厳しい状況が続いており、ソルベンシーリスクが増大する可能性を含めて、引き続き状況を注視する必要があると述べた。別の委員は、民間金融機関を通じた実質無利子・無担保融資について、一部で元本返済が始まるもとで、倒産件数が上昇しないか留意が必要であるとの見解を示した。

また、委員は、金融システムの動向について議論を行った。委員は、金融システムは、全体として安定性を維持しているとの見方で一致した。もっとも、委員は、より長めの視点では、金融機関収益の下押しが長期化すると、金融仲介が停滞方向に向かうリスクがある一方、こうした環境のもとでは、利回り追求行動などに起因して、金融システム面の脆弱性が高まる可能性もあるとの認識を共有した。そのうえで、委員は、現時点では、金融機関が充実した資本基盤を備えていることなどから、これらのリスクは大きくないと判断しているが、先行きの動向を注視していく必要があるとの見方を共有した。一人の委員は、「物価の安定」の実現には、「金融システムの安定」が前提となるが、金融システムは全体として安定性を維持しており、金融仲介機能は円滑に発揮されているとの見方を示した。また、この委員は、今回から金融機構局の報告を受けることになったことに関して、金融政策決定会合で金融システムの動向を定点観測する意義は大きいと述べた。この間、別の委員は、「金融システムの安定」と「物価の安定」の関係については、物価の下落により債務の実質的な負担が増加し、金融システムに悪影響を与えるという方向の関係にも留意すべきであると指摘した。

更に、委員は、経済・物価の見通しのリスク要因(上振れ・下振れの可能性)について、感染症拡大の影響が収束するまでの間、特に注意が必要な点に関し、議論を行った。

まず、経済のリスク要因について、委員は、先行きの見通しは、感染症の帰趨やそれが内外経済に与える影響によって変わり得るため、不透明感が強いとの見方で一致した。複数の委員は、公衆衛生措置が強化される中で、感染症の帰趨と、経済・物価の下振れリスクには注意する必要があると述べた。別の委員は、感染拡大の波が今後も断続的に到来する場合には、娯楽、外食、旅行等の対面型サービス業の回復が遅れる可能性や、消費マインドの低下に伴い家計貯蓄率が高止まりするリスクなどが懸念されるとの見方を示した。

また、委員は、感染症の影響は、ワクチンの普及などによって収束していくと想定しているが、その普及のペースや効果には不確実性があり、その結果、経済活動への下押し圧力が強まるリスクがあるとの認識を共有した。一人の委員は、今後のワクチン接種の動向が重要であり、接種の進捗に時間がかかると、感染症の影響が長引き、経済・物価への下押し圧力が長期化する惧れがあるとの認識を示した。ある委員は、海外でワクチン接種が進む中、わが国での接種が順調に進まなければ、経済成長の面でも取り残される懸念があると述べた。一方で、委員は、感染症の影響への対応などの観点から実施される、先進国を中心とした経済対策が、内外経済の回復ペースを想定以上に高める可能性もあるとの見方で一致した。加えて、一人の委員は、感染症が収束した後に、消費のペントアップ需要の顕現化などから、経済が大きく押し上げられる可能性もあると述べた。一人の委員は、各国の積極的なマクロ経済政策により世界経済全体が予想以上に上振れる可能性や、消費の反動増が大きくなる可能性を踏まえると、見通し期間の中盤以降は経済のリスクはバランスしていくと考えられると述べた。

また、委員は、感染症の影響が収束するまでの間、成長期待が大きく低下せず、金融仲介機能が円滑に発揮されると考えているが、これらの点には大きな不確実性があるとの見方で一致した。委員は、このうち、成長期待について更に議論を行った。一人の委員は、3月短観における2021年度の設備投資計画は、リーマン・ショック期との対比で言えば、政府や日本銀行の政策効果もあり、企業の前向きなスタンスや成長期待が維持されている様子がみられるとの認識を示した。別のある委員は、アンケート調査における企業の経済成長率見通しは、上場企業では昨年調査から上昇したが、中小企業では僅かに低下しており、格差がみられると指摘した。

以上に加え、一人の委員は、業績回復を受けて企業の成長や変革に向けた取り組みが先送りされると、中長期の経済成長や物価安定の実現に悪影響が生じかねないとの見方を示した。また、ある委員は、漠然とした将来不安や、財政収支の悪化を背景とした増税懸念が、消費マインドの改善を抑制する懸念があると述べた。

次に、物価のリスク要因について、委員は、経済のリスク要因が顕在化した場合には、物価にも相応の影響が及ぶとの認識を共有した。そのうえで、委員は、物価固有のリスク要因について、議論を行った。委員は、中心的な見通しでは、企業が値下げにより需要喚起を図る行動は、今後も広範化しないと考えているが、その点も含め、企業の価格設定行動には不確実性があるとの見方で一致した。一人の委員は、今のところ、付加価値の減少に繋がる値下げの動きが拡がっている状況にはないが、そうした動きが拡がるリスクに注意が必要であるとの見方を示した。ある委員は、コロナ禍での企業や家計の行動変容が、物価観を変える可能性に注目していると指摘し、感染抑制のためのコスト負担、高付加価値サービスの提供のための販売価格引き上げ、サプライチェーンの再構築や気候変動リスクへの対応のためのコスト上昇に着目していると述べた。以上に加えて、委員は、今後の為替相場、国際商品市況、輸入物価の動向およびその国内価格への影響は、上振れ・下振れ双方の要因であり、注意してみていく必要があるとの見解を共有した。

こうした議論を経て、委員は、リスクバランスについて、経済の見通しについては、感染症の影響を中心に、当面は下振れリスクの方が大きいが、見通し期間の中盤以降は概ね上下にバランスしているとの認識を共有した。また、物価の見通しについては、下振れリスクの方が大きいとの見方で一致した。

3.金融政策運営に関する委員会の検討の概要

以上のような金融経済情勢に関する認識を踏まえ、委員は、金融政策運営に関する議論を行った。

当面の金融政策の基本的な運営スタンスについて、委員は、(1)新型コロナ対応資金繰り支援特別プログラム、(2)円貨・外貨の上限を設けない潤沢な供給、(3)ETF・J-REITの買入れ、の「3つの柱」に基づく金融緩和措置は所期の効果を発揮しているとの見解で一致した。委員は、企業の資金繰りにはなお厳しさがみられており、金融市場では様々な不確実性が意識されているため、引き続き、この「3つの柱」により、企業等の資金繰り支援と金融市場の安定維持に努めていくことが重要であるとの認識を共有した。ある委員は、3回目の緊急事態宣言が発出されるもとで、対面型サービスセクターを中心に改めて下押し圧力がかかっており、当面の金融政策運営については、こうした情勢を総合的に勘案し、しっかりと感染症の影響への対応に集中することが適当であるとの認識を示した。もう一人の委員は、当面は、感染症の収束、更には経済の正常化に向けて、金融・財政政策の両面から、粘り強く支援を継続する必要があるとの見方を示した。別の委員は、感染症の影響が収束するまでは業種などによってばらつきのある回復が続くとみられるが、異なる部門間の資源の移動を支えるためにも、経済全体に働きかけるマクロ経済政策は重要であると述べた。

そのうえで、委員は、当面、新型コロナウイルス感染症の影響を注視し、必要があれば、躊躇なく追加的な金融緩和措置を講じるとの認識で一致した。一人の委員は、本年9月末に期限を迎える「新型コロナ対応資金繰り支援特別プログラム」の延長については、企業金融の環境変化などを踏まえつつ、議論を進めていく必要があるとの考えを示した。別のある委員は、感染症収束まではワクチン接種が鍵となるが、マクロ経済政策の支えも依然として重要であると述べた。

委員は、3月に決定した「より効果的で持続的な金融緩和」に対する市場の受け止め方についても議論を行った。ある委員は、点検を踏まえた政策対応に対する市場の反応は総じて落ち着いたものであったほか、金融機関の受け止め方も概ね想定していた範囲内のものであったとの認識を示した。別の委員は、市場動向をみると、政策の持続性・機動性を高めるという意図は誤解なく浸透したと考えていると述べた。

このほか、委員は、金融政策運営に関連する各種の留意点についても意見を述べた。一人の委員は、感染症収束後に向けて、「物価安定の目標」に向けた道筋について引き続きしっかりと考えなければならないと述べるとともに、現在の政策フレームワークのもとでは、財政政策と金融政策の緊密な連携・協調が、物価目標の実現に寄与するとの見方を示した。もう一人の委員は、現在、各国の大規模な財政対応が、マクロ経済に大きな影響を与えつつあり、中長期的には、安定的な成長の実現に向けて金融・財政政策をどのように調整していくか、政府とより緊密に連携しつつ考えていく必要があるとの見解を示した。この間、一人の委員は、「物価安定の目標」の達成は容易ではないからこそ、金融政策運営においては、先行きの景気回復という追い風をうまく捉えて、金融緩和を強めることで、目標達成につなげることが必要との認識を示した。そのほか、複数の委員は、国民各層に金融政策への理解を促進する効果的なコミュニケーションがきわめて重要であると述べた。また、ある委員は、感染症を契機に経済のデジタル化が更に加速し、企業の保有資産について、有形資産から無形資産へのシフトが進むことで、金融経済や金融政策の効果にどのような影響がもたらされるか、更に理解を深めていく必要があると述べた。別の委員は、気候変動は、経済や金融システムにも影響する重要な要素であり、引き続き行内連携を強化し、中央銀行のマンデートに即して、必要な対応を検討することが重要であると指摘した。

長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)について、委員は、金融市場調節方針と整合的なイールドカーブが円滑に形成されているとの認識を共有した。

以上の議論を踏まえ、次回金融政策決定会合までの金融市場調節方針について、大方の委員は、以下の方針を維持することが適当であるとの見解を示した。

「短期金利:日本銀行当座預金のうち政策金利残高にマイナス0.1%のマイナス金利を適用する。

長期金利:10年物国債金利がゼロ%程度で推移するよう、上限を設けず必要な金額の長期国債の買入れを行う。」

これに対し、ある委員は、物価下押し圧力の強まりへの対応と、コロナ後を見据えた企業の前向きな設備投資を後押しする観点から、長短金利を引き下げることで、金融緩和をより強化することが望ましいとの意見を述べた。

長期国債以外の資産の買入れについて、委員は、(1)ETFおよびJ-REITについて、それぞれ年間約12兆円、年間約1,800億円に相当する残高増加ペースを上限に、必要に応じて、買入れを行うこと、(2)CP等、社債等については、2021年9月末までの間、合計で約20兆円の残高を上限に、買入れを行うこと、が適当であるとの認識を共有した。

先行きの金融政策運営の考え方について、委員は、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」を継続する、マネタリーベースについては、消費者物価指数(除く生鮮食品)の前年比上昇率の実績値が安定的に2%を超えるまで、拡大方針を継続する、との考え方を共有した。

また、昨年3月以降、日本銀行が新型コロナウイルス感染症の影響への対応として、導入・拡充してきた措置について、委員は、引き続き、(1)新型コロナ対応資金繰り支援特別プログラム、(2)国債買入れやドルオペなどによる円貨および外貨の上限を設けない潤沢な供給、(3)それぞれ約12兆円および約1,800億円の年間増加ペースの上限のもとでのETFおよびJ-REITの買入れにより、企業等の資金繰り支援と金融市場の安定維持に努めていくとの認識で一致した。

当面の政策運営スタンスについて、委員は、新型コロナウイルス感染症の影響を注視し、必要があれば、躊躇なく追加的な金融緩和措置を講じることで一致した。そのうえで、大方の委員は、政策金利については、現在の長短金利の水準、または、それを下回る水準で推移することを想定しているとの方針を共有した。

これに対し、ある委員は、デフレへの後戻りを回避するためにも、財政・金融政策の更なる連携が必要であり、日本銀行としては、政策金利のフォワードガイダンスを、物価目標と関連付け、具体的な条件下で行動することが約束されている内容に修正することが適当であるとの意見を述べた。

4.政府からの出席者の発言

財務省の出席者から、以下の趣旨の発言があった。

  • 日本経済は、新型コロナウイルス感染症の影響により依然として厳しい状況にある中、持ち直しの動きが続いているものの、足もとでは、一部に弱さがみえている。
  • 政府としては、3月26日に成立した令和3年度予算の着実な執行等により、感染症に引き続き適切に対応するとともに、デジタルやグリーン等の分野で民間投資を大胆に呼び込みながら、経済構造の転換を図り、生産性を向上させ、持続的な賃金上昇を通じて、経済の好循環を実現していく。
  • 日本銀行には、政府との連携のもと、感染症への対応をはじめ、必要な措置を適切に講じることを期待する。

また、内閣府の出席者から、以下の趣旨の発言があった。

  • わが国の景気は、依然として厳しい状況にある中、持ち直しの動きが続いているが、下振れリスクに注意が必要である。政府は4都府県に緊急事態宣言を発出し、飲食対策の徹底や人流の抑制により、何としても感染拡大を抑えていく。
  • 厳しい影響を受ける方には、大規模施設等への新たな協力金や地方創生臨時交付金の増額を通じた支援など、重点的・効果的な支援策を講じる。
  • 今後も感染状況や経済・国民生活への影響を踏まえ、必要に応じ、予備費5兆円の活用を含め、迅速・機動的に対応していく。日本銀行には、政府との間で緊張感を共有して、引き続き緊密な連携をお願いする。

5.採決

1.金融市場調節方針

以上の議論を踏まえ、議長から、委員の多数意見を取りまとめるかたちで、金融市場調節方針について、以下の議案が提出され、採決に付された。

採決の結果、賛成多数で決定された。

金融市場調節方針に関する議案(議長案)

次回金融政策決定会合までの金融市場調節方針を下記のとおりとすること。

  1. 日本銀行当座預金のうち政策金利残高にマイナス0.1%のマイナス金利を適用する。
  2. 10年物国債金利がゼロ%程度で推移するよう、上限を設けず必要な金額の長期国債の買入れを行う。

採決の結果

賛成:
黒田委員、雨宮委員、若田部委員、政井委員、鈴木委員、安達委員、中村委員、野口委員
反対:
片岡委員

片岡委員は、物価下押し圧力の強まりへの対応と、コロナ後を見据えた企業の前向きな設備投資を後押しする観点から、長短金利を引き下げることで、金融緩和をより強化することが望ましいとして反対した。

2.資産買入れ方針

議長から、委員の見解を取りまとめるかたちで、資産買入れ方針について、以下の議案が提出され、採決に付された。

採決の結果、全員一致で決定された。

資産買入れ方針に関する議案(議長案)

長期国債以外の資産の買入れについて、下記のとおりとすること。

  1. ETFおよびJ-REITについて、それぞれ年間約12兆円、年間約1,800億円に相当する残高増加ペースを上限に、必要に応じて、買入れを行う。
  2. CP等、社債等については、2021年9月末までの間、合計で約20兆円の残高を上限に、買入れを行う。

採決の結果

賛成:
黒田委員、雨宮委員、若田部委員、政井委員、鈴木委員、片岡委員、安達委員、中村委員、野口委員
反対:
なし

3.対外公表文(「当面の金融政策運営について」)

以上の議論を踏まえ、対外公表文が検討された。この間、片岡委員からは、デフレへの後戻りを回避するためにも、財政・金融政策の更なる連携が必要であり、日本銀行としては、政策金利のフォワードガイダンスを、物価目標と関連付けたものに修正することが適当であるとの意見が表明された。

こうした検討を経て、議長からは、対外公表文(「当面の金融政策運営について」<別紙>)が提案され、採決に付された。採決の結果、全員一致で決定され、会合終了後、直ちに公表することとされた。

6.「経済・物価情勢の展望」の検討

続いて、「経済・物価情勢の展望」の「基本的見解」の文案が検討され、議長から、委員の見解を取りまとめるかたちで、議案が提出された。採決の結果、全員一致で決定され、会合終了後、直ちに公表することとされた。また、背景説明を含む全文は、4月28日に公表することとされた。

7.議事要旨の承認

議事要旨(2021年3月18、19日開催分)が全員一致で承認され、5月6日に公表することとされた。

以上


  • (注)「10年物国債金利がゼロ%程度で推移するよう、上限を設けず必要な金額の長期国債の買入れを行う。」(本文に戻る)

別紙

2021年4月27日
日本銀行

当面の金融政策運営について

  1. 日本銀行は、本日、政策委員会・金融政策決定会合において、以下のとおり決定した。
    1. (1)長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)(賛成8反対1)(注1)
      • 次回金融政策決定会合までの金融市場調節方針は、以下のとおりとする。
      • 短期金利:
        日本銀行当座預金のうち政策金利残高にマイナス0.1%のマイナス金利を適用する。
        長期金利:
        10年物国債金利がゼロ%程度で推移するよう、上限を設けず必要な金額の長期国債の買入れを行う。
    2. (2)資産買入れ方針(全員一致)
      • 長期国債以外の資産の買入れについては、以下のとおりとする。
        1. [1]ETFおよびJ-REITについて、それぞれ年間約12兆円、年間約1,800億円に相当する残高増加ペースを上限に、必要に応じて、買入れを行う。
        2. [2]CP等、社債等については、2021年9月末までの間、合計で約20兆円の残高を上限に、買入れを行う。
  2. 日本銀行は、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」を継続する。マネタリーベースについては、消費者物価指数(除く生鮮食品)の前年比上昇率の実績値が安定的に2%を超えるまで、拡大方針を継続する。

    引き続き、(1)新型コロナ対応資金繰り支援特別プログラム、(2)国債買入れやドルオペなどによる円貨および外貨の上限を設けない潤沢な供給、(3)それぞれ約12兆円および約1,800億円の年間増加ペースの上限のもとでのETFおよびJ-REITの買入れにより、企業等の資金繰り支援と金融市場の安定維持に努めていく。

    当面、新型コロナウイルス感染症の影響を注視し、必要があれば、躊躇なく追加的な金融緩和措置を講じる。政策金利については、現在の長短金利の水準、または、それを下回る水準で推移することを想定している(注2)

以上


  1. (注1)賛成:黒田委員、雨宮委員、若田部委員、政井委員、鈴木委員、安達委員、中村委員、野口委員。反対:片岡委員。片岡委員は、物価下押し圧力の強まりへの対応と、コロナ後を見据えた企業の前向きな設備投資を後押しする観点から、長短金利を引き下げることで、金融緩和をより強化することが望ましいとして反対した。(本文に戻る
  2. (注2)片岡委員は、デフレへの後戻りを回避するためにも、財政・金融政策の更なる連携が必要であり、日本銀行としては、政策金利のフォワードガイダンスを、物価目標と関連付けたものに修正することが適当であるとして反対した。(本文に戻る