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政策委員会 金融政策決定会合 議事要旨 (2023年9月21、22日開催分)

2023年11月6日
日本銀行

本議事要旨は、日本銀行法第20条第1項に定める「議事の概要を記載した書類」として、2023年10月30、31日開催の政策委員会・金融政策決定会合で承認されたものである。

開催要領

1.開催日時:
2023年9月21日(14:00から16:05)
 
9月22日( 9:00から11:45)
2.場所:
日本銀行本店
3.出席委員:
議長 植田和男 (総裁)
  • 氷見野良三(副総裁)
  • 内田眞一 ( 副総裁 )
  • 安達誠司 (審議委員)
  • 中村豊明 ( 審議委員 )
  • 野口 旭 ( 審議委員 )
  • 中川順子 ( 審議委員 )
  • 高田 創 ( 審議委員 )
  • 田村直樹 ( 審議委員 )
4.政府からの出席者:
  • 財務省 坂本 基 大臣官房総括審議官(21日)
  • 神田憲次 財務副大臣(22日)
  • 内閣府 井上裕之 内閣府審議官(21日)
  • 井林辰憲 内閣府副大臣(22日)
(執行部からの報告者)
  • 理事 清水季子
  • 理事 貝塚正彰
  • 理事 清水誠一
  • 企画局長 正木一博
  • 企画局政策企画課長 長野哲平
  • 金融市場局長 藤田研二
  • 調査統計局長 大谷 聡
  • 調査統計局経済調査課長 永幡 崇
  • 国際局長 神山一成
(事務局)
  • 政策委員会室長 倉本勝也
  • 政策委員会室企画役 木下尊生
  • 企画局企画役 安藤雅俊
  • 企画局企画役 北原 潤

1.金融経済情勢に関する執行部からの報告の概要

1.最近の金融市場調節の運営実績

金融市場調節の運営としては、前回会合(7月27、28日)で決定された金融市場調節方針(注)および長短金利操作の運用方針に従って、国債買入れ等を行った。この間、買入れを行う利回り水準を1.0%として、10年物国債を対象とする固定利回り方式による国債買入れ(指値オペ)のほか、チーペスト銘柄を対象とする指値オペを毎営業日実施した。また、機動的に、臨時の国債買入れや、金利入札方式による貸付期間5年の共通担保資金供給オペを実施した。こうした調節運営のもと、長期金利は金融市場調節方針と整合的に推移したほか、イールドカーブの形状は、引き続き総じてスムーズとなっている。

前回会合で決定された資産買入れ方針に従って、ETFやJ-REIT、CP・社債等の買入れを運営した。

2.金融・為替市場動向

短期金融市場では、金利は、翌日物、ターム物とも、総じてマイナス圏で推移している。翌日物金利のうち、無担保コールレートは-0.076から-0.012%程度、GCレポレートは-0.164から-0.091%程度で推移している。ターム物金利をみると、短国レート(3か月物)は、幾分低下した。

わが国の株価(TOPIX)は、上昇した。長期金利(10年物国債金利)は、前回会合で長短金利操作の運用の柔軟化が決定された後、上昇し、0.435から0.720%程度で推移している。なお、国債市場の流動性指標をみると、多くの指標で、昨年前半に比べれば総じて悪化した状態にあるものの、改善方向の動きが続いている。債券市場サーベイにおける市場の機能度判断DIは、前回調査対比マイナス幅が縮小した。為替相場をみると、日米欧の金利差が意識されるもとで、円の対ドル相場、円の対ユーロ相場ともに、円安方向の動きとなった。

3.海外金融経済情勢

海外経済は、回復ペースが鈍化している。米国経済は、FRBによる利上げの影響を受けつつも、個人消費を中心に底堅く推移している。欧州経済は、ECB等による利上げやウクライナ情勢の影響が続くもとで、緩やかな減速が続いている。中国経済は、経済活動の正常化が進むもとで、サービス消費が底堅く推移しているものの、外需の減速や不動産市場の調整の影響などから、緩やかに減速している。中国以外の新興国・資源国経済は、内需の緩やかな改善が続いているものの、輸出が減速しており、総じてみれば改善ペースが鈍化している。

先行きの海外経済は、当面、回復ペースが鈍化した状態が続くとみられる。その後は、金融引き締めを通じたインフレ抑制の効果が現れるもとで、海外経済は徐々に持ち直していくと考えられる。先行きの見通しを巡っては、各国中央銀行の利上げの影響のほか、中国経済の動向や地政学的緊張の展開などについて、不確実性がきわめて高い。

海外の金融市場をみると、米国では、長期金利は、国債増発計画を受けて需給悪化が意識されたことから上昇し、株価は、長期金利上昇が嫌気されるもとで、下落した。欧州の長期金利も、米国に連れて上昇した。また、欧州株価は、長期金利上昇が嫌気されたほか、中国経済の回復の遅れも意識されて、下落した。この間、新興国通貨は、米国長期金利上昇を受けて、幅広い国で下落した。原油価格は、一部産油国の減産の継続などを受けて、上昇した。

4.国内金融経済情勢

(1)実体経済

わが国の景気は、緩やかに回復している。先行きについては、当面は、海外経済の回復ペース鈍化による下押し圧力を受けるものの、ペントアップ需要の顕在化に加え、緩和的な金融環境や政府の経済対策の効果などにも支えられて、緩やかな回復を続けるとみられる。

輸出や生産は、海外経済の回復ペース鈍化の影響を受けつつも、供給制約の影響の緩和に支えられて、横ばい圏内の動きとなっており、先行きも、当面は同様の動きが続くとみられる。その後は、海外経済が持ち直していくもとで、増加基調に復していくと見込まれる。

企業収益は、全体として高水準で推移している。設備投資は、緩やかに増加している。先行きの設備投資は、企業収益が全体として高水準を維持するもとで、増加を続けると予想される。

個人消費は、物価上昇の影響を受けつつも、緩やかなペースで着実に増加している。消費活動指数(実質・旅行収支調整済)をみると、7月までは、月々の振れを伴いつつも増加傾向にある。企業からの聞き取り調査や高頻度データに基づくと、8月以降の個人消費は、物価上昇や台風の影響を受けつつも、春季労使交渉等も踏まえて所得環境が改善する中で、ペントアップ需要にも支えられ、緩やかな増加傾向を続けているとみられる。所得環境が緩やかに改善するもとで、消費者マインドも改善傾向をたどっており、これまでのところ、物価高が続く中でも、個人消費の足取りはしっかりとしている。先行きも、物価上昇の影響を受けつつも、名目雇用者所得の改善が続くもとで、行動制限下で積み上がった貯蓄にも支えられて、緩やかな増加を続けると予想される。

雇用・所得環境は、緩やかに改善している。就業者数をみると、正規雇用は、人手不足感の強い医療・福祉や情報通信等を中心に、振れを伴いながらも、緩やかな増加傾向にある。非正規雇用は、経済活動が正常化するもとで、卸・小売や対面型サービス業などを中心に、緩やかに増加している。一人当たり名目賃金は、経済活動の回復を反映して、緩やかに増加している。先行きの雇用者所得は、名目賃金の伸び率上昇を反映して、はっきりとした増加を続けると考えられる。実質ベースでも、物価上昇率の低下もあって、マイナス幅は縮小傾向をたどり、次第にプラスに転化していくと見込まれる。

物価面について、商品市況は、総じてみれば横ばい圏内の動きとなっている。国内企業物価の3か月前比は、既往の資源高の影響は徐々に和らいでいるものの、足もとのエネルギー価格上昇の影響などを受けて、横ばい圏内の動きとなっている。消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、政府の経済対策によるエネルギー価格の押し下げ効果などによって、ひと頃に比べればプラス幅を縮小しているものの、既往の輸入物価の上昇を起点とする価格転嫁の影響から、足もとは3%程度となっている。先行きの消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、既往の輸入物価の上昇を起点とする価格転嫁の影響が減衰していくもとで、プラス幅を縮小していくと予想される。

(2)金融環境

わが国の金融環境は、緩和した状態にある。

資金需要面をみると、経済活動の回復や既往の原材料コスト高を背景に、緩やかに増加している。資金供給面では、企業からみた金融機関の貸出態度は、緩和した状態にある。CP・社債市場では、良好な発行環境となっている。企業の資金調達コストは、きわめて低い水準で推移している。こうした中、銀行貸出残高の前年比は、3%台半ばとなっている。CP・社債計の発行残高の前年比は、2%台半ばとなっている。企業倒産は、増加している。企業の資金繰りは、経済活動の回復を背景に、改善している。

この間、マネタリーベースの前年比は、1%台前半となっている。マネーストックの前年比は、2%台半ばとなっている。

2.金融経済情勢に関する委員会の検討の概要

1.経済・物価情勢

国際金融資本市場について、委員は、米国における堅調な企業決算がポジティブな材料となっているものの、米欧の金融政策や世界経済の先行きを巡る不確実性が引き続き意識されるもとで、米欧の長期金利が上昇したこともあって、市場センチメント改善の流れにやや一服感がみられているとの認識で一致した。

海外経済について、委員は、回復ペースが鈍化しているとの認識を共有した。

米国経済について、委員は、FRBによる利上げの影響を受けつつも、個人消費を中心に底堅く推移しているとの認識で一致した。複数の委員は、景気後退なしでインフレが収束するというソフトランディングの実現の可能性が高まっているとの見方を示した。一方、別の複数の委員は、物価上昇率はピークアウトしているものの、雇用や個人消費の減速ペースは緩やかであり、物価上昇圧力が根強く残っていると指摘した。このうち一人の委員は、FRBによる追加利上げも見込まれるだけに、利上げの累積効果による金融面での悪影響が生じないかには留意が必要と付け加えた。複数の委員は、自動車産業の労働組合が求める大幅な賃上げ交渉の帰趨が賃金・物価等に及ぼす影響も注視していく必要があると述べた。

欧州経済について、委員は、ECB等による利上げやウクライナ情勢の影響が続くもとで、緩やかな減速が続いているとの認識を共有した。何人かの委員は、先行きについても、既往の物価上昇や利上げの影響などから、減速は続くとみられるとの見解を示した。

中国経済について、委員は、経済活動の正常化が進むもとで、サービス消費が底堅く推移しているものの、外需の減速や不動産市場の調整の影響などから、緩やかに減速しているとの見方を共有した。多くの委員は、先行きの中国経済について、不動産市場の調整の長期化に加え、若年失業率の高止まりや地政学的リスクの高まり等の問題がある中で、物価上昇率も低下してきており、不透明感は強いと指摘した。このうち一人の委員は、新たな成長ドライバーの不足や成長期待の低下といった問題もあると付け加えた。

中国以外の新興国・資源国経済について、委員は、内需の緩やかな改善が続いているものの、輸出が減速しており、総じてみれば改善ペースが鈍化しているとの認識を共有した。

以上のような海外の金融経済情勢を踏まえて、わが国の経済情勢に関する議論が行われた。

わが国の景気について、委員は、緩やかに回復しているとの認識で一致した。ある委員は、海外需要の低迷から企業の設備投資に幾分弱い動きがみられるものの、個人消費が緩やかながらも拡大基調を維持しているとの見方を示した。

景気の先行きについて、委員は、当面は、海外経済の回復ペース鈍化による下押し圧力を受けるものの、ペントアップ需要の顕在化などに支えられて、緩やかな回復を続ける、その後は、所得から支出への前向きの循環メカニズムが徐々に強まるもとで、潜在成長率を上回る成長を続ける、との認識を共有した。

輸出や生産について、委員は、海外経済の回復ペース鈍化の影響を受けつつも、供給制約の影響の緩和に支えられて、横ばい圏内の動きとなっているとの認識を共有した。

設備投資について、委員は、企業収益が全体として高水準で推移するもとで、緩やかに増加しているとの認識で一致した。ある委員は、本年度の上場企業の経常利益はピークを更新する見込みであるほか、4から6月については中小企業の経常利益も前年比二桁増となるなど、企業の稼ぐ力は改善傾向にあると指摘した。この委員は、こうしたもとで、中小企業を含め投資意欲の高まりが窺われるとの認識を示した。

個人消費について、委員は、物価上昇の影響を受けつつも、緩やかなペースで着実に増加しているとの認識で一致した。一人の委員は、人流データや小売企業の決算等をみると、個人消費は底堅く推移しているとみられると指摘した。この間、ある委員は、個人消費は緩やかなペースで増加を続けるとみられるが、一部の企業から慎重な見方が聞かれている点は幾分懸念材料であり、先行き生活防衛的な動きが強まるリスクもあるとの見解を示した。別のある委員は、これまでのペントアップ需要の顕在化は限られており、個人消費の動向については、今後特によく見ていく必要があると指摘した。そのうえで、この委員は、基調的な物価指標の動きや水準からすると、消費者物価上昇率が「物価安定の目標」を大きく上回った状態が相当期間続き、個人消費を圧迫し続ける可能性はそれなりにあると述べた。

雇用・所得環境について、委員は、緩やかに改善しているとの見方を共有した。ある委員は、構造改革を進めてきた大企業は稼ぐ力に自信を深めていると思われるが、中小企業は総じて構造改革が遅れ、賃上げ余力が不十分な先も多いため、こうした先が、経済環境の変化により賃上げや設備投資の意欲を削がれることがないか、注意が必要であるとの見解を示した。

物価面について、委員は、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、政府の経済対策によるエネルギー価格の押し下げ効果などによって、ひと頃に比べればプラス幅を縮小しているものの、既往の輸入物価の上昇を起点とする価格転嫁の影響から、足もとは3%程度となっているとの評価で一致した。何人かの委員は、足もとの物価上昇率は、7月の展望レポートにおける想定よりも、上振れているとの認識を示した。

物価の先行きについて、委員は、既往の輸入物価の上昇を起点とする価格転嫁の影響が減衰していくもとでプラス幅を縮小していく、その後は、マクロ的な需給ギャップが改善し、企業の賃金・価格設定行動などの変化を伴う形で中長期的な予想物価上昇率や賃金上昇率も高まっていくもとで、再びプラス幅を緩やかに拡大していくとの見方を共有した。何人かの委員は、輸入物価上昇を主因とする価格転嫁の動きが、予想以上に根強く続いていると指摘した。複数の委員は、輸入物価下落に遅行する形で財価格の伸び率は低下しつつあり、先行き物価上昇率は鈍化していく可能性が高いが、そのペースは不確実であるとの見解を示した。別の複数の委員は、価格転嫁が根強く続いていること、および為替円安と原油高から物価上昇が長引く可能性は高まっているが、これらはコストプッシュ要因に関するものであると付け加えた。

そのうえで、多くの委員は、最近の物価上昇は、コストプッシュが主因であるが、企業の賃金・価格設定行動の変化も影響しているとの認識を示した。何人かの委員は、企業の賃金・価格設定行動の一部には、従来よりも積極的な動きがみられ始めていると指摘した。このうち一人の委員は、企業の前向きな賃金設定行動が広がりつつあるほか、設備投資意欲も維持されていることを踏まえると、賃金上昇を伴った物価上昇につながる好循環が生まれつつあると考えられると述べた。複数の委員は、政策対応との関係では、コストプッシュ要因より賃金上昇による価格上昇が重要であるが、物価の基調が十分に高まっていない現状では、賃金の面から上振れが起こるのであれば、むしろ望ましいことであるとの見解を示した。そのうえで、このうち一人の委員は、これら2つの要因がどの程度物価に影響を及ぼしているのか、ミクロ情報を収集するとともに、データで裏付けていくことが重要と指摘した。この点に関連し、ある委員は、このところ基調的な性格が強い物価指標の前年比が上昇傾向を示しており、その多くは既に2%を上回っていると指摘した。別のある委員は、粘着的な物価の前年比も、1990年代前半の水準には及ばないものの、徐々に高まってきていると述べた。また、一人の委員は、品目別にみた消費者物価の前年比の分布について、最頻値であるゼロ%近傍の集中度はかなり低くなっており、先行き更に低くなる可能性が高いとの見解を示した。別の一人の委員は、米国では物価が急騰する前に品目別分布の最頻値への集中度合いは低下して価格変動のばらつきが大きくなっていたと付け加えたうえで、わが国では、現状こうした状況にはなっていないと述べた。何人かの委員は、品目別分布をみる際には、わが国では、家賃や公共料金など価格が動きにくい品目が存在することにも留意する必要があるとの見解を示した。この間、ある委員は、GDPデフレータをみると、ユニットレーバーコストの寄与がまだ小さく、賃金上昇を伴う物価上昇を見通せる状況ではないとの見方を示した。

委員は、先行き、企業の賃金・価格設定行動の変化が続くかについて議論を行った。何人かの委員は、来年の春季労使交渉における賃上げ率が本年を上回る可能性は十分にあるとの見解を示した。このうち一人の委員は、その背景として、現時点における本年の物価上昇率見通しが昨年対比高いことや、大幅に上昇した最低賃金を将来にわたり更に引き上げるという政府方針表明等の動きを指摘した。何人かの委員は、来年の賃上げの帰趨を判断するためには、特に中小企業の動向を注視する必要があるとの認識を示した。このうち一人の委員は、持続的な賃上げには、賃金・価格設定行動の変革や慢性的労働力不足への対応が必要であり、企業が物価上昇に対応するベースアップを実現していくことを前提に事業戦略を推進するのか、賃金制度改革への取り組みも含め、注目していると述べた。ある委員は、中小企業でもコストを価格転嫁する動きが広がり、収益が拡大するもとで、賃金上昇のモメンタムが着実に強まっていくか見ていく必要があると指摘した。この点に関連し、別の一人の委員は、過去30年にわたり、収益マージンが縮小し賃金も押し下げられてきたことを踏まえると、今後、その累積した押し下げ分を取り戻す形で、企業が価格転嫁で改善した収益を賃上げ等に向ける前向きな動きが暫くは続くとみる方が自然ではないかとの見方を示した。この間、多くの委員は、先行き、賃金等のコスト上昇が価格に反映されていくかにも注目していく必要があると指摘した。このうち一人の委員は、人件費の転嫁は既に始まっており、これからも続いていくのではないか、と付け加えた。別の一人の委員は、今次局面の累積コスト上昇幅と消費者物価の上昇幅のギャップが縮小してきたことを指摘したうえで、今後更に消費者物価が上昇し企業の収益マージンが拡大することがあれば、それは将来の賃上げ等を先取りした値上げなど、コスト転嫁以外の要素による値上げということになってくると述べた。別のある委員は、来年度にかけて運送料や公共サービス料金の値上げが想定され、消費者物価の上昇が続くとの見解を示した。一人の委員は、これまで企業がコスト上昇を価格に転嫁できてきた背景にはペントアップ需要による個人消費の底堅さもあると指摘したうえで、今後、ペントアップ需要が減衰していく中、最近みられるような価格設定行動を続けられるかが、値上げの持続性という観点からは重要なポイントであると述べた。

経済・物価の見通しのリスク要因として、委員は、海外の経済・物価動向、資源価格の動向、企業の賃金・価格設定行動など、わが国経済・物価を巡る不確実性はきわめて高いとの認識で一致した。また、委員はそのもとで、金融・為替市場の動向やそのわが国経済・物価への影響を、十分注視する必要があるとの見方を共有した。複数の委員は、物価上昇率が高水準で推移するもとで個人消費が下押しされるリスクがあるとの見解を示した。このうち一人の委員は、仮に個人消費が下押しされると、その後、需要の弱さから物価にも下押し圧力がかかるリスクもあると指摘した。別のある委員は、足もとの物価の強さ、更には、為替相場や原油価格の推移をみると、今後、物価が想定ほど下がらず上振れしていくリスクも相応にあり、謙虚にデータを見つめていく必要性が、従来以上に高まっていると述べた。

2.金融面の動向

わが国の金融環境について、委員は、緩和した状態にあるとの認識で一致した。また、委員は、企業の資金調達コストはきわめて低い水準で推移しているという見方を共有した。ある委員は、社債市場の機能度について、起債環境は改善傾向にある一方、金利先高観から、投資家の需要が長期ゾーンから中期ゾーンに移りつつあるほか、セカンダリー市場での取引が若干低調になっているとの認識を示した。

3.金融政策運営に関する委員会の検討の概要

以上のような金融経済情勢に関する認識を踏まえ、委員は、金融政策運営に関する議論を行った。

先行きの金融政策運営の基本的な考え方について、委員は、現時点では、賃金の上昇を伴う形で、「物価安定の目標」の持続的・安定的な実現を見通せる状況には至っておらず、イールドカーブ・コントロールのもとで、粘り強く金融緩和を継続する必要があるとの見解で一致した。一人の委員は、2%の「物価安定の目標」を持続的・安定的に実現するためには、賃金上昇を伴い、それが価格転嫁されることでサービス価格を中心とした物価上昇が定着することが必要であると述べたうえで、金融緩和の継続を通じて、賃上げのモメンタムを支えていくことが重要となると指摘した。別の一人の委員は、最近の企業の賃金・価格設定行動の変化は、タイトな労働市場に海外からのインフレ圧力が重なることで生じたものであり、この変化の芽を大切に育てていくべきであると指摘した。ある委員は、「物価安定の目標」の達成の期待が確信に変わるには、企業の改革への取り組みに加え、新陳代謝やスタートアップ企業の資金調達強化等の取り組みが必要であるとの認識を示したうえで、日本経済は今が正念場であり、企業の改革意欲を後押しすることが求められる局面であると指摘した。こうした中、何人かの委員は、先行き、中小企業も含めた来年の賃上げ動向や、その物価との相互関係をしっかりと確認する必要があるとの考えを述べた。このうち一人の委員は、予想物価上昇率に上昇の動きがみられ、やや距離はあるが、「物価安定の目標」の達成に近づきつつあるため、今年度後半は、来年に向けた賃上げ動向も含め、その見極めの重要な局面となるとの認識を示した。この間、別の一人の委員は、2%の持続的・安定的な物価上昇の実現が、はっきりと視界に捉えられる状況にあると考えており、来年1から3月頃には見極められる可能性もあるとの見解を示した。

長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)について、委員は、前回会合で柔軟化した方針に従ってイールドカーブ・コントロールが運用されるもとで、長期金利は、金融市場調節方針と整合的に推移しているとの認識で一致した。大方の委員は、長期金利は比較的安定して推移しており、イールドカーブ・コントロールの運用について、追加的な見直しを行う必要はないとの見解を示した。このうち一人の委員は、運用柔軟化の意図は金融市場に概ね正確に伝わり、不連続を生じさせることなく、所期の目的を達成できたとの認識を示した。ある委員は、先行きの物価見通しが上振れるかが不透明な中、運用を柔軟化した現行のイールドカーブ・コントロールのもとで、物価動向を見極めることが重要であると指摘した。別の一人の委員は、前回会合以降、懸念していた運用の柔軟化に伴う金利の大幅上昇を含む金融環境の急激なタイト化はみられていないことを踏まえると、現在の運用方針を継続することが適切であるとの見解を示した。一人の委員は、前回会合以降、米国長期金利の大幅な上昇がわが国の長期金利の上昇圧力となったことも踏まえると、前回会合は柔軟化のタイミングとして適切だったと指摘した。この間、複数の委員は、8月の債券市場サーベイ等をみると、柔軟化もあって市場機能に一部改善の動きがみられるが、なお水準は低いままとなっているとの見解を示した。このうち一人の委員は、この背景には、日本銀行が、引き続き巨額の国債を買い入れているため、流動性が低い状況には変わりがないとの見方もあると指摘した。別の一人の委員は、柔軟化を経ても、市場不安定化のリスクや市場機能面での副作用はなお残存していると指摘したうえで、イールドカーブ・コントロールが、この間の歴史をみても、多くの役割を果たした段階にある中、市場機能を重視した価格形成を行うことは、将来出口に向かう場合に、債券市場を中心とした流動性改善なども含め、市場参加者が適応していくための準備にも資するとの認識を示した。

委員は、政策運営を巡るコミュニケーションについても、議論を行った。委員は、「物価安定の目標」の持続的・安定的な実現が見通せる状況には至っておらず、日本銀行は粘り強く金融緩和を継続していく方針であることを伝えることが重要との認識で一致した。また、委員は、日本銀行は「賃金の上昇を伴う形で、2%の「物価安定の目標」を持続的・安定的に実現することを目指して」いるとしたうえで、イールドカーブ・コントロールの枠組みについて、「物価安定の目標」の安定的な実現に必要な時点まで継続すると対外公表文で約束していることを再確認した。一人の委員は、情勢判断については委員間で多様な見方があるのは当然だが、こうした政策反応関数、すなわち先行きの政策運営方針については、全員一致で議決し、公表していると指摘した。また、複数の委員は、情勢判断においては多くの指標等を確認していくことにはなるが、金融政策運営を議論する際に基準となるのは、2%の「物価安定の目標」の実現であると述べた。複数の委員は、イールドカーブ・コントロールの枠組みの撤廃やマイナス金利の解除は、あくまで、2%の「物価安定の目標」の実現との関係で、その成功とセットで論じられるべきであると指摘した。この点に関して、一人の委員は、マイナス金利を解除するという判断は、マイナス金利よりゼロないしプラスの金利が望ましいと判断したということを意味するが、2%の「物価安定の目標」の実現が見通せないもとで、そうした判断に至ることは考えられないと付け加えた。

これらの議論を踏まえたうえで、委員は、「物価安定の目標」の持続的・安定的な実現が見通せる状況に至れば政策の修正を検討することになるが、その時期や具体的な対応については、その時々の経済・物価情勢や見通しに依存するため、不確実性が大きく、現時点では決め打ちできないとの認識を共有した。ある委員は、イールドカーブ・コントロールの枠組み等に関するフォワード・ガイダンスは柔軟性を確保したものであると指摘したうえで、経済・物価の不確実性が高い状況を踏まえると、様々なコミュニケーションを通じた実質上のガイダンスについても、政策対応の時期や順序についての自由度が過度に制約されないよう工夫していくことが望ましいとの見解を示した。この間、一人の委員は、リスク・マネジメント上、市場流動性の確保・回復等による市場機能の改善に加え、出口を見据えた市場や社会とのコミュニケーション等、出口に向けた準備、環境整備を進めることが重要であると述べた。また、この委員は、仮にマイナス金利を解除しても、実質金利がマイナスであれば金融緩和の継続と捉えられるとの見方を示したうえで、こうしたことを、丁寧に発信していくことが重要と述べた。これに対して、ある委員は、大恐慌時の米国等の事例を示しつつ、実質金利がマイナスであっても、金融緩和が修正に向かう動きが経済・金融に大きな影響を及ぼす可能性がある点には留意すべきと指摘した。

以上の議論を踏まえ、次回金融政策決定会合までの金融市場調節方針について、委員は、従来の方針を維持することが適当であるとの見解で一致した。また、長短金利操作の運用に関して、委員は、従来の運用を維持することが適当であるとの認識を共有した。

長期国債以外の資産の買入れに関して、委員は、従来の方針を維持することが適当との意見で一致した。この間、一人の委員は、当面は長期国債以外の資産の買入れを含め従来の方針を維持し、緩和的な金融緩和を維持することが望ましいが、将来の出口局面にあたっては、これらの資産買入れの要否についても検討すべきとの見解を示した。

先行きの金融政策運営方針について、委員は、内外の経済や金融市場を巡る不確実性がきわめて高い中、経済・物価・金融情勢に応じて機動的に対応しつつ、粘り強く金融緩和を継続していくことで、賃金の上昇を伴う形で、2%の「物価安定の目標」を持続的・安定的に実現することを目指していく、との基本方針を共有した。そのうえで、委員は、「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」を継続する、マネタリーベースについては、消費者物価指数(除く生鮮食品)の前年比上昇率の実績値が安定的に2%を超えるまで、拡大方針を継続する、との考え方を共有した。また、委員は、引き続き企業等の資金繰りと金融市場の安定維持に努めるとともに、必要があれば、躊躇なく追加的な金融緩和措置を講じることで一致した。

4.政府からの出席者の発言

財務省の出席者から、以下の趣旨の発言があった。

  • 8月末に概算要求が締め切られ、令和6年度予算の編成作業がスタートした。
  • 予算編成にあたっては、歳出構造を平時に戻していくとともに、緊急時の財政支出を必要以上に長期化・恒常化させないよう取り組むといった「骨太方針2023」に記された方針に沿って、経済成長と財政健全化の両立を図っていく。
  • 日本銀行には、政府との密接な連携のもと、「物価安定の目標」の持続的・安定的な実現に向けた適切な金融政策運営を期待する。

また、内閣府の出席者から、以下の趣旨の発言があった。

  • わが国の景気は、コロナ禍後の経済社会への本格的な移行に伴い、緩やかに回復している。ただし、輸入物価上昇を起点とするエネルギー・食料品を中心とした物価高は、国民生活に大きな影響を与えており、賃上げなどに伴う、生活実感の改善を妨げる要因となっている。
  • 政府は、物価高から国民生活を守るとともに、物価高に負けない構造的な賃上げと供給力強化のための投資拡大の流れを強化するための経済対策を検討していく。
  • 日本銀行には、経済・物価・金融情勢を踏まえつつ、賃金の上昇を伴う形で2%の「物価安定の目標」を持続的・安定的に実現することを期待する。

5.採決

1.金融市場調節方針

以上の議論を踏まえ、議長から、委員の意見を取りまとめるかたちで、金融市場調節方針について、以下の議案が提出され、採決に付された。

採決の結果、全員一致で決定された。

金融市場調節方針に関する議案(議長案)

次回金融政策決定会合までの金融市場調節方針を下記のとおりとすること。

  1. 日本銀行当座預金のうち政策金利残高にマイナス0.1%のマイナス金利を適用する。
  2. 10年物国債金利がゼロ%程度で推移するよう、上限を設けず必要な金額の長期国債の買入れを行う。

採決の結果

  • 賛成:植田委員、氷見野委員、内田委員、安達委員、中村委員、野口委員、中川委員、高田委員、田村委員
  • 反対:なし

2.長短金利操作の運用

議長から、委員の意見を取りまとめるかたちで、長短金利操作の運用について、以下の議案が提出され、採決に付された。

採決の結果、全員一致で決定された。

長短金利操作の運用に関する議案(議長案)

次回金融政策決定会合までの長短金利操作の運用を下記のとおりとすること。

長期金利の変動幅は「±0.5%程度」を目途とし、長短金利操作について、より柔軟に運用する。10年物国債金利について金額を無制限とする1.0%の利回りでの固定利回り方式の国債買入れ(指値オペ)を、明らかに応札が見込まれない場合を除き、毎営業日、実施する。また、金融市場調節方針と整合的なイールドカーブの形成を促すため、大規模な国債買入れを継続するとともに、各年限において、機動的に、買入れ額の増額や指値オペ、共通担保資金供給オペレーションなどを実施する。

採決の結果

  • 賛成:植田委員、氷見野委員、内田委員、安達委員、中村委員、野口委員、中川委員、高田委員、田村委員
  • 反対:なし

3.資産買入れ方針

議長から、委員の見解を取りまとめるかたちで、資産買入れ方針について、以下の議案が提出され、採決に付された。

採決の結果、全員一致で決定された。

資産買入れ方針に関する議案(議長案)

長期国債以外の資産の買入れについて、下記のとおりとすること。

  1. ETFおよびJ-REITについて、それぞれ年間約12兆円、年間約1,800億円に相当する残高増加ペースを上限に、必要に応じて、買入れを行う。
  2. CP等は、約2兆円の残高を維持する。社債等は、感染症拡大前と同程度のペースで買入れを行い、買入れ残高を感染症拡大前の水準(約3兆円)へと徐々に戻していく。ただし、社債等の買入れ残高の調整は、社債の発行環境に十分配慮して進めることとする。

採決の結果

  • 賛成:植田委員、氷見野委員、内田委員、安達委員、中村委員、野口委員、中川委員、高田委員、田村委員
  • 反対:なし

4.対外公表文(「当面の金融政策運営について」)

以上の議論を踏まえ、対外公表文が検討された。議長から、対外公表文(「当面の金融政策運営について」<別紙>)が提案され、採決に付された。採決の結果、全員一致で決定され、会合終了後、直ちに公表することとされた。

6.議事要旨の承認

議事要旨(2023年7月27、28日開催分)が全員一致で承認され、9月27日に公表することとされた。

以上


  • (注)短期金利:日本銀行当座預金のうち政策金利残高にマイナス0.1%のマイナス金利を適用する。
    • 長期金利:10年物国債金利がゼロ%程度で推移するよう、上限を設けず必要な金額の長期国債の買入れを行う。本文に戻る

別紙

2023年9月22日
日本銀行

当面の金融政策運営について

  1. 日本銀行は、本日、政策委員会・金融政策決定会合において、以下のとおり決定した。
    1. (1)長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)
      1. [1]次回金融政策決定会合までの金融市場調節方針は、以下のとおりとする(全員一致)。
        短期金利:
        日本銀行当座預金のうち政策金利残高にマイナス0.1%のマイナス金利を適用する。
        長期金利:
        10年物国債金利がゼロ%程度で推移するよう、上限を設けず必要な金額の長期国債の買入れを行う。
      2. [2]長短金利操作の運用(全員一致)

        長期金利の変動幅は「±0.5%程度」を目途とし、長短金利操作について、より柔軟に運用する。10年物国債金利について1.0%の利回りでの指値オペを、明らかに応札が見込まれない場合を除き、毎営業日、実施する1。上記の金融市場調節方針と整合的なイールドカーブの形成を促すため、大規模な国債買入れを継続するとともに、各年限において、機動的に、買入れ額の増額や指値オペ、共通担保資金供給オペなどを実施する。

    2. (2)資産買入れ方針(全員一致)

      長期国債以外の資産の買入れについては、以下のとおりとする。

      1. [1]ETFおよびJ-REITについて、それぞれ年間約12兆円、年間約1,800億円に相当する残高増加ペースを上限に、必要に応じて、買入れを行う。
      2. [2]CP等は、約2兆円の残高を維持する。社債等は、感染症拡大前と同程度のペースで買入れを行い、買入れ残高を感染症拡大前の水準(約3兆円)へと徐々に戻していく。ただし、社債等の買入れ残高の調整は、社債の発行環境に十分配慮して進めることとする。
  2. わが国の景気は、緩やかに回復している。海外経済は、回復ペースが鈍化している。そうした影響を受けつつも、輸出や鉱工業生産は、供給制約の影響の緩和に支えられて、横ばい圏内の動きとなっている。企業収益が全体として高水準で推移するもとで、設備投資は緩やかに増加している。雇用・所得環境は緩やかに改善している。個人消費は、物価上昇の影響を受けつつも、緩やかなペースで着実に増加している。住宅投資は弱めの動きとなっている。公共投資は緩やかに増加している。わが国の金融環境は、緩和した状態にある。物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、政府の経済対策によるエネルギー価格の押し下げ効果などによって、ひと頃に比べればプラス幅を縮小しているものの、既往の輸入物価の上昇を起点とする価格転嫁の影響から、足もとは3%程度となっている。予想物価上昇率は、再び上昇の動きがみられている。
  3. 先行きのわが国経済を展望すると、当面は、海外経済の回復ペース鈍化による下押し圧力を受けるものの、ペントアップ需要の顕在化などに支えられて、緩やかな回復を続けるとみられる。その後は、所得から支出への前向きの循環メカニズムが徐々に強まるもとで、潜在成長率を上回る成長を続けると考えられる。消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、既往の輸入物価の上昇を起点とする価格転嫁の影響が減衰していくもとでプラス幅を縮小したあと、マクロ的な需給ギャップが改善し、企業の賃金・価格設定行動などの変化を伴う形で中長期的な予想物価上昇率や賃金上昇率も高まっていくもとで、再びプラス幅を緩やかに拡大していくとみられる。
  4. リスク要因をみると、海外の経済・物価動向、資源価格の動向、企業の賃金・価格設定行動など、わが国経済・物価を巡る不確実性はきわめて高い。そのもとで、金融・為替市場の動向やそのわが国経済・物価への影響を、十分注視する必要がある。
  5. 日本銀行は、内外の経済や金融市場を巡る不確実性がきわめて高い中、経済・物価・金融情勢に応じて機動的に対応しつつ、粘り強く金融緩和を継続していくことで、賃金の上昇を伴う形で、2%の「物価安定の目標」を持続的・安定的に実現することを目指していく。

    「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」を継続する。マネタリーベースについては、消費者物価指数(除く生鮮食品)の前年比上昇率の実績値が安定的に2%を超えるまで、拡大方針を継続する。引き続き企業等の資金繰りと金融市場の安定維持に努めるとともに、必要があれば、躊躇なく追加的な金融緩和措置を講じる。

以上


  1. 現在の金利情勢のもとでは応札は見込まれないと考えられるが、当分の間、毎営業日、実施する。本文に戻る