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政策委員会 金融政策決定会合 議事要旨 (2025年4月30日、5月1日開催分)

2025年6月20日
日本銀行

本議事要旨は、日本銀行法第20条第1項に定める「議事の概要を記載した書類」として、2025年6月16、17日開催の政策委員会・金融政策決定会合で承認されたものである。

開催要領

1.開催日時:
2025年4月30日(14:00から15:55)
 
5月1日( 9:00から11:55)
2.場所:
日本銀行本店
3.出席委員:
議長 植田和男 (総裁)
  • 氷見野良三(副総裁)
  • 内田眞一 ( 副総裁 )
  • 中村豊明 (審議委員)
  • 野口 旭 ( 審議委員 )
  • 中川順子 ( 審議委員 )
  • 高田 創 ( 審議委員 )
  • 田村直樹 ( 審議委員 )
  • 小枝淳子 ( 審議委員 )
4.政府からの出席者:
  • 財務省 寺岡光博 大臣官房総括審議官(4月30日)
  • 斎藤洋明 財務副大臣(5月1日)
  • 内閣府 林 幸宏 内閣府審議官(4月30日)
  • 瀬戸隆一 内閣府副大臣(5月1日)
(執行部からの報告者)
  • 理事 清水誠一
  • 理事 神山一成
  • 理事 諏訪園健司
  • 理事 中村康治
  • 企画局長 奥野聡雄
  • 企画局政策企画課長 長野哲平
  • 金融機構局長 鈴木公一郎
  • 金融市場局長 峯岸 誠
  • 調査統計局長 川本卓司
  • 調査統計局経済調査課長 須合智広
  • 国際局長 近田 健
(事務局)
  • 政策委員会室長 福田英司
  • 政策委員会室企画役 木下尊生
  • 企画局企画役 丸尾優士
  • 企画局企画役 北原 潤
  • 企画局企画役 西野孝佑

1.金融経済情勢に関する執行部からの報告の概要

1.最近の金融市場調節の運営実績

金融市場調節については、前回会合(3月18、19日)で決定された金融市場調節方針(注)に従って運営し、無担保コールレート(オーバーナイト物)は、0.476~0.477%のレンジで推移した。

この間、長期国債の買入れについては、2025年3月は月間4.5兆円程度の買入れを行った。2025年4月は、2024年7月の会合で決定された減額計画に沿って、月間の買入れ額を4,000億円程度減額し、月間4.1兆円程度の買入れを行った。

2.金融・為替市場動向

短期金融市場では、翌日物金利のうち、無担保コールレートは0.5%程度で推移した。GCレポレートは、総じてみれば無担保コールレート並みの水準で推移した。ターム物金利をみると、短国レート(3か月物)は、小幅に上昇した。

わが国の株価(TOPIX)は、米国株価に連れつつ、為替円高もあって、下落した。長期金利(10年物国債金利)は、米国長期金利に連れて上下しつつも、期間を通じてみれば、先行きの金融政策運営に対する市場の見方の変化などを背景に、低下した。国債市場の流動性指標をみると、取引高は昨年と比べて高めの水準で推移しているが、ビッド・アスク・スプレッドは、4月入り後、国債市場のボラティリティが上昇するもとで、悪化した。為替相場をみると、円の対ドル相場は、リスクオフ地合いでの円買いの動きが広がる中、米国の景気減速懸念などを意識したドル売りもあって、円高方向の動きとなった。対ユーロ相場は、横ばい圏内となった。

3.海外金融経済情勢

海外経済は、各国の通商政策等の影響を受けて一部に弱めの動きもみられるが、総じてみれば緩やかに成長している。米国経済は、一部に弱めの動きもみられるが、緩やかに成長している。欧州経済は、製造業を中心に弱めの動きがみられている。中国経済は、政策面の下支えはあるものの、不動産市場や労働市場の調整による下押しが続くもとで、改善ペースは鈍化傾向にある。中国以外の新興国・資源国経済は、総じてみれば緩やかに改善している。

先行きの海外経済は、各国の通商政策等の影響を受けて減速するものの、その後は徐々に成長率を高め、緩やかに成長していくと考えられる。先行きの見通しを巡っては、各国の政策運営の帰趨のほか、中国経済の動向や地政学的緊張の展開などについて、不確実性が高い。

海外の金融市場をみると、4月初に、各国の通商政策等の今後の展開やその影響を巡る不確実性が高まり、市場センチメントが大きく悪化した。その後、各国間の一部関税の適用延期等を受けて、市場センチメントの一段の悪化は避けられたものの、足もとでも振れの大きな展開が続いている。米国の長期金利は、4月初にかけていったんは低下したが、その後大きく上昇し、期間を通じてみれば小幅の上昇となった。欧州の長期金利は、ECBによる利下げ織り込みの進展等から、大幅に低下した。米欧の株価は、4月初に大幅下落し、その後反発したものの、期間を通じてみても下落となった。この間、新興国通貨は、各国の通商政策を巡る投資家のリスク回避姿勢が強まる中、いったんは大きく下落したが、その後は下落幅を縮小した。原油価格は、各国の通商政策等の影響を受けた需要減少が懸念されて、下落した。

4.国内金融経済情勢

(1)実体経済

わが国の景気は、一部に弱めの動きもみられるが、緩やかに回復している。先行きについては、各国の通商政策等の影響を受けて、海外経済が減速し、わが国企業の収益なども下押しされるもとで、緩和的な金融環境などが下支え要因として作用するものの、成長ペースは鈍化すると考えられる。

輸出や鉱工業生産は、一部に米国の関税引き上げに伴う駆け込みの動きがみられるが、基調としては横ばい圏内の動きを続けている。先行きは、米国の関税引き上げに伴う駆け込みとその反動が生じるとみられるが、基調としては、海外経済減速による下押し圧力が強まっていくと見込まれる。

企業収益は、改善傾向にある。業況感は良好な水準を維持している。こうしたもとで、設備投資は、緩やかな増加傾向にある。先行きの設備投資は、受注残高解消の動きや人手不足対応の省力化投資が一定の下支えとなるものの、収益環境の悪化や不確実性の高まりが下押し要因となり、増勢が鈍化していく可能性が高い。

個人消費は、物価上昇の影響などから消費者マインドに弱さがみられるものの、雇用・所得環境の改善を背景に緩やかな増加基調を維持している。消費活動指数(実質・旅行収支調整済)をみると、1から2月の10から12月対比は、サービス消費の増加に支えられて、若干増加している。企業からの聞き取り調査や業界統計、高頻度データに基づくと、3月以降の個人消費も、消費者の節約志向の強さを指摘する声は引き続き聞かれるものの、サービスを中心に緩やかな増加基調にあるとみられる。消費者マインドは、米や生鮮食品などの食料品価格の上昇を主因に悪化傾向が続いている。なお、こうした消費者マインドに関する直近のデータには、4月2日の米国による相互関税公表以降の金融市場のボラティリティの高まりは織り込まれていない点には留意が必要である。先行きの個人消費は、当面、食料品価格上昇に伴う消費者マインド悪化の影響が残るものの、春季労使交渉を反映した賃上げの動きが続くもとで、緩やかな増加基調を維持すると予想される。

雇用・所得環境は、緩やかに改善している。就業者数は正規雇用を中心に着実な増加を続けている。一人当たり名目賃金は、はっきりと増加している。先行きの雇用者所得は、本年の春季労使交渉を反映した名目賃金の上昇に支えられて、当面、はっきりとした増加を続けると考えられる。その後は、企業収益の悪化による特別給与への下押し圧力が強まるのに伴い、雇用者所得の増加ペースは鈍化していくと見込まれる。

物価面について、商品市況は、先行きの海外経済減速への警戒感から、総じてみれば下落基調にある。国内企業物価(夏季電力料金調整後)の3か月前比は、このところ0%台後半から1%程度のプラスで推移している。企業向けサービス価格(除く国際運輸)の前年比は、人件費上昇等を背景に高めの伸びを続けており、このところ3%台前半のプラスで推移している。消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、賃金上昇の販売価格への転嫁の動きが続くもとで、既往の輸入物価上昇や米などの食料品価格上昇の影響もあって、足もとでは3%台前半となっている。予想物価上昇率は、緩やかに上昇している。先行きの消費者物価についてみると、当面、米などの食料品価格上昇や政府によるエネルギー代の負担緩和策の反動が押し上げ方向で作用することから、現状程度の上昇率で推移するとみられる。その後は、食料品価格上昇の影響が一巡するもとで、エネルギー価格による振れを伴いつつも、本年末頃にかけてプラス幅を縮小していくと予想される。

(2)金融環境

わが国の金融環境は、緩和した状態にある。

実質金利は、マイナスで推移している。企業の資金調達コストは、上昇している。資金需要面をみると、経済活動の回復や企業買収の動きなどを背景に、緩やかに増加している。なお、現時点では、各国の通商政策等を巡る不確実性の高まりを背景に企業が手元資金を積み増す動きは、限定的となっている。資金供給面では、企業からみた金融機関の貸出態度は、緩和した状態にある。CP市場では、良好な発行環境となっている。社債市場では、4月入り後に、市場のボラティリティ上昇などを受けて、一部で発行スプレッドの拡大や起債延期などの動きがみられているものの、総じてみれば良好な発行環境を維持している。こうした中、銀行貸出残高の前年比は、3%程度となっている。CP・社債計の発行残高の前年比は、4%台後半となっている。企業の資金繰りは、良好である。企業倒産は、増勢が鈍化している。

この間、マネーストックの前年比は、0%台後半となっている。

(3)金融システム

わが国の金融システムは、全体として安定性を維持している。

大手行の収益は、貸出金利息を中心とする資金利益の増加や手数料収入などの非資金利益の増加などを背景に、堅調に推移している。この間、信用コストは、低水準となっている。自己資本比率は、引き続き規制水準を十分に上回っている。

地域銀行の収益は、資金利益の増加などを背景に、堅調に推移している。この間、信用コストは、低水準となっている。自己資本比率は、引き続き規制水準を十分に上回っている。

金融循環面では、金融システムレポートで示しているヒートマップを構成する全14指標のうち12指標が、過熱でも停滞でもない状態となっており、株価等の2指標については、過熱方向にトレンドから乖離した状態となっている。金融ギャップは、ひと頃と比べてプラス幅が縮小した状態が続いており、全体として金融活動に過熱感はみられない。ただし、不動産価格の上昇ペースには引き続き留意が必要であり、今後も、金融活動が実体経済活動から大きく乖離することがないか、注視する必要がある。また、各国の通商政策等を巡る不確実性がきわめて高いことを踏まえると、それが様々な経路を通じて金融システムに及ぼす影響については丁寧にみていく必要がある。

2.金融経済情勢と展望レポートに関する委員会の検討の概要

1.経済・物価情勢の現状

国際金融資本市場について、委員は、(1)4月初に、各国の通商政策等の今後の展開やその影響を巡る不確実性が高まり、市場センチメントが大きく悪化した、(2)その後、各国間の一部関税の適用延期等を受けて、市場センチメントの一段の悪化は避けられたものの、足もとでも振れの大きな展開が続いている、との見方を共有した。ある委員は、米国の金融市場では、一時、株安、長期金利上昇、ドル安の動きがみられたが、今のところ、顕著な換金売り(dash for cash )の動きはみられないと指摘した。そのうえで、この委員は、今後、急激に市場が不安定化することがないか、変化の兆候を掴みにくいノンバンク金融仲介機関(NBFI)の動向などを注視する必要があるとの見解を示した。

海外経済について、委員は、各国の通商政策等の影響を受けて一部に弱めの動きもみられるが、総じてみれば緩やかに成長しているとの認識を共有した。ある委員は、最近の関税政策の影響は、家計や企業のコンフィデンス指標やサーベイデータにはみられ始めているが、現時点では、それによってハードデータが大きく影響される状況には至っていないと指摘した。

米国経済について、委員は、一部に弱めの動きもみられるが、緩やかに成長しているとの認識で一致した。そのうえで、多くの委員は、今後、関税政策は、米国の実体経済を下押しする方向に作用するほか、少なくとも短期的には物価を上押しするとの見解を示した。ある委員は、家計や企業、金融機関のバランスシートが健全であることなどを踏まえると深刻な景気後退は考えにくいが、しばらくは潜在成長率を下回る成長が続く可能性が高いと指摘した。別の一人の委員は、一時凍結されている相互関税の上乗せ部分が撤回されたとしても、関税の物価に及ぼす影響は大きく、個人消費や設備投資には下押し圧力がかかるとの見方を示した。複数の委員は、やや長い目でみて、いったん上昇した物価が経済の減速により下押しされるのか、それとも高めの物価上昇率が継続するのかについては不確実性が大きいと指摘した。そのうえで、このうちの一人の委員は、今後の物価動向を見定めていくためには、労働市場の状況、とくに賃金の動向を注視していくことが重要であると付け加えた。この点に関連し、ある委員は、経済が減速するもとでは、一時的な物価上昇ショックによってインフレ予想のアンカーが上方に外れるリスクは限られるとの見解を示した。この間、一人の委員は、新政権発足以降、経済成長にマイナスに働く関税等の政策が先行しているが、今後、減税等が実現していけば、成長率の上振れもあり得ると指摘した。

欧州経済について、委員は、製造業を中心に弱めの動きがみられているとの認識を共有した。ある委員は、米国の関税引き上げの影響に加え、これまでの投資抑制やコストの高止まりにより、欧州の産業競争力は低下しているとの見方を示した。

中国経済について、委員は、政策面の下支えはあるものの、不動産市場や労働市場の調整による下押しが続くもとで、改善ペースは鈍化傾向にあるとの見方を共有した。一人の委員は、内需低迷や貿易摩擦激化による輸出の減少が懸念されるほか、住宅の販売在庫の大きさを踏まえると不動産市場の回復にはかなりの時間を要する可能性が高いとの見方を示した。

中国以外の新興国・資源国経済について、委員は、総じてみれば緩やかに改善しているとの認識を共有した。ある委員は、米中間の高関税の影響等を受けて、中国から安値輸入品が流入し、ディスインフレが進む可能性には注意する必要があるとの見方を示した。

わが国の金融環境について、委員は、緩和した状態にあるとの認識で一致した。一人の委員は、4月入り後、社債市場では、発行体が起債を延期する動きなどがみられているが、市場変動が大きい時期には想定されることであり、投資家サイドの運用スタンスに大きな変化は窺われていないとの見方を示した。別の一人の委員は、金融機関は積極的な貸出態度を維持しており、資金のアベイラビリティも安定していると指摘した。この点に関連し、ある委員は、金融システムレポートのストレステストで示されているように、わが国金融機関は、相当に厳しいストレスにも耐えうる充実した資本基盤を備えているとの見解を示した。

以上のような海外の金融経済情勢とわが国の金融環境を踏まえて、わが国の経済・物価情勢に関する議論が行われた。

わが国の景気について、委員は、一部に弱めの動きもみられるが、緩やかに回復しているとの認識を共有した。何人かの委員は、これまでのハードデータをみる限り、わが国経済は、概ね従来の見通しに沿って推移しているとの見解を示した。一人の委員は、コンフィデンスなどのサーベイデータをみても、現時点では、各国の通商政策等の影響はまだ強く出ている訳ではないと指摘した。

輸出や鉱工業生産について、委員は、一部に米国の関税引き上げに伴う駆け込みの動きがみられるが、基調としては横ばい圏内の動きを続けているとの認識で一致した。

設備投資について、委員は、企業収益が改善傾向にあり、業況感が良好な水準を維持しているもとで、緩やかな増加傾向にあるとの認識を共有した。複数の委員は、法人企業統計をみると、昨年の企業収益は、価格転嫁の進展や為替円安などを背景に、既往ピーク水準となっていると指摘した。また、別の複数の委員は、現時点のデータでは、人手不足対応の省力化投資などを含め、設備投資の変調を窺わせるものはないとの見解を示した。この間、ある委員は、中小企業に限ってみると、従業員一人当たりの設備投資額は2年連続で減少しており、賃上げと設備投資の両立は難しい状況が続いているとの見方を示した。

個人消費について、委員は、物価上昇の影響などから消費者マインドに弱さがみられるものの、雇用・所得環境の改善を背景に緩やかな増加基調を維持しているとの認識で一致した。ある委員は、物価上昇を背景に家計の節約志向は強まっているが、若年層を中心とする所得の改善が、そうした負の影響をある程度打ち返しており、全体として個人消費は堅調に推移していると指摘した。

雇用・所得環境について、委員は、緩やかに改善しているとの見方を共有した。ある委員は、連合の春季労使交渉に関する集計結果では、比較的規模が小さい先を含めて昨年並み以上の賃上げ率が実現しているほか、4月の支店長会議でも、中小企業を含めた企業の賃上げモメンタムの強さを窺わせる報告が多く聞かれたと指摘した。一方、一人の委員は、雇用の7割を占める中小企業でも賃上げ率は高まっているが、大企業との格差は拡大しており、賃上げモメンタムの定着にはなお距離があるとの見解を示した。

物価面について、委員は、賃金上昇の販売価格への転嫁の動きが続くもとで、既往の輸入物価上昇や米などの食料品価格上昇の影響もあって、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、足もとでは3%台前半となっているとの認識で一致した。ある委員は、全国に先行して公表された4月の東京都区部の消費者物価の前年比をみると、家賃を除く一般サービスの伸び率が3%を上回ったほか、東京固有の要因である可能性はあるものの、家賃の伸び率も大きく高まっていると指摘した。この点に関連し、一人の委員は、東京以外の地域では、全体として家賃の上昇率は小幅にとどまっているが、新規家賃については、大都市圏を中心に、このところ上昇の動きが目立ってきていると指摘した。この間、予想物価上昇率について、委員は、緩やかに上昇しているとの見方で一致した。

2.経済・物価情勢の展望

2025年4月の「経済・物価情勢の展望」(展望レポート)の作成にあたり、最初に、委員は、中心的な見通しの前提について議論した。委員は、各国の通商政策等の今後の展開やその影響を巡る不確実性が高く、様々な見方が存在する中にあっては、関税政策に関する最近の動きなどを踏まえつつ、委員の間である程度議論の前提を揃えることが、日本銀行としての中心的な見通しを検討し、その結果を対外的にわかりやすく伝える観点から望ましいとの認識で一致した。そのうえで、委員は、今回の展望レポートの中心的な見通しは、(1)今後、各国間の交渉がある程度進展するほか、(2)グローバルサプライチェーンが大きく毀損されるような状況は回避されることなどを共通の前提として作成することが適当であるとの認識を共有した。また、委員は、今後の各国の通商政策の帰趨や、それを受けた各国の企業・家計の対応次第では、経済・物価の見通しが大きく変化する可能性があるとの認識も共有した。ある委員は、米国の関税政策の着地とそれへの企業の対応は二重の意味で流動的であり、現時点での見通しは仮置きに止まり、今後の推移次第で、見通しには大きな修正がありうるとの見解を示した。

次に、委員は、これらの前提のもとで、経済情勢の先行きの中心的な見通しについて議論を行った。委員は、わが国経済について、(1)各国の通商政策等の影響を受けて、海外経済が減速し、わが国企業の収益なども下押しされるもとで、緩和的な金融環境などが下支え要因として作用するものの、成長ペースは鈍化する、(2)その後は、海外経済が緩やかな成長経路に復していくもとで、わが国経済も成長率を高めていくと見込まれるとの認識を共有した。

委員は、米国の関税政策やそれに対する各国の通商政策は、わが国の経済を下押しする方向に作用するとの見方を共有した。そのうえで、多くの委員は、関税政策は、主として、貿易面および企業や家計のコンフィデンス面から、わが国経済を下押しすると指摘した。ある委員は、資源価格下落等に伴う正の供給ショックも見込まれるが、様々な経路を介して発現する負の需要ショックよりは小さいと考えられると付け加えた。

貿易を通じた経路について、何人かの委員は、関税の引き上げは、米国内でのわが国企業の価格競争力の低下に加え、貿易の縮小を介した世界経済全体の下押しを通じて、わが国の輸出を押し下げるとの認識を示した。また、複数の委員は、為替が円高方向で推移すれば、わが国の輸出にマイナスの影響を及ぼすと指摘した。別の一人の委員は、高関税が長期化すれば、直接的影響を受ける輸出企業を中心に、事業再編やサプライチェーン強靱化のための取引先の選別、生産拠点の米国シフト等が進む惧れがあり、これが、経営体力が比較的弱い中小企業に影響を及ぼす懸念があると述べた。この点に関連し、ある委員は、当面影響が懸念されるのは、個別関税が設定されている自動車であるが、米中間の高関税により中国経済が更に落ち込むようなことがあれば、より幅広い製造業に影響が及ぶ可能性があると指摘した。これに対して、一人の委員は、1990年代の円高局面と違い、今回の相互関税は世界各国に賦課されるため価格転嫁も可能であり、わが国企業の相対的な競争条件悪化には繋がり難く、収益減少が限られる可能性もあると指摘した。別の一人の委員は、理論的には、米国による関税賦課はドル高・円安方向の圧力をかけることになるため、わが国の輸出に対する影響を緩和する可能性もあるとの見解を示した。そのうえで、この委員は、GDPに占める輸出の割合等でみたわが国経済の貿易依存度はそこまで高くないため、関税政策の動向だけでなく、国内要因にも注目して、冷静に金融経済の状況を判断していく必要があると付け加えた。

企業や家計のコンフィデンスを通じた経路について、複数の委員は、不確実性の高まりが企業マインドを慎重化させ、設備投資を当面見送ることを選択する先が増えると予想されるが、その影響の大きさについては、各国の通商政策等の今後の展開や金融・為替市場の動向等に応じて、大きく変化しうるとの見方を示した。一人の委員は、今次局面は、過去のコンフィデンス悪化局面と異なり、米国政権の決定により状況が突然大きく変化しうるという特殊性があり、その分、企業や家計の行動が読みにくいと指摘したうえで、日本銀行としては、各支店のヒアリング情報なども活用しながら、設備投資や個人消費の動向をきめ細かく確認していくことが必要との認識を示した。

わが国の輸出や鉱工業生産について、委員は、海外経済の減速を背景に、弱めの動きになると見込まれるものの、その後は、増加基調に復していくと考えられるとの認識で一致した。

設備投資について、委員は、緩和的な金融環境が下支え要因として作用する中、人手不足対応やデジタル関連の投資、成長分野・脱炭素化関連の研究開発投資、サプライチェーンの強靱化に向けた投資は継続されるものの、海外経済減速の影響を受けて伸び率は鈍化すると見込まれるとの認識を共有した。また、その後は、企業収益が内外需要の増加から改善していくとみられる中、需要増に対応した能増投資もあって、増加傾向を続けるとの見方で一致した。

個人消費について、委員は、当面は物価上昇の影響を受けつつも、雇用者所得の増加が続くことなどから、緩やかな増加基調を維持するとの見方で一致した。また、その後についても、雇用者所得の増加が続くもとで、個人消費は緩やかに増加していくとの認識を共有した。

雇用者所得について、委員は、本年の春季労使交渉を反映した名目賃金の上昇に支えられて、当面、はっきりとした増加を続けるものの、企業収益の悪化による特別給与への下押し圧力が強まるのに伴い、増加ペースは鈍化していくとの認識を共有した。また、その後は、企業収益の回復に伴い、名目賃金の上昇率が再び高まるもとで、雇用者所得の増勢も強まっていくとの見方を共有した。

こうした議論を経て、委員は、中心的な成長率の見通しは、1月の展望レポート時点と比べると、2024年度は、個人消費を中心に幾分上振れているが、2025年度と2026年度は、各国の通商政策等の影響を受けて、下振れているとの認識を共有した。

続いて、委員は、物価情勢の先行きの中心的な見通しについて議論を行った。委員は、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比について、2025年度に2%台前半となったあと、2026年度は1%台後半、2027年度は2%程度になるとの見方を共有した。委員は、これまで物価上昇率を押し上げてきた既往の輸入物価上昇やこのところの米などの食料品価格上昇の影響は減衰していくとの認識で一致した。そのうえで、委員は、消費者物価の基調的な上昇率は、成長ペース鈍化などの影響を受けて伸び悩むものの、その後は、成長率が高まるもとで人手不足感が強まり、中長期的な予想物価上昇率が上昇していくことから、徐々に高まっていくと予想され、見通し期間後半には「物価安定の目標」と概ね整合的な水準で推移するとの見方を共有した。何人かの委員は、今回前提とした各国の通商政策等の影響がみられるもとでも、引き続き賃金の伸びと労働需給の引き締まりに支えられ、基調的な物価上昇率は、2%に向けて徐々に高まっていくという大きな方向感はこれまでと変わらないとの認識を示した。そのうえで、複数の委員は、中心的な見通しのもとでは、基調的な物価上昇率が「物価安定の目標」と概ね整合的な水準で推移するようになる時期は、従来の見通しから1年程度、後ずれするとの見方を示した。

委員は、各国の通商政策は、物価に対して上下双方向の影響を及ぼしうるが、今回の前提のもとでは、今後の成長ペース鈍化などを通じて、中心的な見通しを押し下げる方向で作用するとの見方を共有した。また、一人の委員は、サプライチェーンが混乱するようなことがあれば、一時的には物価を押し上げる可能性があるが、混乱が長引けば、企業収益や賃金への下押し要因として働き、基調的な物価上昇率を押し下げる要因として作用する可能性があるとの見解を示した。この間、別の一人の委員は、関税の賦課は短期的な価格ショックと考えることもでき、長期的には実質的な効果を持たないとの理論上の結論はありうることから、現時点では、やや長い目でみれば、関税政策とその不確実性が、基調的な物価上昇率や潜在成長率に影響を与えるとはみていないとの認識を示した。

委員は、こうした中心的な物価の見通しを、1月の展望レポート時点と比べると、2025年度と2026年度は、原油価格の下落や今後の成長ペースの下振れの影響などから下振れているとの認識を共有した。

次に、委員は、経済・物価の見通しのリスク要因(上振れ・下振れの可能性)について議論を行った。委員は、リスク要因としては様々なものがあるが、とくに、各国の通商政策等の今後の展開やその影響を受けた海外の経済・物価動向を巡る不確実性はきわめて高く、その金融・為替市場やわが国経済・物価への影響については、十分注視する必要があるとの見方を共有した。

そのうえで、経済の主なリスク要因として、委員は、(1)各国の通商政策等の動きやその影響を受けた海外の経済・物価動向、(2)輸入物価の動向、(3)わが国を巡る様々な環境変化が企業や家計の中長期的な成長期待や潜在成長率に与える影響、の3点を挙げた。

物価のリスク要因について、委員は、上記の経済のリスク要因が顕在化した場合には、物価にも影響が及ぶほか、物価固有のリスク要因として、(1)企業の賃金・価格設定行動やそれらが予想物価上昇率に与える影響、(2)今後の為替相場の変動や国際商品市況を含む輸入物価の動向、およびその国内価格への波及には注意が必要であるとの見方で一致した。

各国の通商政策等の動きが物価に及ぼすリスクに関連して、ある委員は、輸出企業を中心とした企業収益の減少が、今後、サプライヤーへの原価低減圧力の強まりや賃金設定行動の変化を介して、基調的な物価上昇率を押し下げうると指摘した。この点に関連し、一人の委員は、先行きの賃上げ気運を維持していくためには、本年の冬季賞与や来年の賃上げに向けて、企業経営者がどのようなメッセージを打ち出していくかが重要なポイントになると指摘した。別の一人の委員は、企業や家計の予想物価上昇率がどのように推移するのか、企業の賃金・価格設定行動がデフレ・低インフレ下のものに戻ることがないかといった点を、ヒアリングなども含め、しっかりモニタリングしていく必要があると述べた。また、何人かの委員は、米中間の高関税の影響等を受けて、中国から安値輸入品がわが国に流入し、物価を押し下げるリスクもあるとの認識を示した。これに対して、複数の委員は、各国間の交渉の帰趨次第では、中心的な見通しよりも物価が上振れる可能性もあると指摘した。このうちの一人の委員は、成長率や消費者物価の前年比が今回の見通し通りに推移するとしても、企業や家計の予想物価上昇率や、企業の賃金・価格設定行動の状況次第では、基調的な物価上昇率は見通し期間前半に「物価安定の目標」と概ね整合的な水準で推移する可能性も十分あると付け加えた。また、この委員は、物価は2027年度まで2%近傍を維持する見通しにある中で、グローバルサプライチェーンの混乱等による物価上振れリスクには留意が必要であるとの見解を示した。この間、何人かの委員は、為替相場が大きく変動すれば、物価にも影響が及びうると付け加えた。

リスクバランスについて、委員は、各委員が示したリスク評価を全体として評価すると、(1)経済の見通しについては、2025年度と2026年度は下振れリスクの方が大きい、(2)物価の見通しについても、2025年度と2026年度は下振れリスクの方が大きい、との認識を共有した。

3.金融政策運営に関する委員会の検討の概要

以上のような金融経済情勢に関する認識を踏まえ、委員は、金融政策運営に関する議論を行った。

次回金融政策決定会合までの金融市場調節方針について、委員は、「無担保コールレート(オーバーナイト物)を、0.5%程度で推移するよう促す」という方針を維持することが適当であるとの見解で一致した。多くの委員は、経済・物価見通しの下振れや不確実性の高まりを踏まえると、現時点では、緩和的な金融環境を維持しつつ、各国の通商政策等の今後の展開やその影響を丁寧に確認していくことが適当であると指摘した。何人かの委員は、現在の実質金利はきわめて低い水準にあり、これを維持することで、経済をしっかりと支えていくことが重要であるとの見解を示した。このうちの一人の委員は、金利の下限制約から脱却して1年以上経つが、経済と物価はしっかりしており、現在の金融政策スタンスは、とても緩和的な状況にあると付け加えた。ある委員は、1月に決定した政策金利引き上げの影響も、確認していく必要があるとの見解を示した。別のある委員は、米国の関税政策の展開がある程度落ち着くまで、取りあえずは様子見モードを続けざるを得ないと述べた。この間、一人の委員は、最近の関税政策により、企業における行き過ぎたコストカット、賃上げ・投資の抑制や産業の空洞化に陥る可能性も考えられることから、企業マインドや倒産の傾向に変化がないか注視する必要があるとの見方を示したうえで、経済への影響を慎重に見極めるため、現在の調節方針を維持することが適当であると述べた。

先行きの金融政策運営について、委員は、経済・物価の見通しが実現していくとすれば、経済・物価情勢の改善に応じて、引き続き政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整していくことが適当との見方で一致した。何人かの委員は、現在の実質金利が大幅なマイナスであり、かつ、先行き2%の「物価安定の目標」を実現する姿になっていることを踏まえると、方向としては、これまで同様、政策金利を引き上げていくのが適当であるとの認識を示した。このうちの一人の委員は、健全なバランスシートなど、日本企業の財務体質が過去と比べて大きく改善している点も認識しておく必要があると述べた。ある委員は、「物価安定の目標」の実現に向けて最も重要なのは、企業の賃金・価格設定行動や企業や家計の予想インフレ率の動向であるが、これらが以前の賃金・物価が上がりにくい頃の状況に戻るリスクは小さく、2%に向けて上昇してきた基調的な物価上昇率が下方に屈折してしまう可能性は小さいとの見方を示した。

そのうえで、多くの委員は、経済・物価の見通しが実現していくかについては、各国の通商政策等の今後の展開やその影響を巡る不確実性がきわめて高い状況にあることを踏まえ、内外の経済・物価情勢や金融市場の動向等を丁寧に確認し、予断を持たずに判断していくことが重要であると指摘した。ある委員は、前提となる各国の交渉の帰趨を含めて、不確実性がきわめて高い中で、見通し自体が上下に変化しうるため、見通し実現の確度やリスクを見極めていく必要があるとの認識を示した。一人の委員は、今回の経済・物価見通しの確度は従来と比べて高くはないとの見方を示したうえで、先行き、見通しの上振れ・下振れ双方の可能性を点検し、適切に政策を運営していく必要があると述べた。別の一人の委員は、米国経済減速から利上げの一時休止局面となるが、米国の政策転換次第で追加的な利上げを行うなど、過度な悲観に陥ることなく、自由度を高めた柔軟かつ機動的な金融政策運営が求められるとの認識を示した。また、別のある委員は、サプライチェーンの毀損などにより経済が下押しされると同時に物価が上押しされるような状況となれば、米国と比べて予想インフレ率がアンカーされていないわが国では、金融政策での対応がより難しくなる可能性があると指摘した。

委員は、金融政策運営に関する情報発信のあり方についても議論を行った。何人かの委員は、経済・物価の見通しが上下双方向で大幅に変化しうるもとでは、先行きの政策金利のパスは、中心的な見通しのもとで予想されるものから変わり得ることを丁寧に説明していくことが重要であると指摘した。また、ある委員は、様々な不確実性の存在を前提としつつも、今回示した中心的な見通しのもとでは、2%の「物価安定の目標」は、後ずれはするものの達成できるという見通しがあり、その見通しに立つのであれば、これまで同様、政策金利の引き上げにより金融緩和の度合いを調整していくことが適当であるという、現時点での日本銀行の基本的な考え方を説明していくことが大切であるとの意見を述べた。この点に関連して、一人の委員は、市場は、日本銀行の従来からの基本方針を前提に、内外の新しい情報を自ら咀嚼して、日本銀行からの直接的な示唆を俟つことなく、利上げ時期についての見方を形成し、自ら修正し続けていると指摘した。そのうえで、この委員は、市場が日本銀行の細かな言い振りよりも、経済・物価の動向に着目するようになることが望ましく、日本銀行としても、そうした状況を維持できるような情報発信を続けることが適切であるとの見解を示した。

以上のような議論を受けて、議長は、執行部に対し、「展望レポート」で、先行きの金融政策運営についてどのように記述することが考えられるか、案を示すよう指示した。執行部からは、(1)金融政策運営については、現在の実質金利がきわめて低い水準にあることを踏まえると、本日議論したような経済・物価の見通しが実現していくとすれば、経済・物価情勢の改善に応じて、引き続き政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整していくことになると考えている、(2)そのうえで、こうした見通しが実現していくかについては、各国の通商政策等の今後の展開やその影響を巡る不確実性がきわめて高い状況にあることを踏まえ、内外の経済・物価情勢や金融市場の動向等を丁寧に確認し、予断を持たずに判断していくことが重要と考えている、(3)日本銀行は、2%の「物価安定の目標」のもとで、その持続的・安定的な実現という観点から、経済・物価・金融情勢に応じて適切に金融政策を運営していく、と記述することが考えられると報告した。

執行部の説明に対し、委員は、執行部の示した案は適当であるとの見解を共有した。何人かの委員は、今回の中心的な見通しは、各国の通商政策等の今後の展開について一定の前提を置いたものであり、今後の各国の政策の帰趨や、それを受けた各国の企業・家計の対応次第で見通しが大きく変化しうる点も、「展望レポート」において併せて説明していく必要があるとの見解を示した。

委員は、最近の国債市場の動向と日本銀行の国債買入れに関する考え方についても、議論した。何人かの委員は、(1)長期金利は金融市場において形成されることが基本であること、(2)日本銀行による長期国債の買入れは、国債市場の安定に配慮するための柔軟性を確保しつつ、予見可能なかたちで減額していくことが適当であること、といった基本的な考え方を改めて示した。このうちの一人の委員は、減額計画を定める際には、どの程度の減額であれば国債市場の機能に混乱が生じる可能性を低く抑えられるか、がポイントとなると指摘した。何人かの委員は、超長期国債の金利が大幅に上昇するなど、年限間の分断が生じているとの見方を示した。このうちの一人の委員は、国債買入れの減額計画の中間評価に向けて、年限別の需給動向や流動性、業態毎に異なる見方を丁寧に確認することが重要であると述べた。この点に関連して、何人かの委員は、超長期金利の上昇については、そもそも同市場の参加者が限られているもとで、規制対応の一巡により投資家需要が減退していることなどが影響しているとの指摘が市場参加者から聞かれていると付け加えた。ある委員は、例外的な状況を除き、日本銀行が、一時的な需給バランスの変化に都度対応すると、市場の機能を再び損なうことになってしまうとの認識を示した。一人の委員は、中央銀行が市場を十分に考慮することは当然であるが、一方で、その時々の市場の意見に反応しすぎると、その柔軟性が却って予見可能性を低下させ、市場の不確実性をより高める可能性があると指摘した。これらの議論を踏まえ、委員は、6月の金融政策決定会合では、市場参加者の意見や見方を十分に確認したうえで、国債市場の動向や機能度についてしっかりと点検し、現在の減額計画の中間評価を行うとともに、来年4月以降の国債買入れ方針を検討する必要があるとの認識で一致した。

4.政府からの出席者の発言

財務省の出席者から、以下の趣旨の発言があった。

  • 政府は、米国との協議状況や、関税措置による輸出産業、関連する中小企業や地域経済、さらには国民生活への影響をよく注視し、資金繰り支援など必要な支援に万全を期する。
  • 日本銀行には、政府との緊密な連携のもと、内外の経済情勢等を十分に注視しつつ、2%の物価安定目標の持続的・安定的な実現に向けた適切な金融政策運営を期待する。その上で、情報発信を含め、しっかりと金融資本市場とコミュニケーションを図っていただきたい。

また、内閣府の出席者から、以下の趣旨の発言があった。

  • 日本経済は、緩やかに回復しているが、米国の通商政策等による不透明感がみられ、また、物価上昇の継続が個人消費に及ぼす影響等とあわせて一層注意が必要である。
  • 政府は、「米国関税措置を受けた緊急対応パッケージ」に沿って、必要な支援に万全を期すとともに、賃上げの流れを中小企業や地方経済に広げる政策を推進する。
  • 日本銀行には、政府と緊密に連携し、2%の物価安定目標の持続的・安定的な実現に向けて、適切な金融政策運営を期待する。

5.採決

1.金融市場調節方針

以上の議論を踏まえ、議長から、委員の意見を取りまとめるかたちで、金融市場調節方針について、以下の議案が提出され、採決に付された。

採決の結果、全員一致で決定された。

金融市場調節方針に関する議案(議長案)

次回金融政策決定会合までの金融市場調節方針を下記のとおりとすること。

無担保コールレート(オーバーナイト物)を、0.5%程度で推移するよう促す。

採決の結果

  • 賛成:植田委員、氷見野委員、内田委員、中村委員、野口委員、中川委員、高田委員、田村委員、小枝委員
  • 反対:なし

2.対外公表文(「当面の金融政策運営について」)

議長から、対外公表文(「当面の金融政策運営について」<別紙>)が提案され、採決に付された。採決の結果、全員一致で決定され、会合終了後、直ちに公表することとされた。

6.「経済・物価情勢の展望」の検討

続いて、「経済・物価情勢の展望」の「基本的見解」の文案が検討され、議長から、委員の見解を取りまとめるかたちで、議案が提出された。採決の結果、全員一致で決定され、会合終了後、直ちに公表することとされた。また、背景説明を含む全文は、5月2日に公表することとされた。

7.議事要旨の承認

議事要旨(2025年3月18、19日開催分)が全員一致で承認され、5月8日に公表することとされた。

以上


  • (注)「無担保コールレート(オーバーナイト物)を、0.5%程度で推移するよう促す。」本文に戻る

別紙

2025年5月1日
日本銀行

当面の金融政策運営について

日本銀行は、本日、政策委員会・金融政策決定会合において、次回金融政策決定会合までの金融市場調節方針を、以下のとおりとすることを決定した(全員一致)。

無担保コールレート(オーバーナイト物)を、0.5%程度で推移するよう促す。

以上