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金融政策決定会合における主な意見
(2018年1月22、23日開催分)1

2018年1月31日
日本銀行

I.金融経済情勢に関する意見

経済情勢

  • 先進国と新興国がバランスよく成長する中、生産・貿易活動の活発化を通じて、製造業サイクルが好転し始めていることなどから、世界経済は、当面、しっかりとした成長を続けると考えている。
  • 世界経済は、暫くの間、成長を続けていくとみている。もっとも、米国経済や地政学のイベントで、グローバルな金融市場の変調が生じるリスクを注視している。
  • わが国の景気は、所得から支出への前向きの循環メカニズムが働くもとで、緩やかに拡大している。先行きも、きわめて緩和的な金融環境と政府の既往の経済対策による下支えなどを背景に、景気の拡大が続くとみられる。
  • わが国経済はバランス良く成長している。需要の増加が、企業の生産性向上に向けた取り組みや能力増強を企図した設備投資、労働力率の上昇等、経済の供給面の拡大を後押ししている。
  • 供給面の拡大に伴い、経済の中長期的な成長力が高まりつつある。こうした変化は、過去、長期にわたる需要不足とデフレのもとで生じたヒステリシス(履歴効果)の希薄化と捉えることもできる。
  • わが国の景気は緩やかに拡大している。家計や企業の慎重な行動様式が徐々に活性化しつつあり、先行き2017、2018年度は潜在成長率を上回る成長を続けると見込まれる。その後、2019年度は、消費税率引き上げの影響もあり、成長ペースは鈍化するとみられる。
  • 今後の経済成長や物価動向を考える上では、個人消費の抑制要因になっている社会保障制度が、今後どのように改革されるかが重要である。

物価

  • 消費者物価の前年比は、マクロ的な需給ギャップの改善や中長期的な予想物価上昇率の高まりなどを背景に、プラス幅の拡大基調を続け、2%に向けて上昇率を高めていくと考えられる。
  • 原油価格の上昇に伴う企業間での物価上昇に加え、労働需給の引き締まりや政府の旗振りによる賃上げの可能性も高まってきており、これらが今後、消費者物価を押し上げていくと考えられる。
  • 企業の価格設定スタンスは、雇用・所得環境の改善や株価上昇に伴うマインドの好転により、少しずつ積極化している。
  • 消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、2%に向けて緩やかに上昇していくとみられる。しかし、マクロ的な需給ギャップは着実に改善している一方、予想物価上昇率の形成が適合的であるため、2%に達するには暫く時間がかかると見込まれる。
  • 男性の就業率がいまだ低いことや、通常、失業率が高い若年労働者の比重が過去に比べて低くなっていることを考えると、現状2.7%の失業率が2%前後にならないと2%の「物価安定の目標」は達成できないと試算される。これはあくまでも試算であるが、目標の達成には、現状の失業率がさらに低下する必要がある。
  • 物価上昇率は、原油価格の影響を除くと、依然として緩慢である。需給ギャップや予想インフレ率が物価を押し上げる動きが、「物価安定の目標」の達成に向けて十分に働いているとは言い難い。

II.金融政策運営に関する意見

  • 生鮮食品を除く消費者物価の前年比は、プラス幅を拡大している。もっとも、エネルギー価格上昇の影響を除くと、なお弱めの動きが続いていることから、現在の強力な金融緩和を粘り強く進めていくことが必要である。
  • 息長く経済の好循環を支えて「物価安定の目標」の実現に資するべく、現在の金融政策を継続するべきである。
  • 2%の「物価安定の目標」達成にまだ距離がある現在は、金融政策は現状維持が妥当である。
  • 物価については、雰囲気は多少良くなっているとみているが、引き続き企業の価格引き上げの動きは限定的であり、腰を据えて、きわめて緩和的な金融環境を維持すべく、金融政策を運営していくことが必要であると判断している。
  • しつこいデフレマインドを踏まえると、「適合的な期待形成」を通じた予想物価上昇率の引き上げに、かなりの時間を要する可能性もある。強力な金融緩和を粘り強く続け、物価に現れ始めた明るい動きを持続的に支えていくことが必要である。
  • 今後、2%に向けて物価が上昇し、経済の中長期的な成長力が高まるもとでは、金融緩和政策の効果は強まることになる。そうした環境変化や副作用も考慮しながら、先行き、望ましい政策運営のあり方について、検討していくことも必要になるのではないか。
  • 先行き、経済・物価情勢の改善が続くと見込まれる場合には、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」の枠組みのもとで、その持続性を強化する観点も含め、金利水準の調整を検討することが必要になる可能性もあるのではないか。
  • 10年以上の幅広い期間にわたる国債金利を一段と引き下げることで、需給ギャップ拡大の勢いを強め、物価をより押し上げるべきである。
  • 2%の「物価安定の目標」まで距離がある現状では、市場で早期に金融緩和の修正期待が高まることは好ましくない。追加緩和やコミットメント強化によって、目標達成に向けた強いスタンスを示す必要がある。超長期国債の買入れ減額が、金融政策の意図せざるシグナル効果を持ち得るのであれば、是正すべきである。
  • 国債買入れオペの金額やタイミングは、金融政策決定会合で決定された調節方針に沿って実務的に決まるものであり、オペの運営が先行きの政策スタンスを示すことはない。
  • 現時点では、金融システムや金融機関の金融仲介機能に支障はないが、米国債のイールドカーブのフラット化や金融機関の外貨調達コストの上昇などの国内外の市場環境の変化と、これに伴う金融機関の収益や金融システムへの影響には留意が必要である。
  • 金利を引き下げると銀行の貸出意欲が低下し、金融緩和効果を阻害するというリバーサル・レートの議論は、銀行の自己資本制約が貸出を減らし、景気を悪化させるという議論と似ている。これは、資金供給の一部分に焦点を当てた議論であり、企業の他の代替的資金調達手段や借入需要の増加を十分に考慮していない議論である。
  • ETFをはじめとする各種リスク資産の買入れについては、株価や企業収益などが大きく改善していることや、今後も堅調に推移すると見込まれることを踏まえると、政策効果と考え得る副作用について、あらゆる角度から検討すべきである。
  • 日本がデフレを脱却し、持続的成長を実現するためには、中長期的な財政の持続可能性に配慮しつつ、政府と日本銀行が一体となって、マクロ経済政策運営を強力に推進することが重要である。政府債務残高対GDP比率の高さや急速な高齢化による将来の財政支出の増加を考えると、財政収支の赤字を拡大させ続けることにはリスクがある。しかし、財政収支の赤字額の減少速度、すなわち、財政緊縮のスピードを調整することによって、デフレ脱却に向けた財政政策と中長期的な財政の持続可能性の維持とを両立させる余地がある。

III.政府の意見

財務省

  • 先般、平成30年度予算および平成29年度補正予算を国会に提出した。
  • 平成30年度予算は、経済再生と財政健全化の両立を実現する予算となっている。経済の好循環をより確かなものとし、持続的な経済成長を実現するためにも、本予算の早期成立を目指していく。
  • 日本銀行が、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」に沿って、引き続き、経済・物価・金融情勢を踏まえつつ、「物価安定の目標」の実現に向けて努力されることを期待する。

内閣府

  • 今後、これまでの改革の取り組みを経済財政諮問会議において十分精査し、本年夏の骨太方針において、プライマリーバランス黒字化の達成時期およびその裏付けとなる計画を示していく。
  • 日本銀行には、経済・物価・金融情勢を踏まえつつ、2%の「物価安定の目標」の実現に向け、着実に取り組むことを期待する。
  • 金融政策運営の状況や物価の見通し等を引き続き十分説明いただきたい。

以上


  1. 「金融政策決定会合における主な意見」は、(1)各政策委員および政府出席者が、金融政策決定会合で表明した意見について、発言者自身で一定の文字数以内に要約し、議長である総裁に提出する、(2)議長はこれを自身の責任において項目ごとに編集する、というプロセスで作成したものである。 本文に戻る