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金融政策決定会合における主な意見
(2019年12月18、19日開催分)1

2019年12月27日
日本銀行

1.金融経済情勢に関する意見

経済情勢

  • わが国の景気は、海外経済の減速や自然災害などの影響から輸出・生産や企業マインド面に弱めの動きがみられるものの、基調としては緩やかに拡大している。
  • わが国経済は、民間設備投資や公共投資など堅調な内需により緩やかな拡大が維持されており、外需の下振れや消費税率引き上げの影響は限定的である。先行きの不確実性の見極めが当面の焦点である。
  • わが国の景気は、基調としては緩やかに拡大している。ただし、海外経済の減速や消費税率の引き上げの影響等に注意が必要である。
  • 先行きについては、当面、海外経済の減速の影響が続くものの、国内需要への波及は限定的となり、景気の拡大基調が続くとみられる。
  • 先行き、内需の底堅さは維持されると見込まれるほか、海外経済も持ち直しの兆しが見られ始めており、わが国の景気は、緩やかな拡大基調を維持していくと考えられる。
  • 海外経済を巡るリスクについては、下振れリスクが高まりつつある状況から、依然高水準ではあるものの、上振れ・下振れの双方向にリスクプロファイルが変化しつつある。
  • わが国の経済・物価動向をみると、米中貿易協議の部分合意や英国の総選挙を受けて目先の不透明要因が幾分剥落した一方で、消費税率引き上げや天候不順による経済の下押しの影響もあり、全体として楽観できない情勢が続いている。
  • 市況は好転しているが、内外経済のリスクが高止まりするもとで、景況感は後退し、物価の動きも弱い。先行きは、所得から支出への好循環の前提である海外経済の改善、総雇用者所得の増大に加え、消費税率引き上げで消費性向が下がらないか、見極めが重要である。
  • 消費は、10月以降大きく落ち込んでいる。これは前回の消費税率引き上げ後に生じたような消費の停滞の始まりの可能性もある。本年12月短観の小売業の業況判断は、現状は悪いが先行きは改善する姿となっている。前回の消費税率引き上げ後も同様の姿がみられたが、実際に消費が改善したのは3年程度たってからであった。
  • 個人消費を取り巻く環境をみると、10月以降も雇用・所得環境は良好であり、消費者マインドは幾分改善している。現時点では、個人消費の底堅さに変調をきたしているとみる必要はない。
  • わが国の輸出と輸入に占めるドル建て比率の差や対外直接投資などに起因する実需の円売り・ドル買いが、投機的な円買いを上回る場合には、ドル円相場の安定が続く可能性がある。

物価

  • 消費者物価の前年比は、当面、原油価格の下落の影響などを受けつつも、マクロ的な需給ギャップがプラスの状態を続けることや中長期的な予想物価上昇率が高まることなどを背景に、2%に向けて徐々に上昇率を高めていくと考えられる。
  • 景気の拡大基調が続き、プラスの需給ギャップが維持されるもとで、物価が徐々に上昇していく基本的なメカニズムは維持されている。
  • 物価は、堅調な設備投資に伴う生産性向上効果などもあり、上昇率が抑制された状況が続いている。生産性向上の余地が縮小し、物価が徐々に上昇率を高めるまで、緩やかなプラスの需給ギャップを維持することが肝要である。
  • プラスの需給ギャップが物価上昇を支えているが、プラス幅は縮小したままである。「物価安定の目標」に向けたモメンタムが損なわれる惧れについて、一段と高まってはいないが、注意が必要な状況は続いている。
  • 「物価安定の目標」に向けたモメンタムを構成するマクロ的な需給ギャップと中長期的な予想物価上昇率に関する最新の情報を、外部に十分に提供していくことが重要である。

2.金融政策運営に関する意見

  • 「物価安定の目標」に向けたモメンタムが損なわれる惧れは一段と高まってはおらず、現状の金融市場調節方針と資産買入れ方針を維持することが適当である。
  • 息長く経済の好循環を支えて、「物価安定の目標」の実現に資するべく、現在の金融政策運営方針を粘り強く継続すべきである。
  • 金融・財政のポリシーミックスのもとで、現行の緩和政策を維持することで、息の長い経済成長を支えることが重要である。その際、緩和政策の副作用について多面的に点検しつつ、充分留意して政策運営することが肝要である。
  • 海外経済の動向を中心に、経済・物価の下振れリスクに注意が必要な情勢が続いており、引き続き、緩和方向を意識した政策運営を行うことが適当である。
  • 世界経済を取り巻く環境には未だ高い不確実性が残っており、政策判断についても予断を持てない状況から脱しているわけではない。
  • 下方リスクの厚い現在、追加緩和の要否を引き続き検討すべきであり、リスクシナリオの一環として次なる景気後退への備えを考えておくべきである。その際は、金融政策もさることながら、政府の財政政策および成長政策との連携強化が一層重要になる。
  • 前回の消費税率引き上げ時には、約半年後に「量的・質的金融緩和」の拡大を行ったが、今回も消費の基調次第で、一層の金融緩和が必要になる。
  • 政策枠組みは不断に検討すべきだが、IMFが提言するような物価安定目標のレンジ化は、日本銀行の物価安定へのコミットメントを弱体化させる惧れがある。
  • 現状の金融政策は、ある程度柔軟なイールドカーブ・コントロールにより、景気悪化に対して金利の低下を許容することで、一定の景気刺激効果がある。しかし、足もと、金利は上昇気味にあり、これでは不十分な惧れがある。
  • モメンタム、物価目標、政策判断の関係が不明瞭で、モメンタムの具体的な判断基準も不明確である。フォワードガイダンスは物価目標自体と具体的に紐づけた強力なものに修正することが必要ではないか。
  • 金融システムは全体として安定性を維持しているが、構造問題や低金利環境の影響が累積し続けていることを踏まえ、金融仲介機能への副作用に留意することが重要である。
  • 家計・企業の合計では金融資産超過となっており、預金に口座維持手数料が賦課されることになれば、資産利回り低下の影響が借入に伴う負債コスト低下の効果を上回る可能性がある。また、株価などの動向次第では、相対的に収益率の高い株式を多く持つ主体がより優位となり、所得格差が拡大する可能性もある。この点、ドイツでは、法人に加え個人の大口預金にも実質的にマイナス金利を適用する動きや、口座維持手数料を引き上げる動きが進んでおり、国民経済への影響を含め、ドイツの状況を注視していく必要がある。
  • 政策の枠組みの中で、特定の政策だけをことさらに取り出して論じたり、特定の業界や、業界の一面をことさらに取り上げることが重要な場合もあるとは思う。しかし、きわめて緩和的な金融環境が長く続くもとで、政策の評価にあたっては、経済や金融システム全体に目配りしつつ、その効果を点検していくことが肝要だと考える。

3.政府の意見

財務省

  • 今般策定した経済対策や予算編成の基本方針を踏まえ、予算編成を進めてきた。令和元年度補正予算は13日に概算決定した。令和2年度予算は大詰めの作業を進めている。
  • 令和2年度の税制改正について、12日に与党税制改正大綱が取りまとめられた。これを踏まえ、企業の前向きな取り組みを後押ししていけるよう取り組む。
  • 引き続き、経済・物価・金融情勢を踏まえつつ、「物価安定の目標」の実現に向けて努力されることを期待する。

内閣府

  • 今月5日、「安心と成長の未来を拓く総合経済対策」を閣議決定した。財政支出で13.2兆円程度、直接的な実質GDP押上げ効果は1.4%程度を見込んでいる。
  • それも踏まえた政府経済見通しでは、令和2年度の実質成長率は1.4%程度、消費者物価上昇率は0.8%程度を見込んでいる。
  • 日本銀行には、経済・物価・金融情勢を踏まえつつ、物価安定目標の実現に向けて金融緩和を着実に推進していくことを期待する。

以上


  1. 「金融政策決定会合における主な意見」は、(1)各政策委員および政府出席者が、金融政策決定会合で表明した意見について、発言者自身で一定の文字数以内に要約し、議長である総裁に提出する、(2)議長はこれを自身の責任において項目ごとに編集する、というプロセスで作成したものである。 本文に戻る