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金融政策決定会合における主な意見
(2021年1月20、21日開催分)1

2021年1月29日
日本銀行

1.金融経済情勢に関する意見

経済情勢

  • わが国の景気は、内外における新型コロナウイルス感染症の影響から引き続き厳しい状態にあるが、基調としては持ち直している。
  • わが国経済は、引き続き厳しい状態にあるが、基調としては持ち直している。もっとも、感染症の影響が拡大・長期化するリスクが高まっており、今後の動向を注視する必要がある。
  • 今回の危機は、不確実性と不均一性の2つの性質を有している。現在、最大の不確実性は感染症の帰趨である。内外経済は全体として持ち直しているが、地域、支出要素、産業ごとの不均一性が強い。
  • 11都府県を対象とした緊急事態宣言の再発出が宿泊・飲食といった対面型サービスへ及ぼす影響は、同地域の個人消費がわが国の6割弱を占めることもあり、注視すべきである。
  • わが国の設備投資は下げ止まっているとみられるが、米中などでデジタル化関連を中心に投資意欲が旺盛であることに比べると、力強さに欠ける。
  • わが国経済は、内外の感染再拡大の影響によって、これまでの回復基調に一旦歯止めがかかり、弱含んでいる。
  • 先行きのわが国経済は、当面、感染再拡大により対面型サービス消費を中心に下押し圧力が強いものの、緩やかな改善基調を維持すると見込まれる。
  • 先行きの経済は、改善基調を辿るとみられるが、経済・物価のいずれの見通しについても、感染症の影響を中心に、下振れリスクの方が大きい。
  • 先行きの経済・物価は、感染再拡大の収束には相応の時間を要するとみられるなど、感染症が経済に与える影響について不透明感がきわめて高い状況が続く中、下振れリスクが大きい。
  • 感染症の帰趨によっては、公衆衛生上の措置の強化や家計・企業マインドの悪化を通じて、経済・物価の低迷が深刻化・長期化する可能性があり、注意が必要である。
  • 世界的な感染症の再拡大は、経済全体に対する大きな下押し圧力をもたらすというより、国・地域や産業間の不均一性を強めており、所得格差の拡大に繋がる惧れがある。
  • 今回の経済ショックでは、国やセクター毎の格差はもちろん、家計部門における所得階層間でセンチメントに大きな違いが生じている。そうした不均衡は、長期的な成長の阻害要因となる可能性がある。
  • 本年は、米国の政権交代やドイツの首相交代など、海外の政治情勢が、内外の経済・金融環境に与える広範な影響を注視する必要がある。これらには、気候変動問題を巡る動向も含まれる。

物価

  • 消費者物価の前年比は、当面、マイナスで推移した後、経済が改善し、原油価格下落の影響なども剥落していくことから、プラスに転じ、徐々に上昇率を高めていく。
  • 付加価値の減少に繋がる値下げの動きが拡がっている状況にはないが、物価の低迷が長引くリスクに注意が必要である。
  • 感染症の長期化は、中長期的な物価に対して上下両方向のリスクをもたらし得るため、2%の「物価安定の目標」の実現に向けた文脈においては、こうした幅広いリスクに目配りすることが望ましい。

2.金融政策運営に関する意見

当面の金融政策運営等

  • 昨年3月以降の金融緩和措置は効果を発揮しており、引き続き、企業等の資金繰り支援と金融市場の安定維持に努めていくことが重要である。
  • 当面、現在の金融市場調節方針や資産買入れ方針を維持すべきである。
  • 現時点では、企業の資金繰りに全体として急激なストレスがかかる可能性は高くないとみられるが、金融システムの動向も含め、今後も十分な留意が必要である。
  • わが国で感染症の経済への後遺症が残らないか、企業と家計の成長期待、貯蓄率・予想インフレ率の動向、金融市場と金融システムの安定性に注目したい。この危機を長引かせないことが肝心である。そのためには、人々のマインド面への影響を重視し、政府と連携・協調して、危機にある日本経済を政策面で支え切ることが重要である。
  • 物価のモメンタムが損なわれた中で、昨秋から感染が再拡大している現状を踏まえると、デフレリスクは一段強まったと考えられる。金融政策においては、長短金利操作とコミットメントに関して、より緩和姿勢を強めることが適当である。

2%を実現するためのより効果的で持続的な金融緩和の点検等

  • 点検作業では、大規模な金融緩和が金融環境や経済・物価情勢に及ぼした効果について、点検する必要がある。また、金融仲介機能や金融市場の機能度への副作用についても、その累積的な性質も踏まえ、改めて点検すべきである。
  • 点検では、緩和効果と副作用のバランスの面でより効果的な運営ができないか考えていく必要がある。
  • 点検の問題意識のひとつは、平素の運営で持続性を高めつつ、情勢の変化に機動的に対応できるよう、よりメリハリをつけた運営ができないかにある。
  • 点検の主眼は副作用対策ではなく、如何に効果的な対応を機動的に行うかにある。
  • 点検にあたっては、2%の「物価安定の目標」の意義を再確認し、緩和的な金融政策のレジームを維持すべきである。
  • 経済の回復に想定以上の時間を要することを踏まえ、より持続可能で効果的な政策対応を行う観点から、政策効果の整理と点検は重要である。現行政策の大枠は維持しつつ、イールドカーブ・コントロールやETF等買入れにおいて、より弾力的でメリハリのある運用が重要と考える。
  • 金融緩和の長期化が展望される中、10年物国債金利が上下にある程度の範囲で変動することは、市場機能を通じて金融機関の運用ニーズを満たすことで金融システムの安定に資する。
  • 企業・家計による資金調達のうち、長期金利の影響を受けるものの割合は高くないことから、長期金利が変動しやすくなった場合でも、経済活動に与える影響は限定的であると考えられる。
  • 金融政策の点検と合わせて、「物価安定の目標」の達成に向けた今後の戦略を検討することが必要である。

その他

  • 金融政策の効果を適切に発揮するためには、これまで同様、政府と中銀、主要中銀間での協力関係を維持し、金融市場の安定を確保することが重要である。
  • 研究開発投資や事業ポートフォリオ改革、デジタル化、脱炭素化への取り組みといった、未来の成長のための企業行動を後押しすることが重要である。デフレには絶対に戻さないという断固たる意志を示すとともに、中長期的な成長力を高める政府の取り組みと緊密に連携して、企業経営者の予見性を高め、企業や家計の成長期待を高めていくことが重要である。
  • 政策の理論的なイノベーションはもとより、政策の実務面でのイノベーションも欠かせない。

3.政府の意見

財務省

  • 先般、緊急事態宣言が発出された。感染状況や経済・国民生活への影響を注意深く見極めつつ、感染症対応に万全を期し、日本経済を成長軌道に戻すことが重要である。
  • 令和2年度第3次補正予算、令和3年度予算を国会に提出した。感染拡大防止や経済・財政運営に万全を期すべく、両予算の一日も早い成立に向けて取り組む。
  • 日本銀行には、政府との連携の下、感染症への対応をはじめ、必要な措置を適切に講じることを期待する。

内閣府

  • わが国景気は持ち直しの動きが続いているが、感染拡大による下振れリスクに十分注意が必要である。
  • 政府は、今月11都府県を対象に緊急事態宣言を発出した。今回は、感染リスクの高い場面に対策を徹底し、予備費の活用も含めた支援策を重点的・効果的に講じる。
  • ワクチンについては、2月末以降には接種が開始できるよう、接種体制の整備を全力で進めてまいる。
  • 日本銀行においては、引き続き政府との緊密な連携をお願いする。

以上


  1. 「金融政策決定会合における主な意見」は、(1)各政策委員および政府出席者が、金融政策決定会合で表明した意見について、発言者自身で一定の文字数以内に要約し、議長である総裁に提出する、(2)議長はこれを自身の責任において項目ごとに編集する、というプロセスで作成したものである。本文に戻る