このページの本文へ移動

金融政策決定会合における主な意見
(2022年4月27、28日開催分)1

2022年5月12日
日本銀行

1.金融経済情勢に関する意見

経済情勢

  • わが国の景気は、基調としては持ち直している。先行きは、資源価格上昇による下押し圧力を受けるものの、感染症や供給制約の影響が和らぐもとで、外需の増加や緩和的な金融環境、政府の経済対策の効果にも支えられて、回復していく。
  • わが国経済は、家計のマインド悪化等に注意が必要だが、ペントアップ需要の顕在化に向けた環境が整いつつあり、旅行関連消費を中心に持ち直していくとみられる。
  • 3月のまん延防止等重点措置の解除以降、人の動きが活発化している様子が窺われるが、大型連休までの期近な予約が中心であるほか、米欧において昨年以降顕在化した需要と比べてまだ差がある。2年以上抑制されてきたわが国の消費活動は、今後拡大する余地はあると期待している。
  • 交易条件の悪化や家計の購買力低下の主因は契約通貨建ての輸入価格上昇であり、これは円安による価格上昇とは異なることをしっかりと説明する必要がある。
  • 需給ギャップや失業率ギャップが未だに大きく、インフレの基調がきわめて低い現状に対しては為替円安がプラスに働く。
  • 世界経済は全体として回復しつつも、ウクライナ情勢、インフレ、供給制約の3つの逆風で減速している。
  • ロシア・ウクライナ情勢により国際金融市場に想定外のテールリスクが引き起こされることがないか、警戒が必要である。

物価

  • 生鮮食品を除く消費者物価の前年比は、先行き、携帯電話通信料下落の影響が剥落する2022年度には、エネルギー価格の大幅な上昇の影響により、いったん2%程度まで上昇率を高めるが、その後は、エネルギーの寄与の減衰に伴い、プラス幅を縮小していく。
  • わが国でも、エネルギー価格上昇に伴う物価の上振れが生じているが、欧米のような高インフレの状況ではなく、エネルギー等を除いたインフレの基調は未だきわめて低い水準にとどまっている。
  • 現在、低インフレと資源価格上昇が共存しているが、負の需給ギャップが存在しGDPも雇用も感染症前に戻っておらず、物価の基調は上がっていない。
  • 消費者物価は、4月から当分の間は2%程度で推移するものの、家計の予算制約の下で2%を超える上昇は持続しないとみられる。
  • 消費者物価の前年比は、2022年度前半は資源価格の高騰等によって2%近傍で推移するとみられる。ただし、2022年度後半以降は、資源価格が反落した場合における下振れリスクにも注意が必要である。
  • 物価上昇率が2%に達する蓋然性は高まっているが、それは輸入価格上昇に伴う一時的なものであり、需給ギャップや予想インフレ率の動向を踏まえると「物価安定の目標」の安定的な達成は難しい。
  • 変動の大きいエネルギーを除いた消費者物価の前年比は、需給ギャップが改善し、中長期的な予想物価上昇率・賃金上昇率も高まっていくもとで、食料品を中心とした価格転嫁の動きもあって、プラス幅を緩やかに拡大していく。
  • エネルギー価格の変動により、ヘッドラインと基調的な物価の動きが大きく乖離する情勢では、展望レポートで「除く生鮮食品・エネルギー」の具体的な見通しを示すとともに、その評価を丁寧に説明することは適切である。
  • 先行きの基調的なインフレ率は、企業による資源価格の高騰の小売価格への転嫁の拡がり、企業や家計の物価観の変容、人手不足感が強まるもとでの賃金上昇圧力の強まりの可能性から、緩やかに上昇していくとみている。
  • ウクライナ情勢に伴う貿易や物流における非効率な状況は、資源価格等の高騰とも相俟って、わが国でも幅広い財の価格に影響を及ぼし続ける可能性がある。
  • 賃金と物価の持続的な上昇には、大企業の賃上げ等の動きが全国の中小企業にも拡がることが重要であり、人流の回復状況や国内投資の動向、成長力強化に向けた取り組み状況を注視している。
  • 家計のインフレ実感が消費者物価上昇率以上に高まっている可能性がある。賃金上昇のペースがインフレ実感に追いつかないもとでは、インフレに対する否定的な見方が家計に拡がる惧れがあることから、物価動向や金融政策に関して、従来以上に丁寧な情報発信に努めていく必要がある。
  • わが国経済の回復は感染症の動向次第だが、今後「待機資金」が活用されない中で、中長期の予想インフレ率や賃金上昇率、中長期の成長期待が十分に上がらない場合、物価が下押しされるリスクもまだある。

2.金融政策運営に関する意見

  • わが国経済は、依然として感染症からの回復途上にあるうえ、資源輸入国であるわが国では、資源価格の上昇は、海外への所得流出に繋がるため、経済に下押しに作用する。こうした経済・物価情勢を踏まえると、現在の強力な金融緩和を続けることで、わが国経済をしっかりと下支えする必要がある。
  • 需給ギャップがマイナスで、企業の経営判断が慎重化するリスクが大きい現状では、現在の金融緩和を継続し、経済を下支えする方針を明確にすることが適当である。
  • わが国の金融政策上の課題は、インフレの抑制ではなく、依然として低すぎるインフレからの脱却にある。
  • 従来からある下振れリスクにロシアによるウクライナ侵攻が加わり、さらに情勢が大きく変化する中で、金融政策に変更を加えるのは適当ではない。
  • 金融政策運営にあたっては、資源価格や為替相場の変動そのものではなく、あくまでもそれらが経済・物価に及ぼす影響を考える必要がある。「物価安定の目標」を安定的に持続するためには、金融緩和を継続する必要がある。
  • 金融政策と為替の関係については対外的なコミュニケーションが重要であるが、為替円安の原因のひとつにはわが国と欧米諸国との景況格差があり、為替レートのコントロールを目標にした政策変更は適当でない。
  • 0.25%を上回る長期金利の上昇を容認しないとのこれまでの姿勢を明確にして、日々のオペが無用に材料視される事態を避ける観点から、明らかに応札が見込まれない場合を除き、毎営業日、0.25%での指値オペを実施することを予め宣言しておくことが適当である。
  • 物価と賃金が共に上がる好循環を伴う「物価安定の目標」を持続的・安定的に達成するまでは淡々粛々と金融緩和を持続すべきである。そうした政策スタンスを誤解なく伝えるため、指値オペの運用の明確化が有効である。
  • 長期金利操作目標に沿った金融市場調節の継続姿勢を改めて示すことは、適切なイールドカーブ形成や緩和姿勢の明確化に資すると考えられる。
  • 当面、感染症の影響を注視し、企業等の資金繰り支援と金融市場の安定維持に努めるとともに、必要があれば、躊躇なく追加的な金融緩和措置を講じるべきである。政策金利のフォワードガイダンスも、従来の方針を継続することが適当である。
  • 金融政策運営では、需給ギャップと予想インフレ率を高めるべく緩和姿勢を強めることで、経済の回復と「物価安定の目標」の達成を早期に実現する必要がある。
  • 見通し期間内に2%の「物価安定の目標」を達成することが困難な中、目標の位置付けや実現への道筋を整理して丁寧な説明を行うとともに、金融緩和がさらに長期化するもとで持続性がより重要となっていくことを引き続き意識していく必要がある。

3.政府の意見

財務省

  • G20・G7では、ロシアのウクライナ侵略がエネルギー・食料価格の高騰等に繋がっていると指摘した。
  • 政府は、「総合緊急対策」を策定した。新たな財源措置を伴うものは予備費を活用して対応したうえで、今後の予期せぬ財政需要に対応するため、補正予算を今国会に提出予定である。
  • 日本銀行には、政府と連携し、ウクライナ情勢や感染症の影響も踏まえ、持続可能な物価安定の実現に向け、適切な金融政策運営を期待する。

内閣府

  • 原油価格の高騰等が生活や経済に及ぼす影響に緊急かつ機動的に対応するため、「総合緊急対策」を速やかに実行する。
  • 新しい資本主義のグランドデザインや実行計画、骨太方針2022の取りまとめに向けた議論を進め、中長期的な課題に対応し、「成長と分配の好循環」を実現する。
  • 日本銀行においては、今回の指値オペの運用明確化の趣旨について対外的に丁寧に説明いただくとともに、引き続き、経済・物価・金融情勢を踏まえ、適切な金融政策運営を期待する。

以上


  1. 「金融政策決定会合における主な意見」は、(1)各政策委員および政府出席者が、金融政策決定会合で表明した意見について、発言者自身で一定の文字数以内に要約し、議長である総裁に提出する、(2)議長はこれを自身の責任において項目ごとに編集する、というプロセスで作成したものである。本文に戻る