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日本銀行当座預金決済の「RTGS化」の概要および「RTGS化」後の日本銀行金融ネットワークシステム(当座預金取引)の運行について

1998年 9月 4日
日本銀行

1.はじめに

 日本銀行では、昨年4月以降、日本銀行金融ネットワークシステム(以下「日銀ネット」という)における当座預金(以下「当預」という)および国債の決済の即時処理化、即ち、「RTGS化」を実現するための具体的な要件を固める作業を進めてきた。また、こうした過程で作業の進み具合を可能な限り明らかにする考えをお伝えし、昨年10月3日には『「RTGS化」に関する日本銀行の検討状況について』を公表することで、日本銀行の当預取引先(以下「取引先」という)の方々が「RTGS化」に対応していく上で必要となる各種慣行の見直しやシステム対応等の参考に供したところである。

 その後、本年3月には、オンライン当預振替のサービス提供時間延長(以下「稼働時間延長」という)について市中協議を行い、本件に関する取引先のご意見・ご提案を踏まえて、去る6月に『オンライン当座預金振替のサービス提供時間延長等の枠組みについて』を公表した。

 この度、これらに関する具体的なシステム要件固めの作業が概ね終了したことから、関係者が事務処理体制面やシステム面での対応を進める際に役立てて頂くため、取引先宛に当預決済の「RTGS化」および稼働時間延長の概要ならびに日銀ネットの運行事務等の詳細要件について記述した通知を送付した。本ペーパーではその通知の概要を説明する 1

  1. ただし、本ペーパーに記載された内容は今後のシステム開発の前提となる要件を取りまとめたものであり、開発作業の過程でその内容が一部変更となる可能性もある。

2.当座預金決済の「RTGS化」の概要

(1)「RTGS化」後の日銀ネットの運行イメージ

 既に公表した内容と重複する点も含め、今回の当預決済の「RTGS化」および稼働時間延長後の日銀ネットの運行イメージを整理すると、以下のとおり(下図参照)。

<当預決済の「RTGS化」および稼働時間延長後の日銀ネット運行イメージ図>

  • 図
  1. イ.取引先相互間の当預決済
    コール取引の決済など取引先相互間の当預決済は、オンラインによる依頼か書面による依頼かに拘わらず、即時処理のみを可能とし、現行の時点処理は廃止する。
    ただし、(1)日本銀行が外国中央銀行等から受け入れている預り金(海外預り金)との間の資金決済および(2)債券決済ネットワークと日銀ネットとの接続により実現した社債等DVPの資金受渡しにかかる当預決済については、当分の間、3時同時処理 2において行う。
  2. ロ.民間集中決済
    金融先物取引円資金決済、手形交換尻決済、外国為替円交換尻決済および為替決済は、いずれも即時処理により行う。具体的には、日本銀行に各集中決済制度の運営主体の受皿口座を開設し、運営主体からの日々の交換尻金額等の通知に基づいて、運営主体により予め定められた以下の時刻に順次即時処理による決済を行う方向で検討している。その際、まず負け先口座から負け額を引落し、これを受皿口座に一旦プールした上で、全ての引落が終了したことを確認した後、直ちに受皿口座からこれを引落し、各勝ち先の口座に勝ち額の入金を行う。これら一連の決済はシステムで自動的に行う。
    • 金融先物取引円資金決済………午後0時
    • 手形交換尻決済………午後0時30分
    • 外為円交換尻決済………午後2時30分
    • 為替決済………午後4時15分(為替決済の延長日 3には、30分または60分繰下げ)
  3. ハ.取引先と日本銀行との間の資金決済
    日本銀行が取引先との間で行う資金決済は、即時処理のほか、同時処理でも行うこととする。同時処理は、原則として日本銀行を一方当事者とする取引のみを一括して同時に処理するものであり、システム上、現行の時点処理の仕組みを援用するが、取引先相互間の決済を対象外とすることによりシステミック・リスクが大幅に削減される点で、現行の時点処理とは異なる。
    具体的には、日本銀行と取引先との間の資金決済のうち、金融調節(手形買入、手形売出およびCP買入等)や国庫金の受入など現在時点処理で決済しているものをこの同時処理の対象とする 4。一方、国庫金の支払など現在即時処理で決済しているものは、現行同様の時間帯に即時処理で決済する予定。
    なお、各同時処理の名称は、集中決済の交換尻の決済が対象取引でなくなることもあり、以下のとおりとする。
表 同時処理の名称
(現行) (「RTGS化」後)
交換尻時点処理 1時同時処理…………午後1時頃
3時時点処理 3時同時処理…………午後3時頃
為決時点処理 5時同時処理…………午後5時頃 5
翌営業日朝金時点処理 翌営業日9時同時処理… 午後5時頃(5時同時処理終了後 6

(2)当座貸越

  1. イ.当座貸越の概要
    日本銀行は、「RTGS化」後における取引先の円滑な資金決済を可能とする観点から、実行日の終業時を返済期限とする当座貸越を取引先に対して供与する 7
    当座貸越は、予め差入れられた担保の価額の範囲内で利用可能(限度額は設けない)とし、その原因となる取引の種類(振替依頼のほか、現金引出、各種集中決済等)および実行タイミング(即時処理、同時処理)を問わず、当預残高が支払金額に不足する場合において、システム上自動的に実行する仕組みとする(システム上は、当座勘定 8の借残<CR>という形で表記される)。
    また、ある取引先金融機関の複数店舗が各々異なる日本銀行本支店と取引している場合には、当座貸越は各々の店舗において利用可能とする。
  2. ロ.当座貸越の延滞
    当座貸越は、「RTGS化」後の日中の資金決済円滑化のために供与するものであり、終業時には取引先から全額返済してもらうこととなる。万一、終業時に返済されない場合には延滞として取扱う 9
    当座貸越にかかる延滞利息は、原則として、延滞日の翌営業日の業務開始時にシステム上自動的に徴収(担保余裕額の範囲内で当座貸越を実行して徴収)する。
    なお、延滞を繰り返す取引先に対しては、必要に応じ、高延滞利率の適用、当座貸越の供与の一時停止・解約といった措置を別途講ずる方向で検討している。

(3)稼働時間延長の概要 10

  1. イ.延長時間・延長対象業務
    日本銀行では、当預決済の「RTGS化」と同じタイミングで、オンラインによる当預振替の利用可能時間を午後7時まで2時間延長する 11方針である。この場合、延長時間帯においても、午後5時の時点における各取引先の差入担保残高の範囲内で当座貸越の利用を可能とする。また、外為円グロス決済 12についても、利用可能時間を同様に午後7時まで延長する方針である。
  2. ロ.延長対象先
    延長時間帯においてオンラインによる当預振替の利用を可能とする取引先は、日本銀行本店管下の当預オンライン取引先のうち希望する先とする。また、外為円決済については、日本銀行本店と当預取引を行っている店舗を外為円決済母店に指定している参加銀行のうち希望する先とする 13
  1. 2現行の時点処理との違いについては、2.(1)ハ.を参照。なお、これら2つを当分の間、同時処理に残置することとした事情については、前述の『「RTGS化」に関する日本銀行の検討状況について』(平成9年10月3日付)を参照。
  2. 3内国為替運営機構は、為替取引が集中する月末日等における全銀システムの通信時間を30分または60分延長している。
  3. 4ただし、手形買入等の金融調節については、即時処理も予定している。
  4. 5為替決済の延長日には、30分または60分繰下げる。
  5. 6現在の翌営業日朝金時点処理は午後5時20分頃に行っているが、RTGS化後の翌営業日9時同時処理については、同処理を指定する予約入力を利用先が行うことはないため、5時同時処理が完了した後、続けて実行する。なお、為替決済の延長日には、5時同時処理と同様、30分または60分繰下げる。
  6. 7なお、国債DVPにおける資金受渡に関し、譲受国債を直ちに日本銀行へ担保として差入れ、同時に同担保を見合いに日本銀行から当座貸越の供与を受け、当該資金を支払資金に充当する仕組みについては、『国債決済の「RTGS化」の枠組みについて』(平成10年9月4日付)を参照。
  7. 8「当座預金取引」と「当座貸越取引」を合わせて、「当座勘定取引」と称する。
  8. 95時同時処理実行時においても当座貸越の返済がなされない(当座勘定残高が借残<CR>の状態)場合には、同時点における当座勘定の借残は当座貸越の延滞として処理する。2.(3)ロ.の稼働時間延長対象先については、午後7時に利用先の入力が締切られた時点で当座貸越の返済がなされない場合は、当座貸越の延滞として処理する。
  9. 10稼働時間延長の枠組みの詳細については、6月26日付で公表した『オンライン当座預金振替のサービス提供時間延長等の枠組みについて』を参照。
  10. 11延長対象先は、5時同時処理完了後に続けて行われる翌営業日9時同時処理が完了した後に自動的に延長対象取引の入力が可能となる。また、延長時間帯においても、CPU接続(後述)による送受信を可能とする。
  11. 12外為円決済については、日本銀行が外為円決済制度の運営主体である東京銀行協会から委託を受け、支払指図の交換などの事務を処理するため、日銀ネットのインフラを提供して決済を行っている。現在、外為円決済は、毎日午前9時~午後1時45分までの間に交換された支払指図を計算整理し、その受払尻を3時時点処理において日本銀行の当預口座でネット決済しているが、本年末には、現行のネット決済に加えグロス決済(グロス決済にかかる支払指図が直ちに日本銀行の当預口座で決済される)の導入が予定されている。
  12. 13延長先から非延長先に対する当預振替および外為円グロス決済にかかる支払指図が入力された場合はエラーとする。

3.「RTGS化」後の各種事務フロー

(1)民間集中決済の事務フロー

 「RTGS化」後の民間集中決済は、2.(1)ロ.で述べたとおり各運営主体からの交換尻金額の通知に基づいて、各運営主体により予め定められた一定時刻に順次即時処理を自動的に行う。当預オンライン取引先に対しては、各運営主体から通知を受けた交換尻金額に基づき、予め当該先の当日の交換尻額を利用先の日銀ネット端末(以下「端末」という)に出力するほか、交換尻決済完了後には当座勘定の入金・引落にかかる処理済通知を出力する。

 負け先における当座勘定の引落資金不足が原因で引落処理が不能となった場合には、当該先に対して、引落資金が不足している旨の通知を端末に出力する(引落資金不足先がオンライン取引先でない場合には、集中決済の運営主体等から電話により直ちに連絡する扱い)。

 この場合、当該不足先と運営主体は、速やかに引落資金不足解消のための対応方法を協議し、決定することとなる。日本銀行は、引落資金不足が解消されたことを確認した後、集中決済交換尻の入金・引落処理を再度実行する。

(2)同時処理の運行フロー

 同時処理の運行については、システム上、現行の時点処理の仕組みを援用するため、利用先からのオンライン取引の入力締切時刻や入力延長・再開放にかかる運用 14については、基本的に現行と同様となるが、現行の運行事務フローとの主な相違点を挙げると以下のとおり。

  1. イ.3時同時処理の運行
    現行の3時時点処理は、午後3時間際に取引先から日本銀行窓口に持ち込まれる大口現金および代理店預け金 15の入金処理の終了を待って起動している事情から、完了は通常午後3時30分~40分頃となっている。RTGS化後も3時同時処理について現行同様の取扱いを継続すると、午後3時以降これらの入金処理が総て終了するまでの30~40分の間、利用先による即時処理を指定したオンライン入力が行い得ず、取引先相互間の円滑な資金決済に支障を生じることが懸念される。
    このため、3時同時処理は午後3時到来後に速やかに実行することとし、これに間に合わない大口現金および代理店預け金の入金処理は、3時同時処理完了後に即時処理で行う扱いに変更する 16
  2. ロ.オンライン取引入力締切時刻
    「RTGS化」後の利用先のオンライン入力締切時刻については、為替決済が行われた後の資金取引のための入力時間を確保する観点から、次表のとおりとする予定である。
  • 図
  1. ハ.同時処理における引落資金不足チェックおよび担保不足チェック
    日本銀行は、当預残高を超える額の振替・引落(当座貸越非供与先の場合)や差入済の担保の価額を超える額の当座貸越を供与することとなるような振替・引落(当座貸越供与先の場合)は、当然のことながら行わない。日銀ネットでは、こうした振替・引落の入力を排除するために、振替・引落の入力一件毎に引落資金不足または担保不足をチェックする機能を設ける予定である。引落資金不足または担保不足を生ずる振替・引落の入力が即時処理を指定して行われた場合には、こうしたチェックは入力時に行い、当該入力をエラーとするが、同時処理を指定して行われた入力(予約入力)にかかるチェックは当該同時処理を起動したタイミングで行うこととする 17
    しかしながら、同時処理において引落資金不足または担保不足が生じた場合には、同時処理が中断してしまうこととなる(この場合には、引落資金不足または担保不足を解消するための措置をとったうえで、処理を再度実行する)。一方、日銀ネットは、各同時処理の実行に当り、午後1時、3時または5時にそれぞれ取引先の入力を締切り、各同時処理が終了するまでの間は、一切の入力が不可能となる(3時同時処理の場合には、この間、国債系システムへの入力も不可能となる)。従って、「RTGS化」後は、こうした引落資金不足または担保不足の発生による同時処理の中断・終了遅延は可能な限り回避する必要がある。
    このため、取引先においては、各同時処理において引落資金不足または担保不足を絶対に発生させないよう、十分留意する必要がある。日本銀行では、こうした取引先の運用をサポートするため、各同時処理の20~30分前に、当該同時処理の仮残高において残高不足を発生させている取引先(当座貸越非供与先の場合)に対し、オンライン通知(「残高不足警告」)を出力するほか、担保不足を発生させている取引先(当座貸越供与先の場合)に対し、オンライン通知(「担保不足警告」)を出力する。
    なお、当座貸越の延滞発生を防止する観点から、当座貸越を利用する取引先の当座勘定の5時同時処理の仮残高が借残(CR)となっている場合には、当該取引先に対し、5時同時処理の20~30分前にオンライン通知(「残高不足警告」)を出力する(延長対象先の場合は、午後7時の20~30分前に出力する)。

(3)書面による依頼

 日本銀行は、日銀小切手(または振替依頼書)による支払(または振替)金額が当座勘定の引落資金を超える場合には、現行と同様にその支払を拒絶し、当該先に日銀小切手等を返却する扱いとする。「RTGS化」後は、各取引先は自己責任により一段と厳格に資金管理を行っていくことが求められるが、市中金融機関においては、資金取引の効率化とデリバリーリスク削減の観点から、極力書面(日銀小切手または振替依頼書等)による取引を抑制する方向で検討が進められており、こうした観点から、日本銀行では、全銀協からの要望を受けて付記電文付振替 18の最低金額制限(3億円)を本年10月頃を目処に撤廃する予定である。

  1. 14日銀ネットは、同時処理時点毎に定められた時刻にオンライン取引先が行う当該同時処理および即時を指定するオンライン取引の入力を自動的に締切る造りとなっている。止むを得ない理由により、オンライン取引先の入力が入力締切時刻に間に合わない場合または入力締切時刻以後、追加入力を行う必要が生じた場合には、日本銀行はオンライン取引先に対し、「入力延長」または「入力再開放」を許可することがある。
  2. 15日本銀行は国庫金の受払を日本銀行本支店のみでなく、民間金融機関の指定店舗(この指定店舗を日本銀行の「代理店」という)を通じて行っている。「代理店預け金」は、代理店を通じて行われた国庫金の受払にかかる日本銀行との間の資金決済を行うために、日本銀行が代理店に預けている資金をいう。
  3. 16ただし、取引先が日本銀行に持込む大口現金等の受付締切時刻は現行どおり午後3時となる。
  4. 17同時処理を指定した入力により、当該同時処理の仮残高において引落資金不足または担保不足が生ずるとしても、当該入力が行われたタイミングでこれをエラー扱いとはしない。
  5. 18付記電文付振替は、オンラインによる当預振替を依頼する際に、顧客への入金情報等を振替電文中に付記して行うことができる。

4.日銀ネット当預システムの機能改善

(1)CPU接続

 CPU接続 19は、現在外為円決済についてのみ利用可能となっているが、「RTGS化」に伴うCPU接続の利用先ニーズを聴取した結果、事務合理化・効率化の観点から、当座勘定残高および担保余裕額等を自行(社)システムで一元的に管理し、日銀ネットとのデータ送受信が可能となるようなCPU接続の利用を希望する声が聞かれた。このため、日銀ネット当預システムについてCPU接続の利用を可能(国債系システムについても同様)とする方針である。

(2)オンライン照会の機能拡充等

 利用先が行う各種オンライン照会等に関しては、利用先ニーズを踏まえ、利便性向上の観点から機能拡充を図る予定である。主なものを挙げると、取引の「相手先」および「当座勘定取引通番」 20の範囲を指定することにより、その取引先との間で当日実行した受払明細の照会が可能となるようなオンライン照会画面(「受払明細(相手先・取引通番指定)」)を新設する。既存のオンライン照会についても、当座勘定残高ならびに当日実行した受および払の件数・金額を照会するためのオンライン照会(「受払残高」)について、即時を指定したオペレーションを簡略化(現行:4打鍵→2打鍵)する。また、「当座勘定入金通知」等各種通知類および照会時の出力帳票であって「当座勘定残高」を出力している帳票に関しては、併せて「担保余裕額」を出力する仕様に変更する。

  1. 19利用先のホストコンピュータと日銀ネットのホストコンピュータを日本銀行側に設置した中継コンピュータを経由して接続し、データの送受信を行うもの。
  2. 20日銀ネットで処理された当座勘定取引については、受払1件毎に処理の順に従い「当座勘定取引通番」が付番される。

5.おわりに

 日本銀行では、「RTGS化」後における取引先の円滑な事務運営をサポートするため、前述のとおり当座貸越の導入をはじめ、各種出力帳票の見直し、照会機能の充実などの施策を講ずる予定である。しかしながら、これらの施策は何れも各取引先による自主的な残高管理を前提としたものであり、日本銀行としては、各取引先がより厳格に資金管理および担保管理を行って頂くものと考えている。

 日本銀行では、今後とも「RTGS化」に関する検討状況を必要に応じて公表していく予定であり、関係者の方々が決済慣行の見直しやシステム対応等に取り組んでいかれることを期待している。

本ペーパーについての照会先

日本銀行業務局総務課

電話:03-3279-1111 内線 6112

以上