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国際標準化(ISO規格)について

国際標準化(ISO規格)

国際標準規格の1つであるISO規格は、国際標準化機構(ISO)が開発した国際的に合意された規格です。
ISO規格は、業界ニーズ等を認識しているその分野に精通した各国専門家(Expert)の英知が集結されたものです。製品の製造、プロセスの管理、サービスの提供、材料の供給等、様々な経済活動において活用されています。

各国で開発される国内標準規格が国際標準規格に準拠しているかといった点に関しては、法的に定められない限りにおいては任意とされています。もっとも、国内標準規格等に対する適合性評価手続きにおいては、WTO/TBT協定(貿易の技術的障害に関する協定)によりISO規格のような国際標準規格の定める指針または勧告を基礎として用いることが義務付けられています。このWTO/TBT協定はWTO一括協定となっており、全てのWTO加盟国に適用されます。このため、ISO規格は国際標準規格として重要なだけではなく、各国で開発される国内標準規格にも大きな影響を与えています。ISO規格はISO中央事務局が販売しています。また、一部のISO規格は日本規格協会が日本語訳版を販売しています。

<参考>

規格のメリット(Benefits of standards
国際標準化機構(ISO)は、「最良の方法は何か?」という基本的な問いに答えるという発想から設立されました。
「重さ」や「尺度」といった当たり前のことから始まり、過去50年の間に、私たちが履く靴から、私たちを目に見えない形でつなぐWi-Fiネットワークまで、あらゆるものをカバーする規格へと発展を遂げてきました。
国際標準規格は、これら全てに対応し、消費者が製品の安全性、信頼性、品質に自信を持てるようにするものです。交通安全、玩具の安全、安全な医療用包装に関するISOの規格は、世の中をより安全にするために役立つ規格のほんの一例です。
各国の規制当局や政府は、ISO規格に準拠してより良い規制を策定しています。それは、ISO規格の開発には世界的に著名な専門家(Expert)が関与しており、確固たる基盤に基づいていることを知っているからです。
ISOが開発した25,290ものISO規格(2024年3月時点) が、人々の日常生活のほぼ全ての面にどのように関わり、大小様々な企業にとってどのように役立っているかを知るには、ISO規格が実際に使われているところをご覧ください。大気、水質、土壌の品質、ガスや放射性物質の排出、製品の環境的側面、といったことに関する国際規格は、経済的な利益をもたらすだけでなく、地球と人々の健康を守ります。
ISO Benefits of standards(外部サイトへのリンク)

ISO/TC 68が扱うISO規格等

ISO/TC 68(金融サービス)では、近年の金融情報技術の進展により新たなISO規格を開発しています。また、既存のISO規格についても定期見直し(Systematic Review:SR)を機に内容を精査して最新化に取り組んでいます。
ISO規格は、金融取引の情報(データ)を処理するシステム間の相互運用性の確保や、システムに対する信頼性の確保を通じて、金融機関の事務効率化や顧客の安全性・利便性の向上に寄与しています。具体的には、金融取引情報(データ)を伝送するための電文様式(メッセージフォーマット)や、付番・コード体系、暗号化方式等の情報セキュリティの技術・手法・手続き等の様々な場面でISO規格が活用されています。

(1)TC 68/SC 2(セキュリティ)が所管する規格

取引の情報(データ)を安全に伝送するための暗号化アルゴリズム、暗号鍵の管理、暗証番号や本人確認、セキュリティ要件等の情報セキュリティ技術に関する規格開発を担当しています。
銀行等のATMで使われる暗証番号では、ISO 9564(個人識別番号、Personal Identification Number:PIN)が活用されています。また、最近では、要素技術の発展や各種デバイスの普及に対応して、スマートフォンを用いたオンラインでの本人確認(ISO 5158)、QRコード決済のセキュリティ技術(ISO 5201)、ブロックチェーン・分散型台帳技術のセキュリティ技術(ISO 24374)のISO規格の開発に取り組んでいます。

(2)TC 68/SC 8(参照データ)が所管する規格

取引の情報(データ)を伝送する際に、多くの情報(データ)の中から必要な情報(データ)を識別できるようにするための付番・コード体系に関する規格開発を担当しています。
こうした付番・コード体系は「識別子(identifier)」と呼ばれています。ISO 9362(金融機関等コード、Business Identifier Code:BIC)は、金融機関を特定するため活用されています。また、ISO 17442(取引主体識別子、Legal Entity Identifier:LEI)は、主に店頭デリバティブの取引報告に用いる目的で金融取引に参加する取引主体(法人・ファンド)を特定するために活用されています。このほか、ISO 4217(通貨コード、Codes for the representation of currencies)、ISO 13616(口座番号、International bank account number:IBAN)、ISO 23897(証券等の取引番号、Unique transaction identifier:UTI)、ISO 6166(証券の番号、International securities identification number:ISIN)等のISO規格があります。

(3)TC 68/SC 9(情報交換)が所管する規格

取引の情報(データ)を伝送するための電文様式(フォーマット)やデータ項目に関する規格開発を担当しています。
金融取引では、「誰から誰に」、「いつ」、「何を」、「いくら」といった様々な取引の情報(データ)を取引者間で交換する必要が生じます。こうした情報(データ)を円滑に伝送するため、データ項目の種類や条件を含め、取引の情報(データ)を伝送するための電文様式(メッセージフォーマット)を定めておく必要があります。そのため、金融サービスのオンライン処理化の進展とともに、電文様式(メッセージフォーマット)の標準化が様々な分野で進められてきました。従来は、こうした電文様式(メッセージフォーマット)のISO規格は、クレジットカード取引では加盟店端末とカード発行機関等の間で交換される通信メッセージのISO 8583(金融取引カード用の通信メッセージ)や、証券受渡しでは証券メッセージのデータフィールドやその定義等の作成ルールを定めたISO 15022(メッセージスキーム<データフィールドの辞書>)等、金融サービスの分野別に存在していました。しかし、2004年に金融サービス分野全般を対象とする統合的な通信メッセージ規格のISO 20022(統合的な金融業務に関する通信メッセージ規格)が策定されたことにより、現在の金融サービス分野における電文様式(メッセージフォーマット)の国際標準は、このISO 20022の枠組みのもとで検討・開発されることが一般的となっています。

詳細はISO/TC 68が担当している国際標準化規格等(2023年5月18日) [PDF 310KB]をご参照ください。
また、最新情報はStandards by ISO/TC 68(外部サイトへのリンク)をご覧ください。

ISO/TC 68における規格開発状況

ISO/TC 68規格のうち、開発段階の規格や公表された規格をお知らせしています。

表 ISO/TC 68における規格開発状況
掲載日 資料名
2022年10月28日 ISO/TC 68/AG 5(Digital Currencies)におけるデジタル通貨に関する文書策定の着手について
2022年10月28日 新たな規格「ISO 4914 (Unique Product Identifier: UPI、固有商品識別子)」の公表について
2022年10月28日 新たな規格「ISO 24366(Natural Person Identifier, Part I、自然人ID)」の公表について

ISO規格開発におけるプロセス

ISOの規格開発は、ISO Directivesで基本プロセスが定められています。プロジェクト段階、略語、関連文書(名称)、説明は以下のとおりです。

ISO/TC 68における規格開発のプロセス

―― 2024年3月時点。ISO規格は通常は36カ月以内に国際規格の最終案を纏めることが定められています。

規格開発におけるプロセス
プロジェクトの段階
( )はステージコード
略語 関連文書(名称) 説明
1.予備段階
(00)
PWI 予備業務項目
Preliminary Work Item
  • 実現可能な草案で次の段階へ進めるには時期尚早の予備業務項目について、SC幹事が各国加盟機関(Pメンバー、Oメンバー)に対して意見募集等を行う。委員会内投票でPメンバーの単純過半数が賛成した場合は承認となり、次の段階(2.提案段階)へ進む。
2.提案段階
(10)
NP
または
NWIP
新業務項目提案
New Work Item Proposal
  • 各国加盟機関(Pメンバー、Oメンバー)、SC幹事等が新たな規格の策定、現行規格の改訂を提案する。
  • SC幹事は各国に対して3カ月以内に提案について賛否等を投票するよう依頼する。
  • 投票結果が次の2つを満たす時は承認となる。
    • 投票したPメンバーの2/3以上が賛成する。
    • 賛成したPメンバーのうち、5カ国以上がエキスパートを推薦して規格策定等に参加する。
3.作成段階
(20)
WD 作業原案
Working Draft
  • 第1次WDを入手する(登録時に原案が無い場合:登録から6カ月以内の規定がある)。
  • 提案の承認後、SC下部組織のWG(作業グループ)において、Pメンバーが指名したエキスパートがWDを検討・作成し、NP提案承認後6カ月以内にSC幹事へWDを提出する(最終作業原案をPASとして発行可能:登録から12カ月以内の規定がある)。
4.委員会段階
(30)
CD 委員会原案
Committee Draft
  • WDはCD案として登録されSCのPメンバーに意見照会のため回付される。登録から12カ月以内の規定がある。
    • SC幹事の判断でCD段階は省くことができる(委員会内投票でスキップの賛否を問う手続きを行う)。もしCDを省く場合、DISを回付できるようになった時点で作成段階は終了する。
  • Pメンバーの意見を踏まえCD案を検討、必要に応じて修正する。
  • 総会でのコンセンサスまたはPメンバーの投票にかけて2/3以上の賛成を得た場合にCDが成立となる。
  • その上で、CDは国際規格原案(DIS)として登録する(もし技術的問題が解決できない場合はTSとして発行可能)。
5.照会段階
(40)
DIS 国際規格案
Draft International Standard
  • 登録されたDISを投票へ回付する(投票前の翻訳期間2カ月、投票期間3カ月、ウィーン協定下で実施されているプロジェクトの場合は投票期間5カ月)。登録から24カ月以内の規定がある。
  • 投票結果が次の2つを満たす時は承認となる。
    • 投票したPメンバーの2/3以上が賛成する。
    • 反対票が投票総数の1/4以下であること(DISが否決された場合は、SC幹事が中心となりDISを修正し再投票へ回付する)。
  • 上記の承認基準を満たした場合は、最終国際規格案(FDIS)として登録する。
    • DIS投票結果及び委員会の知見等に基づき、SC幹事の判断でFDIS投票を省略してそのまま国際規格の発行段階に進むことができる(ただしウィーン協定下で実施されているプロジェクトの場合はFDIS投票を行わなくてはならない)。
6.承認段階
(50)
FDIS 最終国際規格案
Final Draft International Standard
  • 登録されたFDISを投票へ回付する(投票期間2カ月でこの段階で規格内容の修正は認められない)。登録から33カ月以内の規定がある。
  • 投票結果が次の2つを満たす時は国際規格として成立となる。
    • 投票したPメンバーの2/3以上が賛成する。
    • 反対が投票総数の1/4以下であること。
  • FDISが承認されなかった場合は次の3つから対応を選択する。
    • 修正原案をCD、DIS、FDISに再提出する。
    • TSを発行する。
    • プロジェクトを取り消す。
7.発行段階
(60)
IS 国際規格
International Standard
  • FDISの承認後、正式に国際規格として発行される(発行期限はNP提案承認から36カ月以内の規定がある)。
    • このほか、ISOでは技術革新のスピード・アップに対応して時宜を得た国際規格策定を行うために迅速手続き制度(Fast-track procedure)を導入している。
8.見直し段階
(90)
IS 国際規格
International Standard
  • 国際規格類の見直しを行う段階を指す。SC幹事は必要に応じてSRの開始を決定することが可能となっている。これらが最新で国際市場性を確実に有し続けるために、発行後、ISは5年後、TSおよびPASは3年後に、定期見直しプロセスにより精査する。
    • TSは望ましくは最長6年間(定期見直しは望ましくは1回)、PASは最長6年間(定期見直しは1回)と定められており、その後は国際規格となる場合と破棄される場合がある。
    • TRは定期見直しに関する規定は無い。
TS 技術仕様書
Technical Specification
PAS 公開仕様書
Publicly Available Specification
TR 技術報告書
Technical Report
  • Participating member(Pメンバー):全ての事案への投票義務を負う。業務に積極的に参加し、会議に出席する。
  • Observer member(Oメンバー):オブザーバーとして参加。文書の配付を受け、コメントの提出と会議に出席する権利を有する。
  • Expert(エキスパート):各国審議団体(National Standards Body:NSB)から選任された専門家のこと。
  • Convenor(主査):作業グループ(Working Group:WG)を取り纏める役割で、会議の招集・司会役やWGのプロジェクト管理等に責任を持つ。任期がある。
  • Committee Internal Balloting(CIB):委員会内で随時行われる投票のこと(プロジェクトの各段階で行われる投票では無い)。
  • ウィーン協定:ISOと欧州標準化委員会(仏: Comité Européen de Normalisation:CEN)との間で、規格作成に関する作業の重複を回避するための手続き等を定めた協定。
  • Systematic Review(SR):国際規格類を定期的に見直すこと。