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金融機関における生成AIの利用状況とリスク管理 ―2025年度アンケート調査結果から―

2025年9月30日
日本銀行金融機構局

本調査の概要

近年、生成AIが急速に社会に浸透しており、わが国金融機関においても、既存業務の効率化を中心とした利用が進んでいる。

他方で、生成AIを利用するに当たっては、情報漏洩やハルシネーションなど生成AI特有のリスクを踏まえたうえで、技術の進歩やリスクの変化に応じて運用ルールを継続的に見直していくことが求められる。

こうした問題意識のもと、日本銀行では、取引先金融機関のうち153先を対象に、生成AIの利用状況に関するアンケートを実施(2024年度に続き2回目の調査)。

本レポートでは、ITベンダー等との意見交換の内容も踏まえ、金融業界における生成AIの利用の現状と課題、リスク管理上の論点等について、前回との比較や足もとの動向の分析を実施した。

まとめ

今回のアンケート結果では、以下の点が確認された。

  1. 現状、約5割の金融機関が生成AIを既に利用。試行中を含めると7割強、将来的な試行・利用を検討している先を含めると9割強にのぼっている。
  2. 生成AIの導入目的をみると、「業務効率化/コスト削減」や「情報収集/分析高度化」を挙げる先が前回比大幅に増加しているほか、前回は回答数が少なかった「顧客サービスの向上」、「リスク管理」、「収益増加」も増加。
  3. 利用開始後の評価としては、「期待を上回る」あるいは「概ね期待通り」と回答した先が増加。「融資稟議書の作成」、「マーケティング」、「コールセンター業務支援」等の新たな利用分野についても、評価は相応にポジティブ。
  4. 生成AIの管理状況に関しては、実務ルールの整備や、組織の方針の明文化を実施している先が大幅に増加。他方で、利用状況のモニタリング、サードパーティリスクやサイバー攻撃への対策、実務ルール等の見直しといった項目については、5割程度の先が「改善の余地がある」または「検討中」と回答。

今回の調査結果や世の中の動向を踏まえると、金融機関では、生成AIの利用拡大の流れが今後も続くほか、顧客サービスなどトップライン収益につながると期待される分野に活用する動きも広がっていくことが見込まれる。

他方で、金融機関が顧客サービスに生成AIを利用する際には、生成AI特有のリスクやサードパーティ管理、利用者への説明責任といった課題をクリアする必要。加えて、新技術の活用により生じ得る新たなリスク(AIエージェントの想定外の動作により生じるトラブルなど)にも留意する必要がある。

日本銀行から

本レポートの内容について、商用目的で転載・複製を行う場合は、予め日本銀行金融機構局までご相談ください。転載・複製を行う場合は、出所を明記してください。

照会先

金融機構局考査企画課

E-mail : csrbcm@boj.or.jp