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2020年度の金融市場調節

2021年6月9日
日本銀行金融市場局

要旨

日本銀行は、2%の「物価安定の目標」の実現にむけて、2020年度を通じて、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」の枠組みのもと、強力な金融緩和を推進した。そのもとで、新型コロナウイルス感染症が経済に及ぼす影響を踏まえ、(1)新型コロナ対応資金繰り支援特別プログラム、(2)国債買入れやドルオペなどによる円貨および外貨の上限を設けない潤沢かつ弾力的な供給、(3)ETFおよびJ-REITの積極的な買入れを実施した。

金融市場調節を取り巻く環境を振り返ると、2020年3月以降、2020年度初にかけては、コロナ禍において国際金融資本市場が不安定となるもとで、本邦長期金利にも上昇圧力がかかる局面がみられたほか、CP発行金利やドル調達コストが大幅に上昇する動きがみられた。また、政府の緊急経済対策等により、国庫短期証券は2020年5月以降、長期国債は同年7月に、それぞれ大規模に増発された。日本銀行は、これらをはじめとする様々な環境変化を踏まえつつ、金融政策決定会合で決定した金融市場調節方針や資産買入れ方針に基づいて各種オペレーションを実施し、企業等の資金繰り支援と金融市場の安定およびそれらを通じた緩和的な金融環境の維持に努めた。

各種オペレーションの運営にかかるポイントは以下のとおりである。

上記(1)新型コロナ対応資金繰り支援特別プログラムに関しては、CP等、社債等の買入れについて、資産買入れ方針において、追加買入枠が合計で15兆円まで拡大されたほか、発行体毎の買入限度も緩和されたことを受けて、1回当たりの買入れ額を大幅に増額した。社債等の買入れでは、買入対象とする社債等の残存期間が「1年以上3年以下」から「1年以上5年以下」に拡大されたことを受けて、2020年5月以降、「残存期間3年超5年以下」の区分を新たに設けて、買入れを実施した。この間、毎回の買入れにおいて、市場の需給動向等に応じてオファー金額を柔軟に調整したほか、市場機能への影響も踏まえて応札下限利回りを設定した。以上のような買入運営のもと、CP発行金利は2020年4月に一時大きく上昇した後、顕著に低下し、社債流通利回りのスプレッドも緩やかに縮小した。

新型コロナウイルス感染症対応金融支援特別オペについては、2020年8月までは月2回、9月以降は月1回のペースでオファーした。また、6月以降、貸付期間を従来の3か月から6か月へと延長したほか、新たに導入された「新たな資金供給手段」と一体的にオファーを行った。幅広い業態で利用がみられ、貸付残高は、年度を通じて、大きく増加した。

次に、(2)円貨および外貨の上限を設けない潤沢かつ弾力的な供給として、長期国債の買入れについては、その時々の市場動向に応じて、買入れ額や買入れ頻度、買入対象銘柄を柔軟に調整することで、市場機能の維持にも配慮しながら、金融市場調節方針と整合的なイールドカーブの形成を実現するよう運営した。2020年夏頃にかけては、コロナ禍のもとで市場の流動性が低下した状況が続いたことや、国債の大規模な増発が決定されたことなどを踏まえ、債券市場の安定を維持し、イールドカーブ全体を低位で安定させる観点から、残存10年以下のゾーンで買入れ頻度を引き上げるとともに、月間の買入れ額を段階的に増額した。その後、市場の流動性や市場機能が徐々に改善に向かったほか、日本銀行の既往の積極的な買入れや金融機関の担保需要等を背景に需給が引き締まりつつあることなども勘案し、11月以降、短中期ゾーンの買入れ頻度を減少させたほか、同ゾーンの買入れ額を段階的に減額した。この間、残存10年超の超長期ゾーンについては、安定的な投資家層が存在し、需給が相対的に良好であることから、年度を通じて月間の買入れ額および買入れ頻度を据え置いた。また、買入対象銘柄については、超長期債の新発債を引き続き対象から除外したほか、2020年夏場以降、個別銘柄の需給動向等を勘案し、幅広いゾーンで一部の銘柄を対象除外とするなど、従来以上に柔軟な選定を行った。こうしたオペ運営のもと、長期金利(10年物国債金利)は、年度を通じてゼロ%程度で推移した。より仔細にみると、長期金利は、長期国債の大規模増発があった2020年7月以降、2021年初までは、日本銀行による積極的な買入れもあって、狭い範囲での動きが続いたが、その後は、海外金利の変動や日本銀行が12月に実施を公表した「より効果的で持続的な金融緩和を実施していくための点検」を巡る思惑などから、上下する局面もみられた。

国庫短期証券の買入れについては、大規模な増発が短期金融市場に与える影響も考慮して、1回当たりのオファー金額を「5,000億円~3兆円程度」をめどとして買入れを実施することを明示したうえで、市場の需給動向を踏まえつつ、毎回のオファー金額を上記レンジ内で柔軟に調整した。こうしたオペ運営のもと、国庫短期証券の利回りは、大規模な増発が行われるなかでも、概ね短期政策金利付近で安定的に推移した。

さらに、外貨の供給に関し、ニューヨーク連邦準備銀行との為替スワップ取極に基づく米ドル資金供給オペについては、1週間物は、2020年6月末まで、原則として全ての営業日においてオファーを実施した後、米ドル資金調達環境の改善や1週間物の米ドル資金供給における需要の低さに鑑みて、実施頻度を段階的に引き下げ、9月以降は原則週次でオファーした。3か月物については、年度を通して、原則週次でオファーを実施した。ドル調達コストが大幅に上昇するなか、2020年6月にかけて本オペの利用残高も大きく増加したが、米ドル短期金融市場が落ち着きを取り戻すにつれて、利用は徐々に減少した。

(3)ETF、J-REITの買入れについては、資産買入れ方針に沿って、それぞれ年間約12兆円、同約1,800億円に相当する残高増加ペースを上限に、積極的な買入れを行った。毎回の買入れ額については、機動的な調整を行った。

2021年3月の金融政策決定会合では、上記の「より効果的で持続的な金融緩和を実施していくための点検」を行った。そのうえで、(1)貸出促進付利制度の創設、(2)長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)について、平素は柔軟な運営を行うため、長期金利の変動幅は±0.25%程度であることの明確化、(3)ETFおよびJ-REITの年間増加ペースの上限を感染症収束後も継続することとし、必要に応じて、買入れを行うこと、などを決定した。

この間、短期金融市場をみると、日本銀行当座預金の三層構造のもとで、GCレポレートは短期政策金利を小幅に上回る水準で安定的に推移した。また、無担保コールレートは引き続きマイナス圏で推移した。無担保コール市場では、新型コロナウイルス感染症対応金融支援特別オペの利用などによりマクロ加算残高の上限値が引き上げられ資金調達余力が拡大した先を中心に、金融機関が資金調達を積極化する動きが拡がった。

日本銀行から

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