フィンテック特集号―金融イノベーションとフィンテック―
2018年2月7日
日本銀行決済機構局
要旨
近年、「フィンテック」(FinTech)と呼ばれる、新しい情報技術を活用した金融イノベーションが、世界的に注目を集めている。フィンテックは、新興国や途上国も含めた金融サービスの世界的な普及(「金融包摂」(financial inclusion)と呼ばれる)、金融分野への新規参入の促進や競争の激化、「ビッグデータ」、「ITプラットフォーム」の重要性の高まりなど、金融サービスに広範な影響を及ぼしつつある。そこで本稿では、フィンテックの背景となっている代表的な技術である、(1)スマートフォン、(2)人工知能(AI)・ビッグデータ分析、(3)ブロックチェーン・分散型台帳技術(DLT)について概説した上で、これらの技術を支払決済はじめ広範な金融サービスに応用していく取組みなどを紹介する。
フィンテックは、金融サービスを新興国・途上国も含め世界中に普及させ、金融サービスの「グローバル化」を進める潜在力を有している。また、AIやビッグデータ、スマートフォンなどを活用し、各ユーザーのニーズに合わせた金融サービスを提供していく「パーソナル化」や、金融と金融以外のサービスを切れ目なく提供する「シームレス化」にも寄与する。これらを通じてフィンテックは、新たな経済活動の活性化や経済の発展に資するとともに、金融取引を巡る高齢者保護など、社会的問題の解決にも貢献し得る。
フィンテックのさらなる発展のためには、(1)幅広い主体の対話・協力を促していくこと、(2)仮想通貨取引など、新たに登場した取引について、取引参加者がそのリスクを十分に認識するとともに、サービスの提供側も十分な説明に努めること、(3)情報セキュリティ低下やサイバー攻撃などの新しいリスクも含め、さまざまなリスクに対し関係者が適切な対応を採ること、などが求められる。
各国の中央銀行も、フィンテックに関しさまざまな取組みを行っている。日本銀行は2016年4月に決済機構局内にFinTechセンターを設立し、フィンテックを支援する多様な活動を行っている。また、DLTに関する欧州中央銀行との共同調査「プロジェクト・ステラ」(Project Stella)を含め、各種の調査研究活動や情報発信を行っているほか、国際的な議論にも積極的に参画している。
日本銀行から
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