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プライバシー保護技術とデジタル社会の決済・金融サービス

2022年9月29日
日本銀行決済機構局

要旨

近年、国内外において、事業者が顧客データを収集することで多くのサービスが生まれており、決済・金融サービスの領域でもデータの利活用は事業展開の重要なモチベーションとなっている。また、近年、決済にかかるAML/CFTの重要性の認識が高まっており、国際的な議論が進められている。AML/CFTを高度化し実効性のある仕組みを整えるためにも、データを活用することが重要となってきている。こうした状況を背景として、データをビジネス創出や健全な取引の実現に用いつつ、利用者のプライバシー保護に資する技術が発展を見せている。

具体的には、個人が特定されないようにデータを変換する「匿名化」や、ノイズを加えるなどして分析結果からの識別可能性を抑制する「差分プライバシー」の考え方が挙げられる。他にも、データを秘匿した状態で分析を行う「秘密計算」や、ハードウェア技術を用いて計算処理を機密性が保たれた保護領域で実行する「TEE」などの方法もある。加えて、自組織のデータに含まれる利用者の情報を他組織に対して秘匿しながら協働して機械学習を行う「連合学習」も研究されている。関連する概念として、「自己主権型アイデンティティ」にも注目が集まっている。

こうしたプライバシー保護技術やその決済・金融サービスへの応用に関する議論は、わが国を含め各国で進められている中央銀行デジタル通貨(CBDC)に関する検討に対しても、示唆を与え得るものである。

わが国でCBDCを導入するかどうかは、内外の情勢も踏まえ今後の国民的な議論の中で決まっていくものと考えられるが、日本銀行では、決済システム全体の安定性と効率性を確保する観点から、将来の様々な環境変化に的確に対応できるよう実証実験や制度設計面の検討を計画的に進めている。今後も、制度設計面の検討の一つとして、デジタル通貨に関連するプライバシー保護に関する調査・検討を、幅広い関係者とともに進めていく。

日本銀行から

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照会先

決済機構局決済システム課

E-mail : post.pr@boj.or.jp