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各地域からみた景気の現状(2024年4月支店長会議における報告)

2024年4月4日
日本銀行

今回の支店長会議における報告を総括すると、各地の景気は、8地域で「緩やかに回復」、「持ち直し」、「緩やかに持ち直し」としている。1地域では「持ち直しの動きがみられている」としている。前回の支店長会議開催時点(2024年1月)と比較すると、全9地域中7地域で総括判断を引き下げている(参考参照)。

主な需要項目等別にみると(注)設備投資については、建設コスト高等による先送り・縮小、発注先の人手不足等による工事・納入の遅れが一部でみられるものの、企業収益の改善が続くもとで、IT関連需要の中長期的な拡大期待に基づく能力増強投資、人手不足に対応する省力化・デジタル化投資、環境対応投資など、積極的な投資姿勢が維持されているとの報告が多かった。個人消費(インバウンド需要を含む)については、物価高を受けた節約志向の強まりの影響に加え、一部自動車メーカーの出荷停止に伴う自動車販売の減少や、暖冬による冬物衣料や季節家電の販売低調などが報告された。ただし、節分、バレンタイン、卒業・入学関連等のハレ消費や、都市部の百貨店等における高額品販売の好調のほか、インバウンド需要による押し上げが続く宿泊・飲食などサービス消費の堅調を踏まえ、個人消費は全体として持ち直しや回復基調を維持しているとの報告が多かった。生産については、基調としては横ばい圏内の動きとなっているものの、海外経済の回復ペースの鈍化の影響に、一部自動車メーカーの生産・出荷停止の影響も加わり、足もとでは弱めの動きとなっているとの報告が多かった。この間、IT関連財に関して、グローバルな在庫調整の進捗等を背景に、回復を見込む企業の声が複数報告された。

雇用・賃金面では、多くの地域から、労働需給の引き締まりと企業の強い人手不足感が続く中、春季労使交渉において大企業を中心にベアを伴う高水準の賃上げの動きが広がったことが波及する形で、地域の中小企業でも、昨年並みあるいはそれ以上の賃上げの動きが広がることが期待できる情勢にあるとの報告があった。ただし、収益の厳しさから慎重姿勢の先や、他社動向を踏まえて賃上げ率等を決定する先も相応にみられることから、今後の動きを注意深くみていく必要性も指摘された。また、2年連続の高水準の賃上げの動きは企業の行動変化を促しており、賃上げ原資の確保に向けて、価格設定面の工夫のほか、商品・サービスの高付加価値化、効率化投資、従業員のリスキリング支援、M&Aといった取り組みが積極化してきているとの報告も複数あった。

企業の価格設定面では、このところ、既往の輸入物価の上昇を起点とする価格転嫁の動きは緩やかになっているほか、消費者の節約志向の強まりを受け、値上げの抑制や一部商品の値下げ、低価格の品揃え強化などの動きがみられるとの報告が複数あった。一方で、人件費の価格転嫁は難しいとする企業はなお少なくないものの、賃上げの動きが広がる中、賃金の転嫁を実施・検討する企業は着実に増加しているとの報告が多数あった。特に、人件費比率の高いサービス業、働き方改革への対応を進めている物流や建設業、協力企業における労務費上昇分の価格転嫁を認める発注元が増えつつある製造業の動きなどが報告された。

能登半島地震の影響については、被災地において、個人消費は、一部に宿泊施設が休業を余儀なくされている地域があるなど下押しが残るものの、復旧復興関連需要等から持ち直しつつあるほか、生産も一部で水準が低下しており復旧の途上にあるものの、足もと持ち直しの動きがみられているとの報告があった。この間、サプライチェーンを通じた影響は、他地域での代替生産のほか、在庫による対応等により、限定的なものにとどまっているとの報告があった。


(参考)

各地域の景気の総括判断と前回との比較
【24/1月判断】 前回との比較 【24/4月判断】
北海道 持ち直している 不変 持ち直している
東北 持ち直している 右下がり 緩やかに持ち直している
北陸 今後、令和6年能登半島地震の影響を注視する必要があるが、緩やかに回復している 右下がり 能登半島地震の影響により個人消費や生産の一部に下押しがみられており復旧の途上にあるものの、復旧復興需要や生産正常化が進むもとで、持ち直しの動きがみられている
関東
甲信越
緩やかに回復している 右下がり 一部に弱めの動きもみられるが、緩やかに回復している
東海 緩やかに回復している 右下がり 一部に弱めの動きもみられるが、緩やかに回復している
近畿 持ち直しのペースが鈍化している 右下がり 一部に弱めの動きがみられるものの、基調としては緩やかに持ち直している
中国 緩やかに回復している 右下がり 緩やかな回復基調にある
四国 持ち直している 不変 持ち直している
九州・沖縄 着実に回復している 右下がり 一部に弱めの動きがみられるが、緩やかに回復している
  • (注)前回との比較の「右上がり」、「右下がり」は、前回判断に比較して景気の改善度合いまたは悪化度合いが変化したことを示す(例えば、改善度合いの強まりまたは悪化度合いの弱まりは、「右上がり」)。なお、前回に比較し景気の改善・悪化度合いが変化しなかった場合は、「不変」となる。