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各地域からみた景気の現状(2024年7月支店長会議における報告)

2024年7月8日
日本銀行

今回の支店長会議における報告を総括すると、各地の景気は、8地域で「緩やかに回復」、「持ち直し」、「緩やかに持ち直し」としている。1地域では「回復に向けた動きがみられている」としている。前回の支店長会議開催時点(2024年4月)と比較すると、全9地域中2地域で総括判断を引き上げ、2地域で引き下げている(参考参照)。

主な需要項目等別にみると(注)設備投資については、建設コスト高による先送り・縮小、発注先の人手不足による工事・納入の遅れ等が一部でみられるものの、IT関連需要の中長期的な拡大期待に基づく能力増強投資、人手不足対応や生産性向上を目的とした省力化・デジタル化投資、環境対応投資、都市再開発など、幅広い分野で積極的な投資姿勢が維持されているとの報告が多かった。個人消費(インバウンド需要を含む)については、スーパー等を中心に、物価高を受け消費者の節約志向の影響が強まっているとの報告が複数あった。ただし、多くの地域から、観光・宿泊や外食などのサービス消費が堅調に推移し、都市部の百貨店等における高額品販売の好調も続く中、個人消費は全体として底堅く推移しており、旺盛なインバウンド需要がこれを押し上げているとの報告があった。生産については、IT関連財に関し、グローバルな調整進捗や需要回復を受けた増産の動き等が複数報告された。自動車に関しては、一部メーカーの生産停止の影響が和らいでいるものの、下押しがなお続いている中、先行きの不確実性を指摘する企業の声も報告された。

雇用・賃金面では、地域の中小企業における賃金改定について、多くの地域から、春季労使交渉における大企業を中心とした高水準の賃上げ妥結の動きが波及するとともに、人材の係留・確保の必要性や、物価上昇を受けた従業員の生活への配慮等から、昨年を上回るあるいは高水準であった昨年並みの賃上げの動きに広がりがみられるとの報告があった。また、賃上げ原資の安定確保に向けて生産性向上のための投資強化や事業見直し、M&Aの動き等も喚起されてきていることも紹介された。一方で、収益面の厳しさから賃上げを見送る企業や、十分な原資を確保していない中でも人手の係留・確保を優先し賃上げに踏み切る企業等も相応にみられるとの報告もあった。賃上げが広がるもとでの企業の行動変化や地域経済への影響等について、今後も丁寧にみていく必要性が指摘された。

企業の価格設定面では、既往の輸入物価の上昇を起点とする価格転嫁の動きは一段と緩やかになっているほか、消費者の節約志向が強まるもとで、値上げの抑制や一部商品の値下げ、低価格の品揃え強化などの動きも増えてきているとの報告が複数あった。一方で、最近の為替円安に伴うコスト増の影響を指摘する企業の声も報告された。人件費の価格転嫁は難しいとする企業はなお少なくないものの、サービス業など、人件費比率の高い業種や人手不足感が強い業種を中心に、転嫁を実施・検討する動きに広がりがみられているとの報告が多かった。製造業についても、最近の政府の後押しもあって、価格転嫁が進めやすい環境に向かいつつあるとの企業の声が複数報告された。


(参考)

各地域の景気の総括判断と前回との比較
【24/4月判断】 前回との比較 【24/7月判断】
北海道 持ち直している 右下がり 一部に弱めの動きがみられるが、持ち直している
東北 緩やかに持ち直している 不変 緩やかに持ち直している
北陸 能登半島地震の影響により個人消費や生産の一部に下押しがみられており復旧の途上にあるものの、復旧復興需要や生産正常化が進むもとで、持ち直しの動きがみられている 右上がり 能登半島地震の影響により一部に下押しがみられており復旧の途上にあるものの、復旧復興需要や生産正常化が進むもとで、回復に向けた動きがみられている
関東
甲信越
一部に弱めの動きもみられるが、緩やかに回復している 不変 一部に弱めの動きもみられるが、緩やかに回復している
東海 一部に弱めの動きもみられるが、緩やかに回復している 不変 一部に弱めの動きもみられるが、緩やかに回復している
近畿 一部に弱めの動きがみられるものの、基調としては緩やかに持ち直している 右上がり 一部に弱めの動きがみられるものの、緩やかに回復している
中国 緩やかな回復基調にある 不変 緩やかな回復基調にある
四国 持ち直している 右下がり 持ち直しのペースが鈍化している
九州・沖縄 一部に弱めの動きがみられるが、緩やかに回復している 不変 一部に弱めの動きがみられるが、緩やかに回復している
  • (注)前回との比較の「右上がり」、「右下がり」は、前回判断に比較して景気の改善度合いまたは悪化度合いが変化したことを示す(例えば、改善度合いの強まりまたは悪化度合いの弱まりは、「右上がり」)。なお、前回に比較し景気の改善・悪化度合いが変化しなかった場合は、「不変」となる。