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各地域からみた景気の現状(2025年4月支店長会議における報告)

2025年4月7日
日本銀行

今回の支店長会議における報告を総括すると、すべての地域で、景気は「緩やかに回復」、「持ち直し」、「緩やかに持ち直し」としているが、足もとでは、わが国経済を巡る不確実性が高まっている。前回の支店長会議開催時点(2025年1月)と比較すると、すべての地域で総括判断を維持している(参考参照)。

主な需要項目等別にみると(注)個人消費(インバウンド需要を含む)について、賃上げが消費の押し上げに寄与しているとみられるもと、旺盛なインバウンド需要もあって、サービス消費で観光・宿泊や外食等の需要が引き続き堅調であり、財消費でも、都市部の百貨店等における高額品の好調な販売が続いているとの報告が多かった。また、スーパー等を中心に、物価高を受けた消費者の節約志向の影響が引き続きみられるとの報告があったほか、こうした日常消費における節約志向の一方、イベント関連等の消費が堅調であるなど、メリハリ消費の動きが続いているとの報告もあった。設備投資については、建設コスト高による先送り・縮小や、発注先の人手不足による工事・納入の遅れ等が一部でみられるものの、人手不足対応や生産性向上を目的とした省力化・デジタル化投資や、IT関連需要の拡大期待に基づく能力増強投資など、幅広い分野で積極的な投資姿勢が維持されているとの報告が多かった。生産については、一部の素材等における生産調整の動きが引き続き報告されたものの、IT関連財でAI関連の生産が増加基調にあるほか、自動車関連では受注残への対応から生産が増加しているとの報告があった。この間、各国の通商政策を巡っては、企業からは、生産や企業収益等への影響を懸念する声のほか、ここにきて政策の不確実性が高まっていることから、その影響を見極めつつ具体的対応を進めていく必要があるとの声が聞かれており、支店としても、今後の動向を十分注意してみていくとの報告が多かった。

雇用・賃金面では、多くの地域から、企業の人手不足感が強まるもと、春季労使交渉での大企業を中心とした前年を上回る妥結結果等を受け、地域の企業においても、幅広い業種・規模で、人材確保・係留の観点から、高水準の賃上げを行うことが期待できる情勢にあるとの報告があった。ただし、中小企業を中心に、収益面の厳しさから慎重な姿勢を示す声も引き続き報告された。

企業の価格設定面では、既往の輸入物価の上昇を起点とする価格転嫁の動きは緩やかながらも続いているほか、米などの仕入コスト上昇等に伴う値上げの動きがみられるとの報告が多かった。また、人件費の価格転嫁については、なお難しいとする企業の声はあるものの、賃上げ原資確保のための転嫁を実施・検討する動きが引き続き広がっているとの報告が多かった。ただし、消費者の節約志向の影響がみられるもとで、値上げの抑制や一部商品の値下げ、低価格商品の品揃え強化等の動きも引き続きみられているとの報告があった。


(参考)

各地域の景気の総括判断と前回との比較
2025年1月判断 前回との比較 2025年4月判断
北海道 一部に弱めの動きがみられるが、持ち直している 不変 一部に弱めの動きがみられるが、持ち直している
東北 持ち直している 不変 持ち直している
北陸 一部に能登半島地震の影響がみられるものの、緩やかに回復している 不変 一部に弱めの動きもみられるが、緩やかに回復している
関東
甲信越
一部に弱めの動きもみられるが、緩やかに回復している 不変 一部に弱めの動きもみられるが、緩やかに回復している
東海 緩やかに回復している 不変 緩やかに回復している
近畿 一部に弱めの動きがみられるものの、緩やかに回復している 不変 一部に弱めの動きがみられるものの、緩やかに回復している
中国 緩やかな回復基調にある 不変 緩やかな回復基調にある
四国 緩やかに持ち直している 不変 緩やかに持ち直している
九州・沖縄 一部に弱めの動きがみられるが、緩やかに回復している 不変 一部に弱めの動きがみられるが、緩やかに回復している
  • (注)前回との比較の「右上がり」、「右下がり」は、前回判断と比較して景気の改善度合いまたは悪化度合いが変化したことを示す(例えば、改善度合いの強まりまたは悪化度合いの弱まりは、「右上がり」)。なお、前回判断と比較して景気の改善・悪化度合いが変化しなかった場合は、「不変」となる。