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各地域からみた景気の現状(2025年7月支店長会議における報告)

2025年7月10日
日本銀行

今回の支店長会議における報告を総括すると、一部に弱めの動きもみられるが、すべての地域で、景気は「緩やかに回復」、「持ち直し」、「緩やかに持ち直し」としている。前回の支店長会議開催時点(2025年4月)と比較すると、すべての地域で総括判断を維持している(参考参照)。

各国の通商政策の影響に関して(注)、現時点では、設備投資について、不確実性の高まりを背景に投資の先送りや見直しを検討・実施する動きがみられるとの報告があった一方、IT関連需要の拡大期待に基づく能力増強投資や、人手不足対応や生産性向上を目的とした省力化・デジタル化投資などで積極的な投資スタンスが維持されているとの報告もあった。価格設定面では、競争優位性の高い製品を中心に海外での価格転嫁が進んでいるとの報告があった一方、その他の製品では、どの程度関税分を転嫁していくかについて海外販売先と交渉中であるとの報告もあった。この間、地域のサプライヤーから、人件費の価格転嫁の流れを阻害するまでには至っていないものの、先行き、国内納入先の交渉スタンスの厳格化を懸念する声が聞かれるとの報告もあった。輸出・生産については、関税の引き上げを見越した駆け込みやその反動減の動きが報告されたほか、不確実性の高まりや米国における設備投資スタンスの消極化を受けた資本財の受注下振れを指摘する報告があったものの、現時点では、こうした影響は総じて限定的にとどまっているとの報告が多かった。先行きについて、米国における販売価格の引き上げや世界経済の減速等に伴う需要の減少を懸念する声が多く報告されたほか、一部原材料の調達困難化の影響を指摘する報告が複数あった。

こうしたもと、賃金設定面では、多くの地域から、幅広い業種・規模の地域企業で、人材係留・確保のため、今年度の賃上げも高水準であったと報告された。先行き、各国の通商政策の影響を受けて企業収益が下振れた場合は、今年度の冬季賞与を減額する可能性を指摘する企業の声も報告されたほか、来年度の賃金設定について、賃上げの実施に懸念を示す声があった一方、人手不足感が強い企業を中心に人材係留・確保のためには継続的な賃上げが必要とする声も報告された。

各国の通商政策の影響以外については、価格設定面で、既往の輸入物価の上昇に加え、仕入コストや人件費、物流費の上昇等を受けた値上げの動きがみられるとの報告が多かった。ただし、米などの食料品価格の上昇等を背景とする物価高を受けた消費者の節約志向の影響がみられるもとで、値上げの抑制や低価格商品の品揃え強化等の動きも引き続きみられるとの報告があった。こうしたもと、個人消費(インバウンド需要を含む)については、財消費で、都市部の百貨店等における高額品の販売は、免税売上が低調となる一方、国内富裕層の需要は堅調との報告が多数あった。また、サービス消費では、観光・宿泊や外食等の需要が引き続き堅調との報告が多かった。この間、財・サービス消費ともに、日常消費において消費者の節約志向の影響がみられる一方、イベント関連等の消費が堅調であるなど、メリハリ消費の動きが続いているとの報告もあった。


(参考)

各地域の景気の総括判断と前回との比較
2025年4月判断 前回との比較 2025年7月判断
北海道 一部に弱めの動きがみられるが、持ち直している 不変 一部に弱めの動きがみられるが、持ち直している
東北 持ち直している 不変 持ち直している
北陸 一部に弱めの動きもみられるが、緩やかに回復している 不変 一部に弱めの動きもみられるが、緩やかに回復している
関東
甲信越
一部に弱めの動きもみられるが、緩やかに回復している 不変 一部に弱めの動きもみられるが、緩やかに回復している
東海 緩やかに回復している 不変 緩やかに回復している
近畿 一部に弱めの動きがみられるものの、緩やかに回復している 不変 一部に弱めの動きがみられるものの、緩やかに回復している
中国 緩やかな回復基調にある 不変 緩やかな回復基調にある
四国 緩やかに持ち直している 不変 緩やかに持ち直している
九州・沖縄 一部に弱めの動きがみられるが、緩やかに回復している 不変 一部に弱めの動きがみられるが、緩やかに回復している
  • (注)前回との比較の「右上がり」、「右下がり」は、前回判断と比較して景気の改善度合いまたは悪化度合いが変化したことを示す(例えば、改善度合いの強まりまたは悪化度合いの弱まりは、「右上がり」)。なお、前回判断と比較して景気の改善・悪化度合いが変化しなかった場合は、「不変」となる。