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地域経済報告―さくらレポート―(別冊シリーズ)* 人手不足のもとでの賃金動向と新たな給与体系の構築に向けた取り組み

  • 本報告は、上記のテーマに関する支店等地域経済担当部署からの報告を集約したものである。

2018年12月27日
日本銀行

【要旨】

わが国では、労働需給が着実な引き締まりを続けるなか、賃上げの動きが広範にみられている。賃上げの理由としては、企業業績の改善や生産性の向上分を従業員に積極的に還元するとの指摘や、人手不足が厳しいもとでは人材の確保・係留に賃上げが必要との指摘が聞かれた。また、最低賃金の引き上げへの対応から賃上げを行ったとの声があったほか、政府の賃上げ促進策の存在を評価する声も聞かれた。

ただし、地方企業や中小企業を中心に、自社の先行き不透明感などから業績好調の割に賃上げの幅を限定しているとか、ベアよりも賞与での賃上げを選択するといったように、所定内給与の引き上げに慎重な先も相応にみられた。また、賃上げだけでなく、福利厚生や勤務環境の改善も人手不足への対応として有効との指摘が聞かれたほか、省力化投資等により賃上げ圧力を抑える動きもみられた。

人手不足が続くなか、新たな給与体系を構築し、収益や生産性の改善分を従業員に効果的に配分・還元しようとする企業の取り組みも広がりつつある。具体的には、従来の全層一律の対応や年功という考え方を改め、個々の企業が抱える課題や経営戦略に応じて、年齢層ごとに賃金の改善幅に差を設けるメリハリ型の賃金見直しの動きが相応にみられた。また、一部ではあるが、能力や成果をより反映した給与体系を導入したり、IT人材を高い賃金で受け入れる仕組みを構築したり、個々の賃金にメリハリをつける先もある。この間、残業時間の削減を促すなど働き方改革を後押しするようなインセンティブを付与する動きもみられた。

先行きを展望すると、労働需給の引き締まりが続けば、賃金上昇圧力が一段と高まるため、賃上げの動きがさらに広がり、企業の賃金設定スタンスも徐々に積極化していくとみられる。もっとも、地方企業や中小企業を中心とした自社の先行き不透明感は、人口減少に伴う域内需要の先細りなどを意識した面もあるため、こうした企業行動の変化には時間を要する可能性もある。この間、長い目でみると、賃上げ以外の処遇改善策による人材確保・係留や従業員のモチベーションの向上、省力化投資等の取り組みが奏功するかたちで労働生産性が向上し、賃上げの原資が生み出されることが期待される。

今後、企業の賃金設定スタンスが積極化し、賃金の上昇テンポが加速するのにどの程度時間を要するか、また、新たな給与体系の構築に向けた取り組みが広がるなかで労働生産性の向上が賃金により鮮明に反映されるようになるかという点は、先行きの物価動向を考えるうえで重要である。引き続き企業の賃金設定スタンスや給与体系の変化に注目していく必要がある。

日本銀行から

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照会先

調査統計局地域経済調査課

島田
Tel:03-3277-1357