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地域経済報告―さくらレポート―(別冊シリーズ)* 地域の企業における気候変動を巡る取り組みと課題

  • 本報告は、上記のテーマに関する支店等地域経済担当部署からの報告を集約したものである。

2022年6月21日
日本銀行

【要旨】

気候変動問題は、企業の事業環境にも様々なかたちで変化を及ぼしつつある。実際、地域の企業においては、脱炭素化に伴う「需要の変化」や、エネルギーコストの上昇といった「コスト面」の影響が意識されはじめている。このほか、気候変動への取り組み如何が採用活動に影響するようになっていることや、金融機関や投資家の目線が変化しつつあることを契機に「レピュテーション」を意識する企業も出てきている。

こうした中、地域の企業では、具体的な取り組みはまだ緒についた段階ではあるが、既に、(1)「自社のCO2削減に向けた取り組み」や(2)「需要の変化に対応する取り組み」を進める動きもみられている。前者((1))は、例えば再生可能エネルギーの利用やエネルギー効率の向上などにより、自らの企業活動から排出されるCO2の削減に取り組むものである。このような取り組みは、CO2の削減それ自体を目的としつつ、気候変動を巡る変化が個々の企業経営に及ぼす影響も意識しながら進められている。後者((2))は、例えばEVや再生可能エネルギー関連の需要の増加など、社会全体としての気候変動問題への取り組みに伴う需要の変化に対応するものである。

地域の企業においては、こうした取り組みを進めるうえでの課題として、脱炭素に向けた技術的なハードルや導入コストの高さ、そのコストを価格に転嫁することの難しさが意識されている。また、「具体的に何をすべきか分からない」といったものを含め、情報や人材の不足を指摘する声も聞かれている。こうしたもとで、金融機関では、資金面をはじめ企業の取り組みのサポートやそのための体制整備にも取り組んでいる。

気候変動への対応は社会全体にとっての長期的な課題であり、その進展につれて、今後、エネルギーコストの大きな変動や国内外での規制・ルールの見直し、消費者嗜好の変化など、企業経営を取り巻く環境が様々なかたちで変化していくことも展望される。個々の企業においては、こうした経営環境の変化が、場合によっては想定以上のペースや大きさで進みうることも念頭に、既に取り組みを進めている事例も参考にしながら、長期的な観点から対応を考えていくことが、今後ますます重要になっていくものとみられる。

日本銀行から

本稿の内容について、商用目的で転載・複製を行う場合は、予め日本銀行調査統計局までご相談ください。転載・複製を行う場合は、出所を明記してください。

照会先

調査統計局地域経済調査課

足立
Tel:03-3277-1357