地域経済報告―さくらレポート―(別冊シリーズ) 「1990年代半ば以降の企業行動等に関するアンケート調査」の集計結果について
2024年5月20日
日本銀行
【要旨】
日本銀行では、「金融政策の多角的レビュー」の一環として、1990年代半ば以降の企業行動の特徴や、それがわが国の経済動向および賃金・物価形成に及ぼした影響について理解を深めることを目的に、幅広い業種・規模の国内の非金融法人企業(約2,500社)を対象としたアンケート調査を実施した。
調査の結果から、わが国の設備投資や物価・賃金の停滞が長きにわたって続いた要因は、以下の4点にまとめられる。第1に、バブル崩壊・金融危機後の長い調整や以降も続いた度重なる大規模なショック(リーマンショック等)の経験を経て、企業は、設備投資等による積極的なリスクテイクを抑制し、財務改善や将来に備えた現預金の確保を優先するようになった。第2に、バブル崩壊・金融危機を受けて、消費者の低価格志向や取引先企業のコストカット姿勢が急速に強まる中で、競合他社との厳しい価格競争に直面した多くの企業でコストの価格転嫁が困難となった。第3に、長らく賃金を抑制しても労働者を確保できたため、多くの企業が低価格を維持するために賃金を抑制するようになり、これが消費者の低価格志向を定着させる悪循環を招いた。第4に、並行して進んだ少子高齢化も、成長期待の低下や社会保障負担の拡大などを通じて、設備投資や賃金を抑制する方向に働いた。
現在においても、少子高齢化の悪影響やベア実施による固定費増加などを懸念する企業は多い。もっとも、多くの企業が、もはや賃金を抑制していると労働者を確保できない状況になっていると回答している。また、輸入物価上昇分の価格転嫁が成功したことなどを契機に、人件費の増加を販売価格に転嫁する動きも広がりつつある。
物価と事業環境に関する設問では、業種・規模を問わず多くの企業が、物価と賃金がともに緩やかに上昇する状態のほうが、ほとんど変動しない状態よりも事業活動上好ましいと考えていることが明らかとなった。
この間の日本銀行による金融緩和については、幅広い企業において、借入金利の低下やアベイラビリティの改善などを通じて、経営や前向きな投資の支えとなったことが確認された。一方、企業からは、自社が実感する金融緩和の副作用として、新陳代謝の停滞による人材確保難や価格競争激化などが指摘された。
日本銀行から
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