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金融機関のリスク情報に関するディスクロージャーについて

(Box2)

リスク対比収益率分布

 一部邦銀は、1995年度のディスクロージャー誌である期間(ここでは1年間<250営業日>)におけるトレーディング取引の日々の日次損益実績値とVaRの比、すなわち「リスク対比収益率」をヒストグラム化し、標準正規分布曲線と重ね合わせたものを開示している。本事例は、そうした手法の概念を分かり易くするためイメージ図化したものであるが、分布の形状を利用して次のように業務およびリスク管理のパフォーマンスを説明することができる(前掲図表7)。

(1)収益性

 分布の位置により取引のリスク対比でみた収益性を評価することができる。この場合、まず分布が全体として正の領域にあることで、平均的にみて利益を上げることができたことが判る。もっとも、リスク対比収益率の値が1を越える頻度が多くなると、これはバック・テスティングで45度線を上回る点が多いことと同じことになり、リスク管理上必ずしも望ましいとはいえないが、この例では、分布がほとんど+1以内に収まっている。また、負の領域(損失)の分布は-0.5以上に位置しており、リスク対比でみて損失の抑制が働いていると評価できる。一般的に、分布が-1〜+1の範囲に収まっていれば、リスク管理パフォーマンスは良好であるといえる。

(2)安定性

 正規分布に比べて分布が平均値付近により集中している、すなわちリスク対比でみた収益の変動が小さく、安定的な収益計上が可能であったという点が示されている。