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BIS統計からみた国際金融市場

90年代における国際資金フローの変化

1999年 4月24日
日本銀行金融市場局

日本銀行から

 全文(本文、図表、BOX)は、こちら( bis9904b.lzh 136KB[MS-Word・MS-Excel])から入手できます。なお、本稿は日本銀行調査月報5月号に掲載する予定です。

はじめに

 1980年代以降、金融市場におけるグローバル化の進展に伴い、国際的な資本移動の規模は急激に拡大している。例えば、G7諸国の国際資本移動の規模(グロス・ベース)を対GDP比率によりみてみると、70年代から80年代半ばまでは2〜3%で推移していたが、その後急速に上昇し、最近では10%を超える水準にまで上昇している。さらに、デリバティブ取引を利用した国際的なリスクの移転まで含めて考えると、国際的な資本・資金やリスクの移動の規模は飛躍的に大きくなっていると考えられる。このような状況下、国際的な資本やリスクの移動の状況に関する正確な認識は、各国のマクロ経済や金融システムの問題を考えるうえでも、また、世界全体の経済や金融システムの安定的発展を考えるうえでも、不可欠な情報となっている。その際必要となる情報は多岐にわたるが、大きく分ければ、国際的な資本・資金(あるいはリスク)の移動の量に関する情報と、資本・資金(あるいはリスク)の価格に関する情報の両方が挙げられる。近年、両者を総合的に捉えた国際金融市場の分析の必要性に対する認識が強まっており、今後ますますその重要性は高まっていくと考えられる。

 このような認識の下、主要国の中央銀行と国際決済銀行(BIS)は関係当局、金融機関等と協力しながら国際金融取引の量に関する統計の整備を進めてきたが、97年半ばに始まったエマージング諸国の通貨・金融危機を契機として、統計の改善に一段と力を入れている。日本銀行は、BISを中心とする国際金融に関する統計の整備に協力するとともに、後述するように日本の計数を独自に公表している。本稿では、国際金融市場の取引に関するBIS統計の概要を説明すると同時に、近年における国際金融上の重要な出来事— 国際金融市場における邦銀の信用力の低下、エマージング諸国の通貨・金融危機、欧州における統一通貨「ユーロ」の誕生の影響 —が統計にどのように反映され、また統計を使ってどのような分析が可能となるかを示すことを通じて、BIS統計への理解を深めることを目的としている。併せて、現在行われつつあるBIS統計の改善の内容についても簡単に紹介する。

以上