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欧州中央銀行月報の創刊号より(資料)

1999年 2月25日
国際局国際調査課
(E-mail: tomoyuki.nakagawa@boj.or.jp)
フランクフルト事務所

 欧州では、本年1月1日に経済通貨同盟(EMU)の第3段階が開始され、EU15か国のうち、11か国(ドイツ、フランス、イタリア、オランダ、ベルギー、ルクセンブルク、アイルランド、スペイン、ポルトガル、オーストリア、フィンランド)がこれに参加し、統一通貨ユーロを導入した。ユーロを導入した11か国は、総称してユーロエリア(以下ユーロ圏)と呼ばれている。そしてユーロ導入に伴い、ユーロ圏の金融政策は各国中央銀行に代わり、欧州中央銀行(European Central Bank、以下ECB)の政策理事会が決定している。

 今般(1月19日)、ECBは、「ECBの書面によるコミュニケーションの最も重要な手段の一つ」として、月報(Monthly Bulletin)を創刊した。ECBは、今後、月報の中で、金融政策を説明し、包括的な経済分析を示していく意向である(注)。今回の創刊号では、ユーロ圏経済の全体像と最近の金融・経済情勢ならびに、物価安定の重要性と金融政策の役割・考え方などを説明しており、その本文はECBのホームページ(http://www.ecb.int(外部サイトへのリンク))で入手できる。

 以下では、このECB月報の内容をもとに、今後ECBの金融政策やユーロ圏の金融経済情勢を理解する上で有用と考えられる点(ECBの金融政策の枠組み、ユーロ圏の概要、統計利用上の留意点等)に重点を置いて紹介する。

  • 「ECBは、月報において、政策理事会の金融政策決定について説明する。包括的な経済分析を通じ、ECBにおける金融政策の透明性の促進を図る。」「月報の発行は、少なくとも年4回、欧州中央銀行制度の活動について報告書を公表しなければならないというECBの義務を満たすものとなる。」(月報巻頭言より)

1.欧州中央銀行制度と金融政策の枠組み

 ECBは、ユーロ圏の中央銀行制度、金融政策の基本的枠組み、金融調節手段について以下のように解説している。この際、EU15か国のうち4か国(イギリス 、デンマーク、スウェ−デン、ギリシャ)はユーロを導入していないことから、EU全体の中央銀行制度のうちユーロ圏の中央銀行制度についてユーロシステム(Eurosystem)という用語を用いることとしている。

(1)欧州中央銀行制度の仕組み

 欧州中央銀行制度(European System of Central Banks、以下ESCB)は、ECBおよびEU15か国全ての中央銀行によって構成される。

 ユーロシステム(Eurosystem)は、ECBおよびEU15か国のうちユーロを導入した国の中央銀行(以下、各国中央銀行)によって構成される。現在、ユーロシステムには、11か国の中央銀行が含まれているが、EU15か国すべてがユーロ圏に参加した場合には、ユーロシステムとESCBは同義となる。

 ユーロシステムは、ECBの政策理事会(Governing Council)と役員会(Executive Board)が統括(govern)する。政策理事会は、役員会の全てのメンバー(総裁、副総裁、理事4名)とユーロを導入した国の中央銀行総裁(11名)から構成される(合計17名)。

(日本銀行注)
ユーロ圏の金融政策は、ECBの政策理事会(隔週木曜日開催)が決定し、ガイドラインを策定する。役員会は、ガイドラインに従って金融調節等を遂行し、その際、各国中央銀行に対して必要な指図を与える。政策理事会での決議は原則単純多数決によって行われ、金融政策の遂行にあたっては、「いかなる者にも指図を求めたり、指図を受けてはならない」ことが定められている。
 なお、ESCBのうちユーロを導入していない国が残っている間については、ECBには、第3の意思決定機関として、一般理事会(General Council)が設置され(年4回開催、ECB総裁、副総裁、EU15か国の中銀総裁で構成)、これらの国々のユーロ導入に向けて必要な準備等を行うこととなっている。

(2)金融政策の基本的枠組み(ストラテジー)

物価安定を指向した金融政策

 マーストリヒト条約は「ESCBの最重要目標は物価の安定」と規定している。この明確に定義された使命を達成するため、マーストリヒト条約はESCBに対して、かなりの程度の制度上の独立性を付与しており、一方で透明性とアカウンタビリティーに関する広範囲な義務も課している。

 この考え方は、「物価の安定を信頼に足る持続的な方法で維持する金融政策こそが経済の発展と生活水準の向上に対して最大限の貢献をなす」との信念に根差すものである。また、通貨統合の第3段階開始時および当初の数年間にユーロシステムが直面する特殊な環境を考慮する必要がある。ECBは新しい機関であり、独自の実績や名声を有していないため、第3段階開始に際して信認を形成することは特に重要である。

 ユーロシステムの物価安定を指向した金融政策ストラテジーの主なポイントは98年10月13日に公表され、その後ECB総裁や他の政策理事会メンバーのスピーチや声明により補足された。このストラテジーは、以下の主要な側面を持っている。

  • 統一金融政策の最重要目標である物価安定の定量的な定義
  • 本目標を達成するための「2本の柱」すなわち、
  • マネーサプライに極めて重要な役割の付与。広義マネーサプライについての参照値のアナウンス。
  • 幅広い指標に基づいたユーロ圏全体の物価動向と物価安定に対するリスクのアセスメント。

 物価安定の定量的な定義は、ユーロ圏における統合消費者物価指数(HICP:Harmonised Index of Consumer Prices)の上昇率が前年比+2%を下回る状態を指す。また、この定義による物価安定は中期的に維持されるべきものである。「+2%を下回る」というフレーズは、物価安定と矛盾しないHICPベースのインフレ率の上限を明確に示している。同時に、「上昇率」という用語は、HICPが長期間に亘り低下するデフレは物価安定に含まれないことを示している。また、物価安定の定義に際しては、HICPの計測バイアスを明示的に含ませることを避ける代わりに、物価上昇率の下限をゼロとして設定しなかった訳である。「物価安定は中期的に維持されるべきもの」との表現は金融政策が先行きを睨み、かつ中期的観点に立つ必要があることを反映している。

 マネーサプライは、物価安定の維持を目標とする金融政策にとって、自然、堅牢かつ信頼しうる「アンカー」となる。中央銀行にとって、マネーサプライのコントロールはインフレを直接コントロールするより容易であり、物価安定を指向した金融政策においてマネーサプライに重要な役割を与えることは、マネーサプライを通じたインフレ圧力に対するユーロシステムの責任を強調するものである。政策理事会はM3の前年比+41/2%という参照値を定め、この参照値をM3前年比の3か月移動平均と比較してマネーサプライ動向をモニターしている。M3は、過去2年間+3.5〜5.0%の伸びとなっており、ユーロ圏の物価安定と持続的な経済成長に整合的なものとなっている。

 マネー伸び率の参照値は、マネーと、物価・実質GDP・通貨流通速度の間の周知の関係を用いて算出している。98年12月1日に発表したM3伸び率の参照値(+41/2%)の算出に用いた仮定は以下の通りである。

  1. a)物価安定は、ユーロシステムが発表した定義と整合的でなければならないため、ユーロ圏のHICPの前年比は2%を下回る。
  2. b)趨勢的な実質GDP成長率は、年率2〜21/2%の範囲。
  3. c)中期的なM3の流通速度は、概ね毎年1/2〜1%低下。

 政策理事会はマネー伸び率に関して、参照レンジではなく特定の参照値を設定することとしたが、これは参照レンジを設定した場合、「マネー伸び率がレンジを外れれば政策金利が自動的に変更される」と誤って解釈されうると判断したためである。

ユーロシステムの透明性とアカウンタビリティー)

 一般に中央銀行は、金融政策の遂行も含めた活動について公衆に完全に報告することを通じ、オープンで透明かつアカウンタブルである必要がある。ECB総裁は毎月第1回目の政策理事会の直後に記者会見を開催する。この機会に総裁は、経済状況と物価見通しに関する理事会の見方についての広範な声明を出し、その後質疑応答のセッションが設けられる。本年分の理事会の開催スケジュールと記者会見の日程は既に公表されている。この定例ステートメントは月報の発行によって補足される。月報は、公衆と金融市場に対し、経済状況の詳細な分析と経済の構造や統一金融政策にとり重要なトピックについての論文を提供することを目的としている。

 さらにユーロシステムのバランスシートも毎週公表される。ユーロシステムの活動状況に関する年報も作成義務があり、これは四半期報によって補足される。これらのレポートは欧州議会、EU閣僚理事会、欧州委員会に送付される。欧州議会はこれらのレポートに関連して一般的な討議を実施する。ECB総裁とその他の役員会メンバーは欧州議会の専門委員会からの質問に対して回答する義務がある。総裁は年報および四半期報の提出に合わせ、年5回、欧州議会の専門委員会に出席することになる。

 スピーチを通じても、政策理事会メンバーは公衆に金融政策と経済に関して説明する。ECBのスタッフによるワーキング・ペーパーや技術的分析も専門家による検証と科学的な評価に晒すべく公表される。これらの論文やその他のプレゼンテーションのテーマは金融政策やその波及過程についての中心的関心事項に関するものだけではなく、高失業といった欧州が直面する主要な経済問題もカバーする。

 このような媒体を通じ、ECBは明確かつ透明な方法で公衆とコミュニケートすることを明らかにしている。このように、ユーロシステムは高度な透明性とアカウンタビリティーを明確に有している。

(3)金融調節手段について

 ユーロシステムは、金融政策目標を達成する為に、公開市場操作を実施し、常設ファシリティーを設置し、最低準備預金制度を導入する。公開市場操作は、(1)短期金利を誘導し、(2)金融市場の流動性を管理し、(3)金融政策スタンスに関するシグナルを発することを目的とし、ユーロシステムの金融調節の中で重要な役割を果たす。常設ファシリティーは、(1)オーバーナイトの資金を供給・吸収し、(2)中期的な金融政策スタンスに関するシグナルを発することを目的とする。また、最低準備預金制度は、(1)短期金融市場金利の安定化、(2)構造的な流動性不足の創出(または拡大)を目的とする。

公開市場操作

 ユーロシステムの公開市場操作の中では、主要リファイナンシング・オペ(main refinancing operation:期間2週間、毎週1回実施)が重要な役割を果たし、短期市場金利水準を誘導し(日本銀行注)、銀行システムへの資金供給を行う。また、ユーロシステムは中長期リファイナンシング・オペ(longer-term refinancing operation:期間3か月、毎月1回実施)を実施するが、主要リファイナンシング・オペとは異なり、当該オペによって市場にシグナルを発することは意図していない。この他、必要があれば、ユーロシステムは、意図せぬ流動性の変動を緩和するために、ファインチューニング・オペを実施したり、金融部門に対するユーロシステムの構造ポジションの調整を目的とする、ECB負債証券(ECB debt certificates)の発行等の構造オペ(structural operation)を行うこともできる。

(日本銀行注)
 短期市場金利を誘導する主要リファイナンシング・オペの金利は、市場ではよくレフィ・レート(refi rate:refinancing rateの略)と呼ばれている。
 なお、ECBは、月報での金融市場動向の説明において、短期金利に関しては、EONIA(Euro overnight index average:ユーロ圏の大手銀行により報告される無担保オーバーナイト契約の加重平均金利)およびEURIBOR(European interbank offered rate:ユーロ圏の大手銀行により提示されるインターバンク金利の単純平均金利)、長期金利については、ECBが各国毎のGDPウェイトによって加重平均した国債金利(Euro area government bond yields)、また株価については、EURO STOXX指数を用いている。

常設ファシリティー

 公開市場操作がユーロシステムの主導で実施されるのに対して、常設ファシリティーは、金融調節の適格対象先となっているユーロ圏内の金融機関の要請によって利用される。これらの金融機関は、(1)各国中央銀行が対象金融機関に対してオーバーナイトの流動性供給を行う限界貸付と、(2)対象金融機関が各国中央銀行に対して、オーバーナイトの預金を行う中銀預け金の2つの常設ファシリティーを利用することができる。通常は、当該ファシリティーの利用に制限が課されないが、限界貸付を利用する場合には、十分な適格担保が必要とされる。

 なお、金融市場のオーバーナイト金利は、当該ファシリティーの金利によって設定される上下の幅の間で変動することになる。

最低準備預金制度

 ユーロ圏内に設立された金融機関には、準備預金の積立が求められる。所要準備額は、金融機関のバランスシート上で定められた負債に準備率を乗じることによって算出され(EMU第3段階開始時の準備率は2%)、金融機関は通常毎月24日から翌月の23日にかけて、1ヵ月間の平残方式で準備預金を積立てなければならない。平残方式による準備預金の積立は、積立期間を通じたオーバーナイト金利の安定に資することが期待される。また、準備預金に対しては、ユーロシステムの主要リファイナンシング・オペ金利に応じた付利がなされる。

2.ユーロ圏の概要等

 ECBは、ユーロ圏の金融経済の概要や取り組むべき課題、統計利用上の留意点等について次のように説明している(後掲図表参照)

(1)ユーロ圏の日米との比較

 ユーロ圏は、世界のGDPの15%を占める大規模な経済である。また、全世界の輸出に占めるユーロ圏の割合は16%であり、これは、米国、日本を抜いて世界一である。

 ユーロ圏の産業構造は日本や米国と似通っている。農林水産業は3地域ともGDPの約2%を占める。鉱工業(建設業を含む)は、ユーロ圏ではGDPの31%と米国(26%)より大きいが、日本(39%)に比べると小さい。サービス業は、ユーロ圏ではGDPの67%と米国(72%)と日本(59%)の中間に位置する。

 一方、政府セクターの規模や構造はかなり異なっている。財政支出の対GDP比率は、ユーロ圏(49%)が日本(39%)と米国(35%)を大きく上回っている。こうした差の大部分は、社会保障制度の差異によって説明することができる。ユーロ圏における政府から家計部門への移転の対GDP比率は、他の2国に比べ、相対的に高い。また、歳入構造をみると、ユーロ圏は、政府収入の約3分の1が社会保険料で占められ、米国に比べてその比率が高い。また、日本と米国が直接税に依存しているのに対して、ユーロ圏では間接税が税収入の中で大きな割合を占めている。

 金融制度については、日米といくつかの構造的な差がある。特に米国と異なる点は、銀行と証券市場の相対的な役割にある。ユーロ圏では、金融システムは、銀行の金融商品に基づく部分が大きく、エクイティーファイナンスの役割は限られている。銀行預金の対GDP比率は、ユーロ圏では84%と、日本(99%)には及ばないものの、米国(55%)に比べてかなり高い。金融機関信用についても、その額や対GDP比率は、米国を大きく上回っている。一方で、国内債務証券残高については、米国がユーロ圏の2倍となっているほか、株式市場の時価総額についても、ユーロ圏を大きく上回っている。

 労働市場についても大きな差がある。ユーロ圏の失業率は、米国を大きく上回っており、これは、賃金・非賃金コスト、労働者保護規制等といった構造的特徴に基づくものである。

(2)ユーロ圏の今後の課題

 総じてみると、ユーロ圏は、世界で最も大きな経済の一つとして、グローバル経済において重要な役割を担うことが予想される。しかし、高失業率や財政不均衡の解決といった課題も残されている。これらの課題を克服するためには、第一に域内の健全で持続可能な政策的な枠組みに基づく必要があり、それは世界経済の安定にも寄与することである。こうした枠組みは、「安定成長協定」(Stability and Growth Pact)と整合的な財政政策、ならびに労働市場等における構造改革の推進とそれに伴う賃金上昇の緩やかさによって特徴づけられる。こうした枠組みを維持することは、企業部門の競争力と収益性を高め、雇用の増加を促進し、さらには個人消費を支えることとなる。

 金融政策は最重要目標である物価安定を追求する。これによりインフレ期待を抑え、長期金利のリスクプレミアムを低下させ、それによって、ユーロ圏における経済活動と雇用の促進に繋がる環境に貢献する。

(3)統計利用上の留意点等

ユーロ圏の経済統計

 ユーロ圏のマクロ経済動向を評価するためには、ユーロ圏全体の信頼性のある最新の統計が必要となる。しかし、現時点では、多くのデータ(特に長期時系列)が統一的な基準で作成されていない。この場合、各国毎の資料に基づく最良の推計値を使用せざるを得ないが、こうした推計値は大部分の国をカバーしているが、一部含まれない国もある。

 国際的な定義や基準の整備のための組織的な作業は近年開始されたばかりであるが、ECBが必要とするデータはより広範囲かつ詳細なものであり、ECBはこのような統計の整備のためのイニシアティブを積極的に支持してきている。

マネーサプライ統計

 マネーサプライ統計は、ユーロ圏の通貨金融機関(Monetary Financial Institutions(日本銀行注)、以下MFI:預金並びに<又は>預金類似商品を受入れるとともに、自らの勘定で、信用の供与並びに<又は>証券投資を行う機関。各国中銀、ECB、金融機関<Credit institutions>、その他金融機関<Financial institutions、主としてMMF>から成る)のバランスシート上の負債等をベースに算出される。また、MFIの負債に計上されるマネーの保有セクターは、中央政府を除く全ての非MFIユーロ圏居住者とされ、家計、非金融企業、保険会社、年金基金、州政府、地方政府、社会保障基金から成る。そして、MFIの負債のうち、最も流動性に富む流通現金とオーバーナイト預金の合計は、M1として狭義のマネーを意味する。次にM1にその他の短期預金(満期2年以内の預金、3か月以内の解約告知期間付預金)を加えたものがM2として定義される。M3は広義のマネーとしてM2にMFIの特定の市場性負債(レポ、MMFおよび短期市場証券、償還期限2年以内の債券)を加えたものとされる。

 統合されたバランスシートデータとマネーサプライ統計は97年9月以降収集されており(前年比は98年9月以降)、マネーサプライ統計に関しては、推計による長期時系列も作成されている。同統計は、月次のフローデータは現時点では入手できないため、このようにストックデータを基に算出されており、市場価値や為替相場の変動等の影響が調整されていない。また、ユーロ圏の各国における計数報告制度の変更もあって、一部に推計を用いている。

(日本銀行注)
98年4月に公表されたEMI(欧州通貨機構)の資料(List of Monetary Financial Institutions)によれば、97年12月時点のユーロ圏のMFIの数は、各国中央銀行(12)、金融機関(8,565)、その他金融機関(1,374)の合計9,951となっている。

物価

 金融政策を遂行するに当たり、ユーロ圏の統合消費者物価指数(HICP)が極めて重要となる。ユーロスタット(EUROSTAT:正式名称は、Statistical Office of the European Communities。欧州委員会に所属する統計部局)が提供している統合消費者物価指数は、統一的な手法に基づいて作成されており、今後2年間で更なる改善が計画されているが、現時点でECBが必要とする基準(信頼性、速報性および比較可能性)を既に満たすものとなっている。

 しかしながら、物価動向の分析に使用されるGDPデフレーター、生産者物価、労働コストその他指標は、完全に統一的な基準に基づくデータとはなっておらず、99年以降改善されていく予定である。

生産および需要

 ユーロ圏のGDPおよびその需要コンポーネントの構成についてはユーロスタットから公表されている。その四半期毎の統計は、四半期データを作成していない加盟国について推計値を含むものとなっている。また、ユーロ圏全体のGDPの推計値は、国毎のデータを利用して、ECBにおいても作成されている。一方、鉱工業生産やビジネス・サーベイについてのデータ等の短期指標は、ユーロ圏全体についての月次データが入手可能となっているが、鉱工業生産に関しては、カバーされる国の範囲、比較可能性および各国毎の発表の速報性が問題となる。これは、小売売上高その他のサービス部門の活動に関するデータについても該当する。従って、現時点では、各国ベースの統計が貴重な補完的情報の供給源となっている。

労働市場

 雇用に関する統計については、多くの国において四半期データ、場合によっては月次データが入手可能となっている。しかしながら、統計ソースの相違から現在のところ完全に比較可能なものとはなっていない。また、信頼性、速報性、高い公表頻度を満たす雇用部門別の内訳データは、現時点ではない。一方、失業に関するデータはユーロスタットにより標準基準で作成され、各国毎の結果と異なる。また、標準基準による月次の短期および長期の失業内訳は現在のところ利用可能でない。

以上

(図表)ユーロ圏の概要

  • ユーロ圏の概要
注:
  1. (1)97年基準の価格・購買力(ユーロ圏は、90年基準)による。
  2. (2)ユーロ圏内貿易を除く。また、輸出はFOB建て、輸入はCIF建てによる。
  3. (3)ユーロ圏:MFI(Monetary Financial Institution)の総預金、米国:金融機関の要求払預金、定期預金および貯蓄預金、日本:預金通貨銀行の要求払預金および定期預金
  4. (4)銀行預金および国内信用に関するユーロ圏のデータは、98年12月31日に発表されたユーロ・コンバージョン・レートにより算出。
  5. (5)ユーロ圏:ユーロ圏居住者に対するMFIの貸出残高および同居住者の証券保有高、米国および日本:国内信用残高
  6. (6)米国:ニューヨーク証券取引所(NYSEおよびNasdaq)、日本:東京・大阪証券取引所

資料:ユーロスタット等