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資産担保債券市場の現状

1999年12月24日
宮澤秀臣※1
田中秀明※2

日本銀行から

 本稿の意見に亘る部分は、執筆者の個人的見解によるものであり、日本銀行の公式見解を示すものではない。

  • ※1日本銀行金融市場局(E-mail hideomi.miyazawa@boj.or.jp)
  • ※2日本銀行金融市場局(現横浜支店、E-mail hideaki.tanaka@boj.or.jp)

 以下には、冒頭部分を掲載しています。全文(本文、図表)は、こちら (ron9912a.pdf 70KB) から入手できます。なお、本稿は日本銀行調査月報12月号にも掲載しています。

はじめに

 日本銀行は、去る9月21日の政策委員会・金融政策決定会合において日本銀行の信用供与を行うに当たっての担保として資産担保債券を受け入れる方針を決定した(当面は、社債等を担保とする手形買入の担保に限定)。これを受けて10月27日開催の同決定会合において「資産担保債券の適格基準」等について決定し公表を行った。

 本稿では、日本銀行のこうした措置の対象となった資産担保債券について、その特徴や市場の現状等を概観することとしたい。

資産担保債券の機能と特徴

 資産担保債券(Asset Backed Securities、ABS)は、字義通り特定資産を裏付けにした証券化商品で、証券取引法上の有価証券である。発行から利払い・元本償還に至るスキームの概要は、(1)原保有者(通常オリジネーターと呼ばれる)の有する特定資産を特別目的会社(同SPC)へ譲渡する、(2)SPCがそれを裏付けに有価証券=資産担保債券を発行し、証券会社等を通じ一般投資家へ販売する、(3)特定資産からの元利金をサービサー(特定資産の管理・元利金回収業者)が回収し、これをもとにSPCが利払い・元本償還を行う、という一連の取引により構成される。資産担保債券は本スキームによる資産流動化の中核に位置する証券である。

 資産担保債券には金融機関の貸付債権を特定資産として債券を発行するものなどもあり、間接金融から直接金融への橋渡し役的な意義が認められる。また、その役割について97年6月の金融制度調査会答申では、「金融仲介機能が事前審査機能、信用供与機能、債権管理機能等に分解された上、それぞれの機能に優位性を持った者による機能分担が行われ、この結果全体としてより効率的な金融サービスの実現につながる」ものとされている。

 資産担保債券による資産の流動化によって、原保有者および投資家は具体的に次のようなメリットを享受することが出来る。

(原保有者側のメリット)

  1. (1)ローン・パーティシペーション等他の流動化商品と同様、ファイナンス手段の拡充や資産のオフバランス化が可能となる。
  2. (2)「証券取引法上の有価証券」として流動化が図られることから市場性に優れるため、小口分散化し多くの投資家に販売し得る。
  3. (3)原保有者自体の信用力ではなく、債券の裏付けとなる特定資産の信用力による調達が可能となるため、直接資本市場からの資金調達が容易でない低格付企業等であっても同市場調達が可能となる。

(投資家側のメリット)

  1. (1)普通社債では発行企業の合併・買収や企業業績の変化等により信用力が急変するリスクを被るが、資産担保債券はこうしたリスクの影響を受けにくい。
  2. (2)原保有者が直接発行する普通社債と比較し、民間格付機関の格付基準に従い技術的に作り込まれることからリスクの所在がより明確であり、投資リスクに対するリターンをより適切に評価することが可能となる。
  3. (3)特定資産のリスクを組替え、リスクとリターンの異なる数種の債券を同一スキームの中で発行することも可能であり、投資家の多様なニーズに合致した投資対象が提供される。

 資産担保債券には以上のように様々なメリットがあるが、反面、スキームが複雑なだけに、発行に当たって普通社債に比べ専門家の手をより多く借りる必要があり、時間・コストを要する。

 なお、資産担保債券の信用力を高める手段として、一般的に(1)発行額を上回る特定資産をSPCに譲渡する(超過譲渡方式)、あるいは(2)利払い・元本償還の優先順位を付けた複数の債券(優先債、劣後債等)を発行するといった方法がとられるほか、(3)損保会社等の保証が付けられるといった方法もある。ただし、資産担保債券の発行によっても裏付けとなる特定資産全体の予想損失額を減少させることができる訳ではないことには注意が必要である。