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全国銀行の平成11年度決算

2000年 8月31日
日本銀行考査局

日本銀行から

 以下には、概況および目次を掲載しています。全文(本文、図表)は、こちら (ron0008d.pdf 203KB) から入手できます。

概況(図表1)

(図表1)11年度決算の概要

図

 全国銀行1の11年度決算をみると、業務純益は4.6兆円と10年度(3.8兆円)を大きく上回ったほか、金融機関の基本的な収益力に相当するコア業務純益2も5.0兆円と10年度(4.8兆円)を幾分上回り、比較的高水準を維持した。一方、不良債権処理額は6.1兆円と、既往ピークである10年度(13.5兆円)に比べ大幅に減少したが、依然としてコア業務純益を上回る高い水準となった。経常および当期利益は、不良債権の処理原資として多額の株式3勘定尻を計上した結果、9、10年度の大幅赤字から3年振りに黒字に転化した(それぞれ2.4兆円、0.9兆円)。

 なお、国際統一基準行の自己資本比率(連結)は、当期利益の黒字化やリスクアセットの減少等から、11/3月末に比べてさらに上昇し、11.79%(加重平均)となった。また、国内基準行の自己資本比率(単体)も、地銀・地銀IIの資本増強等により、11/3月末に比べて上昇し、9.69%(同上)となった。

 11年度決算の主な特徴やこれを踏まえた今後の留意点を予め要約すると次のとおりである。

(1)収益力

 11年度のコア業務純益は比較的高水準となったが、これは、(a)11/2月のゼロ金利政策導入を受けて、資金調達利率が低下した一方、多くの金融機関において、貸出スプレッドの改善を図る動きがみられ、資金運用利回の低下幅が相対的に小幅に止まったこと(利鞘拡大による資金利益の増加)、(b)職員・店舗数削減等の合理化努力により、経費が引続き減少したこと、などによるものである。

 もっとも、12年度以降は、資金調達利率の低下余地が限られるなか、公的資金により資本増強を図った金融機関を中心に経営健全化計画の達成を企図した中小企業向け貸出の伸長に一段と注力する動きがみられるため、利鞘拡大による資金利益の増強は必ずしも容易ではないとみられる。また、経費についても、合理化努力の継続により経費削減が見込まれる反面、合併・統合に伴う費用の増加や競争力維持のためのIT投資負担の増加等が予想される。

 このため、今後、金融機関が収益力を着実に増強していくためには、(a)効率性の一層の向上(アウトソーシング、合理化・省力化等を含めたリストラクチャリング)や、(b)信用リスクに見合った貸出スプレッドの確保、(c)中小企業向け、個人向け貸出の推進といった従来からの経営課題に加え、(d)顧客ニーズを満たす商品・サービスの迅速な提供やデリバリーチャネルの多様化による顧客基盤の拡充や、(e)新たな収益源の拡充(手数料収入の拡大等)など、各行にとって比較優位のある取引分野および顧客層を見極めたうえでの戦略的な取組みが一層重要になってくると考えられる。

(2)不良債権

 11年度の不良債権処理額は、既往ピークの水準となった10年度に比べ半分以下に減少したが、依然としてコア業務純益を上回る高水準となった。これは、債務者の財務内容の悪化が進んだことや、地価下落により担保未保全額が増加したことなどによるものである。

 このため、12年度以降の不良債権処理の動向を占ううえでは、今後の景気推移の中で、(a)不良債権に占めるウェイトの大きい不動産業、サービス業、卸・小売業、建設業を中心として、債務者の財務内容が今後どう変化するか、(b)地価下落により担保未保全額が引続き拡大するかどうか、といった点がポイントになると考えられる。

 また、引当済みの不良債権の担保処分等による回収や流動化など、不良債権のバランスシートからの実質的な切り離し(不良債権の最終処理)を進めていくことも、引続き重要な課題である。3〜11年度累計で不良債権の最終処理がどの程度進捗したかを一定の前提の下で試算すると、簿価(元本)ベースで全体の約6割が最終処理されたものとみられるが、引続き積極的な取組みが期待される。

(3)会計制度変更への対応

 12年度からは、時価会計や退職給付会計が新たに導入され、金融機関の財務状況や業務運営に少なからず影響を与えるものと考えられる。

 時価会計の導入により、債券ポートフォリオや政策投資株式の多くが13年度から新たに時価評価の対象となり、株価、金利(債券価格)の動向によって資本勘定が変動することになる。このため、金融機関においては、既に含み損の処理を前倒しに進める動きがみられているが、今後、有価証券の運用に当たっては、その時価変動に伴う財務諸表への影響を視野に入れた運用を行うことが求められることになる。

 一方、退職給付会計については、会計基準変更時差異(いわゆる積立不足)に対して、11年度中に一部前倒し処理を行う動きがみられたほか、比較的多くの先が、退職給付信託の設定などにより、12年度中の一括処理や5年以内の処理を予定するなど、早期の解消を目指す姿勢を示している。もっとも、短期間で会計基準変更時差異を処理する場合は、当期利益に与える影響が小さくないほか、保有株式を退職給付信託として拠出して会計基準変更時差異を圧縮する先においても、最終的な株価変動リスクは切り離されない点に留意する必要がある。

  1. 全国銀行(以下「全銀」)とは、都市銀行9行(以下「都銀」)、長期信用銀行3行(以下「長信」)、信託銀行7行(5/10月以降に業務を開始した信託銀行および外銀信託を除く。以下「信託」)、全国地方銀行協会加盟の地方銀行64行(以下「地銀」)、第二地方銀行協会加盟の地方銀行60行(以下「地銀II)を対象とする(12/3月末時点)。ただし、本稿の計数に関しては、新生銀行(旧日本長期信用銀行)、日本債券信用銀行、国民銀行、東京相和銀行、新潟中央銀行、なみはや銀行、幸福銀行を除いて算出している。なお、特段の断りがない限り、本稿の計数は単体ベースである。
  2. 金融機関の基本的な収益力をみるには債券5勘定尻、信託勘定における償却、一般貸倒引当金純繰入の各影響を除いてみるのが適当と考えられるため、本稿では、基本的な収益力の指標となる概念として、以下の定義により算出されるコア業務純益を利用している。

コア業務純益 = 業務純益−債券5勘定尻+(信託勘定償却額−特別留保金取崩額)+一般貸倒引当金純繰入額

債券5勘定尻 = 国債等債券売却益+国債等債券償還益−国債等債券売却損−国債等債券償還損−国債等債券償却

目次

  • 1.概況
  • 2.損益の動向
    • (1)コア業務純益
    • (2)債券5勘定尻
    • (3)経常利益・当期利益
    • (4)利益処分
  • 3.不良債権の動向
    • (1)不良債権処理の累計額
    • (2)ストックベースでみた不良債権の動向
    • (3)不良債権の最終処理の状況
    • (4)不良債権開示の進展
  • 4.経営体力
    • (1)資本・含み資産
    • (2)自己資本比率
  • 5.会計基準変更の銀行経営に与える影響
    • (1)時価会計の導入
    • (2)退職給付会計の導入
  • BOX1IT投資の現状
  • BOX2時価会計の概要と金融機関に与える影響
  • BOX3退職給付会計の概要