このページの本文へ移動

金融機関における統合的なリスク管理

2001年 6月 8日
日本銀行

日本銀行から

 以下には、全文の冒頭部分(はじめに)を掲載しています。全文は、こちら(fsk0106a.pdf 101KB)から入手できます。

はじめに

 わが国の大規模かつ複雑なリスク・プロファイルを持つ金融機関では、ここ数年、様々なリスクを統合的に把握し、経営やリスク管理に活用する体制の整備を進めている。すなわち、金融機関が抱える多様なリスクを共通の枠組みに基づいて計量化したうえで経営体力に関連付けて制御するとともに、リスクを勘案して収益性を評価するという管理体制の構築を積極的に行っている。特にリスク管理面では、こうした体制が既に多くの邦銀大手行で実用化段階に入っており、重要な役割を果たしつつある。金融機関が体制構築を進める背景には、例えば、金融機関の抱えるリスクの複雑化・多様化への対応やリスク・リターンの関係を踏まえた収益性管理の高度化の動きなどが挙げられる。

 こうした体制は、「統合リスク管理」と呼ばれている。現時点では、「統合リスク管理」についてのコンセンサスを得た手法が確立されているわけではなく、金融機関毎に様々なアプローチが試みられている。ただ、その手法は、より高度な計量化技術を用いた、包括的なプロセスとなる方向にあるものと考えられる。以下では、こうした状況を踏まえ、「統合リスク管理」の考え方や課題について、金融機関の動向にも言及しつつ、整理していきたい。

 本稿の性格は、金融機関に要求するミニマム・スタンダードといったものではない。以下に述べる点は、あくまで「統合リスク管理」に関する考え方の一例である。金融機関においては、こうした考え方も参考としつつ、自らの責任で、それぞれのリスク・プロファイルを踏まえたリスク管理体制を構築していくことが重要である。

 また、本稿は、「統合リスク管理」について、考査等の場において金融機関との議論を深めていく際の材料として用いることも想定している。その際、特に金融決済システムの安定化という観点から、「統合リスク管理」の進展に伴う管理体制の変化が、業務運営の改善を通じて景気変動に与える影響や、ある種のショックに対するシステミックな脆弱性を拡大する可能性などについても理解を深めていきたいと考えている。

 なお、本稿は、大規模かつ複雑なリスク・プロファイルを有する金融機関を主たる対象としている。もっとも、その他の金融機関にとっても、リスクを踏まえた経営管理を標榜する「統合リスク管理」の基本的な考え方は、業務内容やリスク・プロファイルの複雑さに応じて、参考になるものと思われる。

以上