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米国の動産担保法制について※1

2003年 8月28日
日本銀行信用機構室

  • ※1本稿は鹿島みかり(E-mail: mikari.kashima@boj.or.jp)が担当した。

 以下には、(はじめに)を掲載しています。全文は、こちら (ron0308d.pdf 64KB) から入手できます。

はじめに

 わが国経済の構造調整を円滑に進めていくためには、企業金融面からの十分な支えが必要であり、特に企業の資金調達ルートの多様化が重要な課題となってきている。一方、金融機関においては、不良債権問題を主たる背景として、資産内容の悪化や財務体力の低下などから、金融仲介機能が必ずしも十分に発揮されていない。また、従来の不動産担保に依存した対応では、企業金融の円滑が確保しにくくなってきているという事情もある。こうした状況下、現在、不動産以外の担保、とりわけ企業の保有する売掛債権や在庫品の担保化や流動化が一つの課題となっている(注1)

 金融機関等の実務家の間では、売掛債権や集合動産等の担保利用を促進するためには、法制面の整備が必要であるとの指摘(注2)もなされており、その際米国の動産担保法制が参考になるのではないかとの指摘がある。すなわち、米国では、統一商事法典(Uniform Commercial Code; UCC)第9編において、集合物を含む動産や債権の担保取引が包括的に規定され、簡便な手続きによる担保権設定を可能とする制度が整備されている。

 こうした指摘を踏まえ、UCC第9編の概要について簡単に整理してみた。本稿が、わが国における動産担保法制のあり方を議論していく上での一助となれば幸甚である(注3)

  • (注1)製造業や卸・小売業を営む中小企業において、原材料・仕掛品・在庫品など生産・販売過程の途上にある動産について集合物のまま担保を設定するニーズが大きいと考えられる。現行の手形割引に加えて在庫品等を担保とした金融の途を拡大するメリットとしては、担保目的物の時価の安定性(債務者の信用力一般に依存しない)や換価の容易性(取立不要)などが挙げられる。
  • (注2)「企業法制研究会(担保制度研究会)報告書 〜『不動産担保』から『事業の収益性に着目した資金調達』〜」経済産業省(2003年1月)。
  • (注3)動産担保にかかる法制度については、わが国のみならず国際的にも検討が進められている。例えば、UNCITRAL(国連国際商取引法委員会<United Nations Commission on International Trade Law>)は、2002年に担保作業部会を設置し、商事取引における効率的な動産担保法制の構築に向け検討しており、最終的には各国に対し立法提言を含んだ立法ガイド(「担保付取引に関する立法ガイド」)を策定することとしている。立法ガイドの原案は、債務者が資金調達に際し保有財産の価値を最大限に引出せるような担保制度が望ましいとの観点から、(1)特定性の要件の緩和、(2)担保権設定手段の統一、(3)簡易な登録制度の導入などを柱とする、米国のUCC第9編に倣った担保法制を提示している。