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2003年度決算からみた銀行経営の動向

2004年 7月23日
日本銀行

日本銀行から

 以下には、(要旨)を掲載しています。全文は、こちら(ron0407b.pdf 256KB)から入手できます。

要旨

  1. 大手行並びに地域銀行の2003年度決算をみると、当期純利益については、不良債権処理損(信用コスト)の減少や株式関係損益の改善から、全体の約9割の先が黒字を計上した。もっとも、一部行における多額の不良債権処理の影響から、集計値としては前年に引き続き赤字となった。
  2. 信用コストの貸出残高に対する比率は、多くの先で低下した。これは主に、景気回復や各銀行による企業再生支援により、借り手企業の財務内容や収益見通しが改善し、所要貸倒引当金が減少したことによるものである。また、不良債権残高が着実に減少したほか、相対的に信用度が高い債権の比率も上昇している。このように、与信ポートフォリオのリスク量は全体として減少していると判断される。
  3. 有価証券ポートフォリオのリスク状況をみると、株式については、大手行を中心に資本(Tier I)を大きく下回る水準まで保有額の削減が進み、リスク量は相当程度縮小した。一方、債券については、大手行、地域銀行とも保有額の増加からリスク量は増したが、その水準は、株式に比べると相対的に小さく、期間収益や資本でカバーされる範囲にある。また、仮に長期金利が上昇するとしても、同時に株価上昇や貸出債権の価値の増加がみられるならば、リスク顕現化の銀行収益への影響はある程度相殺され得る。
  4. 銀行の収益力は引き続き弱い状態にある。投資信託などの窓口販売やシンジケート・ローン組成などに関連した手数料収入は近年急速に増加している。もっとも、収益を大きく左右する貸出業務の採算は、信用コスト率の低下を主因に改善傾向を示しているとはいえ、大手行、地域銀行ともなおマイナスの領域にある。
  5. 以上のように、2003年度は貸出に係る信用リスクや株式保有に係る市場リスクが減少し、こうした銀行経営を長らく圧迫してきた制約は緩和されつつある。しかし、銀行の収益力向上に向けた展望はなお十分に開けているとは言い難い。銀行は、資本の効率活用や新しい金融技術等の利用によって収益力強化を図りつつ、企業や個人のニーズに的確に応えていくことが求められている。