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EMEAP中銀のバランスシートと市場リスク管理

2005年 1月
日本銀行国際局
西原 里江(注1)

日本銀行から

以下には、(はじめに)を掲載しています。

はじめに

日本銀行は、2003年12月、EMEAPメンバーの中央銀行(注2)を対象に、「中央銀行のガバナンス:バランスシートの管理」と題するハイレベル・ワークショップを開催した(注3)。このワークショップでは、(1)中央銀行のアカウンタビリティ向上が要請される中、そのバランスシートを巡る議論が内外で高まりを見せていたこと、(2)リスク管理手法の高度化を受けて、中央銀行がリスク管理により積極的に取り組むようになってきたこと、(3)アジア中銀の外貨準備が累増するに伴い、そのリスク管理や運用のあり方が共通の課題として意識され始めていたこと、といった事情を背景に、以下の点を中心に議論を行った。

  • EMEAP中銀のバランスシートの構造やそこに内在する市場リスクには、どのような共通点・相違点が存在するか。また、その背景は何か。
  • EMEAP中銀は、自己資本の必要性やその適正水準についてどのように考えているか。また、自己資本水準の決定に当たり、どのような基準を定めているか。
  • バランスシートの健全性を確保するうえで、EMEAP中銀はどのような市場リスクの管理を行っているか。

本稿では、上記のワークショップにおける議論の内容を踏まえつつ、EMEAP中銀のバランスシートの特徴と市場リスク管理の概要を紹介する(以下、「EMEAP中銀」とは、原則として日本銀行を除く10中銀を指すものとする)。

  • (注1)日本銀行国際局国際交流担当兼国際機関・会議担当(rie.nishihara@boj.or.jp)
  • (注2)EMEAP(エミアップ)とは、Executives' Meeting of East Asia and Pacific Central Banks(東アジア・オセアニア中央銀行役員会議)の略称。1991年に日本銀行の提唱により、各国の金融政策運営や経済情勢などについて自由に意見交換を行う非公式な会合として発足した。メンバーはオーストラリア準銀、中国人民銀行、香港金融庁、インドネシア中銀、韓国銀行、マレーシア中銀、ニュージーランド準銀、フィリピン中銀、シンガポール金融庁、タイ中銀および日本銀行の11中銀・通貨当局。
  • (注3)ワークショップにはBIS、ニューヨーク連銀、オランダ中銀からもゲスト・スピーカーを招聘した。