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金融サービス業のグループ化―主要国における金融コングロマリット化の動向―

2005年 4月
日本銀行信用機構局

日本銀行から

 以下には、(要旨)を掲載しています。全文は、こちら(ron0504d.pdf 473KB)から入手できます。

 近年、主要国では、金融に対するニーズの変化、金融技術革新、規制緩和などを背景として、銀行、証券、保険のほか、消費者金融、資産運用(助言・管理)などの業務の担い手 ── 金融サービス業者 ── が、相互に異なる業務分野に参入する動きが拡大している。なかでも、注目されるのは、金融サービス業者が、多様な金融サービスを取り扱う会社群とともに、企業グループを形成する動き、すなわち金融コングロマリット化の進展である。また、金融コングロマリットがグローバル化・巨大化していることも、近年の大きな特徴といえよう。

 金融システムの安定性確保や効率性向上の観点からみると、金融コングロマリット化は新たな課題を提示している。こうした課題の多くは、ひとつのグループが幅広い金融サービスを取り扱うという、金融コングロマリットの基本的性格から生じている。従来、金融サービスとその担い手は、基本的には、縦割り的に個々の業態に分断されていた。しかし、金融コングロマリット化により、ひとつのグループで提供する金融サービスが多様化し、リスク管理のあり方なども大きく変化してきている。また、監督やセーフティネットの運用面でも、こうした変化を踏まえた対応が必要となっている。

 個々の金融コングロマリットの業務範囲や構造は、中心となる金融サービス業者の経営戦略や、本拠地等における金融制度などにより大きく異なっており、また、時とともに変化している。しかしながら、金融コングロマリット化は、多様な業務展開を指向する金融サービス業者にとって、ひとつの選択肢となり続ける可能性が高い。このため、金融サービス業者が金融コングロマリット化を選択する場合に、その円滑な業務展開と金融システムの健全性確保との両立が可能となるような対応を図っていくことが適当と考えられる。

 金融コングロマリット化への対応について、現在、内外の関係者の間で、統一的な方針が共有されている訳ではない。しかしながら、例えば、監督面では、国際的な検討の場で、金融コングロマリットへの対応が活発に議論されてきており、グループ全体の実態把握の必要性や市場規律の活用の重要性などについては、共通の認識が形成されつつあるといえよう。

 わが国においても1990年代以降、銀行・証券を始めとする相互参入によって、次第に金融コングロマリット化が進展している。また、2000年代入り後は、大手銀行の統合等により、いわゆるメガバンク・グループが形成されてきた。現在、わが国の銀行をみると、不良債権問題や過大な株式保有への対応が進捗し、前向きな業務展開を図る環境が整いつつある。この間、収益力の強化はますます重要な経営課題となっている。また、規制緩和も引き続き進展している。こうした情勢に鑑みると、わが国においても、今後、金融コングロマリット化がさらに進展していく可能性があるといえよう。この間、わが国に進出している海外の金融コングロマリットの動向にも関心を払っていく必要がある。

 日本銀行としては、当座預金を始めとする取引や考査・モニタリング、さらには「最後の貸し手」機能の発揮に当って、金融コングロマリット化の進展に適切に対応していく考えである。その際には、特にシステミック・リスク顕現化を未然に回避する観点から、資金の流れや統合リスク管理の状況などに着目し、各グループ全体の実情を的確に把握しておくことが重要と考えている。