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ヘッジファンドを巡る最近の動向

2005年 7月
日本銀行信用機構局
(現「金融機構局」)
金融市場局

日本銀行から

 以下には、(要旨)を掲載しています。全文は、こちら(ron0507b.pdf 474KB)から入手できます。

要旨

ヘッジファンドとは何か

○ ヘッジファンドが、国際金融市場において存在感を増してきている。ヘッジファンドは、同じ集団投資スキームである投資信託と比較すると、機関投資家や個人富裕層などに投資家を限定することによって各種規制等に伴う制約を弱めたり、投資家からの解約に制約を課すことにより、自由度の高い戦略をとることに特徴がある。

ヘッジファンド市場の拡大・その背景とリスク特性の変化

○ 1990年代以降、ヘッジファンドの資産規模およびファンド数は急激に拡大し、特に2002年以降は、機関投資家の投資規模拡大が顕著である。わが国においても、年金基金、金融機関等を中心にヘッジファンドへの投資が拡大している。こうしたヘッジファンド投資の拡大は、近年の主要国における低金利環境の継続や、投資家の運用多様化ニーズの強まりが主な背景と考えられる。データの制約はあるが、公表されている運用実績のデータからみると、近年、(1)株式や債券市場の動向に関らず正の収益率を確保したこと、(2)ボラティリティが株よりも低く推移したこと、(3)伝統的資産との相関が総じて小さく、ポ−トフォリオ分散のメリットがあったことなどが特徴として挙げられる。こうしたパフォーマンスは、投資家のニーズにも合致するものであったとみられる。

○ ヘッジファンドは、規模や投資家層の拡大に伴って、より多様な投資戦略の下に、広範な市場で活動するようになっており、国際金融市場全体の効率性や流動性を高める方向に作用している。こうした中で、ヘッジファンドのリスク特性も変化してきており、LTCM危機前後(1990年代終盤)と近年(2002年以降)の運用実績のデータを比較してみると、全体としては、(1)ボラティリティ、収益率とも低下したほか、(2)バリュー・アット・リスクなどによって通常想定される最大損失を超えるような大きな損失が発生する頻度は低下した。また、投資家サイドのリスク管理意識が強まる中、過大なレバレッジをかけるファンドは投資家から敬遠される傾向があり、実際にファンドのレバレッジ水準は低下傾向にあるとも言われている。一方で、ヘッジファンドは優勝劣敗が速やかに決する傾向があるため、特定ファンドに集中して投資しないといった点には注意が払われている。

ヘッジファンドを巡る規制について

○ 米国では、証券取引委員会(SEC)が投資マネージャー業務に関する規制を強化する方向で規則を改正した。英国では、ヘッジファンドの特徴を備えることの出来るビークルとして、機関投資家等向けの新たな集団投資スキームを導入した。また、欧州やアジアの中には近年、小口投資家への販売を可能とする法制度の整備を進める動きが見られる。このように、方向性は必ずしも一様でないが、様々な国において、ヘッジファンドを意識した規制改正が行われており、そこでは投資家にとっての多様な選択肢の確保と投資家保護のバランスが鍵となっている。

ヘッジファンドを巡る最近の議論

○ 前述のように、ヘッジファンドは、近年、全体としてみればリスクを抑制する方向にあるように窺われるが、個別ファンドではリスクの高いものも存在するとみられるほか、国際金融経済環境が変われば、リスクをとって高い収益を追求する姿勢に変化する可能性もある。ヘッジファンドが国際金融市場における存在感を高めているだけに、ヘッジファンドの大規模な損失あるいは破綻は、直接的な取引相手や投資家に与える影響に加え、取引の手仕舞い等を通じて国際金融市場の流動性や価格形成に広範な「外部効果」を及ぼす可能性も否定できない。こうしたことから、ヘッジファンドの動向については、今後とも注意深く見守っていく必要がある。

○ ヘッジファンドを巡る最近の国際的な議論を整理すると、(1)取引相手や投資家のリスク管理のあり方、およびその前提となるヘッジファンドの情報開示の進め方、(2)ヘッジファンドの行動あるいは破綻が広く市場や金融システムに及ぼす影響の把握が主な論点として挙げられる。

○ ヘッジファンドの取引相手のリスク管理については、LTCM危機後の取組みの中で、課題を残しつつも着実な進展が確認されているところであるが、今後、競争環境の変化によりそのリスク管理が緩に流れる可能性がないか、引き続き検証していくことが必要である。ヘッジファンドの情報開示については、現在では、一律の情報開示規制を課すよりも、取引相手や投資家がリスク管理の一環として、それぞれのニーズにあった情報をファンドから取得することが、ファンドへの規律付けとして有効かつ効率的との考え方が有力である。

○ ヘッジファンドに関する情報が限定されているなかで、どのようにその活動状況や影響を把握していくか、という点に関しては、特に、ヘッジファンドの収益機会が減少すること等により、取引手法の単純化や高リスク化が進み、市場を不安定化させるリスクはないか、ファンドの退出によって市場流動性が急激に低下する惧れはないか、といった視点からモニタリングしていくことが重要と考えられる。

○ こうした問題意識を踏まえ、各国の中央銀行を含む金融当局は、ヘッジファンドの取引相手や投資家である銀行・証券会社等のリスク管理のあり方を検証しているほか、国際的な会合での情報交換やデータベース整備に向けた検討など、的確な市場モニタリングのための取組みを進めている。