近年における個人消費の底堅さとその背景
2006年3月13日
日本銀行調査統計局
日本銀行から
以下には、(要旨)を掲載しています。全文は、こちら(ron0603a.pdf)から入手できます。
要旨
- 個人消費は、2000年前後から緩やかな回復を続けてきたが、2003年後半以降、回復の動きが次第に明確化しており、足もとについても、着実な増加を続けている。2002年初から始まった今回の景気回復は、2006年4月でバブル期と並ぶ4年3か月に達することになる。このように、今回の景気回復が息の長いものとなっている背景としては、海外景気の拡大や企業部門の構造調整圧力の後退とともに、個人消費が底堅い動きを続けてきたことも見逃せない。
- 近年の個人消費の特徴としては、(1)企業の人件費抑制姿勢を背景に、所得がかなり抑制されたにもかかわらず、消費は底堅く推移してきたこと——その結果、消費性向が趨勢的に上昇してきたこと——、(2)そうした傾向は、とりわけ高齢者(シニア層)で顕著なこと、(3)財・サービス別にみると、耐久財消費やサービス消費が相対的に好調なこと、などの点を指摘することができる。また、最近では、雇用者所得が改善するもとで、若年層も含めて、消費の改善に広がりが出てきたことも重要な変化である。
- 消費の底堅さの背景としては、まず基調的な要因として、(1)高齢化などの人口動態の影響、(2)消費者意識の変化と企業努力、(3)介護保険制度導入の影響、が挙げられる。これらに加え、局面ごとには、(4)消費の慣性効果、(5)マインドの改善や資産効果、(6)実際の雇用者所得の改善なども、消費の押し上げ要因として比較的強く働いたと考えられる。
- このように、個人消費は、過去数年にわたって、ある程度構造的・基調的な要因に下支えられてきたと同時に、最近では、所得や資産の増加にも裏付けられた、より前向きなものに変わってきている。消費関数の推計結果からも、最近の消費が、人口構成の高齢化に加え、雇用者所得の増加、株価上昇による資産効果、所得の先行き見通しの改善など、よりしっかりとした回復基盤を持つものになってきていることがわかる。
- 先行きについては、雇用者所得の増加が続くとみられるほか、将来の所得に関する家計の自信も次第に強まっていくと予想される。また、企業部門の好調が続けば、株価などを通じた家計への好影響も引き続き期待しうる。この間、高齢化のトレンドは、これまで同様、消費性向を押し上げる方向に働くとみられる。こうしたもとで、個人消費は、消費性向の緩やかな上昇を伴いつつ、当面、堅調な増加を続けていく可能性が高いと考えられる。
- 本稿は、主に景気動向担当の以下のスタッフが作成した。主たる分析:石崎寛憲、峯岸誠。図表作成:天野佐紀。執筆および全体のとりまとめ:齋藤克仁。