このページの本文へ移動

損失額分布やパラメータ推定手法の選択がオペレーショナルリスク計量結果に与える影響について 〜サンプルデータを用いた分析〜

2007年6月1日
日本銀行金融機構局

要旨

 内外の金融機関では、オペレーショナルリスク計量化手法として、損失分布手法を利用する先が多い。もっとも、その際用いられるモデルの内容、特に損失額分布の分布形の仮定や、分布形のパラメータ推定手法は様々であり、未だ実務標準となるような手法は確立されていない。

 本稿では、「わが国金融機関のオペレーショナルリスク損失データから抽出し、加工したオペレーショナルリスクに関するサンプルデータ」を用いて、損失額分布の「分布形の仮定」および「パラメータ推定手法の選択」がリスク量の計量結果に与える影響について分析した。分析に用いたサンプルデータは、一般に損失額分布として用いられることが多い対数正規分布に従うデータよりも「ファットテール性が強い」という特徴を有するものである。分析の結果、こうした特徴を有するサンプルデータに対して、「一般に最適」とまでいえるような、分布形、パラメータ推定手法を見出すことはできなかったが、計量結果を比較することによって、(1)損失額分布を低額損失部分と高額損失部分に分けて推定すること、また、(2)適切なパラメータ推定手法を選択することで、比較的妥当なリスク量が算出されることが確認できた。

 本稿は、こうしたオペレーショナルリスク特性を有するサンプルデータを用いたオペレーショナルリスクの計量化を通じて、損失額分布の推定からリスク量の算出および評価に至るオペレーショナルリスク計量化の一連のプロセスを紹介するものである。

 本稿は、日本銀行金融機構局が取り組んでいる施策について、課題や論点等を提示する目的で作成したものである。関係者から幅広くご意見を頂くため、中間的な成果を取りまとめたものであり、必ずしも日本銀行金融機構局の確定した見解や対応方針を示すものではない。

日本銀行から

本稿の内容について、商用目的で転載・複製を行う場合は、予め日本銀行金融機構局までご相談ください。
転載・複製を行う場合は、出所を明記してください。