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近年のわが国の輸出入動向と企業行動

2007年8月27日
日本銀行調査統計局

要旨

1.今次景気拡大局面では、輸出(および純輸出)の増加が大きな役割を果たしてきている。その背景となる外部環境としては、世界経済の地域的な拡がりを伴った安定的拡大や、世界貿易の経済成長を上回るペースでの増大が、特に重要なものと位置付けられる。また、為替相場が、実質実効ベースでみて円安傾向で推移したことも、特徴的な動きとして指摘できる。

2.こうした外部環境のもとで、わが国の輸出入は、幾つかの特徴的な動きを示している。輸出面では、以前に比べて、仕向け地に拡がりがみられているほか、輸出財の内容も多様化しており、高付加価値化も進んでいる。また、輸入面を含めた動きとしては、情報関連財を中心に対東アジア貿易が一段と深化し、資本財や情報関連財の輸出入は両建てで拡大傾向をたどっている一方、素原料などの輸入は国際市況高や円安の影響から伸び悩み傾向にある。さらに、財の輸出入に限らずにより広い意味で対外取引を考えた場合、サービス収支の赤字が緩やかに縮小するとともに、所得収支は黒字を拡大しており、これらが経常収支の黒字拡大に大きく寄与している。

3.こうした特徴点は、外部環境の好転といった幸運によるものだけでなく、わが国企業がグローバル化の進展に対応してきた結果として解釈することが可能である。わが国企業は、近年、成長性の高い海外市場をより強く意識しつつ、海外生産の拡大と同時に国内生産の高付加価値化に取り組むといった、供給面での体制を整えることで、グローバル需要への対応を進めている。国内では、高い技術力に支えられた高付加価値品の供給体制を構築しており、こうした動きが輸出の増加に結び付いている。また、同時に、東アジア地域を中心に国際分業体制を構築することで海外のリソースも有効に活用している。海外事業の収益性は着実に向上しており、サービス収支や所得収支の改善に示されるように、様々な形で国内に還流している。

4.このようにわが国企業がグローバル化への対応を進めていることが、国内景気が長期にわたり拡大している背景にあると考えられる。ただ同時に、グローバル化のもとで、企業は、資本市場からの規律を含め、様々な競争圧力にさらされており、その結果、賃金の伸び悩みなど、従来の景気拡大局面にはみられなかったような現象も生じている。

5.海外経済との連関が深まることで、わが国経済が海外経済に影響を受けやすくなっている可能性があることには注意が必要である。ただし、人口の減少や高齢化を考えると、日本経済がグローバル化への対応をさらに進めることは、所得形成力を維持し、成長性を確保していくためには、避けることのできない課題であるといえよう。

日本銀行から

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