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証券化商品へ投資する場合のリスク管理について

2008年2月4日
日本銀行金融機構局

はじめに

 証券化商品の市場は、金融技術の発展に伴い原資産ポートフォリオのリスク・リターンを加工・転売することを目的に多様な商品が組成されるようになり、また、様々なリスク選好を持つ投資家が各々のニーズに応じた投資を開始・積極化させるなかで、世界的に拡大してきた。わが国でも、証券化商品は、発行額が増加しており、金融機関等の投資家によって保有されている。基本的には、こうした証券化商品は、投資家の投資対象の1つとして、投資ポートフォリオのリスク・リターンをコントロールするための有用な手段となり得るほか、資金を必要とする経済主体への新たな資金調達手段の提供等の形で、金融市場の効率化にも寄与し得る。

 一方で、証券化商品は、上述のように、原資産ポートフォリオのリスク・リターンを加工して、それらの一部または全部を投資家に移転するものであるため、一般に、基となる原資産ポートフォリオとは異なるリスク・リターン構造を持つほか、相対的に複雑な商品性を有する。

 また、証券化商品には個別性が強い商品が多く、一般に、流通市場での取引量は限られており、取引価格の観測は必ずしも容易ではない。

 このような証券化商品の商品性や取引の現状を前提とすると、投資家が、証券化商品投資に伴うリスクを的確に認識し、それらを適切に把握・管理していくためには、相応のノウハウの蓄積や工夫がそもそも必要となる。

 こうしたなかで、今般の米国サブプライム住宅ローン問題を契機とした市場の不安定化は、リスク特性の複雑な金融商品、特に証券化商品への投資について、投資家が、それに内包される各種のリスクを的確に認識し、適切に管理することが肝要であることを再認識させるものであった。

 上記のような観点から、本稿では、これまで発展してきた証券化商品のリスク管理の理論・技術、およびそれらを踏まえて日本銀行金融機構局が様々な機会に行ってきた金融機関等との対話を基に、証券化商品投資に伴うリスクを把握・管理する際に重要であると考えられる基本的なポイントを整理するとともに、その理解の一助として、現時点で有効であると考えられている基本的な手法を幾つか紹介する。投資家が証券化商品に投資を行う場合には、それらが極めて多様であることを踏まえて、本稿を参考としながら、自らの手で投資商品のリスク特性に合った形でリスク管理手法を整備・改良していくことが重要である。

 もとより、証券化商品のみならず金融商品のリスクを把握・管理するための手法には、絶対的なものがある訳ではないし、現時点において、未だリスクの把握・管理手法が確立されていない分野もある。また、新しい種類の証券化商品に投資する際には、従来の証券化商品にはなかったようなリスクが潜んでいる可能性もある。このため、個々の投資家は、証券化商品市場の状況や進展に目を配ったうえで、常時工夫を重ねながら、証券化商品投資のリスクの適切な把握・管理に努めることが重要である。

本件に関する照会先
日本銀行金融機構局
甲斐 電話:03-3277-1391
家田 電話:03-3277-1599
中川 電話:03-3277-1959
丹羽 電話:03-3277-2596

日本銀行から

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