ABLを活用するためのリスク管理
2012年6月29日
日本銀行金融機構局
はじめに
わが国経済は、急速な高齢化のもとで、趨勢的な成長率の低下という長期的・構造的な問題に直面しており、このことはデフレの大きな要因となっている。デフレから脱却していくためには、民間企業、金融機関、政府、日本銀行がそれぞれの役割に即して取組みを続けていくことが重要である。日本銀行では、デフレから脱却し、物価安定のもとでの持続的成長を実現する観点から、成長基盤強化に向けた民間金融機関の取組みを支援するための資金供給に取組んでいる。
企業のバランスシートの構成を成長段階別にみると、成長初期の企業では、不動産等の固定資産のウエイトが低く、売掛債権等の流動資産のウエイトが高い。従って、動産や売掛債権等を担保としたABL(Asset Based Lending)拡大には、不動産担保や保証に依存した従来型の貸出では対象となりにくかった企業の資金制約の緩和を通じて、成長基盤強化へのプラスの効果が期待できる。
もっとも、新たな融資手法を活用する際に、適切なリスク管理を伴わなければ、信用コストの増加が貸出の慎重化に繋がり、かえって経済成長にマイナスの影響を与える可能性もある。ABLについても、成長基盤の強化に繋げるためには、適切なリスク管理に基づく健全な拡大が求められる。
上記の考え方を踏まえ、日本銀行金融機構局金融高度化センターでは、昨年の12月に「ABLを活用するためのリスク管理」と題する金融高度化セミナーを開催した。本稿は、同セミナーで紹介された事例などを参考にしつつ、ABLを活用するためのリスク管理について、標準的な実務の紹介とともに実効性向上のポイントを示すものである。
日本銀行から
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