バックアップ・コンピュータセンターに関するアンケート(2012年9月)調査結果
2013年4月5日
日本銀行金融機構局
要旨
日本銀行では、2012年9月に、国内銀行等141先(大手行:7先、地域銀行<地方銀行、第二地方銀行協会加盟銀行>:105先、その他<系統金融機関、信託銀行等>:29先)を対象に、バックアップ・コンピュータセンター(以下、B/Uセンター)の現状と、東日本大震災を踏まえた見直し状況の把握を目的に、「バックアップ・コンピュータセンターに関するアンケート」(以下、アンケート)を実施した。本稿は、アンケート結果の主要な部分を取り纏めるとともに、若干の考察を行ったものである。
各金融機関では、東日本大震災の経験を踏まえて、B/Uセンター等の整備について見直しを続けており、今回のアンケートでも、各項目で震災を踏まえた見直しが実施されていることが確認された。もっとも、以下の点については改善の余地が認められたため、今後は、今回のアンケート結果を活用しつつ、B/Uセンター等の整備や実効性向上に取り組んでいくことが期待される。
1. 重要業務の継続に必要なB/Uシステム
約9割の金融機関が、被災時でも継続すべき重要業務として「流動性預金の払戻(現金支払)」、「日銀当座預金決済」、「内国為替決済」、「振込・送金」を挙げている(「1-1」)。これらの重要業務に必要なシステムのうち、預金・為替システムについては、B/Uシステム(以下、B/U預為システム)を設置している先が約9割にのぼるほか、現在設置していない先の殆どが、3年以内にB/U預為システムを設置することを「決定済」あるいは「検討中」としている(「3-1」)。
もっとも、「内国為替決済」、「振込・送金」については、業務に必要な「全銀システムとの接続システム」のB/Uシステムを設置していない先が3割程度みられており(「1-3」)、被災の翌営業日以降も、2割前後の先が「全ての業務を手作業で継続」するとしているほか、「手作業でも継続できない」とする先も5%程度存在する(「1-2」)。
メインセンターの利用不能期間が長期化する場合にも備え、重要業務の継続に必要なB/Uシステムを整備していくことが求められる。
2. メインセンターの被災対策
メイン・コンピュータセンター(以下、メインセンター)の耐震性は、約6割の先で「震度7」となっており(「2-1」)、自家発電設備の持続時間は、約3割の先が「72時間以上」となっている(「2-2」)。また、メインセンターと営業店間の回線構成は、ほぼ全先で「B/U回線を有する」または「回線複線化を行っている」としている(「2-3」)。
もっとも、メインセンターの耐震性が「震度6弱以下」とする先が約1割ある(「2-1」)。また、自家発電設備の持続時間が「48時間未満」の先が約3割あり、地域銀行では、「48時間未満」の先の多くが、震災を踏まえた見直しの結果、「対応の必要性はない(なかった)」としているほか、調査時点では見直しを行っていない先もみられる(「2-2」)。
メインセンターの立地状況を踏まえて、必要に応じて十分な耐震性を確保することが必要である。また、東日本大震災の経験を踏まえると、数日に亘る停電の発生や断続的な計画停電等により、燃料の調達が困難となる事態も想定されるため、自家発電設備を充実することも必要である。
3. B/Uシステムへの切替所要時間
B/U預為システムへの切替所要時間は、平均で約19時間(大手行では約5時間)となっており、「24時間以下」の先が約8割、「24時間超」の先が約2割となっている(「4-1」)。切替所要時間は、(1)切替要員の駆けつけ要否(駆けつけ不要か、メインセンターから駆けつけが必要か等)、(2)B/U預為システムのスタンバイ状況(ホットスタンバイか、基本ソフトウェア等未導入か等)、(3)元帳データの取得間隔(メインとB/U同時更新または5分以内か、24時間超か等)、(4)元帳データの保管場所(B/Uセンターか、B/Uセンター以外の場所か)などに左右される(「10」)。
地域銀行では、切替要員が「メインセンターから駆けつけが必要」な先の約7割、B/U預為システムの「基本ソフトウェア等未導入」の先の7割、および元帳データの取得間隔が「24時間超」の先の約8割の先が、震災を踏まえた見直しの結果、「対応の必要性はない(なかった)」または調査時点では「見直していない」としている(「3-3」、「3-2」、「5-1」)。また、元帳データの保管場所が「メイン・B/Uセンター以外の保管施設」の先の3割が、調査時点では「見直していない」としている(「5-2」)。
広域被災時には交通網が混乱し、B/Uセンターへの切替要員の駆けつけが困難となったり、B/Uデータの搬送に時間を要するリスクがある。また、B/Uデータの取得間隔が長いと、欠落データの反映にも長時間を要することが考えられる。これらを踏まえて、B/Uシステムへの切替所要時間の短縮化に向けて体制を整備していく必要がある。
4. 欠落データへの対応手順
B/U預為システムへの切替時に預為システム内や全銀システムとの間で発生する欠落データへの対応手順について、約3分の2の先が「システムまたは手作業での対応手順整備済み」である一方、「未整備」となっている先が約1〜2割存在する(「5-3」)。B/U預為システムへの切替を躊躇する要因として、多くの先が「切替時に発生する欠落データ」を挙げている(「4-5」)が、地域銀行では、「未整備」としている先の8割程度が、調査時点では震災を踏まえた見直しを行っていない(「5-3」)。
被災時の人的・時間的な制約の中で、欠落データへの対応手順を新たに検討することは困難と考えられるため、欠落データの特定やB/Uシステムへの反映といった、欠落データへの対応手順を事前に整備しておく必要がある。
5. 長期被災も想定した大量データの処理
「(B/U預為システムへの切替後に大量データの)受付・受信が出来ず、現状、代替手段はない」としている先が約3〜4割ある(「5-5」)。また、メインセンターでの受付済データを稼働後のB/U預為システムに引き継ぐ際に「引き継がれない大量データがあり、改めて大量データの提出を依頼して対応予定」としている先が約3割あるが(「5-6」)、そのうち、B/U預為システムでは「メインシステムと同じ方式での受信はできず、現状、代替手段はない」とする先が約2〜4割存在する(「5-7」)。
自然災害等によりメインセンターが被災し、B/Uセンターの利用が長期間に及ぶ場合、手作業での業務継続の実効性には懸念が残ることも踏まえて、大量データを扱う業務の継続体制を整備しておく必要がある。
6. メインシステムへの切戻し
B/U預為システムからメイン預為システムへの切戻しは、約6割の先が「システム的には可能だが手順は未整備」または「システム制約により切戻しできない」としている(「7」)。また、B/U預為システムへの切替を躊躇する要因として「切戻しが容易ではないこと」が挙げられている(「4-5」)。
B/Uシステムへの切替が必要な際に、迅速に決断できるようにするためにも、B/Uシステムからメインシステムへの切戻しに備えた対応(データ移行方法の検討、同移行手順の作成、リハーサル等)についても事前に取り決めておくことが望まれる。
7. 訓練の充実
B/U預為システムの切替訓練を「未実施」の先が5%存在するほか、訓練を実施していても「机上訓練」にとどまっている先が1割ある(「8-1」、「8-2」)。また、欠落データの後追い入力訓練や、B/U預為システムの運用(日回し)訓練を「未実施」の先が7割前後にのぼる(「8-3」、「8-4」)。
B/Uセンターの整備を進めるとともに、各種の訓練を実施し、業務継続体制の実効性を検証・向上させていくことが必要である。
8. 東日本大震災の経験を踏まえて認識した課題と取組み
東日本大震災の経験を踏まえて認識した課題として、「切替に伴い発生する欠落データへの対応」、「メイン預為システムへの切戻し手順」、「B/Uセンターでの大量振込・振替処理データの受付機能」が上位を占めている(「9-1」)。また、優先的に取り組んでいる事項としては、「切替に伴い発生する欠落データへの対応」、「預金システム・為替システム以外のB/Uシステムの充実」、「切替に伴い外部センターとの間で発生する欠落データへの対応」を挙げる先が多い(「9-2」)。
多くの項目では、「課題認識」と「取組みの優先度」がほぼ一致しているが、「大量振込・振替処理データの受付機能」、「切替に伴い発生する欠落データへの対応」、および「メイン預為システムへの切戻し手順」等については、「取組みの優先度」が「課題認識」に比べて劣後しており、取組みの強化が望まれる(「9-3」)。
日本銀行から
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照会先
金融機構局考査企画課システム・業務継続グループ
岩佐 智仁、有田 帝馬
E-mail : csrbcm@boj.or.jp