需給ギャップと潜在成長率の見直しについて
2017年4月28日
日本銀行調査統計局
川本卓司*1
尾崎達哉*2
加藤直也*3
前橋昂平*4
要旨
本稿では、日本銀行調査統計局が定期的に公表している需給ギャップと潜在成長率について、今般行った見直しの詳細を説明する。今般の見直しは、(1)GDP統計が基準改定されたこと、(2)新基準のGDP統計と整合的で、かつ経済的価値の減耗を考慮した資本ストック統計が、新たに利用可能となったこと、(3)労働や資本といった生産要素のトレンドについて、近年の構造変化を考慮して推計方法を修正したこと、を踏まえたものである。
具体的に推計方法を見直すに当たっては、第1に、労働力率ギャップについて、2012年頃から観察される労働力率の持続的な上昇を、より構造的な変化として把握できるよう、トレンドの推計方法を修正した。第2に、労働時間ギャップについても、近年の人々の働き方の変化などによる労働時間短縮の動きを、より構造的な傾向として捉えられるよう、トレンドの推計方法を見直した。第3に、製造業稼働率ギャップについて、設備の経済的価値の減耗をより的確に反映するよう、推計方法を修正した。
見直し後の需給ギャップをみると、足もとの水準は従来の推計値から大きく変化していない。また、物価の予測力という観点からみたフィリップス曲線のパフォーマンスも、需給ギャップの見直し前後で大きく変化していない。他方、見直し後の潜在成長率をみると、GDP統計の改定によるTFPの上振れを主因に相応に上方修正されており、足もとの推計値は「0%台後半」と、2000年代前半と比べても遜色ない伸び率となっている。
本稿の執筆に当たっては、関根敏隆、中村康治、峯岸誠、一上響の各氏および日本銀行スタッフから有益な助言やコメントを頂いた。新旧ギャップを用いたフィリップス曲線の比較分析は、河田皓史が行ったほか、図表作成および計数作成では、小山優子、原口史子、望月めぐみの各氏にご協力を頂いた。ここに記して感謝の意を表したい。ただし、残された誤りは全て筆者らに帰する。なお、本稿の内容と意見は筆者ら個人に属するものであり、日本銀行の公式見解を示すものではない。
- *1日本銀行調査統計局 E-mail : takuji.kawamoto@boj.or.jp
- *2日本銀行調査統計局 E-mail : tatsuya.ozaki@boj.or.jp
- *3日本銀行調査統計局 E-mail : naoya.katou@boj.or.jp
- *4日本銀行調査統計局 E-mail : kouhei.maehashi@boj.or.jp
日本銀行から
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照会先
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