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分散型台帳技術による証券バリューチェーン構築の試み―セキュリティトークンを巡る主要国の動向―

2020年8月21日
日本銀行決済機構局
田中修一*1
副島豊*2

要旨

セキュリティトークンとは、分散型台帳技術(DLT)を用いたシステム上で発行・管理される電子的な証票の形態をとった証券である。証券取引やポストトレード処理、セキュリティレンディングなどのカストディサービス、利払い・配当や償還、コーポレートアクションなど証券バリューチェーン全体をDLTを活用して構築することで、証券市場の効率性を高め、決済リスクを削減するほか、新しい証券市場の創造を目指すという実験的な試みが世界各地で始まっている。

DLTとともに登場した暗号資産では、ICO(Initial Coin Offering)を巡る問題が生じたが、証券規制の対応が進んだことでセキュリティトークン発行(STO)の素地が整備され、大規模金融機関や証券取引所、決済インフラ機関が実証実験や試験的発行に乗り出している。暗号資産やトークンの分散型取引市場(DEX)が登場したことや開発企業群の成長も、DLT活用の動きを後押ししている。

こうした試みは端緒にあり、現在の証券市場や決済インフラを直ちに代替するものではない。また、システムの可用性やセキュリティなどが大規模かつ高負荷な環境下で試された経験もなく、投資家保護やインフラ提供の安定性、市場の健全性などで様々な問題が生じる可能性もある。しかし、金融システムの多様な可能性を探る挑戦となっており、その潜在力とリスクの両面をみていく必要がある。また、新しい市場や決済インフラの成長は、ホールセールCBDCを用いた資金決済や既存のRTGSとの接続に対するニーズなど、資金決済インフラに新たな動きをもたらす可能性も有している。

本稿の執筆に当たっては、日本銀行スタッフから有益な助言やコメントを頂いた。ただし、残された誤りは全て筆者らに帰する。なお、本稿の内容と意見は筆者個人に属するものであり、日本銀行の公式見解を示すものではない。

  1. *1日本銀行決済機構局 (現 日立製作所)
  2. *2日本銀行決済機構局 E-mail : yutaka.soejima@boj.or.jp

日本銀行から

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照会先

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