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東京大学金融教育研究センター・日本銀行調査統計局共催ビッグデータフォーラムの模様

2020年12月25日
日本銀行調査統計局

要旨

東京大学金融教育研究センターと日本銀行調査統計局は、2020年11月9日、日本銀行本店にて、ビッグデータフォーラムを共同開催した。そこでは、まず、ビッグデータに関する計5本の最新の研究報告が行われた。具体的には、携帯電話等による位置情報、交通移動データ、倒産・延滞データ、ニュース記事などのテキスト情報、クレジットカードの取引データといった様々なビッグデータを経済分析に活用した事例が紹介され、質疑応答も含め参加者間で活発な議論が展開された。次に、学者、エコノミスト、データ作成の実務家といった多様なバックグラウンドを持つスピーカーによるパネルディスカッションも行われ、主として(1)非伝統的データの長所と短所、および(2)非伝統的データの将来展望と課題、という論点について議論された。

パネルディスカッションの第一の論点については、非伝統的データの長所として、多くのパネリストから、伝統的データに比べた速報性や頻度の高さ、情報量の豊富さといった点が強調され、これらの長所はコロナ禍における経済情勢の把握に際しても有用であるとの見解が示された。一方、非伝統的データの短所としては、サンプリングの問題やそのバイアス、観測ノイズの存在、データ期間の短さ、および統一化されたデータフォーマットの欠如などが挙げられ、ユーザーはこれらの点を十分に考慮しながらデータを利用するべきとの見方が示された。

パネルディスカッションの第二の論点である非伝統的データの将来展望については、多くのパネリストから、今後、ビッグデータの特性に関する理解が深まるにつれて、政策形成の現場での活用が一段と進んでいくとの意見が示された。現在の課題としては、ビッグデータの提供側、ユーザー側ともに、専門的知識やスキルを有する人材が十分でないことを指摘するパネリストが多くみられた。また、ビッグデータを持続的なかたちで政策形成に活用していくうえで、同データの収集・整備にかかるコストを社会全体でどのように負担していくか、政府や公的機関の役割や関与の在り方も含め、関係者間で議論を深めていく必要があるとの認識が共有された。

  • 本稿で示されたフォーラム内での報告・発言内容は発言者個人に属しており、必ずしも日本銀行、あるいは調査統計局の見解を示すものではない。

日本銀行から

本稿の内容について、商用目的で転載・複製を行う場合は、予め日本銀行調査統計局までご相談ください。転載・複製を行う場合は、出所を明記してください。

照会先

調査統計局経済調査課経済分析グループ

E-mail : post.rsd18@boj.or.jp