調査・研究

ホーム > 調査・研究 > 日本銀行レポート・調査論文 > 調査論文 2022年 > (論文)気候変動関連の市場機能サーベイ(第1回)調査結果

気候変動関連の市場機能サーベイ(第1回)調査結果
―市場機能向上の進展状況と今後の課題―

2022年8月5日
日本銀行金融市場局

要旨

近年、気候変動問題への対応が、グローバルに積極化するにつれ、金融市場による金融仲介機能の発揮も一層重要になっている。すなわち、気候変動から生じるリスクや機会(気候関連リスク・機会)の、株式や債券などの金融商品の価格への織り込みが進むとともに、気候変動関連のESG債(以下、単に「ESG債」)の発行環境がより整うことで、金融市場を通じた資金調達・運用がより円滑に行われ、気候変動への対応を支えていくことが期待されている。

今般、日本銀行では、わが国における気候変動関連の市場機能の状況や、その向上に向けた課題を把握する観点から、「気候変動関連の市場機能サーベイ」を開始した。気候変動問題が、様々な経済主体を巻き込む長期的な課題であることを踏まえ、本サーベイも、幅広い市場関係者を対象に年次で継続的に実施することとした。第1回調査では、発行体、投資家、金融機関、格付け会社等663先に調査を依頼し、4割以上の先から回答を得ている。

調査結果では、株式市場、社債市場ともに、気候関連リスク・機会は、価格にある程度織り込まれているものの、一段の織り込みの余地があるとの見方が示された。また、価格への反映が進むための課題としては、「情報開示の拡充や標準化」、「気候関連データの整備」といった情報のアベイラビリティに関する課題や、「ESG評価の透明性の向上」、「分析方法の充実」といった気候関連リスク・機会の評価手法に関する課題が指摘されている。これらの点は、わが国ESG債市場が拡大するための市場整備面の課題としても、多くの先から指摘されている。

わが国ESG債市場の現状については、その需給環境について、ESG債に強めの需要があることが示唆された。また、ESG債の発行動機としては、有利な調達条件よりも、「レピュテーションの向上」や「投資家層の多様化」といった事業・IR戦略上の事由が重視されていること、投資家側の動機としても「社会的・環境的な貢献」が重視されていることが示された。これらのメリットについての認識が発行体・投資家により浸透し、また情報開示の拡充・標準化等により発行や投資判断にかかるコストが低減すれば、発行体や投資家のすそ野が広がり、ESG債市場の活性化に資すると考えられる。

サーベイで確認された情報のアベイラビリティや気候関連リスク・機会の評価手法の充実といった課題については、市場関係者により、さらなる市場の整備に向けた取り組みが進められている。日本銀行としては、本サーベイについて、内容面の工夫を図りつつ、継続的に実施し、気候変動関連の市場機能の状況や、その向上に向けた今後の課題に関する情報を提供していく。また、海外における取り組みもフォローしつつ、気候変動関連の市場機能に関する調査・分析や、市場整備に向けた関係者との対話・連携などを通じて、市場の発展に貢献していく所存である。

日本銀行から

本稿の内容について、商用目的で転載・複製を行う場合は、予め日本銀行金融市場局までご相談ください。
転載・複製を行う場合は、出所を明記してください。

照会先

金融市場局総務課、市場企画課

Tel : 03-3279-1111
E-mail : post.fmd37@boj.or.jp