このページの本文へ移動

「コロナ禍における物価動向を巡る諸問題」に関するワークショップ
第2回「わが国のフィリップス曲線とコスト転嫁」の模様

English

2022年8月31日
日本銀行調査統計局

要旨

2022年5月30日、「コロナ禍における物価動向を巡る諸問題」に関するワークショップの第2回「わが国のフィリップス曲線とコスト転嫁」が、日本銀行本店で開催された。最近の原材料コスト高や為替円安をきっかけとしたコストプッシュ圧力の強まりの物価への影響や、やや長い目でみて物価形成に影響を及ぼす諸要因等について、感染症下での経済構造の変化を踏まえてどのように考えるべきか、経済学や実証分析の専門家・学者を交え、活発な議論が行われた。

第1セッションでは、最近のコストプッシュ圧力の消費者物価へのパススルーについて、海外の動向や過去の局面と対比しつつ、その特徴点が報告された。従来パススルーが限られていたわが国でも、中間需要段階等を中心にパススルー率が高まっている可能性を示す分析も示され、これらを踏まえたうえで、最近の企業の価格設定行動等について議論が行われた。第2セッションでは、まず、フィリップス曲線の枠組みに基づき、コストプッシュ圧力やインフレ予想等の諸要因が物価に及ぼす影響についての分析が示された。そのうえで、やや長い目でみて物価形成に大きな影響を及ぼすとみられるインフレ予想の形成メカニズムや賃金動向等についても報告され、その含意等を巡り議論が展開された。

第3セッションでは、パネルディスカッションが行われ、感染症下の構造変化も踏まえつつ、先行きの物価動向についてどのように考えるか、議論された。第1に、最近のコストプッシュ圧力の強まりは、当面の物価を上押しすると見込まれる一方、やや長い目でみれば、実質所得の押し下げを介して経済・物価を下押しすることに注視する必要があると指摘された。この点、生活必需品を中心とする最近の物価上昇は、所得の低い家計により大きな影響を及ぼすとの見方も示された。第2に、現在のコストプッシュ型の物価上昇から、先行き物価の安定が実現していくかについては、(1)企業の価格設定スタンスが徐々に変化し、そうしたスタンスが社会に定着していくか、(2)そのためにも賃金がしっかりと上昇し、家計の所得が維持されていくかが、重要なポイントになるという見解が示された。

  • 本稿で示されたワークショップ内での報告・発言内容は発言者個人に属しており、必ずしも日本銀行、あるいは調査統計局の見解を示すものではない。

日本銀行から

本稿の内容について、商用目的で転載・複製を行う場合は、予め日本銀行調査統計局までご相談ください。
転載・複製を行う場合は、出所を明記してください。

照会先

調査統計局

Tel : 03-3277-2865