金融マクロ計量モデル(FMM)─2022年バージョン─
2022年9月15日
日本銀行金融機構局
奥田達志*1
金井健司*2
川澄祐介*3
近松京介*4
中山功暉*5
宗像晃*6
要旨
「金融マクロ計量モデル(FMM: Financial Macro-econometric Model)」は、日本銀行がわが国の金融システムの頑健性の包括的・定量的な評価をするために行っているマクロ・ストレステストに用いているモデルである。日本銀行は、モデルによる分析結果を年2回の「金融システムレポート」で公表している。また、金融庁と定期的に実施している「共通シナリオに基づく一斉ストレステスト」にも、FMMを活用している。FMMは、(1)国内の金融機関部門と実体経済部門の相乗作用を明示的にモデル化していること、(2)国内金融機関部門全体の集計値だけではなく、個別金融機関の与信額や自己資本比率等も計算できることに特徴がある。2011年の開発後も、経済・金融環境の新たな進展を反映したり、金融面のショックの波及経路をより適切にマクロ・ストレステストに取り込んだりする観点などから、継続的に改良が加えられてきている。本稿は、マクロ・ストレステストやFMMの基本的な枠組みを概観したうえで、2022年9月時点でのモデル構造の詳細を解説する。
- 本稿の作成過程では、青木浩介氏(東京大学)、稲次春彦氏、鈴木公一郎氏、須藤直氏、玉生揚一郎氏、戸村肇氏(早稲田大学)、宮川大介氏(一橋大学)から有益なコメントを頂戴したほか、高野優太郎氏から多大な協力を得た。また、本稿で扱うFMMの開発・改良には多くの日本銀行スタッフが携わっており、とりわけ近年の見直しには、荒井勝己氏、片桐満氏、三浦弘氏も大きく貢献している。加えて、これまでの金融システムレポートの公表に際して、国際機関、国内外の公的機関、研究機関、金融機関などの外部有識者から頂戴したコメント・指摘からも多くの知見を得ている。記して感謝の意を表したい。残された誤りは全て筆者らに帰する。なお、本稿の内容や意見は、筆者ら個人に属するものであり、日本銀行および金融機構局の公式見解を示すものではない。
- *1日本銀行金融機構局(現・国際通貨基金金融資本市場局) E-mail :TOkuda@imf.org
- *2日本銀行金融機構局(現・総務人事局) E-mail : kenji.kanai@boj.or.jp
- *3日本銀行金融機構局 E-mail : yuusuke.kawasumi@boj.or.jp
- *4日本銀行金融機構局(現・調査統計局) E-mail : kyousuke.chikamatsu@boj.or.jp
- *5日本銀行金融機構局 E-mail : kouki.nakayama@boj.or.jp
- *6日本銀行金融機構局 E-mail : kou.munakata@boj.or.jp
日本銀行から
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照会先
金融機構局金融システム調査課
E-mail : post.bsd1@boj.or.jp