「コロナ禍における物価動向を巡る諸問題」に関するワークショップ
第3回「わが国の賃金形成メカニズム」の模様
2022年12月23日
日本銀行企画局・調査統計局
要旨
2022年11月25日、「コロナ禍における物価動向を巡る諸問題」に関するワークショップの第3回「わが国の賃金形成メカニズム」が、日本銀行本店にて開催された。わが国の労働市場の特徴点や最近の変化を踏まえたうえで、賃金の動向や賃金と物価の関係に関して、経済学や実証分析の専門家・学者を交え、活発な議論が行われた。
第1セッションでは、コロナ禍前からわが国の名目賃金を上がりにくくしていた様々な要因を米欧と比較し、それらの変化が報告された。そのうえで、今後の賃金上昇ペースを展望するための論点が提示されたほか、賃金を平均値でみることの問題点や、賃金と物価の関係などが議論された。
第2セッションでは、わが国のフルタイム労働者の名目賃金上昇率について、企業内で労働配置が行われ年功序列型の給与体系を持つ「内部労働市場」と、企業をまたぐ雇用調整や市場の需給による賃金決定が主である「外部労働市場」からなる「二重労働市場」の考え方にもとづいて分析すると、労働需給に対する感応度が内部・外部労働市場の間で異なることが報告された。
第3セッションのパネルディスカッションでは、主に、(1)名目賃金動向を考えるうえで注目すべき要因は何か、(2)コストプッシュが原因のインフレが賃金上昇につながり、安定的な2%のインフレは達成されるのか、という2つの論点が議論された。(1)に関しては、雇用形態ごとの労働需給や生産性と賃金の関係などを点検していく必要があるが、人口動態などに伴う労働者構成の変化による要因も重要との意見が述べられた。(2)に関しては、今後の総需要の動向や、過年度の物価上昇を春闘に反映させる動きの帰趨が重要との指摘があった。また、2%の「物価安定の目標」が持続的・安定的に達成されるかを展望するうえでは、2%のインフレがノルム(社会規範)としてわが国に浸透するかが重要との見解が示された。
- 本稿で示されたワークショップ内での報告・発言内容は発言者個人に属しており、必ずしも日本銀行、あるいは企画局・調査統計局の見解を示すものではない。
日本銀行から
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