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気候変動関連の市場機能サーベイ(第2回)調査結果
―市場機能向上の進展状況と今後の課題―

2023年6月7日
日本銀行金融市場局

要旨

今後、気候変動問題への対応を一段と進めていくうえでは、金融市場による金融仲介機能の発揮も一層重要であるとの認識が広がっている。すなわち、気候変動から生じるリスクや機会(気候関連リスク・機会)の、株式や債券などの金融商品の価格への織り込みが進むとともに、気候変動関連のESG債の発行環境がより整うことで、金融市場を通じた資金調達・運用がより円滑に行われ、気候変動への対応を支えていくことが期待されている。

日本銀行では、昨年、わが国における気候変動関連の市場機能の状況や、その向上に向けた課題を把握する観点から、「気候変動関連の市場機能サーベイ」を開始しており、今般、その第2回調査を実施した。今回調査では、発行体、投資家、金融機関、格付け会社等816先(前回663先)に調査を依頼し、380先(前回290先)から回答を得ている(回収率47%<前回44%>)。

調査結果では、前回調査と同様、株式市場、社債市場ともに、気候関連リスク・機会は、価格にある程度織り込まれているものの、一段の織り込みの余地があるとの見方が示された。また、価格への反映が進むための課題としては、「情報開示の拡充や標準化」、「気候関連データの整備」といった情報のアベイラビリティに関する課題や、「ESG評価の透明性の向上」、「分析方法の充実」といった気候関連リスク・機会の評価手法に関する課題が、引き続き多く指摘されている。これらとともに、「気候関連リスク・機会を重視する投資家や発行体の広がり」が、課題として多く指摘されている状況も前回調査と同様である。

ただし、前向きな変化が生じつつあることも示唆された。たとえば、社債価格への気候関連リスク・機会の織り込みは、前回調査でも回答のあった先に限定して集計した「継続回答先ベース」で見て、前回対比で幾分進んでいる。また、株式市場、社債市場ともに、今後、価格への反映が進むための課題について、「情報開示の拡充や標準化」などの情報のアベイラビリティに関する課題の回答割合が、水準としてはなお高いものの、前年に比べれば幾分低下している。これは、自由記入欄において、気候関連開示基準に関する検討進捗、開示の一部義務化、トランジション・ファイナンスを巡る議論進捗などが、最近1年間の環境変化として指摘されていることとも整合的である。

本サーベイでも確認された課題については、市場関係者により、さらなる市場の整備に向けた取り組みが続けられている。日本銀行としては、本サーベイについて、内容面の工夫を図りつつ、継続的に実施し、気候変動関連の市場機能の状況や、その向上に向けた今後の課題に関する情報を提供していく。また、海外における取り組みもフォローしつつ、気候変動関連の市場機能に関する調査・分析や、市場整備に向けた関係者との対話・連携などを通じて、市場の発展に引き続き貢献していく所存である。

日本銀行から

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照会先

金融市場局総務課、市場企画課

Tel : 03-3279-1111
E-mail : post.fmd37@boj.or.jp