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気候変動関連の市場機能サーベイ(第3回)調査結果
―市場機能向上の進展状況と今後の課題―

2024年6月7日
日本銀行金融市場局

要旨

気候変動問題への対応において、気候変動から生じるリスクや機会の、株式や債券などの金融商品価格への織り込みや、気候変動関連のESG債の発行環境の整備などが進み、金融市場による金融仲介機能が発揮されることは重要である。

日本銀行では、2022年以降、わが国における気候変動関連の市場機能の状況や、その向上に向けた課題を把握する観点から、「気候変動関連の市場機能サーベイ」を実施してきた。今般、第1回からの設問に加え、状況や課題をより丁寧に把握する観点から、ESG債の発行条件、気候変動ファイナンス全般やトランジション・ファイナンスへの姿勢を尋ねる設問を新設する形で、第3回調査を実施した。

調査結果をみると、価格への織り込みについては、前回調査同様、株式、社債市場とも、ある程度織り込まれているものの、一段の織り込みの余地があるとの見方が示された。さらなる織り込みに向けた課題についても、前回同様、情報のアベイラビリティや気候関連リスク・機会の評価手法に関する課題に加え、「気候関連リスク・機会を重視する発行体や投資家の広がり」が多く指摘された。

ESG債市場の現状については、発行体・投資家の双方で裾野の広がりがみられているが、投資家と比べると発行体の広がりは依然として緩やかである。この点、調達ニーズや対象プロジェクトの少なさが引き続き指摘されている。また、ESG債の発行条件も、一般社債対比での優位性が過半の先に認識されているものの、発行を強く後押しするインセンティブと受け止められていない様子も窺われた。ただ、こうした中でも、事業・IR戦略上のニーズなどを背景にESG債市場は拡大を続けている。先行きについては、発行体・投資家ともに、やや長い目でみてESG債への取り組みを積極化していく方向性が窺われる結果となった。事業法人では、その過半が気候変動対応に必要な資金の大幅な増加を見込む中で、未発行企業も含めた相応の先がESG債の活用を念頭に置いているほか、投資家も、社債投資を考えている先の過半がESG債投資を増やす予定と回答した。

今回調査では、官民での取り組みが進められているトランジション・ファイナンスへの姿勢も尋ねた。対応方針を未定とする先が多かったが、多排出産業を中心に活用方針を示す発行体も相応にみられた。そうした先からは、十分な資金調達を行う手段というだけでなく、トランジションという考え方についてステークホルダーから理解を得る手段としての期待が多く聞かれた。今後の課題としては、国際的な理解の深耕が最も多く指摘されたほか、ファイナンスド・エミッションの目標や算出方法の見直しが必要との声も投資家を中心に聞かれた。

この間、情報開示についても、国内基準策定や法定開示化に向けた動きなど、進展を指摘する声が多く聞かれた。一方で、リソース確保や体制整備などの課題が指摘されたほか、開示規制の柔軟な適用、第三者保証の枠組み整備、効率性や比較可能性を高める観点からの更なるインフラ整備への期待も聞かれている。

日本銀行から

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照会先

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Tel : 03-3279-1111
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