「実質輸出入の動向」の解説
2024年4月
日本銀行調査統計局
作成部署、作成周期、公表時期等
作成部署:調査統計局経済調査課
作成周期:月次
公表時期:貿易統計速報(月分)公表日(参考系列は同3営業日後)
公表方法:インターネット・ホームページ
データ始期:1975年1月(参考系列は2000年1月)
1. 内容
(1)目的・機能
実質輸出入は、財務省「貿易統計」で公表されている財の名目輸出入金額を、日本銀行が作成・公表している「輸出入物価指数」で割ることにより算出したものである。
名目額を物価指数で割り、物価変動の影響を除去することで作成される実質輸出入は、実質的な価値ベースの輸出入の動きを表すこととなる。
(2)公表データ
以下の季節調整済値を月次で公表
(メイン系列)
- 実質輸出(2020年=100、1975年以降)
- 実質輸入(2020年=100、1975年以降)
(参考系列)
- 実質貿易収支(対実質GDP比率、2000年以降)
- 地域別実質輸出(2020年=100、2000年以降)
- 財別実質輸出(2020年=100、2000年以降)
地域別実質輸出は米国、EU(注1)、中国、NIEs・ASEAN等(注2)、その他地域について、財別実質輸出は中間財、自動車関連(注3)、情報関連(注4)、資本財(注5)、その他についての値を公表。
- (注1)全期間において、英国を含まない。
- (注2)インド、バングラデシュなどを含む。
- (注3)自動車関連は、自動車、自動車の部分品、原動機など。
- (注4)情報関連は、電算機類、通信機、半導体等電子部品、音響・映像機器、科学光学機器など。
- (注5)資本財は、金属加工機械、建設用・鉱山用機械、重電機器、半導体等製造装置、船舶など。
(3)作成方法
実質輸出
名目輸出総額を、財務省「貿易統計」の分類を参考に8グループに分割し、それぞれのグループに対応するデフレーターで実質化したものを合計した後、季節調整を施し、2020暦年平均を100として指数化する。輸出デフレーターとしては、原則として日本銀行調査統計局作成の輸出物価指数を使用しているが、対応する指数が存在しないものについては、例外として消費税を除く国内企業物価指数で代用している。
グループの分類とデフレーターの対応関係は以下のとおり。
分類 | デフレーターとして対応させている物価指数 |
---|---|
食料品 | 消費税を除く国内企業物価指数・類別「飲食料品」 |
織物用糸・繊維製品 | 輸出物価指数・類別「繊維品」・円ベース |
化学製品 | 輸出物価指数・類別「化学製品」・円ベース |
金属及び同製品(注1) | 輸出物価指数・類別「金属・同製品」・円ベース |
はん用・生産用・業務用機器(注2) | 輸出物価指数・類別「はん用・生産用・業務用機器」・円ベース |
電気機器 | 輸出物価指数・類別「電気・電子機器」・円ベース |
輸送用機器 | 輸出物価指数・類別「輸送用機器」・円ベース |
その他(注3) | 輸出物価指数・類別「その他産品・製品」・円ベース |
- (注1)「金属及び同製品」は、「鉄鋼」、「非鉄金属」、「金属製品」を足し上げたもの。
- (注2)「はん用・生産用・業務用機器」は、「一般機械」、「科学光学機器」を足し上げたもの。
- (注3)「その他」は輸出総額から食料品~輸送用機器の輸出合計額を差し引いたもの。
実質輸入
名目輸入総額を、財務省「貿易統計」の分類を参考に8グループに分割し、それぞれのグループに対応するデフレーターで実質化したものを合計した後、季節調整を施し、2020暦年平均を100として指数化する。輸入デフレーターとしては、日本銀行調査統計局作成の輸入物価指数を使用している。
グループの分類とデフレーターの対応関係は以下のとおり。
分類 | デフレーターとして対応させている物価指数 |
---|---|
食料品 | 輸入物価指数・類別「飲食料品・食料用農水産物」・円ベース |
繊維製品(注1) | 輸入物価指数・類別「繊維品」・円ベース |
鉱物性燃料 | 輸入物価指数・類別「石油・石炭・天然ガス」・円ベース |
化学製品 | 輸入物価指数・類別「化学製品」・円ベース |
はん用・生産用・業務用機器(注2) | 輸入物価指数・類別「はん用・生産用・業務用機器」・円ベース |
電気機器 | 輸入物価指数・類別「電気・電子機器」・円ベース |
輸送用機器 | 輸入物価指数・類別「輸送用機器」・円ベース |
その他(注3) | 輸入物価指数・類別「金属・同製品」・円ベース 輸入物価指数・類別「木材・木製品・林産物」・円ベース 輸入物価指数・類別「その他産品・製品」・円ベース (上記3つの指数を輸入物価指数のウエイトを用いて、加重平均したもの) |
- (注1)「繊維製品」は、「織物用糸・繊維製品」、「衣類・同付属品」、「織物用繊維及びくず」を足し上げたもの。
- (注2)「はん用・生産用・業務用機器」は、「一般機械」、「科学光学機器」を足し上げたもの。
- (注3)「その他」は輸入総額から食料品~輸送用機器の輸入合計額を差し引いたもの。
実質貿易収支(対実質GDP比率)
実質貿易収支(対実質GDP比率)は、上記実質輸出入を作成する際に計算される、2020年価格で表される実質輸出と実質輸入(2020暦年平均=100に指数化される前の値)の差額を取り、各月の属する四半期の季節調整済実質GDP(実質GDPが未公表の月については、直近四半期の実質GDP)で割り込むことにより算出。
(4)デフレーターの基準年
デフレーターの基準年は2020年(2020年価格)。
(5)実質輸出入の季節調整
季節調整には、X-12-ARIMAを使用。毎年4月頃、季節調整替えを実施している。次回季節調整替えまでの間(原則1年間)は、予定季節要素を用いて季節調整値を算出している。
実質輸出入(メイン系列)の現在の季節調整方法の詳細は以下のとおり。
- ARIMAモデルのスペック : 輸出(1 1 2)(0 1 1)、輸入(0 1 1)(0 1 1)
- 季節調整期間 : 1975年1月から2024年2月
- ARIMAモデルによる先行き予測期間 : 48か月(なお、後戻り予測は行っていない)
- regARIMAによる事前調整パートでは、曜日・閏年・祝日等調整を実施しているほか、outlierコマンドで異常値を調整している(レベルシフト、RAMP処理は行っていない)。なお、祝日等調整には通関日数をベースとしたユーザー定義変数を用いている。
(6)公表時期
メイン系列(実質輸出・実質輸入) : 原則として貿易統計速報(月分)公表日の14:00
参考系列 : 原則として同3営業日後の14:00
ただし、日本銀行の業務の都合により遅くなる場合がある。
2. 参考資料
実質輸出入の具体的な作成方法や、実際に活用していく上でのポイントについては、以下の調査論文を参照。