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「最近の雇用調整の特徴」

労調・雇用者と毎勤・常用労働者の乖離に着目して

2002年 1月30日
大澤直人

日本銀行から

経済点描は、景気動向や中期的な経済テーマ、あるいは経済指標・統計に関する理解を深めるための材料提供を目的として、日本銀行調査統計局が編集・発行しています。ただし、レポートで示された意見や解釈に当たる部分は、執筆者に属し、必ずしも日本銀行の見解を示すものではありません。

以下には、(要旨)を掲載しています。全文は、こちら (rkt02j01.pdf 52KB) から入手できます。

要旨

 このところ完全失業率が毎月既往ピークを更新するなど、雇用情勢の悪化が目立っている。これは、景気の調整が長引く中で、企業の人減らしの動きが本格化してきたことを反映したものである。実際に、失業率の計算の基となる労働力調査(以下、労調)では、表1でみるように昨夏まで前年比プラスで推移していた雇用者数が、最近ではマイナスに転じている。ところが、こうした明確な雇用者数減少の動きは、雇用動向を表わすもう一つの代表的な統計である毎月勤労統計調査(以下、毎勤)には、これまでのところ殆ど現れていない。

  • 図

 勿論、こうした雇用統計間での雇用者数の動きの乖離(以下「労毎乖離」)には、統計上の誤差が何がしかは影響していよう。しかし、90年代後半以降、企業が正社員の増加に対して極めて慎重なスタンスを採り続けてきたという事実を踏まえると、こうした「労毎乖離」を単なる誤差と捉えるのは、必ずしも適当でないように思われる。以下では、まず、労調における「雇用者」が毎勤における「常用労働者」よりも、かなり広い範囲の労働者をカバーしているという定義上の違いを明らかにする。その上で、企業の人減らしがアルバイトや派遣社員、一部パート等の比較的短期の労働者中心に実施されると、前者の減少幅が大きくなること、さらにはそうした雇用調整がこのところ実際に行われていること、を幾つかの材料を挙げつつ検証してみたい。